車検や点検でブレーキパッドの残りを指摘されたとき、ムーヴで買うことになる部品は年式にかかわらず1つに絞られる。フロント左右分のパッド1セットだ。後輪は4代目 L175S から現行の7代目まで一貫してドラム式で、リア用のパッドという部品自体が存在しない。そのうえで、どの商品が候補に残るかは車検証に書かれた型式で分かれる。
買うのはフロント1セット、候補は型式で決まる
ネクステージのカタログ諸元によれば、4代目 L175S は前がディスク、後がドラム(リーディングトレーリング)。5代目 LA100S と6代目 LA150S はいずれも前がベンチレーテッドディスク、後がドラム。GAZOO のカタログ諸元では現行7代目 LA860S も同じ組み合わせで記載されている。ムーヴの後輪の摩擦材はパッドではなくブレーキシューであり、「前後セット」で探す必要はない。
ベンチレーテッドディスクはローターの内部に通気路を持たせて放熱性を上げた形式で、ディスクである以上、摩擦材はパッドになる。左右2輪分、一般にパッド4枚が1セットだ。
選定で最初に決まるのは性能グレードではなく適合だ。車検証の型式と初度登録年が商品の適合表に入っているかで候補が絞られ、複数残ったところで初めて材質・同梱品・価格の比較に進む。適合が確認できない商品は、条件がどれだけ良く見えても外す。
| 商品 | 適合として案内される型式 | 同梱品 | 実売価格(確認時点) |
|---|---|---|---|
| ディクセル KP 381114 | LA150S/LA160S | 鳴き止めシム・グリース PG101 | ¥3,700 |
| エムズ部品 B135 | LA150S/LA160S | 商品側の公表なし | ¥2,610 |
| Pa sports HNL-625 | LA150S/LA160S | 専用グリス | ¥4,378 |
| エムズ部品 B1 | L175S/L185S/LA100S/LA110S ほか | 商品側の公表なし | ¥2,300 |
価格はAmazonの実売価格を確認した時点の値で、変動する。
交換時期は残厚・走行距離・音の3つで見る
残りの厚みで見る
オートバックスの解説によると、ブレーキパッドは新品でおおむね10mm程度の厚さがあり、残りが5mm以下になったところが交換の目安、3mm以下であれば交換が必須とされている。厚みはホイールを外してキャリパの点検孔から見るため、自分で測るのは現実的ではない。点検や車検のときに整備士へ残厚を数字で聞いておくのが確実だ。
走行距離で見る
同じくオートバックスは、交換時期の目安を走行距離で30,000km~50,000kmとしている。ただし摩耗の速さは走り方や使用環境で変わる。市街地で停止と発進を繰り返す使い方と、郊外を一定速度で流す使い方では減り方が違うので、距離だけを根拠にせず残厚の確認と組み合わせて判断したい。
音で見る
多くのパッドには摩耗警告用の金属プレートが付いている。オートバックスの解説では、摩耗が進むとこのプレートがディスクに干渉して甲高い音が鳴り、キーキーという不快な音ですぐ気付けるとされている。この音が出ている時点で摩耗はかなり進んでいるので、走り続けずに点検へ回す。ただし湿気や錆による一時的な鳴きなど別の原因もあり、音だけで摩耗と決めつけることはできない。
自分の車がどの世代かを確定させる
世代と型式の対応表
グーネットの型式一覧とダイハツ工業のニュースリリースを合わせると、世代と型式の対応はこうなる。
| 世代 | 型式 | 時期 |
|---|---|---|
| 4代目 | L175S/L185S | 2006年10月〜2010年12月ごろ |
| 5代目 | LA100S/LA110S | 2010年12月〜2014年12月ごろ |
| 6代目 | LA150S/LA160S | 2014年12月〜2023年6月(生産終了) |
| 7代目 | LA850S/LA860S | 2025年6月5日発売〜 |
6代目は2023年6月23日にムーヴおよびムーヴカスタムの新車生産終了が発表され、7代目はダイハツ工業のリリースで6月5日からの全国一斉発売が案内された。型式は車検証の「型式」欄で確認でき、5BA- や DBA- といった接頭の記号を除いた LA150S の部分が世代の判別に使う値になる。
末尾の番号は駆動方式の区別
各世代の型式が2つあるのは駆動方式の区別で、番号の小さい側(LA100S・LA150S・LA850S)が2WD、大きい側(LA110S・LA160S・LA860S)が4WD に対応する。商品名に「LA150S/LA160S」と併記されている場合は駆動方式を問わず同じ品番が使える案内であることが多いが、片方しか書かれていない商品では自分の型式が明記されているかを見る。
LA850S はキャンバスと共通の型式
7代目の LA850S/LA860S はムーヴキャンバス(2代目・2022年7月発売)でも使われている型式だ。通販サイトで型式だけを打ち込むとキャンバス用の部品が混ざって出てくる。型式が一致していても車種名が「ムーヴキャンバス」の商品はムーヴ用として選ばず、車種名が「ムーヴ」でも年式が2022年7月からとなっている商品はキャンバス向けを疑って、車種名と年式の両方を突き合わせる。
比較の4つの軸
適合範囲の広さ
商品には、ひとつの世代だけを狙ったもの(LA150S/LA160S 専用など)と、複数世代の型式を列挙して適合を案内するものがある。世代専用品は自分の型式が書いてあれば読み取りが早い。列挙型は自分の型式が並びのどこに含まれるかを確かめる手間がある代わり、旧年式でも選択肢が残る。どちらが上という話ではなく、自分の型式が明記されているかどうかだけが基準になる。
材質と想定温度域
ディクセルの製品情報によると、KP タイプの材質は NAO(ノンアスベストオーガニック)で、使用温度域は0~400℃。NAO 系はアスベストを含まない有機系の材質で、街乗り中心の使用を想定した区分にあたる。材質や温度域を公表していない商品も多く、その場合はこの軸での比較ができない。公表されている範囲だけで判断する。
同梱品
パッド交換では鳴き止め用のシムと、背面や接触部に塗る専用グリスを使う。ディクセルは KP タイプに鳴き止めシムとグリース(PG101)が付属するとしており、商品によっては「専用グリス付」と明記されているものもある。同梱されていなければ別に用意することになるので、持ち込みで作業を頼む場合や自分で作業する場合は、価格だけでなく同梱品まで見て比べたい。
ダストと効き味
ディクセルは KP タイプについて、ロングライフ設計でハイト系軽自動車の重量化にも対応した制動力を提供し、ダスト低減を実現するとしている。これはメーカーが公表する設計意図であって、実際にどれだけダストが減るかは走り方や比較対象で変わる。数値で断定できる軸ではないので、参考の位置づけで見ておく。
販売中のフロントブレーキパッド4製品
ディクセル KP 381114(LA150S/LA160S)
ディクセルの製品情報によると、KP タイプは2000年以降に発売された軽自動車の累積台数の約99%をカバーする設定の軽自動車向けパッドで、ダイナモメーター試験結果として最大μ値0.44、平均μ値0.33、最小μ値0.28が公表されている。同社が公表するフロント用の参考価格は税込3,740円〜4,840円。
品番の 381114 は、販売店各社の適合表示で6代目ムーヴ LA150S/LA160S の2014年12月以降モデルのフロント用として案内されており、NA 車とターボ車の双方に対応するとの表示がある。この4製品のなかで材質・温度域・摩擦係数まで公表されているのはこれだけで、仕様を見て納得してから買いたい人はここが起点になる。品番の一致だけを適合の根拠にはできない点は後述する。
DIXCEL ディクセル ブレーキパッド KPタイプ フロント グリース付き ムーヴ LA150S 381114
エムズ部品 B135(LA150S/LA160S)
商品名で「ムーヴ LA150S LA160S 平成26年11月~ 用」と、適合を型式と時期の両方で示している。6代目だけに的を絞った売り方なので、車検証の型式が LA150S か LA160S なら読み取りに迷いが出にくい。一方で材質や使用温度域は商品側で公表されておらず、材質を基準に選びたい場合はこの軸での比較ができない。実売価格は4製品のなかでは低い側にある。
エムズ部品 フロントブレーキパッド ムーヴ LA150S LA160S 平成26年11月〜 用 B135
Pa sports HNL-625(LA150S/LA160S)
同じく LA150S/LA160S 用で、専用グリスが付属すると明記されている。グリスを別に買わずに済むぶん、部品を持ち込んで作業を頼む段取りとは相性が良い。商品名にあるロングライフという表現がどの程度の寿命差を指すのかはメーカーの数値公表がないので、寿命を根拠に選ぶ材料にはしない。6代目乗りで同梱品ごと1回で揃えたいならこれ、という選び方になる。
Pa sports ロングライフパッド フロントブレーキパッド ムーヴ LA150S LA160S 専用グリス付
エムズ部品 B1(L175S/L185S/LA100S/LA110S ほか)
左右4枚セットで、商品名に L150S・L160S・L175S・L185S・LA100S・LA110S と複数世代の型式を並べている。4代目・5代目に乗っていて世代専用品が見つからない場合の受け皿がここだ。ただし列挙型なので、自分の型式が並びのなかに実際にあるかを1文字ずつ突き合わせる必要がある。LA150S のように列挙に無い型式には使えない。
エムズ部品 フロントブレーキパッド左右4枚セット ムーヴ L175S L185S LA100S LA110S 他 B1
買う前の適合確認の手順
型式が同じでも品番が分かれることがある。販売店の注意書きでは、同一の型式でもグレード・装備・年式等によって適合が異なる場合があるとされており、ムーヴならカスタム系とスタンダード系、NA とターボ、前期と後期といった違いが該当しうる。商品名に自分の型式が書かれているだけでは確証にならない。
手順はこうなる。まず車検証を用意し、「型式」欄(5BA-LA150S のような表記)と「初度登録年月」を控える。次に商品ページの適合表を開いて、控えた型式が載っているかを見る。型式が一致したら、適合表の年式レンジに自分の初度登録年月が入っているかを確認する。ここまでで判断がつかない、あるいはグレードや駆動方式についての注記がある場合は、購入前に販売店へ問い合わせる。販売店側は車台番号・類別区分・形式指定の情報とあわせた問い合わせを求めているので、車検証を手元に置いて連絡する。
この確認を飛ばすと、届いてから合わないと分かるか、作業当日に取り付けできず作業が止まる。足回りの部品を選ぶときは同じ手順になるので、他の部品でも流用が利く。
自分で替えるか、工場に頼むか
法令上どう位置づけられるか
京都府自動車整備振興会が示す道路運送車両法施行規則の条文では、分解整備の対象として、制動装置のマスタ・シリンダ、バルブ類、ホース、パイプ、倍力装置、ブレーキ・チャンバ、ブレーキ・ドラム若しくはディスク・ブレーキのキャリパを取り外して行う整備が挙げられており、同ページの図版説明ではブレーキキャリパの取り外しを伴うブレーキパッドが含まれると明記されている。国土交通省の特定整備事業の説明では、この分解整備の範囲を拡大した制度として特定整備が位置づけられており、業として行うには地方運輸局長の認証を受けた工場である必要がある。
一方でグーネットの整備解説は、道路運送車両法第四十七条により車の所有者は必要に応じて点検・整備をしなければならないとされていることを挙げ、所有者であればブレーキパッドの交換を自分で行うことが可能だとしている。ただし同じ解説は、自分で交換して問題ないのは自動車整備士並みに専門知識を持ち、車のメンテナンスに慣れている場合のみとも明記している。可能であることと、勧められることは別だ。
実作業で要求されること
実作業の中身も軽くない。グーネットの解説は、新しいパッドを入れる前に専用工具でキャリパのピストンを引き込むこと、ブレーキフルードの補充とエア抜きを行うこと、交換後に試運転して動作を確認することを挙げている。ピストンを戻すとリザーバータンクの液面が上がるため管理が要り、エア抜きを怠ればペダルの効きに影響する。工具と手順が揃わないなら手を出す場所ではない。
費用の目安と持ち込み
費用の目安として、オートバックスは軽自動車の部品代をフロントとリアそれぞれ1セットで税込7,700円~、工賃を税込5,500円~と案内している。ムーヴは後輪がドラムなのでフロント1セット分が対象だ。金額は店舗・時期・車両状態で変わるため、実際は見積りで確認する。部品を自分で買って作業だけ頼む持ち込みは、受け付けの可否と工賃の扱いが店舗ごとに違うので、部品を注文する前に問い合わせておきたい。
パッドと一緒に見ておく箇所
パッド交換ではホイールを外してキャリパ周りに手を入れる。同じ機会に見ておくと二度手間を避けられるのが、ディスクローターの摩耗や段付き、後輪ドラム内のブレーキシューの残量、ブレーキフルードの状態だ。ディクセルはパッドの KP タイプとローターの KD タイプを組み合わせたセットも設定しており、パッドとローターを同時に替える選択肢もある。どこまで手を入れるかは実際の摩耗状態を見てからの判断になるので、点検のときに整備士へ状態を聞く。
タイヤも同じタイミングで見られる。カタログ諸元では純正タイヤサイズが4代目 L175S で145/80R13 75S、5代目 LA100S と6代目 LA150S で155/65R14 75S、7代目 LA860S で155/65R14 と記載されている(前後共通、グレードにより異なる場合がある)。ホイールを外している間に残り溝と製造年を見ておくと、次の整備の予定が立てやすい。
よくある質問
ムーヴのリア用ブレーキパッドはどこで買えますか
ムーヴ用のリア用ブレーキパッドという部品は無い。カタログ諸元では4代目 L175S から現行7代目まで後輪がドラム式で記載されており、後輪の摩擦材はブレーキシューになる。通販でリア用として出てくる商品があれば車種違いを疑ったほうがいい。パッドとして買うのはフロント1セットだけだ。
ブレーキから音が出ていますが、すぐ交換が必要ですか
摩耗警告用の金属プレートがディスクに当たって鳴っているなら、摩耗はかなり進んだ段階にある。ただし湿気や錆による一時的な鳴きもあるので、音だけで摩耗と決めることはできない。走行を続けず、残厚を見てもらう前提で点検に出すのが順当だ。
ブレーキパッドの交換は自分でやってもいいのですか
グーネットの整備解説では、道路運送車両法第四十七条を根拠に所有者が自分の車のパッドを交換することは可能としつつ、それが問題ないのは整備士並みの専門知識があり整備に慣れている場合のみとされている。キャリパの取り外しを伴う作業は分解整備の範囲に入り、業として行うには認証工場が必要になる。ピストン戻しやフルードのエア抜きまで含めて手順と工具が揃わないなら、工場に頼む。
交換費用はどのくらいかかりますか
オートバックスは軽自動車の目安として部品代1セット税込7,700円~、工賃税込5,500円~を案内している。ムーヴはフロント1セット分が対象になる。ただし店舗・時期・車両状態で変わるため、金額は見積りで確認する。部品を自分で用意して持ち込む場合は、受け付けの可否も先に聞いておく。
新型ムーヴ(LA850S)のパッドは旧型と共通ですか
ここで挙げた4製品はいずれも LA110S 以前か LA150S/LA160S 向けの案内で、7代目 LA850S/LA860S に適合するものは含まれない。さらに LA850S/LA860S はムーヴキャンバスでも使われる型式なので、型式だけで検索するとキャンバス用が混ざる。7代目は流通する社外品がまだ限られるため、ディーラーや整備工場に相談する方が早い。
まとめ
まず車検証で型式と初度登録年月を確認する。ここが決まらないと候補が絞れない。
そのうえで、後輪はドラムなので買うのはフロント1セット。型式が LA150S/LA160S ならディクセル KP 381114、エムズ部品 B135、Pa sports HNL-625 の3つが候補で、仕様の公表を重視するならディクセル、同梱品まで一度に揃えたいなら Pa sports、価格を抑えたいならエムズ部品という並びになる。L175S/L185S/LA100S/LA110S ならエムズ部品 B1 の列挙に自分の型式があるかを見る。
決めたら適合表と車検証を突き合わせ、注記があれば買う前に販売店へ聞く。交換の時期は残厚と音で判断し、作業は認証工場へ持ち込むか、専門知識と工具が揃っているなら自分で。この順番で進めれば、部品が届いてから慌てることはない。
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