荷物を積んで停まる回数の多いアトレーは、フロントブレーキの消耗が距離のわりに早い。点検で前のパッドが薄いと言われて部品を探し始めると、最初にぶつかるのは製品の優劣ではなく適合のほうだ。アトレーはリアがドラム式なのでパッドを使うのはフロントだけで、そのフロントも年式によって品番が分かれる。買うべき1品を決める作業は、実質的に自分の車がどの年式帯に入るかを確定させる作業になる。
アトレーのブレーキパッド早見表(年式帯別の品番)
ディクセルが公開している適合表と、曙ブレーキ工業が公開している適用表を突き合わせると、フロントパッドの区分は次のようになる。同じ型式のまま純正品番そのものが変わるので、型式だけでは部品は決まらない。
| 年式 | 型式 | 純正品番 | ディクセル品番 | 曙品番 |
|---|---|---|---|---|
| 2007年8月〜2014年5月 | S321G/S331G | 04465-B5051 | 381076 | AN-609WK(曙の表では2008年11月〜/車体番号 S321G 0018124から・S331G 0007232から) |
| 2014年5月〜2017年11月 | S321G/S331G | 04491-B1056 | 381090 | AN-683WK |
| 2017年11月〜2021年12月 | S321G/S331G | 04491-B2160 | 381114 | AN-806WK |
| 2021年12月〜 | S700V/S710V/S700W/S710W | 04465-B5091 | 381116 | AN-820K |
ディクセルの適合表は同じ行にディスクローターの品番も併記していて、2021年12月以降の S700V/S710V/S700W/S710W はローターの純正品番が 43512-B5050、2017年11月〜2021年12月の S321G/S331G は 43512-B2112 と記載されている。パッドとローターのセット品番も載っているので、ローターの段付きが気になっているなら同じ表で一緒に確認しておくと二度手間にならない。
2021年12月でアトレーとアトレーワゴンは入れ替わった
ダイハツの公式モデルヒストリーには、2021年12月にハイゼット カーゴのプラットフォームが一新され、それに伴って軽乗用車だったアトレーワゴンの後継として4ナンバー(商用車)化された新型アトレーが登場した、と記載されている。車名がアトレーワゴンからアトレーに変わり、区分も軽乗用から軽貨物に変わったのが2021年12月で、部品の分かれ目もここに来る。
現行アトレーの型式はダイハツの公式カタログ情報で 3BD-S700V と 3BD-S710V、デッキバンが 3BD-S700W と 3BD-S710W。グレードは RS、X、アトレーデッキバンが設定されている。RS の車両重量は970kg、乗車定員4名、ホイールベース2450mm、タイヤは前後とも145/80R12 80/78N LT で、駆動方式は FR、エンジンは KF 型、CVT という組み合わせだ。
部品メーカーの適合表がハイゼットとアトレーを1つの表にまとめているのも、この成り立ちが理由になっている。曙の表の見出しは「ハイゼット/アトレーワゴン」で、同じ年式帯には同じ社外品番が割り当てられている。
パッドを使うのはフロントだけ リアはドラム式
ダイハツが公開しているアトレーの主要諸元表を見ると、制動装置の欄は前が「ディスク」、後が「リーディング・トレーリング」となっている。リーディング・トレーリングはドラム式の内部構造を指す呼び方で、摩擦材はパッドではなくブレーキシュー。つまりアトレー用のリアブレーキパッドという部品は存在しない。
前後セットで買おうとしてパッドを2組手配しても、リア側は取り付けられない。部品名も品番体系も別なので、リアの消耗が気になるならブレーキシューを探すことになる。
なお諸元表の表記は「ディスク」であって「ベンチレーテッドディスク」ではない。フロントローターの構造まではこの表からは読み取れないので、ここは断定しないでおく。走行中の異音がブレーキ由来なのか別の場所なのか切り分けたい場合は、鳴きの出方から見ていくほうが早い。
同じS321Gで品番が3通りに分かれる理由
先代アトレーワゴンでつまずくのはここだ。S321G と S331G は型式が同じまま、年式と車体番号でフロントパッドが3通りに分かれる。
曙の適用表は車体番号で区切っている
曙ブレーキ工業の適用表は、S321G を車体番号0018124から(2008年11月〜2014年5月)が AN-609WK、0059438から(2014年5月〜2017年11月)が AN-683WK、0069366から(2017年11月〜)が AN-806WK と区切っている。S331G も同じ考え方で、0007232から が AN-609WK、0025892から が AN-683WK、0031836から が AN-806WK。それ以前の車体番号(S321G は0018123まで、S331G は0007231まで)は AN-725WK または AN-609WK と併記されている。
2社の区切りが一致していることの意味
境目の年月は2014年5月と2017年11月。この2つの区切りが、ディクセルの適合表と曙の適用表の双方で一致している。別々の会社が独立に作った資料で同じ日付が出てくるなら、その日付を判定の基準にしてよい確からしさは高い。
車検証で控える3項目
やることは単純で、車検証から型式(S321G などの記号)、初度登録年月、車台番号の3つを控える。この3つがそろえば年式帯が確定し、上の早見表の行が1つに決まる。品番を確定させてから商品を探す順序にすると、型式だけを頼りに選ぶより取り違えが減る。純正品番が分かれば、商品名に純正品番を併記している出品との照合もできる。
適合の次に比べる4つの基準
1. 適合
型式、初度登録年月、車体番号の3点がそろって初めて品番が確定する。アトレーは同じ型式のまま品番が変わる年式帯があるので、ここを飛ばすと以下の基準を比べる意味がなくなる。順番を入れ替えられない基準はこれだけで、残りは好みと使い方で決めていい。
2. 材質と想定する使い方
メーカーが公表している材質と適正温度、想定ステージを見る。たとえばディクセルの KPタイプは軽自動車向けで、材質は NAO(ノンアスベストオーガニック)、適正温度は0〜400℃と製品情報に書かれている。適合車種は2000年以降に発売された軽自動車の累積台数の約99%をカバーし、車重が重いハイト系の軽にも十分な制動力、自然な効き、ダスト低減を狙った設計、対象ステージにはストリートやワインディングが含まれる、という説明だ。アトレーは荷物を積む前提の車だから、公表されている想定用途と自分の積み方を突き合わせる価値はある。
3. 付属品
鳴き止めシムが最初から付いているか、パッドグリースが同梱されるかで、別途そろえる部材と手間が変わる。同じシリーズでも出品によって内容が違うことがあるので、商品ページの記載を見る。
4. 価格と入手性
ブレーキパッドは在庫の増減が早く、同じ品番でも出品によって状況が変わる。価格だけで決めず、必要な時期に手元に届くかまで含めて判断したい。
年式帯別に選ぶならこれ
早見表の4つの帯に、適合が確認できた商品を1つずつ割り当てる。価格はいずれも Amazon の実売を確認した時点の値で、変動する。
2021年12月〜(S700V/S710V/S700W/S710W)
現行アトレーはディクセル品番 381116 の帯。KPタイプなので鳴き止めシムが装着済みで、グリース(PG101)が付属する。確認時点の価格は¥3,700。
ディクセル KPタイプ フロントブレーキパッド 381116(アトレー S700V/S710V/S700W/S710W・2021年12月〜)
2017年11月〜2021年12月(S321G/S331G)
先代の最終帯で、純正品番 04491-B2160 に対応する381114。曙で言えば AN-806WK の帯にあたる。確認時点の価格は¥3,520。
ディクセル KPタイプ フロントブレーキパッド 381114(アトレーワゴン S321G/S331G・2017年11月〜2021年12月)
2014年5月〜2017年11月(S321G/S331G)
この帯だけは381090で、前後の帯の品番とは互換しない。曙の品番なら AN-683WK。商品名に年式(14/05〜17/11)が明記されているものを選ぶと照合しやすい。確認時点の価格は¥3,150。
ディクセル KPタイプ フロントブレーキパッド 381090(アトレーワゴン S321G/S331G・2014年5月〜2017年11月)
2008年11月〜2014年5月(S321G・車体番号0018124から)
この帯は曙の AN-609WK を車体番号で選ぶ形になる。商品名に車体番号の区切りが書かれているので、控えた車台番号と直接照合できるのが利点だ。確認時点の価格は¥3,390。
アケボノ AN-609WK フロントブレーキパッド(アトレーワゴン S321G・2008年11月〜2014年5月・車体番号0018124から)
交換時期をどう見きわめるか
JAF の解説によると、パッドの摩耗はホイールを外してブレーキキャリパーの点検用の窓から確認し、残量が2mm以下程度になったら交換するように定められている、そのまま使い続けると効きが悪くなって重大な事故につながる恐れがある、と説明されている。前輪はハンドルを切ると点検孔が見やすくなるので、タイヤを外す機会があるならそのとき一緒に覗いておくのが手っ取り早い。
音での判断もある。同じ解説では、パッドウェアインジケーターがブレーキディスクに直接接することで「キーキー」という音を出し、交換時期を知らせる仕組みが紹介されている。この音が出ているなら、目視の前にまず整備の予定を組む段階だと考えていい。
そして点検項目としての扱いだ。自動車点検基準の別表第六は、制動装置の点検箇所として「ブレーキ・ディスク及びパッド」を挙げ、1年ごとの欄に「ディスクとパッドとのすき間」と「パッドの摩耗」、2年ごとの欄に「ディスクの摩耗及び損傷」を定めている。タイヤやオイルの交換周期と並べて計画すると、ジャッキアップの回数をまとめられる。
点検・車検の周期と、作業の線引き
別表第六には注があり、(※1)印の点検は、検査証の交付を受けた日または当該点検を行った日以降の走行距離が1年当たり5千キロメートル以下の自動車については、前回行うべき時期に行わなかった場合を除き、行わないことができる、とされている。パッドの摩耗とディスクとパッドとのすき間はこの(※1)が付いた項目だ。点検に出していても、走行距離が少ない車ではパッドの残量が毎回見られているとは限らないということになる。
車検の周期も先代と現行で違う。国土交通省が示す自動車検査証の有効期間では、検査対象軽自動車のうち乗用は初回3年・2回目以降2年、貨物は初回2年・2回目以降2年。現行アトレーは4ナンバーの軽貨物なので初回から2年ごと、先代アトレーワゴンは軽乗用なので初回3年・以降2年に当たる。
自分で作業するかを決めるうえでは、道路運送車両法施行規則第三条も読んでおきたい。同条は特定整備を定義していて、その第五号には制動装置のマスタ・シリンダ、バルブ類、ホース、パイプ、倍力装置、ブレーキ・チャンバ、ブレーキ・ドラムもしくはディスク・ブレーキのキャリパを取り外して行う自動車の整備または改造、が挙げられている。条文が対象にしているのはキャリパーやドラムを取り外して行う整備で、個々の作業手順が該当するかどうかは手順の内容によるため、ここでは該当する・しないの判断はしない。迷うなら整備工場に持ち込むのが確実だし、費用の目安を先に知っておくと相談もしやすい。
買い間違いが起きやすい場面
リア用を探してしまうのが1つ目。前後セットという言葉に引きずられやすいが、アトレーのリアはドラム式でパッドが無い。
2つ目は、商品名にハイゼットとアトレーが併記されていて不安になる場面。ディクセルの適合表も曙の適用表も両車を1つの表で扱っているので、併記されていること自体は適合を否定する材料にならない。最終判断は型式・年式・車体番号で行う。
3つ目が型式だけ合っていて年式帯が違うケースで、これがいちばん多い。S321G 用と書かれた商品は3つの帯のどれかに属しているはずで、どの帯かは商品名だけでは分からないことがある。
4つ目は、複数の型式を長く羅列した汎用の出品。型式の一覧に自分の車が入っていても、年式区分や車体番号の区切りが書かれていなければ適合は確定していない。出品側から年式の記載が得られるまで、その商品は候補のまま置いておく。ホイールを外して作業する前提なら、ホイール側の条件も一度整理しておくと段取りが組みやすい。
よくある質問
アトレーのリア用ブレーキパッドはどこで買えますか
リア用パッドという部品自体が無い。主要諸元表の後輪はリーディング・トレーリング、つまりドラム式で、摩擦材はブレーキシューになる。リアの消耗が気になる場合はシューを探すことになる。
パッドは前後まとめて交換したほうがよいですか
アトレーの構成上、パッドの交換はフロントだけの話になる。リアはシューなので部品も作業も別に考える。
自分で交換してもよいのでしょうか
道路運送車両法施行規則第三条の特定整備の定義には、ディスク・ブレーキのキャリパを取り外して行う整備が挙げられている。手順の内容によって扱いが変わるため、ここで個別の判断はしない。制動に関わる部分なので、迷いがあるなら整備工場に依頼するほうがいい。
残量が少ないと車検に通りませんか
自動車点検基準の別表第六に「パッドの摩耗」が点検項目として定められているのは確かだが、実際の合否は検査と整備の現場で判断される。ここでは通る・通らないの線引きはできないので、残量が気になるなら事前に見てもらうのが早い。
ハイゼット用と書かれた商品でもアトレーに使えますか
年式帯によっては同じ社外品番が割り当てられていて、部品メーカーの表も両車を1つにまとめている。ただし商品名の車名だけで判断はできない。決め手になるのは型式と初度登録年月、そして車体番号だ。
まとめ
最初にやるのは実車の確認だ。ホイールを外してキャリパーの点検窓を覗き、パッドがどれくらい残っているか、外せる状況なら現物に打たれた品番を見る。ここで得られる情報がいちばん確実で、そのうえで車検証の型式・初度登録年月・車台番号を控えると、適合表の行が1つに決まる。
決まってしまえば選択肢は多くない。フロント専用であること、年式帯が2014年5月・2017年11月・2021年12月で切り替わること、この2つを押さえておけば、あとは材質と付属品と価格の比較に進める。
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