駐車場でハンドルを切ったときに前輪のあたりがパキパキ鳴る、冷えた朝にエンジンをかけるとカチカチと音がする、発進でブルブル震える。E70型の X5 で気になる音が出たら、まず音の種類と出る場面を分けて考えると、原因の候補がかなり絞れる。そのうえで、ハンドル・エンジン・タイヤ付近の音は自己判断で走り続けず、点検に出すのが基本だ。
場面別に見る X5 E70 の異音の候補と急ぎ度
BMW の技術通達に載る音と振動
米国の道路交通安全局(NHTSA)に届け出された BMW の技術通達(整備士向けに症状・原因・対処を知らせる案内。2009年式・2010年式 X5 の掲載)では、音や振動について次の通達が載っている。音の呼び方は、英語の原文(clicking・cracking・grinding・squeaking・ticking・rattling・shudder)を日本語の擬音に置き換えたものだ。
| 出る場面 | 音 | 通達の番号と内容 |
|---|---|---|
| 低速でハンドルを切ったとき | 前輪付近のカチカチ・パキパキ | 310112(車輪の軸受けとナックルの接触面の動き) |
| 曲がるとき | 前輪付近のカチカチ・ゴリゴリ | SI B31 01 08(前輪の外側の等速ジョイント) |
| ハンドルを回したとき | ステアリングコラムのキュッという鳴き | 320210 |
| 冷えた始動時など | エンジンのカチカチ・カラカラ | 110907(バルブ調整機構) |
| N55 エンジンの車 | エンジンルームのガラガラと出力の低下 | 121412(VANOS) |
| xDrive の車の発進時・加速時 | 駆動系の振動 | B270415 |
通達が自分の車に当たるかは車台番号で確かめる
通達の当てはまりには注意がいる。掲載は米国の年式ごとの一覧で、2010年式 X5 の一覧には後の世代の F15 と名指しする通達も載っている。一覧に載る通達が、すべての E70 に当てはまるわけではない。通達はエンジンや生産時期で対象が分かれ(121412 は N55 エンジン)、対象の生産時期と修理の手順は通達の本文にあって、確かめられていない。通達は「同じ症状のときに疑う所」の手がかりとして使い、自分の車が当たるか、どう直すかは、BMW の販売店に車台番号を伝えて確かめてもらう。
すぐ点検に出す音
急ぎ度の目安も押さえておく。JAF のロードサービスの Q&A では、ハンドルを回したときの異音、エンジン付近のガラガラ音・キュルキュル音、走行中のタイヤ付近の異音は、いずれも点検が必要な状態とされている(ハンドルの異音は走行が大変危険とされる)。エンジンのガラガラ音に出力の低下や警告灯が伴うときも、BMW の通達で部品の故障が原因とされる例がある症状なので、走り続けずに点検に出す。
走行中に気づいたら、安全な場所に止め、自分の安全を確かめてから、ロードサービスや整備工場に連絡して今の状況を伝える。
相談の前に確かめる車両情報(グレード・エンジン・変速機)
E70 の期間とグレード名の変わり目
ウィキペディアの BMW・X5 の項では、E70 は X5 の2代目で、見出しは「2代目(2007年 – 2013年)E70」(初代 E53 は 2000年 – 2007年、3代目 F15 は 2013年 – 2019年)。日本では2007年6月に「3.0si」と「4.8i」が発売され、2010年5月のマイナーチェンジで、3.0L 直列6気筒ターボと 4.4L V型8気筒ツインターボ、8速ATになり、グレード名が「xDrive35i」「xDrive50i」に変わった。日本では2013年11月から F15 型の発売が始まっている。
グレードごとのエンジンと変速機
同じ項の諸元表では、日本向けのグレードとエンジンは次のとおりだ。
| グレード | 年 | エンジン | 変速機 |
|---|---|---|---|
| 3.0si→xDrive30i | 2007〜2010年 | N52B30A 直列6気筒(2,996cc) | 6速AT |
| 4.8i→xDrive48i | 2007〜2010年 | N62B48A V型8気筒(4,799cc) | 6速AT |
| xDrive35i | 2010〜2013年 | N55B30A 直列6気筒ターボ(2,979cc) | 8速AT |
| xDrive50i | 2010〜2013年 | N63B44A V型8気筒ツインターボ(4,394cc) | 8速AT |
| xDrive35d | 2012〜2013年 | N57D30A 直列6気筒ディーゼルターボ(2,992cc) | 8AT(ガリバーの一覧) |
駆動方式とリアのサスペンションの仕様
中古車カタログ(ガリバー)のグレード一覧では、2012年1月発売の xDrive35d ブルーパフォーマンスが 8AT で、一覧に載るグレードの駆動方式はすべて FULL4WD(xDrive の四輪駆動)とされている。同じ一覧には、2010年5月以降の xDrive35i・xDrive50i と、2012年1月の xDrive35d ブルーパフォーマンスに、「セルフ・レベリング機能付リヤ・サスペンション装着車」が別のグレードとして載っている。同じ E70 でもリアのサスペンションの仕様が違う車があるので、相談のときは自分の車がこの装着車かも伝えたい。
ハンドルを切ると前輪付近から鳴る音
低速でハンドルを切るとカチカチ・パキパキ鳴る
米国で届け出された BMW の技術通達(2010年式 X5 の掲載)では、通達 310112(題「Clicking Noise from Front Axle」・改訂 B310112)として、駐車場での取り回しのような低速でハンドルを切ったとき、改訂版では停車中や駐車時にハンドルを切ったときも、前輪付近からカチカチ・パキパキという音が聞こえる症状が載っている。原因は、ホイールベアリング(車輪の軸受け)とスイベルベアリング(ナックル=車輪を支える部品)の接触面の間の動き、と要約されている。修理の手順は通達の本文にあり、確かめられていない。
曲がるときにカチカチ・ゴリゴリ鳴る
2009年式 X5 の掲載では、通達 SI B31 01 08(2009年9月・題「前輪の外側の CV ジョイントの交換」)に、曲がるときに前輪付近からカチカチ・ゴリゴリという音が出るという苦情が載っている。前輪の外側の等速ジョイント(ドライブシャフトのタイヤ側の継ぎ手)のブーツ(ゴムのカバー)が裂け、ジョイントがすでに傷んでいた、とされる。
JAF のロードサービスの Q&A では、走行中にタイヤ付近から出る異音は、タイヤに刺さった異物や走行関係の部品の傷みなど発生源が多岐にわたり、複数の原因が考えられるとされている。前輪まわりの音は、通達に近い症状があっても決め打ちせず、点検で発生源を特定してもらうのが筋だ。
ハンドルを回したときのキュッという鳴き
米国で届け出された BMW の技術通達(2010年式 X5 の掲載)では、通達 320210(題「Squeaking Noises from Steering Wheel While Turning.」)に、ハンドルを回したときにステアリングコラムからキュッという鳴きが出る症状が載っている。原因は、ステアリングコラムのゴムのブーツの位置が正しくないか、樹脂の軸受けのグリースが足りないこと。対処は BMW の販売店の診断の仕組み(ISTA)に組み込まれており、ステアリングの異音の点検手順に沿って調べるよう案内されている。
小さな鳴きでも軽く見ないほうがいい。JAF のロードサービスの Q&A では、ハンドルを回したときの異音はハンドル(ステアリング)機構に異常が起きている可能性があり、異常があるとハンドル操作ができなくなるおそれがあって、走行は大変危険とされている。ハンドル操作時の振動や、ハンドルが重くなる症状も同じ扱いだ。
エンジンからのカチカチ・ガラガラ・キュルキュル
冷えた始動時のカチカチ音
米国で届け出された BMW の技術通達(2009年式 X5 の掲載)では、通達 110907(題「Intermittent Hydraulic Valve Adjuster (HVA) Noise」)に、冷えたエンジンの始動時に、カムシャフトの油圧式のバルブ調整機構(HVA=油圧でバルブのすき間を保つ部品)からカチカチ・カラカラという音がときどき出ることがある、とある。短い距離の走行を繰り返すと出やすく、暖まった後も長く続く場合もある。改良した部品は2008年10月1日から生産に順次取り入れられた。どのエンジンが対象か、原因と修理の手順は掲載に無く、確かめられていない。
ガラガラ音と出力の低下・警告灯
2010年式 X5 の掲載では、通達 121412(題「N55 Engine: Various Faults Stored in DME Related to VANOS and Camshaft Position.」)に、N55 エンジンでエンジンルームからガラガラという音がし、出力が落ち、エンジンの警告灯(Service Engine Soon)が点く症状が載っている。原因は、吸気・排気の片方または両方の VANOS(バルブの開閉の時期を変える機構)のギアの故障で、取り付けボルトが緩んだり折れたりしている場合もある。対象の車体の型式に E70 が含まれ、E70 で N55 エンジンを積むのは、ウィキペディアの諸元表では 2010〜2013年の xDrive35i(N55B30A)だ。
N55 以外のエンジンでも、ガラガラ音は放っておけない。JAF のロードサービスの Q&A では、エンジン付近のガラガラ音はエンジンオイルの不足や潤滑不良が起きている可能性があるとされ、状況により潤滑不良や冷却不良でエンジンが焼き付き(金属同士の摩擦部分が熱を持って溶け、固着すること)を起こし、かからなくなることもあるという。オイルの量と交換の時期は次の記事で確かめておきたい。
キュルキュル音
JAF の同じ Q&A では、エンジン付近のキュルキュル音はベルトが滑っている可能性があるとされ、ガラガラ音と同じく点検が必要な状態とされている。
発進時・加速時のブルブルという振動
米国で届け出された BMW の技術通達(2010年式 X5 の掲載)では、通達 B270415(題「Shudder from the Driveline on Vehicles with xDrive.」)に、xDrive(四輪駆動)の車で、止まった状態からの発進時や、高速道路の速さでの加速時に、駆動系からジャダー(ブルブルという振動)が出る症状が載っている。
原因の候補は、エンジン・ホイールとタイヤ・足回りの部品にかかわる複数の原因のほか、xDrive のトランスファー(前後の車輪に力を配る装置)のクラッチ板の内部の摩耗が挙げられている。修理の手順は通達の本文にあり、確かめられていない。候補がこれだけ広いので、振動だけで部品を決めず、点検に出して切り分けてもらうのがいい。
ブレーキまわりの音とパッドの減りの知らせ方
JAF のクルマ何でも質問箱では、ブレーキパッドの残量はホイールを外し、ブレーキキャリパー(パッドをディスクに押しつける装置)の点検用の窓から確かめ、残量が 2mm 以下程度になったら交換するよう定められているとされる。減ったまま使い続けるとブレーキの効きが悪くなり、重大な事故につながるおそれがある。
キーキー音より先にメーターの表示を見る
JAF の同じ回答では、ほとんどの国産車には「パッドウェアインジケーター」が付いていて、パッドが減るとディスクに触れて「キーキー」と音を出して交換時期を知らせると説明されている。これは国産車についての説明で、X5 E70 が同じように音で知らせる仕組みかは、この出典からは分からない。
米国の BMW 部品店(BimmerWorld)の適合の頁では、前輪用のパッド摩耗センサー(BMW 品番 34356789501)の適合に E70 X5 の 3.0si・4.8i・xDrive35d の行を載せ、メーターのブレーキライニングの表示が点いたらパッドが薄くなった合図で、パッドはできるだけ早く替え、表示が点いた後はセンサーも交換が要ると説明している。多くの車では、新しいセンサーを付けてイグニッションを2段目(エンジンはかけない)にして約1分待つと表示が消えるとあり、消えない場合は整備書を見るよう案内されている。
この頁は、題が「2007-2010」、適合の行が「E70 X5 (07-13)」と年の書き方がそろっておらず、確かめられたのは 3.0si・4.8i・xDrive35d の行だけだ。ほかのグレード・年式で同じ品番・同じ仕組みかは確かめられていない。キーキーという音をそのままパッドの交換の合図と決めず、パッドの残量を含めて点検を受けたい。
リアのブレーキパッドを替えるとき
欧州の部品通販店(Mecatechnic)の適合の頁では、MEYLE のリアブレーキパッドが、OE 参照番号 34216776937 の対応車として BMW X5 E70 の 3.0si(6気筒・2006年5月〜2010年3月の生産)と xDrive35i(6気筒・N55 ターボ・2009年4月〜2013年6月の生産)の行を載せている。これは欧州向けの車の一覧なので、日本仕様の自分の車が同じ品番かは、車に付いている純正品番か販売店で確かめる。
交換用の候補として挙げられるのが、HAPAD の「リア ブレーキパッド 左右セット」だ。販売ページの商品説明では、BMW 用の互換品(純正品ではない)で、X5 の適合として「E70 X5 3.0si」を挙げ、純正品番 34216776937 の取付車両に限るとしている。グレードや型式の記載があっても年式・仕様などで合わない場合があるので、実車に付いている純正品番を確かめてから注文するよう書かれている。X5 E70 のほかのグレード(xDrive30i・xDrive35i・4.8i・xDrive48i・xDrive50i・xDrive35d)に合うかは、商品名と商品説明の箇条書きのどちらにも記載が無い。パッドの摩耗センサーが付くかも、同じく記載が無い。
HAPAD リア ブレーキパッド 左右セット(BMW 用の互換品・販売ページの適合は X5 E70 3.0si・純正品番 34216776937 の車)
整備工場・販売店に相談する前に控えておくこと
相談の前に、音の種類(カチカチ・パキパキ・ゴリゴリ・キュッ・ガラガラ・キュルキュル・ブルブルなど)と、音が出る条件を分けて控えておく。条件は次のように分けると、通達の症状と照らしやすく、整備工場にも伝えやすい。
- エンジンをかけた直後か、暖まった後か
- 短い距離の走行が続いたか
- 低速でハンドルを切ったときか、停車中に切ったときか、曲がるときか
- 発進時か、加速時か、ブレーキを踏んだときか
- メーターに表示や警告灯が出ているか
相談では、症状(音の種類・出る場所・出る条件)に加えて、グレードとエンジン、6速ATか8速ATか、セルフ・レベリング機能付リヤ・サスペンションの装着車かを伝え、同じ症状の BMW の技術通達に当たるかを車台番号で調べてもらう。
リコールの確かめ方
国土交通省のリコール情報の案内では、リコールの対象になると、ハガキなどで自動車メーカー等から直接通知される。通知が無いが不安があるときは、メーカーか購入した販売店に相談する。
国土交通省の「リコール情報検索」は対象を車台番号の幅で示しているため、生産工場やグレードの違いなどで対象にならない車も含まれる場合がある。個別の車両が対象かは、メーカーに問い合わせて確かめる。なお、リコールは国への届け出による回収・無償修理で、ここまで挙げた整備士向けの技術通達とは別の物だ。
よくある質問
駐車場でハンドルを切るとパキパキ鳴るのは故障?
米国で届け出された BMW の技術通達(2009年式・2010年式 X5 の掲載)には、低速や停車中にハンドルを切ったときに前輪付近がカチカチ・パキパキ鳴る通達 310112 があり、車輪の軸受けとナックルの接触面の動きが原因と要約されている。自分の車がこの通達に当たるかは、販売店に車台番号で確かめてもらう。
冷えているときだけエンジンがカチカチ鳴るのは?
2009年式 X5 の掲載にある通達 110907 では、冷えた始動時にバルブ調整機構(HVA)からカチカチ・カラカラという音がときどき出ることがあるとされる。どのエンジンが対象かは掲載に無く、改良品の取り入れも「順次」なので、年式だけで当否を決めず点検で確かめる。
ブレーキがキーキー鳴ったらパッドの交換の合図?
音で知らせる仕組みは JAF がほとんどの国産車について説明しているもので、E70 は部品店の頁(3.0si・4.8i・xDrive35d の行)ではメーターの表示で知らせる仕組みとされている。音だけで交換の合図と決めず、パッドの残量を含めて点検を受ける。
通達の症状に自分の車が当たるかはどう調べる?
BMW の販売店に車台番号を伝えて調べてもらう。通達はエンジンや生産時期で対象が分かれ、米国の年式ごとの一覧に載っていても E70 のすべてに当てはまるわけではない。
まとめ
まず車検証で型式と初度登録年月を確かめ、グレードとエンジンを押さえておく。そのうえで、異音は音の種類と出る場面で原因の候補を絞り、BMW の技術通達に近い症状があるかを手がかりにする。ハンドル・エンジン・タイヤ付近の音は JAF も点検が必要としている音なので、走り続けずに点検に出す。通達に当たるかは車台番号で販売店に、リコールの対象かはメーカーに確かめるのが近道だ。
X5 E70 のほかの整備や部品の記事も参考にしてほしい。
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