信号で止まるたび、フロントから高い金属音が混じるようになった。あるいは12か月点検でパッドの摩耗を指摘された。タントで交換するパッドはフロント2輪分だけで、リヤはドラムなのでパッドという部品自体が存在しない。そのうえで選択が分かれるのは、同じ型式でも年式や車台番号で適合品番が切り替わるからだ。
フロント2輪分を、年式まで見て選ぶ
タントは初代 L350S/L360S から現行 LA650S/LA660S まで世代が分かれるが、パッドが要るのはどの世代もフロントだけ。決めるべきは世代よりもむしろ年式で、型式だけを頼りに買うと外す世代が実際にある。世代別の候補は次の4つ。
| 世代 | 対応型式 | 製品 | 価格 |
|---|---|---|---|
| 4代目(現行) | LA650S / LA660S | アケボノ AN-806WK | ¥4,090 |
| 4代目(現行) | LA650S / LA660S | ディクセル KPタイプ | ¥3,600 |
| 3代目 | LA600S / LA610S | ディクセル KPタイプ | ¥3,730 |
| 2代目 | L375S / L385S | ディクセル KPタイプ | ¥3,200 |
価格は2026年8月29日に確認したAmazonの実売価格で、以降は変動する。
リヤに「ブレーキパッド」という部品は無い
現行タントのブレーキ形式
ダイハツが公開しているタントの主要諸元表によると、現行の LA650S(2WD)・LA660S(4WD)はブレーキ形式が前はベンチレーテッドディスク、後はリーディング・トレーリング。標準グレードの表でも特別仕様車の表でも、掲載されている全グレードが同じ表記になっている。この諸元表には道路運送車両法による自動車型式指定申請書数値であることが明記されている。
初代から現行まで、リヤはドラム
確認できた範囲では、初代 L350S/L360S から現行までリヤはすべてドラム(リーディングトレーディング)で、リヤがディスクの設定は見つからなかった。フロントはどの世代もディスクだが、表記は「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の2種類があり、初代の一部NAグレード(UA-L350S・CBA-L350S)と2代目の DBA-L375S は「ディスク」表記になっている。フロントがディスクである点だけは全世代で共通するので、ベンチレーテッドかどうかは自分の年式の諸元で確かめたい。
リヤに要るのはシューであってパッドではない
曙ブレーキ工業が公開しているダイハツ車の適合表は「Front フロント」「Rear リヤー」「Parking パーキング」の列で構成されていて、タントの行はフロント列に AN-###WK 形式のパッド品番、リヤー列に NN#### 形式のブレーキシュー品番が入る。リヤー列にパッド品番が入る行は無い。リヤ側の摩耗が疑われるときに探すのはブレーキシュー(ライニング)になる。
型式が合っていても年式で品番が変わる
適合表に出ている切り替わりの実例
曙ブレーキ工業の適合表では、L375S のフロントが平成24年5月を境に AN-608WK から AN-683WK へ切り替わる(車体番号542436以降が後者)。LA600S は平成27年5月を境に AN-795WK から AN-806WK へ、LA610S も同じ時期に同じ組み合わせで切り替わる(車体番号はそれぞれ0293666以降・0056938以降)。L375S はさらに車体番号369282以前で ABS の有無によってリヤーのシュー品番が分かれ、ターボ車は非ターボ車と別の行になる。一方で LA650S/LA660S のフロントは、掲載されている全年式区分(令和1年7月〜令和3年9月、令和3年10月以降)で AN-806WK と記載され、年式で分かれていない。切り替わりが起きるのは2代目と3代目、というのが実務上の要点になる。
買う前に車検証で照合する3項目
手元に用意するのは車検証の型式・初度登録年月・車台番号の3つ。商品ページの適合表記はこの組み合わせで書かれているので、型式が一致していても年月と車台番号の範囲から外れれば別品番になる。ターボ車は行が分かれることがあるため、グレードも併せて見ておく。型式とグレードで設定が分かれるのはブレーキに限らずタイヤも同じで、自分の型式の位置づけは
でも確認できる。
タントエグゼは別車種、初代は適合表の範囲外
通販の商品タイトルには「タント L350S L375S L455S」のように L455S/L465S を並べたものがあるが、これはタントエグゼの型式で、曙ブレーキ工業の適合表でもタントとは別の車種欄に掲載されている。混ざった表記を見たときは、自分の型式が本当に含まれているかを1件ずつ見る。また初代 L350S/L360S は、同社のダイハツ対照表の掲載範囲(平成21年以降の年号対照)に含まれていない。初代なら部品メーカーの現行適合表では裏が取れないぶん、商品側の適合表記との突き合わせが重みを増す。
交換時期は音と法定点検で判断する
取扱説明書が挙げている音
タントの取扱説明書には、継続的にブレーキ付近から警告音(キーキー音)が発生したときは、できるだけ早くダイハツサービス工場で点検を受けてブレーキパッドを交換するよう書かれている。必要なときに交換が行われないとディスクローターの損傷につながる場合があること、摩耗の限度を超えて走行すると故障を引き起こすばかりでなく事故につながるおそれがあることも、同じ警告のなかに記載されている。音さくいんの側にも、走行中にブレーキペダルを踏んだときのきしみ音・ひっかき音の原因として、パッドの摩耗が挙がっている。踏んだときに出る高い音は、メーカー自身が摩耗の兆候として名指ししている。音の種類を切り分けたいなら
のほうが早い。
パッドの摩耗は1年ごとの点検項目
自動車点検基準の別表第六(自家用乗用自動車等の定期点検基準)では、点検箇所「ブレーキ・ディスク及びパッド」について、1年ごとの欄に「ディスクとパッドとのすき間」「パッドの摩耗」が、2年ごとの欄に「ディスクの摩耗及び損傷」が定められている。パッドの残りは車検を待つ項目ではなく、1年ごとの点検で見るもの。両方に付く(※1)印は、年間走行距離が5千キロメートル以下の自動車について一定の条件で省略できる注記に対応する。
走行距離と残厚の一般的な目安
ブレーキ部品メーカーのアドヴィックスは、交換目安を小型乗用車で4〜5万km、スポーツカーで3〜4万km、SUVで2〜3万kmと説明したうえで、実際は地域・乗員・速度といった走行条件で異なること、車重の大きい車やエンジン出力の大きい車ほど寿命が短くなることを補足している。摩擦材の厚みについては約10mm・約5mm・約3mmの3段階を示し、残り5mmになったら交換するよう述べている。どちらもパッド一般に対する同社の説明で、タントの整備基準値ではない。数字を覚えるより、摩耗しきると裏板でローターを削る状態になり、ローターごと交換になるという説明のほうが効く。
適合が合う品が複数あるときの選び分け
実際の寿命の長短や鳴きが出るかどうかは、どのメーカーも公表していない。比較できるのは、型式・年式・車台番号に設定があるか、交換時に要る部品が同梱されるか、材質と適正温度がどう公表されているか、ダストについて何を掲げているか、の4点に絞られる。
シムとグリスが同梱されるか
ディクセルの製品情報では、軽自動車向けの KPタイプ(K Premium)は鳴き止めシムが装着済みで、グリース(PG101)が付属すると記載されている。同社の ECタイプ(EXTRA Cruise)も機械式センサーと鳴き止めシムが装着済みと書かれている。機械式センサーは摩耗が進んだときに音で知らせる部品で、取扱説明書が交換サインとして挙げる音と対応する。同梱されていれば、交換当日に別途そろえる部品が減る。
材質と適正温度の見かた
KPタイプは材質が NAO(ノンアスベストオーガニック)、適正温度が0〜400℃と公表されている。ECタイプにはストリート専用でサーキットには使えないという注記が製品ページに付く。街乗り中心のタントなら、上限側の耐熱より、冷えた状態からどう効くかのほうが日常の走り方に近い。
背が高く重い軽であるという前提
ダイハツの主要諸元表によると、現行タントの車両重量は2WDで880〜940kg、4WDで930〜990kg、全高は1,755〜1,805mm。軽自動車のなかでは背が高く重い部類に入る。車重が大きいほどパッド寿命が短くなるという部品メーカーの説明と重ねれば、タントはパッドに厳しい側の条件で走っていることになる。ディクセルの KPタイプの製品ページも、タントを名指しして、車重が重いハイト系にも十分な制動力・自然な効き・ダスト低減を掲げている。
世代別のおすすめ4製品
どれを選ぶ場合も、年式と車台番号で適合を見るところは共通する。
現行 LA650S/LA660S 向け
純正採用メーカーのものをそのまま入れるなら、曙ブレーキ工業の AN-806WK。同社の適合表で LA650S/LA660S のフロントは掲載されている全年式区分がこの品番なので、現行タントについてはフロント側で年式の切り分けが起きない。
アケボノ AN-806WK タント LA650S フロントブレーキパッド
ホイールの汚れを減らしたいならディクセルの KPタイプ。シムとグリスが同梱されるぶん、交換を工場に頼むにしても持ち込む部品が1つで済む。
ディクセル KPタイプ フロントブレーキパッド タント LA650S/LA660S
純正と同じ感触を保ちたいならアケボノ、ダストを減らしたいならディクセル、という分け方で決めていい。
3代目 LA600S/LA610S 向け
3代目も同じ軽自動車向けのラインから選べる。ただしこの世代は平成27年5月で品番が切り替わるため、前期と後期で設定が分かれる。初度登録年月と車台番号が商品側の適合表記の範囲に入っているかを見てから買う。
ディクセル KPタイプ フロントブレーキパッド タント LA600S
2代目 L375S/L385S 向け
L375S は適合表で最も細かく行が分かれる型式で、車体番号369282以前は ABS の有無、車体番号542436以降はフロントの品番、さらにターボ車は別の行という3段構えになる。2代目を買うときはターボの有無まで確認したうえで突き合わせる。
ディクセル KPタイプ フロントブレーキパッド タント L375S
自分で替えるか、工場に頼むか
左右同時交換が原則
ディクセルの使用上の注意では、交換作業は認定整備工場で行うこと、走行直後はパッドやローターが高温になっているため十分に冷却してから作業すること、左右同時交換が原則で片輪だけの交換は片効きの原因になること、が挙げられている。買うのは1輪分ではなくフロント左右の2輪分。ホイールを外す作業そのものに不慣れなら、
を先に見て自分の手に負えるか測っておくといい。
交換直後は効きが戻りきらない
ディクセルの技術情報では、ストリートのみの使用の場合、パッドとローターのアタリ付けに一般道で300〜1,000kmほど必要とされ、その間は急制動や急ハンドルを避けるよう案内されている。替えた直後に効きが本調子でないのは想定の範囲にある。
法令上の位置づけ
道路運送車両法施行規則が定める特定整備の定義では、ディスク・ブレーキのキャリパを取り外して行う整備が分解整備に含まれる。条文が名指ししているのはキャリパの取り外しであって、パッド交換そのものを名指しした条文ではない。タントの取扱説明書もダイハツサービス工場での点検・交換を案内している。部品だけ自分で買い、作業は工場に任せるという分担は、この2つの間で無理がない。
よくある質問
タントのリヤにブレーキパッドはありますか
無い。確認したすべての世代・型式でリヤはドラム式で、該当する部品はドラム内のブレーキシュー(ライニング)になる。「リヤ用ブレーキパッド」を探しても見つからないのは、その設定が存在しないため。
ブレーキパッドは何kmで交換すればいいですか
タント固有の走行距離基準は公表されていない。参照できるのは部品メーカーの車格別の一般的な目安で、アドヴィックスは小型乗用車で4〜5万kmとしつつ、走行条件で変わることを同じページで断っている。距離を目安にするより、1年ごとの点検で残りを見てもらうほうが確かめられる。
雨の日にブレーキの効きが変わるのはなぜですか
タントの取扱説明書には、水たまり走行後はブレーキペダルを軽く踏んでブレーキが正常に働くことを確認するよう記載があり、パッドがぬれると効きが悪くなったり、ぬれていない片方だけが効いてハンドルを取られたりするおそれがあると説明されている。これは想定内の挙動で、パッドの不良とは切り分けて考える。
日常点検でパッドの残りは見てもらえますか
日常点検の項目には入っていない。自動車点検基準の別表第二が定める日常点検のブレーキ項目は、ペダルの踏みしろと効き、液量、駐車ブレーキのレバーの引きしろの3点で、パッドの摩耗は1年ごとの定期点検側の項目になる。
下り坂で運転支援が止まったのはパッドのせいですか
タントの取扱説明書の機能停止コード一覧には、スマアシが停止する理由の1つとして「ブレーキパッドが高温になった」が挙がっていて、原因が解消されてエンジンスイッチを入れ直せば復帰すると案内されている。長い下り坂での一時的な停止であれば、この記載に当てはまる。
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まとめ
タントで買うブレーキパッドはフロント2輪分だけで、リヤに同じ部品は存在しない。2代目と3代目は同じ型式でも年式と車台番号で品番が切り替わるので、型式が合っていることだけを根拠に注文しない。交換の合図は、取扱説明書がキーキー音として明記している。まずは車検証で型式と初度登録年月を確認して、そこから商品側の適合表記と突き合わせる。
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