車検や12か月点検で前のブレーキパッドの残りが少ないと指摘され、部品だけ先に用意しようとして、前後セットの商品を探すうちに手が止まる。ライズではこのつまずき方が多い。原因は品切れでも商品名の揺れでもなく、ライズのリヤがドラムブレーキで、リヤ用のパッドという部品自体が存在しないことにある。必要なのはフロント用だけで、その品番は型式も年式も問わず1つに集約される。
必要なのはフロント用1種類、品番はAN-844WK
トヨタが公開しているライズの主要諸元表によると、ブレーキ形式はフロントがベンチレーテッドディスク、リヤがリーディングトレーリング式ドラム。2019年11月の発売時の諸元表も、2021年11月の改良後の諸元表も記載は同じで、世代を通してこの構成は変わっていない。ディスク用の摩擦材であるブレーキパッドが要るのは前輪だけということになる。
曙ブレーキ工業が公開している車種適用表では、ライズのフロント用ディスクブレーキパッドの品番は全型式・全年式で AN-844WK に統一されている。ガソリン車もハイブリッド車も、2WDも4WDも、前期も後期も同じ品番だ。探すのは「フロント用のAN-844WK」1種類で、残る作業は販売ページの適合表記が自分の車を含んでいるかの確認だけになる。
| 位置 | ブレーキ形式 | 摩擦材 | 品番 |
|---|---|---|---|
| フロント | ベンチレーテッドディスク | ディスクブレーキパッド | AN-844WK(全型式共通) |
| リヤ | リーディングトレーリング式ドラム | ブレーキシュー | パッドの設定なし |
リヤ用パッドが見つからないのは構造の話
曙ブレーキ工業の適用表はフロント欄・リヤー欄・パーキング欄の3列で品番を示すが、ライズのリヤー欄に入っているのは NN で始まる品番で、これはドラム用のブレーキシューの品番体系にあたる。同じ適用表でドラム仕様と4輪ディスク仕様が併記されている車種を見ると、ディスク側の行だけがAN始まりになっており、ANがパッド、NNがシューだと読み取れる。ライズは全ての行がNN始まりだ。
前後2セットを買う必要はないし、他車種向けの「前後セット」をライズに流用してもいけない。リヤの効きに不安があるときに見るのはパッドではなくシューとドラムの摩耗で、これは外から目視できない。整備工場に点検を頼む部分だと割り切ったほうが早い。
型式と年式を突き合わせて選ぶ
型式は4つ、パッドの品番は1つ
主要諸元表で見ると、2019年11月の発売時は2WDが5BA-A200A、4WDが5BA-A210Aで、どちらも0.996Lの1KR-VETターボを積んでいた。2021年11月の改良で2WDに1.196L自然吸気のWA-VEを積む5BA-A201Aと、1.196LのWA-VEXを積むハイブリッドの5AA-A202Aが加わり、1.0Lターボは4WDの3BA-A210Aに集約された。
| 型式 | 駆動方式とエンジン | 設定期間 | フロントパッド |
|---|---|---|---|
| A200A | 2WD・1.0Lターボ | 2019年11月〜2021年10月 | AN-844WK |
| A210A | 4WD・1.0Lターボ | 2019年11月〜 | AN-844WK |
| A201A | 2WD・1.2Lガソリン | 2021年11月〜 | AN-844WK |
| A202A | 2WD・1.2Lハイブリッド | 2021年11月〜 | AN-844WK |
購入前に突き合わせるのは2つだけ。車検証の「型式」欄(A200A・A201A・A202A・A210Aのいずれか。頭に5BA-や3BA-といった排出ガス規制の記号が付く)と、初度登録年月だ。曙ブレーキ工業の適用表は型式と年式の組み合わせで品番を割り当てており、たとえばA210Aは令和1年11月からの行と令和3年11月からの行に分かれている。型式だけを見て年式を飛ばさない。
姉妹車ロッキーと、名前の似た別ジャンル品
ライズの主要諸元表の脚注には製造事業者としてダイハツ工業の名前が入っており、ロッキーが姉妹車にあたる。そのため適合表では同じ品番がライズ側とロッキー側の型式の両方に割り当てられていることがある。表記がロッキー中心でも自分の型式が書かれていれば対象になりうるが、型式の記載がない商品は買い手側で適合を判断しようがない。
もうひとつ、「ライズ」は二輪用品を扱うブランド名にも使われている。車名で検索するとバイク用のパッドが混ざることがあるので、商品名にトヨタ ライズの表記と型式があるか、フロント用と明示されているかを見て弾く。
交換時期をどう見極めるか
取扱書が挙げている音のサイン
ライズの取扱書は、継続的にブレーキ付近から警告音(キーキー音)が発生したときについて、できるだけ早くトヨタ販売店で点検を受けてブレーキパッドを交換するよう記載している。必要なときに交換されないとディスクローターの損傷につながる場合があること、摩耗の限度を超えて走行すると故障や事故につながるおそれがあることも併記されている。
取扱書の音さくいんでは、走行中にブレーキペダルを踏んだときのきしみ音・ひっかき音についても、パッドが摩耗しているおそれがあると案内している。高い金属音だけがサインではないということだ。音の切り分けが難しいときは、ブレーキ以外の異音との違いも押さえておきたい。
点検制度の側から見る
自動車点検基準の別表第六では、点検箇所「ブレーキ・ディスク及びパッド」に対し、1年ごとの欄に「ディスクとパッドとのすき間」「パッドの摩耗」が、2年ごとの欄に「ディスクの摩耗及び損傷」が置かれている。パッドの摩耗は12か月点検で見る項目、ローター本体は2年ごとに加わる項目という区分だ。
残厚の目安は目安として扱う
取扱書にも点検基準にも、残厚が何ミリで交換という数値は書かれていない。数字が欲しいときはカー用品店の目安を借りることになる。オートバックスは新品時の厚さを概ね10mm程度とし、残り5mm以下を交換の目安、3mm以下なら交換が必須、パッドウェアインジケーターが作動したときはすぐに交換が必要としている。これは車両メーカーの整備基準値ではないので、判断の補助線として使う。
同じ品番の中で何を見るか
品番が1つに決まっている以上、比較できる軸は3つに絞られる。販売ページがどの型式・どの年式を明示しているか、純正採用のメーカー品そのものか新車装着品と同等をうたう互換品か、そして価格と入手のしやすさ。効きや耐久の優劣を品番以外の情報から比べる材料はないので、性能で迷う必要はない。
流通しているAN-844WKは、新車に組まれているものと同じ設計思想の製品にあたる。効きの立ち上がり方、踏力に対する減速の出方、鳴きやダストの傾向が、乗り慣れた状態から大きく変わらない。踏み心地を変えたい理由が特にないなら、基準に置くのはこちらだ。
市販品には汚れを抑える低ダスト志向のものや、高い温度域での効きを狙ったスポーツ志向のものもある。ただし摩擦材の性格を変えれば、効きの出方・鳴きやすさ・ダスト量・ローターへの当たりのどれかは必ず動く。街乗り中心で今の効きに不満がないなら、変える理由は薄い。
フロント用ブレーキパッド4選
いずれも品番はAN-844WKで中身の位置づけは同じ。並べ方の軸は、販売ページがどの型式と年式を明示しているかだ。自分の車検証の型式・初度登録年月に合う表記のものを取ればいい。価格はいずれもAmazonの実売価格で、確認時点の値。変動するので購入時のページで見てほしい。
前期の2WD(A200A)に乗っている場合
販売ページが「R1.11-/A200A」と、2WDの1.0Lターボにあたる型式と令和1年11月以降という年式を明示している。品番AN-844WKとメーカー純正採用のアケボノ製である旨も表記されている。2019年11月から2021年10月までの2WDなら、表記をそのまま突き合わせられる。確認時点の価格は4,590円。
トヨタ ライズ フロントブレーキパッド AN-844WK(A200A・R1.11-/メーカー純正採用 アケボノ製)
4WD(A210A)で型式表記を合わせたい場合
表記が「R1.11-/A210A」となっており、4WD側の型式を明示している点だけが上との違い。品番も価格も同じで、確認時点で4,590円。4WDに乗っていて、販売ページに自分の型式がそのまま書かれているものを選びたいならこちら。
トヨタ ライズ フロントブレーキパッド AN-844WK(A210A・R1.11-/メーカー純正採用 アケボノ製)
メーカー名が出ているものを選びたい場合
ブランド表記が曙ブレーキ工業になっており、パッドを供給しているメーカー名が販売ページ上に出ている。表記は「フロント側 トヨタ ライズ AN-844WK A200A 令和1年11月-」。確認時点の価格は4,440円で、上の2点よりわずかに低い。
曙ブレーキ工業 フロントブレーキパッド AN-844WK(トヨタ ライズ A200A・令和1年11月-)
後期のハイブリッド(A202A)に乗っている場合
表記は「新車搭載ブレーキパッド互換品 フロント側 トヨタ ライズ AN-844WK A202A 令和3年11月~」で、2021年11月以降のハイブリッドを明示している。適用表の上でもハイブリッドとガソリンでフロントの品番差はないので、選択は表記の合致で決めていい。確認時点の価格は4,420円。
新車搭載相当 フロントブレーキパッド AN-844WK(トヨタ ライズ A202A・令和3年11月-)
部品代と工賃を分けて見る
オートバックスが示す目安では、ブレーキパッドの部品代は普通乗用車で税込8,800円から、軽自動車で税込7,700円から(フロント・リア各1セット)。交換工賃は2ヶ所(2輪)につき税込5,500円からで、所要時間の目安は約30分からとされている。ライズで対象になるのはフロントの2輪だけなので、工賃はこの1組ぶんが基準になる。金額は店舗や車両の状態で動くため、総額は見積もりで確かめる。
持ち込みを受けるかどうかと、その場合の工賃は店で違うので、買う前に聞いておくと手戻りがない。あわせてブレーキフルードは約2年が交換の目安とされているので、同時に見てもらう項目に入れておく。
購入から交換までの進め方
- 車検証で型式(A200A・A201A・A202A・A210Aのいずれか)と初度登録年月を確認する
- 必要なのはフロント用だけであることを確認する
- 販売ページの適合表記に自分の型式と年式が入っているかを見る
- 交換が要る状態かどうかは、音のサインと点検結果で判断する。残厚の実測はホイールを外して見てもらう
- 工場に持ち込むなら、購入前に持ち込み部品の可否と工賃を聞いておく
ライズの取扱書はパッドの交換について販売店での点検・交換を案内している。部品を自分で用意して工場やカー用品店に持ち込む形なら、部品代を抑えたまま作業と点検はプロに任せられる。自分で作業するなら、締め付けの管理、ピストンを戻したときのブレーキ液面の変化、交換後の効きの確認まで完結できるかが線引きになる。迷うなら工場に頼む。ホイールを外す作業に慣れていないなら、まずジャッキアップ位置から押さえておきたい。
よくある質問
ライズのブレーキパッドは前後セットで買う必要があるのか
ない。リヤはドラムブレーキで、摩擦材はパッドではなくブレーキシューという別部品になる。買うのはフロント用の1セットだけだ。
何kmくらいで交換するのが目安か
オートバックスは30,000km〜50,000kmを目安としている。ただし乗り方や使う道で減り方は変わるので、距離は入庫の判断材料というより点検を思い出すきっかけとして使い、実際の可否は残厚と音で決める。
パッドが減っていると車検に通らないのか
自動車点検基準の別表第六でパッドの摩耗は12か月点検の項目に置かれているが、基準が定めているのは点検すべき項目であって、何ミリで交換という限度値ではない。実際の扱いは入庫先の判断になるので、車検前に残厚を測ってもらい、交換するかどうかを先に決めておくほうが段取りしやすい。
雨の日にブレーキの効きが変わるのはパッドの劣化なのか
ライズの取扱書には、水たまり走行後はブレーキペダルを軽く踏んでブレーキが正常に働くことを確認するよう記載があり、パッドがぬれると効きが悪くなったり、ぬれていない片方だけが効いてハンドルを取られたりするおそれがあると書かれている。一時的な効きの変化がそのまま摩耗を意味するわけではない。
型式と年式で適合が分かれるのはパッドに限らず、ほかの消耗品でも同じ確認手順になる。
まとめ
最初にやることは実車を見ることだ。フロントのホイールの隙間から覗けばキャリパーとディスクが見え、リヤは中の見えないドラムでパッドが付いていない。これを自分の目で確かめれば、買うものはフロント用の1セットに決まる。
そのうえで車検証を開き、型式と初度登録年月を控える。曙ブレーキ工業の適用表では全型式・全年式でフロントがAN-844WKに集約されているので、あとは販売ページの適合表記に自分の型式と年式が含まれているかを見るだけでいい。
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