F10 型の M5 に乗っていると、冬が近づくたびにスタッドレスへの履き替えを自分でやるか店に頼むかで迷う。分かれ目になるのは、ジャッキを車体のどこにかけるかと、ボルト留めのホイールを正しい力で締められるかの2点だ。ジャッキを取扱説明書の指定部位にかけ、車体をリジッドラックで支え、本締めをトルクレンチで行えるなら、自分で作業する道は十分にある。
ジャッキは指定部位に、本締めはトルクレンチで
先に要点を3つ挙げる。
- ジャッキは取扱説明書に記載された指定の部位(ジャッキアップポイント)にかける。それ以外の部分にかけると、車体の重さで車を壊してしまうおそれがある。英国の部品販売店の F10 型 M5 向けアダプターの商品説明では、最近の多くの BMW の車体には樹脂製で長方形の受けがあるとされる。
- ホイール・タイヤ適合情報サイト koleso の F10 型 M5 の掲載では、ホイールはナットではなくホイールボルトで留める方式だ。本締めは車体を下ろしてから、必ずトルクレンチで規定のトルクに合わせて行う。
- 車体をジャッキだけで支えない。持ち上げたらリジッドラック(車体を支える台)をかける。
F10 型 M5 のホイールとタイヤの基本
F10 型の BMW M5 は 2011 年のフランクフルトモーターショーで発表され、2011 年 11 月に販売が始まり、2016 年 10 月に生産を終えた。エンジンは 4.4L の V8 ツインターボ(S63 系)で、駆動方式はフロントエンジン・後輪駆動。多くの市場の変速機は 7 速のデュアルクラッチだ。
ホイールの留め方とねじ
ホイール・タイヤ適合情報サイト koleso の F10 型 M5 の行(前期 2011〜2013 年、後期は掲載上 2013〜2017 年)では、留め方と寸法は次のとおり。どちらの行も販売地域に日本を含む。
| 項目 | koleso の掲載(前期・後期とも) |
|---|---|
| 留め方 | ホイールボルト(ラグボルト) |
| ねじ | M14×1.25 |
| PCD | 5×120 |
| ハブ径 | 72.6mm |
ナットではなくボルトで留める方式なので、外したボルトをなくさないよう、1か所にまとめて置いておく。
純正のタイヤサイズ
koleso の F10 型 M5 の行(前期・後期とも)では、純正の 19 インチは前後で幅が違う組み合わせだ。オプションの 20 インチは、英語版 Wikipedia では前 265/35R20・後ろ 295/30R20 のミシュラン パイロットスーパースポーツとされ、koleso の後期の行にも同じ幅の組み合わせが載っている。
| 区分 | 前 | 後ろ | 掲載元 |
|---|---|---|---|
| 純正 19 インチ | 265/40ZR19 102Y(9J×19 ET32) | 295/35ZR19 104Y(10J×19 ET34) | koleso 前期・後期 |
| 20 インチ | 265/35ZR20 99Y(9J×20) | 295/30ZR20 101Y(10J×20 ET34) | koleso 後期 |
ジャッキポイントの見つけ方とジャッキのかけ方
取扱説明書で位置を確かめる
ジャッキポイントの位置は取扱説明書に載っている。作業を始める前に図を見て、どこにかけるかを決めておく。位置が分からないまま適当な位置にジャッキをかけるのは危険で、指定以外の部分にかけると車体を壊すおそれがある。
樹脂製の受けに合わせて当てる
英国の部品販売店 Ignite Performance が「F10 5 Series M5」向けとして載せる Powerflex 製アダプターの商品説明では、最近の多くの BMW の車体には樹脂製で長方形のリフティングポイント(ジャッキの受け)がある。ただし車体側の受けの具体的な位置と個数は、この説明には書かれていない。取扱説明書の図と実車の受けを照らし合わせてから当てる。
ブリヂストンの案内では、ジャッキはボディ側のジャッキアップポイントの凹みや印に、ジャッキの溝を合わせて当てる。受けからずれた位置のまま持ち上げ始めないことが大事だ。
ジャッキパッド(アダプター)を使うとき
ジャッキと樹脂製の受けの間に入れるアダプター(ジャッキパッド)を使うなら、適合の欄に F10 型 M5 の記載がある物を選ぶ。例として Powerflex の PF5-4660 は、英国の部品販売店の頁で「F10 5 Series M5」向けとして載り、樹脂製で長方形のリフティングポイントに合わせる形をしている。入数は1個なので、何個要るかは取扱説明書の受けの数と照らしてから決める。通販で売られている汎用のジャッキパッドは、商品ごとに適合の記載を確かめる。
作業前の準備
作業は平坦で舗装された場所で行い、砂利や土の上は避ける。路上で作業するときは、ほかの車の邪魔にならない場所に停める。AT 車はシフトを P に入れてパーキングブレーキをかけ、交換するタイヤの対角線上にあるタイヤに輪止めをかける。
取り付けるタイヤも先に見ておく。回転方向や内外の向きの指定があるかを確かめ、亀裂・偏摩耗・スリップサインの有無も見る。用意する道具は、ジャッキ、リジッドラック、輪止め、ホイールボルトを回すレンチ、トルクレンチだ。
タイヤ交換の手順
- 車体を持ち上げる前に、レンチでホイールボルトを反時計回りに少しだけ緩める。軽く緩める程度でよい。
- ジャッキを指定部位に当て、タイヤが路面から少し浮く程度まで持ち上げる。高く上げすぎると車体が不安定になり大変危険だ。
- タイヤを交換できる高さまで上がったら、リジッドラックをかける。ジャッキだけで支えていると、ジャッキが外れて車が落ちたときに挟まれる危険がある。
- ホイールボルトを外してタイヤを外す。外したタイヤとホイールを車体の下に置いておくと、ジャッキが外れたときの落下よけになる。
- 新しいタイヤを当て、一番上のボルトを先に手で仮止めする。こうするとタイヤが手前に倒れてくるのを防げる。残りのボルトも入れ、対角線の順で2〜3回に分けて均等に仮締めする。
- 車体を下ろしてジャッキを外してから、トルクレンチで本締めする(締め方は次の節)。最後に輪止めを外す。
締め付けトルクと締める順番
締め具が5〜10個あるホイールは、星を描くように締めていくのが正しい順番だ。F10 型 M5 は PCD 5×120 の5本留めなので、1本締めたら隣を飛ばして次のボルトへ進み、星形を描くように一巡する。
本締めは必ずトルクレンチを使い、自動車メーカーが定める規定のトルクで行う。手締めは締め付け不足や締めすぎを招き、脱輪の危険がある。コンチネンタルタイヤの案内によると、整備士はまず規定トルクの半分の値で各ボルトを締め、そのあと規定値に合わせ直して締める。この2段階を星形の順で回せば、締め付けに偏りが出にくい。
規定トルクの値について、ホイール・タイヤ適合情報サイト koleso の F10 型 M5 の行(前期・後期とも)では 140Nm と掲載されている。ただし BMW の取扱説明書などの公式資料ではこの値を確かめられていない。本締めの前に、車両の取扱説明書かディーラーで規定値を確かめる。
また、強く締めすぎるとボルトが壊れるおそれがある。力いっぱい締めれば安全というわけではない。
前後でタイヤの幅が違う点に注意
koleso の掲載では、F10 型 M5 の純正タイヤは前 265・後ろ 295 と前後で幅が違う。コンチネンタルタイヤの案内では、工場出荷時に前後で違うサイズを履く車のサイズの組み合わせはその車種特有のもので、タイヤ交換の際には特別な配慮が要り、必ずカーメーカーの推奨に従うよう求めている。
前後の入れ替え(ローテーション)ができるかどうかは、カーメーカーの推奨で確かめる。履き替えの作業では、外したホイールを前後の位置ごとに分けて置き、取り違えないようにする。外すときに「右前」「左後ろ」のように位置を書いた紙を貼っておくと、保管後に付け直すときに迷わない。
交換後の点検と増し締め
交換後は、空気圧が車両指定の値になっているかを確かめる。保管していたタイヤや新品タイヤは、自然に空気が抜けていたり充填が足りなかったりすることがある。試運転では急加速や急なコーナリングを避け、振動や異音がないかを確かめる。
しばらく走ったら、トルクレンチでボルトの増し締め(緩みの点検)をする。目安はコンチネンタルタイヤが 50〜100km、ブリヂストンが約 100km 走行後だ。増し締めをしても走行中の異音が消えないときは、タイヤ以外の原因も疑って切り分ける。
自分でやるか店に任せるか
トルクレンチが手元に無いなら、仮締めまでを自分で行い、早めにガソリンスタンドや修理工場で本締めを頼む。規定値を確かめないまま手の感覚で締め切るより確実だ。
乗りものニュースの記事では、夏タイヤとスタッドレスタイヤの履き替えで年に2回くらいしか作業しない人なら、自分でやって経費を抑えるより、ディーラーや整備工場、カー用品店に任せるほうが費用面でも安全面でもおすすめ、という見方を示している。ジャッキ、リジッドラック、トルクレンチを一通りそろえる手間まで考えると、年2回の履き替えだけなら店に任せるのが無理のない選択だ。道具がすでにあり、出先でのパンクにも自分で備えたい人は、自分で作業する価値がある。
よくある質問
ジャッキポイントはどこにある?
取扱説明書の図に載っている指定部位がジャッキポイントだ。具体的な位置と個数は手元の取扱説明書で確かめ、見当でかけない。受けの形の話は「ジャッキポイントの見つけ方とジャッキのかけ方」の節にまとめた。
締め付けトルクはいくつ?
koleso の F10 型 M5 の行では 140Nm と掲載されているが、BMW の公式資料ではこの値を確かめられていない。本締めの前に取扱説明書かディーラーで規定値を確かめる。
前後のタイヤを入れ替えてよい?
可否はカーメーカーの推奨で確かめる。koleso の掲載では純正タイヤの幅が前 265・後ろ 295 と違うので、自己判断で入れ替えず、外したホイールの前後を取り違えないようにする。
ジャッキパッドは要る?
使うなら、適合の欄に F10 型 M5 の記載がある物を選ぶ。英国の部品販売店では Powerflex の PF5-4660 が「F10 5 Series M5」向けとして載っている。汎用品は商品ごとに適合を確かめる。
増し締めはいつする?
交換後に 50〜100km ほど走ったところで、トルクレンチで緩みを点検する。
まとめ
作業の前に、次の点を手元で確かめておく。
- 取扱説明書の図でジャッキポイントの位置を確かめたか
- リジッドラックと輪止めを用意したか
- 取扱説明書かディーラーで規定トルクを確かめ、トルクレンチを用意したか
- 外したホイールの前後を分けて置く場所を決めたか
- 50〜100km 走った後の増し締めの予定を立てたか
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