アトレーのリフトアップで見落としやすいのは、キットの「車検対応」の表示だけを見て、大径タイヤへの交換も同時に済ませてしまうことだ。手続きが要るかどうかは、キットの上げ幅だけでなく、タイヤも含めて装着した後の全高を車検証の値と比べて判断する。現行アトレーで選べるのは+40mmのキットで、買い方はキット単体とラテラルロッド付きセットの2通り。まず2つを比べ、そのあとで車検との関係と取付後の作業を順に押さえる。
アトレーのリフトアップは+40mmキットの2択
現行アトレー(RS・XはS700V/S710V、デッキバンはS700W/S710W)向けに購入できるのは、WANGAN357の+40mmキットを単体で買うか、調整式ラテラルロッドとのセットで買うかの2通りだ。+40mmは、国土交通省の通達で車検証の記載事項の変更に当たらないとされる「高さ±4cm」の範囲の上限にちょうど重なる上げ幅になっている。
| 比べる項目 | キット単体 | ラテラルロッド付きセット |
|---|---|---|
| 品番 | 357A008 | 357A008-026 |
| 上げ幅 | +40mm | 最大40mm |
| 適合型式 | S700V/S710V/S700W/S710W | S700V/S710V/S700W/S710W |
| セット内容 | スペーサー類・ブラケット・ボルト類 | キット+調整式ラテラルロッド |
| 取付工賃・作業時間の目安(メーカー掲載) | 26,400円(税込)・180分 | キット分は左と同じ。ロッド単品は4,400円(税込)・30分 |
| Amazon実売価格(2026年10月2日確認時点) | ¥39,808 | ¥55,638 |
どちらも上げ幅は同じで、違いはラテラルロッドが付くかどうか。価格は変動するので、購入時に販売ページで確かめてほしい。
WANGAN357 リフトアップキット +40mm(S700V/S710V/S700W/S710W・357A008)
WANGAN357 リフトアップキット+ラテラルロッドセット +40mm(357A008-026)
純正アトレーの車高まわりの数値と型式
現行アトレー(S700系)は2021年12月20日に発売された。ダイハツがハイゼット カーゴとともに17年ぶりにフルモデルチェンジしたモデルで、このときアトレーにもデッキバンが加わった。上げる前の基準になる数値は、ダイハツ公式の主要諸元表で次のとおり。
| 項目 | 現行アトレーの値 |
|---|---|
| 型式(2WD) | RS・X:3BD-S700V/デッキバン:3BD-S700W |
| 型式(4WD) | RS・X:3BD-S710V/デッキバン:3BD-S710W |
| 全長×全幅×全高 | 3,395mm×1,475mm×1,890mm |
| 最低地上高 | 160mm |
| ホイールベース | 2,450mm |
| サスペンション(前) | マクファーソン・ストラット式コイルスプリング |
| サスペンション(後) | トレーリングリンク車軸式コイルスプリング |
| 純正タイヤ | 145/80R12 80/78N LT(前後とも) |
| 駆動方式 | 2WD:FR/4WD:電子制御式パートタイム4WD |
寸法と最低地上高は、RS・X・デッキバン、2WD・4WDのすべてで同じ値だ。後ろのサスペンションは左右の車輪を1本の車軸でつなぐ車軸式で、後で触れるラテラルロッドはこの車軸(アクスル)の左右位置に関わる部品になる。
型式の確かめ方
キットの適合は型式で確かめる。WANGAN357の車種別ページでは、次の2つの確かめ方を案内している。
- 助手席ドアを開けた柱(Bピラー)のプレートで、「型式 / MODEL」欄の刻印(S700Vなど)を見る
- 車検証の中央上部の「型式」欄を見る。「3BD-S700V」のように書かれ、ハイフン以降が型式
車検・構造変更の境界は部品の区分と高さ±4cmで決まる
指定部品と指定外部品
国土交通省の通達「自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて」は、取付方法を3つに分けている。
- 簡易な取付方法:手で容易に着脱できる方法
- 固定的取付方法:ボルト・ナット留めなど、ほかの2つ以外の方法
- 恒久的取付方法:溶接またはリベットで装着する方法
部品は、ユーザーの好みで追加・変更されることが多く、安全確保や公害防止の上で支障が少ないとして別に定められた「指定部品」と、それ以外の「指定外部品」に分かれる。緩衝装置関係の指定部品は、コイル・スプリング、ショック・アブソーバ、ストラット、ストラット・タワー・バーの4品目だ(ショック・アブソーバとストラットは、走行中に運転者席などから車両姿勢を容易かつ急激に変えられるものであってはならない、という注付き)。走行装置関係ではタイヤとホイールも指定部品に入る。
車高を上げるスペーサー(ブロック)やラテラルロッドは、この一覧に挙がっていない。一覧にない部品は指定外部品として扱われる。
高さ±4cmの範囲
通達では、次のどれかに当たれば車検証の記載事項(長さ・幅・高さ)の変更に該当しない。
- 簡易な取付方法で装着した場合
- 指定部品を固定的取付方法で装着した場合
- 指定部品を恒久的取付方法で、または指定外部品を固定的・恒久的取付方法で装着し、車検証の値に対して長さ±3cm・幅±2cm・高さ±4cmの範囲に収まる場合
車両重量も同じ考え方で、検査対象軽自動車は±50kgの範囲だ。スペーサー式のキットをボルト留めで付けるなら3に当たり、全高の変化が車検証の値から±4cm以内かどうかが分かれ目になる。一方、コイル・スプリングは指定部品なので、車高を上げるスプリング(アップスプリング)へボルト留めで交換する場合は2に当たり、±4cmの範囲表とは別の扱いになる。
車検証の全高が公式諸元どおり1,890mmなら、範囲の上限は1,930mm。+40mm上げるとちょうどこの値に届く。
どの場合でも、部品を装着した状態で保安基準の各条項に適合している必要がある。通達は、装着によって保安基準に適合しなくなれば道路運送車両法第54条第1項の整備命令の対象になりうるとしており、手続きが要らない範囲でも、基準に合わせるのは使用者の責任だ。
軽自動車の高さ上限
道路運送車両法施行規則の別表第一で、軽自動車(二輪以外)の大きさは長さ3.40m以下・幅1.48m以下・高さ2.00m以下と定められている。1,930mmから高さの上限2,000mmまでは、さらに70mmの差がある。ただし全高はタイヤやキャリアなどほかの装着品でも変わるので、取付後は実測して車検証の値と比べる。
リフトアップの方式と比べる軸
上げ方は3通り
- スペーサー方式:純正の足回りに部品を足して上げる。指定外部品なので、ボルト留めなら全高の±4cmが手続きの分かれ目
- アップスプリング方式:コイル・スプリングを交換して上げる。指定部品の固定的取付に当たる
- 商品名に「4インチ」とあるキット:WANGAN357のS700系向け一覧に、2WD用(357A036)と4WD用(357A037-036)が載っている
+40mmを超える上げ幅を狙う場合、指定外部品をボルト留めした状態で全高の変化が±4cmを超えると、記載事項の変更に当たる。4インチのキットは部品構成や上げ幅の実寸、手続きの要否までは確認できていない。検討するなら、購入前に部品構成と取付後の全高の見込みを販売店・取付店に確かめてほしい。
比べる6つの軸
- 上げ幅:+40mm以内か、それを超えるか(手続きの要否に直結)
- 部品の区分:スペーサーなどの指定外部品か、コイル・スプリングなどの指定部品か
- セット内容:ラテラルロッドが含まれるか
- 適合型式:S700V/S710V、デッキバンのS700W/S710W、2WD・4WD
- 取付工賃と作業時間の目安
- 取付後に必要な調整:サイドスリップ検査とホイールアライメント調整
今回の2点は上げ幅・部品の区分・適合型式が同じで、差が出るのはセット内容とそれに伴う工賃だ。
WANGAN357 リフトアップキット +40mm(357A008)
WANGAN357公式ストアの商品ページでは、このキットを車高を上げるためのキットとし、山道やあぜ道などの悪路でバンパーや車体の干渉を避けられること、外径の大きなオフロードタイヤを装着するのにも必要なアイテムであることを挙げている。商品仕様の適合車種はアトレー/ハイゼットカーゴ、型式はS700W/S710W/S700V/S710Vで、車検の欄は「対応」。購入時にS700系かS300系かを選ぶ形式なので、注文時はS700系を選ぶ。
メーカーの商品画像に写っている構成品は次のとおりで、スプリングやショックアブソーバー本体は入っていない。
- 上部にスタッドボルトの付いた円筒形のスペーサー:2個
- 受け皿形の円筒形スペーサー:2個
- 筒状のブラケット:2個
- ボルト・ナット類
純正の足回りに部品を足すスペーサー方式で、部品の区分は指定外部品になる。Amazonの販売ページの商品説明では、2WD/4WD対応・約+40mm・日本製とされ、純正ショックアブソーバーやスプリングのストロークを考慮した設計としつつ、過酷なオフロード走行や無理なジャンプなどは控えるよう注記されている。取付工賃の目安は26,400円(税込)、作業時間の目安は180分(公式ストアの掲載値で、実際の工賃は依頼する店で異なる)。
WANGAN357 リフトアップキット +40mm(S700V/S710V/S700W/S710W・357A008)
ラテラルロッド付きセットと後から足す選び方
Amazonの販売ページの商品説明では、セット(357A008-026)は保安基準に適合し構造変更が不要な最大40mmの車高アップで、純正のショックとスプリングを活かす設計とされている。入っている調整式ラテラルロッドは、リフトアップしたときのアクスルのずれを補正する部品という説明だ。この「構造変更が不要」は、装着後の全高が±4cmの範囲に収まっていることが前提になる。
ラテラルロッドはWANGAN357が単品(357A026)でも扱っている。公式ストアの仕様は次のとおり。
- 適合:ハイゼットカーゴ / アトレー、S700V S710V / S700W S710W、車検「対応」
- 構造:ターンバックルの2ボルトで長さを調整する方式
- 両端:片側ブッシュ式・片側ピロ式
- 付属品:商品画像に写っているもので全部(必要に応じて別途部品を用意する場合がある)
- 取付工賃・作業時間の目安:4,400円(税込)・30分
取付と同時にアクスルの左右位置の補正まで済ませたいならセット、まずキットだけ付けたいならキット単体を選び、必要になったらロッドを後から足せばいい。迷うならセットを選ぶほうが話は早い。補正までを1回の取付作業で終えられるからだ。
WANGAN357 リフトアップキット+ラテラルロッドセット +40mm(357A008-026)
取付の流れと取付後に必要な作業
手順1:型式を確かめて注文する
先に挙げた確かめ方で型式を見て、357A008ならS700系を指定して注文する。
手順2:ショップで取り付ける
作業時間の目安はキットで180分、ロッドを足すならさらに30分。工賃は店ごとに違うので、予約時に見積もりを取る。ほかのカスタムも含めた費用の考え方は
が参考になる。
手順3:サイドスリップ検査とホイールアライメント調整
Amazonの販売ページの注記では、装着後はアライメントがずれるので、専門ショップや整備工場などで必ずサイドスリップ検査とホイールアライメント調整を行うよう求めている。取付とアライメント調整は同じ日に予約しておくと、ずれたまま乗る期間を作らずに済む。
手順4:全高を測って車検証と比べる
最後に全高を実測し、車検証の値と比べる。ここまで終えてから乗り出す。
大径タイヤと組み合わせるときの注意
メーカーは357A008を、外径の大きなオフロードタイヤを履くのにも必要なキットと説明している。ただ、通達の高さの範囲は部品を装着した状態の車の高さを車検証の値と比べるもので、外径の大きいタイヤへ替えると、タイヤの半径が増えた分も全高の変化に加わる。+40mmのキットだけで範囲の上限に届くので、タイヤも替えるなら組み合わせた後の全高で手続きの要否を確かめる。軽自動車の高さ上限の2.00mも同じく装着後の全高で見る。
キット装着後にどのサイズのタイヤが履けるかは、キットメーカーの適合サイズを確認できていないので、ここでは挙げない。純正の145/80R12を基準にホイールとタイヤを選び、候補が決まったら取付店に装着の可否と全高の見込みを確かめる。
よくある質問
40mm上げても車検に通る?
スペーサー式の+40mmキットなら、装着後の全高の変化が車検証の値から±4cm以内に収まれば記載事項の変更には当たらない。そのうえで保安基準への適合が必要で、タイヤなどほかの装着品で全高が変われば判断も変わる。
アトレーデッキバンにも付けられる?
デッキバンの型式は2WDがS700W、4WDがS710W。357A008と357A026の公式ストアの適合型式にはS700W/S710Wが含まれる。全長・全幅・全高と最低地上高もRS・Xと同じ値だ。
2WDと4WDで選ぶキットは違う?
357A008はAmazonの販売ページの説明で2WD/4WD対応とされており、駆動方式で選び分ける形ではない。2WDはFR、4WDは電子制御式パートタイム4WDだが、寸法と最低地上高は共通。4インチのキットのほうは2WD用と4WD用が分かれている。
ラテラルロッドは必要?
販売ページの説明では、リフトアップしたときのアクスルのずれを補正する部品とされている。最初からセットで付けるか、キット単体で付けて後から単品(357A026)を足すかを選べる。
自分で取り付けられる?
メーカーが示す作業時間の目安は180分で、装着後のサイドスリップ検査とホイールアライメント調整は専門ショップや整備工場などで行うよう案内されている。検査と調整には設備が要るので、取付から調整まで店に任せる前提で考えたほうがいい。
まとめ
まず、キット単体とラテラルロッド付きセットのどちらにするかを1つに決める。補正まで1回で済ませるならセット、まずは上げるだけでいいならキット単体だ。決めたら、車検証の型式とWANGAN357の適合型式(S700V/S710V/S700W/S710W)を照らし合わせ、S700系を指定して注文する。取付後のアライメント調整と全高の実測までがリフトアップの作業と考えておけば、手続きで迷うことはない。
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