F80 の M3 セダンの取扱説明書(米国向け英語版)の手順では、ジャッキは交換する車輪に最も近いジャッキアップポイントの長方形のくぼみにかけ、ボルトは対角の順に締める。ただし、出先のパンクで車載の道具を使うのか、夏冬の履き替えを自分で用意した道具でやるのかで、そろえる物が変わる。純正のタイヤサイズもグレードや仕様で違うので、まず自分の使い方と今履いているサイズを確かめてから読み進めてほしい。
ジャッキのかけ方と締め付けトルクの要点
BMW M3 セダンの取扱説明書(米国向け英語版・2016年10月版)が示す要点は次の3つだ。
- ジャッキは、交換する車輪に最も近いジャッキアップポイントの長方形のくぼみに差し込む。位置は説明書の図で示されている。
- ホイールボルトは対角の順に締め、締め付けトルクは140N·m。
- メーカーが用意するジャッキは故障時のホイール交換用で、夏タイヤから冬タイヤへの履き替えのような頻繁な使用向けには作られていない。
以下の手順と数値も、この米国向けの取扱説明書を主な出典にしている。日本仕様の装備(車載工具や応急用タイヤの有無など)や記載は違う場合があるので、自分の車の取扱説明書(車載の電子版を含む)や販売店でも確かめる。
対象はF80のM3セダン、純正タイヤは前後で幅が違う
F80 は F30 系 3 シリーズの M3 版で、2014〜2018年に生産された(生産終了は2018年10月)。F80 の M3 はセダンだけで、エンジンは S55 型の直列6気筒ツインターボ。2016年にコンペティション・パッケージが設定され、M3 CS は2018年の特別仕様だ。
2014年2月の受注開始を伝えた Car Watch の記事では、日本仕様の受注開始時の標準装備は、前が9.0J×18ホイールに255/40 ZR18タイヤ、後が10.0J×18ホイールに275/40 ZR18タイヤで、前と後でタイヤの幅が違う。
海外のホイール販売店の車種別適合データでは、M3 の純正を前255/40ZR18・後275/40ZR18、M3 Competition と M3 CS の純正を前265/30ZR20・後285/30ZR20 とし、ほかに前255/35ZR19・後275/35ZR19 なども並ぶ。グレードや仕様で純正のサイズが違うので、自分の車のサイズは今付いているタイヤの側面の表示か、運転席側ドアピラーのラベル、取扱説明書で確かめる。
ジャッキアップポイントの場所と樹脂製の受け
取扱説明書は、車載ジャッキのジャッキアップポイントの位置を図で示していて、文では位置を説明していない。文で分かるのは、交換する車輪に最も近いものを使うこと、ホイールハウス脇にあること、長方形のくぼみにジャッキを差し込むこと、までだ。数や細かな位置は、自分の車の取扱説明書の図で確かめる。
車載ジャッキのかけ方
車載ジャッキは、車を持ち上げることと、車のジャッキアップポイントで使うことにだけ合わせて作られている。くぼみに差し込んだら、上げ始めにホイールハウス脇のポイントに入っていることを目で確かめる。
フロアジャッキで上げるとき
部品メーカー Powerflex のジャッキパッドアダプターの製品情報では、このポリウレタン製のアダプターは近年の多くの BMW にある樹脂製のリフティングポイントにはめ込む形で、適合表に BMW M3 F80 の行がある。フロアジャッキの受け皿に載せて長方形のくぼみに合わせて持ち上げ、持ち上げるときの安定と位置決めを助け、車体の下面を守るとしている。ほかの通販品のアダプターは、F80 に合うかを製品ごとに確かめる。
受けが傷んだり無くなったりしていたら
車体側の受け(サポートパッド)には純正品番 51717169981 がある。BMW 用部品を扱う BAVMODS の製品情報では、摩耗したり無くなったりした純正の受けの交換用として、この品番の受けを F80 を含む F30・F31・F34・F32・F33・F36・F82・F83 向けに出している。Powerflex のアダプターも、置き換える純正品番にこの番号を挙げている。1台あたりの個数と取付位置は、この2つの出典には書かれていない。
作業の前にそろえることと安全の確保
まず、工具が積まれているかを確かめる。取扱説明書(米国向け英語版)には、ホイール交換用の工具は必要なら販売店で用品として手に入る、装備によっては工具と応急用ホイールを車から取り出す、と書かれている。車載ジャッキや応急用タイヤが必ず積まれているとは限らないので、日本仕様の自分の車は荷室で確かめるか販売店に聞く。
作業前の手順は取扱説明書に沿って次のとおり。
- 通る車からできるだけ離れた、固く滑らない平らな地面に止める。雪・氷・タイルなどの上では車やジャッキが横に滑ることがある。
- ギアを入れるか、セレクターレバーを P にし、ハザードランプを点ける。必要なら警告三角板や携帯型の警告灯を適切な距離に置く。
- 乗っている人は全員降り、ガードレールの外など安全な所にいてもらう。
- 平らな地面では、交換する車輪と対角の位置にある車輪の前と後に輪止めを置く。緩い下り坂では、前と後の両方の車軸の車輪の下に、転がる方向に逆らうように置く。
ジャッキの下に木片などを置かない(高さが制限されて本来の耐荷重を出せない)。持ち上げた車の下に横たわらない、エンジンをかけない。持ち上げた車に横向きの力をかけたり急に引っ張ったりしない。安全策を守っていても、ジャッキが傾けば車が落ちる危険がある。
タイヤ交換の手順
1. 持ち上げる前にボルトを緩める
車輪が地面に着いているうちに、ホイールボルトを半回転だけ緩めておく。
2. ジャッキで上げる
- ジャッキは指定の手の位置で持ち、作業中に変えない(手や指を挟むおそれがある)。
- 片手でジャッキを持ち、もう一方の手でクランクを回しながら、交換する車輪に最も近いポイントのくぼみに差し込む。
- ジャッキに荷重がかかったら手を離し、片手でクランクを回し続ける。
- ジャッキの足が垂直で、ポイントの真下にあることを確かめる。
- ジャッキの底面全体が地面に着き、車輪が地面から最大で約3cm離れるまで上げる。
乗りものニュースの記事では、ジャッキはジャッキアップポイントなど持ち上げられる所にかけ、ほかの所にかけると車体の重さで車を壊すおそれがあるとしている。また、ジャッキだけで支えていると、外れて車が落ちたときに挟まれる危険があるので、リジッドラック(車を支える台)を使うのが好ましく、用意できない場合は代わりの保険として、交換するタイヤ・ホイールを車体の下に置いておくとしている。
3. 車輪を外して付け替える
ボルトを外して車輪を外す。付ける車輪を当て、少なくとも2本のボルトを対角の順に手で締まるところまでねじ込み、残りも手で締めてから、全部を対角の順に締める。応急用ホイールは1本だけ付ける。メーカー純正以外のアルミホイールを付けるときは、そのホイールに付属するボルトを使う必要がある場合がある。
4. 下ろしてジャッキを外す
クランクを反時計回りに回してジャッキを縮め、車を下ろしてジャッキを外す。JAF の案内も、仮締めの後に車体を下ろしてジャッキを外してから、取扱説明書の規定トルクで本締めする流れにしている。
本締めのトルクと増し締め
取扱説明書(米国向け英語版)では、ホイール交換の後にボルトを対角の順に締め、締め付けトルクは140N·m(101lb·ft)。そのうえで校正したトルクレンチで締まっていることを確かめる。海外のホイール販売店の F80 の M3 の適合データも、M3・M3 Competition・M3 CS のどれも140N·m としている。
同じ適合データでは、留め方はナットではなくボルトで、PCD は5×120(5穴)、ねじは M14×1.25、ハブ径は72.6mm。タイヤメーカーのコンチネンタルは、ナット(BMW ではボルト)が5〜10個あるホイールは星を描くように締めていくのが正しい順番とし、整備士はまず規定値の半分の設定で仮締めし、その後に規定値で本締めするとしている。
コンチネンタルは、新しいタイヤに交換したときは50〜100kmを目安に走ってから増し締めするよう勧めている。ボルトが緩むと、最悪の場合は走行中にホイールが外れることがあるという。トルクレンチが無いときは、JAF の案内のとおり早めにガソリンスタンドや整備工場で本締めしてもらう。締めすぎもボルトの破損の原因だ。
交換後に足回りの音が気になったときは、
で原因の見分け方を確かめる。
交換の後は空気圧を合わせてモニターをリセット
取扱説明書では、交換の後、次の機会に空気圧を確かめて必要なら直し、タイヤ空気圧モニターをリセットする。空気圧はタイヤが冷えているときにだけ確かめ、値は運転席側のドアピラーに貼られたラベルにも載っている。値はメーカーがその車型に認めたタイヤサイズに対して決まっていて、モニターのリセットは空気圧を新しい値に合わせた後に行う。ブリヂストンも、交換が済んだら空気圧が車両指定の値になっているかを確かめるよう案内している。
新品タイヤに替えたときは、製造上の理由で最初はグリップが最適でないので、最初の300kmは控えめに走る(取扱説明書)。
夏冬の履き替えを自分でやるなら
取扱説明書が車載ジャッキを故障時の交換用とし、夏冬の履き替えのような頻繁な使用向けではないとしている以上、履き替えには別のジャッキを用意する。そろえる物は次の3つだ。
- フロアジャッキなど、車載とは別のジャッキ
- 樹脂製の長方形のくぼみにはめて使うアダプター(Powerflex の製品は適合表に BMW M3 F80 の行がある)
- 持ち上げた車を支えるリジッドラック
外したホイールとタイヤは、涼しく乾いた暗い場所に置き、油・グリス・燃料に触れさせない。空気はタイヤの側面に書かれた最大空気圧を超えない(取扱説明書)。
道具をそろえられない、ジャッキの扱いに不安がある、トルクレンチが無い、のどれか1つでも当てはまるなら、履き替えは店に頼むほうがよい。
前後で違うサイズとタイヤの選び方
取扱説明書では、メーカーは前の車軸と後の車軸の間でホイールを入れ替えることを勧めておらず(操縦性を損なうことがある)、前と後でタイヤサイズやリムサイズが違う車では、前後の入れ替え(ローテーション)は認められない。日本での受注開始時の標準装備も、前255/40 ZR18・後275/40 ZR18 で前後のサイズが違う。
タイヤを選ぶときは次を守る。
- 1つのメーカーの1つのトレッドパターンのタイヤだけを使う(取扱説明書)。合わないホイールとタイヤの組み合わせは ABS や DSC などの働きを損なう。
- BMW はタイヤサイズごとに推奨する銘柄を決めていて、タイヤの側面の星マークで見分けられる(取扱説明書)。
- コンチネンタルは、前後でサイズが違う組み合わせはタイヤ交換のときに特別な配慮が要るとし、4本とも同じタイヤを勧め、同じ車軸には同じトレッドパターン・同じブランドでそろえなければならないとしている。迷ったらカーメーカーの指定に従うか、資格のあるタイヤの専門家に相談する。
- ブリヂストンは、回転方向や装着の向きが指定されたタイヤはその向きで付けないと本来の性能が出ないうえ、安全面にも影響するおそれがあるとしている。付ける前に向きを確かめる。
出先でパンクしたとき
取扱説明書(米国向け英語版)では、パンク修理用の Mobility System(シーラントとコンプレッサー)が荷室の床板の下にあると説明している。小さな傷を内側からシーラントでふさいで走り続けられるようにするもので、日本仕様の自分の車に積まれているかは荷室で確かめる。
- 穴の大きさが約4mm以上だと効かないことがある。
- シーラントはタイヤ空気圧モニターのホイール側の電子部品を傷めることがある。容器の使用期限も確かめる。
- 注入後はすぐに約10km走ってシーラントを行き渡らせ、80km/hを超えない。空気圧を2.5barに直し、モニターを初期化する。
- 使えなくなったタイヤとシーラント容器は早めに交換する。コンプレッサーは空気圧の確認にも使える。
シーラントを使う場合は、空気圧が下がってもすぐにホイール交換が要るとは限らない。損傷したタイヤは、元のホイールとタイヤの組み合わせにできるだけ早く戻す(取扱説明書)。工具も修理キットも無いときや、安全な場所に止められないときは、無理に自分で交換せず JAF に連絡する。
よくある質問
車載ジャッキで冬タイヤに履き替えてもよい?
取扱説明書(米国向け英語版)は、メーカーが用意するジャッキを故障時に応急用またはスペアのホイールを付けるときだけ使うものとし、夏冬の履き替えのような頻繁な使用向けではないとしている。車載ジャッキはホイール交換のために短い時間だけ車を持ち上げるもので、履き替えには別のジャッキを使う。
ホイールボルトの締め付けトルクは?
F80 の M3 セダンの取扱説明書(米国向け英語版)では140N·m で、対角の順に締めて校正したトルクレンチで確かめる。先代 E90 など別の世代の値はそのまま当てはめない。先代については
を見てほしい。
前後のタイヤを入れ替えてもよい?
取扱説明書は、前と後でタイヤサイズやリムサイズが違う車では前後の入れ替えを認めていない。サイズが前後で同じ場合も、メーカーは前後の車軸の間での入れ替えを勧めていない。
ジャッキポイントの受けが割れていたら?
純正品番 51717169981 の受けが交換用として出ている。対象は BAVMODS の製品情報では F80 を含む F30・F31・F34・F32・F33・F36・F82・F83 で、1台あたりの個数と取付位置はその出典に書かれていないので、販売店で確かめる。
増し締めはいつ?
コンチネンタルは、新しいタイヤに交換したときは交換後50〜100kmを目安に走ってから増し締めするよう勧めている。正しく締めるには、トルクレンチという専用の工具が要る。
まとめ
まず車検証で型式と初度登録年月を確認し、自分の車が F80 世代(2014〜2018年生産)の M3 セダンかを確かめる。そのうえで、F80 の M3 セダンの取扱説明書(米国向け英語版)に沿った要点は次のとおり。
- ジャッキアップポイントの位置は取扱説明書の図で確かめ、交換する車輪に最も近い長方形のくぼみにかける。
- ジャッキだけで支えた車の下に入らない。
- ボルトは対角の順に140N·m で締め、校正したトルクレンチで確かめる。
- 前と後でタイヤサイズやリムサイズが違う車は、前後を入れ替えない。
同じ F80 の M3 の手入れは、次の記事も参考にしてほしい。

コメント