M3 F80 で社外ホイールを選ぶとき、前後同じサイズのつもりで4本そろえて注文し、後から前後で純正のリム幅もインセットも違う車だと気づく例がよくある。海外のホイール適合データベースなどでは、M3 F80(2014〜2018年)の取り付けは5穴・PCD 120mm・ハブ径72.6mm・M14×1.25のボルト締めで、純正のインセットは前29mm・後40mmの組とされている(ただしグレードで純正サイズが違い、M3 CS は出典の間で食い違う)。前後を分けて考え、ハブリング・ボルト・はみ出しまで順に確かめれば、選び間違いは防げる。
まず押さえるM3 F80のホイール規格
海外のホイール適合データベース2つと米国のホイール販売店の解説で、M3 F80(2014〜2018年)について次の同じ値が載っている(うち koleso は販売地域に日本を含めて掲載)。
| 項目 | M3 F80(2014〜2018年)の値 |
|---|---|
| 穴数・PCD | 5穴・120mm |
| ハブ径(センターボア) | 72.6mm |
| 留め方・ねじ | ボルト締め・M14×1.25 |
| 純正インセット | フロント29mm(ET29)・リア40mm(ET40)(M3 CS は下の「グレードで違う所」を参照) |
前後でリム幅もインセットも違うので、ホイールやタイヤはフロント用とリア用を分けて、それぞれの値で確かめる。
純正ホイールとタイヤのサイズ(前後別)
18インチの純正の組
Car Watch の発売時の記事では、2014年2月19日に受注が始まった日本仕様の M3 セダン(F80)の主な標準装備として、フロントが9.0J×18ホイールに255/40 ZR18タイヤ、リアが10.0J×18ホイールに275/40 ZR18タイヤとされている。インセットは海外のデータベースなどでフロント29mm・リア40mm。
手持ちの車を調べるときは型式名も手掛かりになる。海外のタイヤ・ホイールサイズのデータベースでは、日本向けの M3(2018年)が車両型式「CBA-3C30」の名で載っている。
19インチと20インチの組
海外のデータベースと米国の販売店の解説には、19・20インチも前29mm・後40mmの組で載っている(グレードでの違いは後の「グレードで違う所」)。
| インチ | フロント | リア |
|---|---|---|
| 18 | 9J×18 ET29・255/40 ZR18 | 10J×18 ET40・275/40 ZR18 |
| 19 | 9J×19 ET29・255/35ZR19 | 10J×19 ET40・275/35ZR19 |
| 20 | 9J×20 ET29・265/30ZR20 | 10J×20 ET40・285/30ZR20 |
米国のホイール販売店の解説では、2015〜2016年の米国向けの基本仕様は18インチ(スタイル513M)が標準、19インチ(スタイル437M)がオプション、2017〜2018年のコンペティション・パッケージは20インチ(スタイル666M)とされる。日本仕様での19・20インチの設定は、今回の出典では確認できていない。
グレードで違う所
海外のホイール適合データベースでは、M3 コンペティションと M3 CS の工場装着は20インチ(フロント9J×20 ET29+265/30ZR20、リア10J×20 ET40+285/30ZR20)とされる。一方、米国の販売店の解説は M3 CS をフロント19インチ(9J×19 ET27+255/35 R19)・リア20インチとしていて、CS の純正サイズは出典の間で食い違う。自分の車のサイズは、装着ホイールの刻印や車両の書類で確かめておきたい。
PCD・インセット・リム幅の読み方
PCDと穴数
PCD(Pitch Circle Diameter)は、ボルト穴の中心を結んでできる円の直径をmmで表したもの。5穴なら、隣り合うボルト穴の中心間の距離に約1.701を掛けるとPCDの近似値が出る。
インセット(オフセット)
インセットは、リム幅の中心線からホイールの取り付け面(ハブに接する面)までの距離をmmで表したもの。2008年7月に JATMA が呼び方を「オフセット」から「インセット」に統一した。プラスの値ほど内側寄り、マイナスの値(アウトセット)では外側寄りにホイールが付く。
リム幅とリム径の表記
リム幅はインチで表す(1インチ=2.54cm)。「9J」は幅9インチでJ形のフランジのリムという意味で、Jは単位ではない。「18インチ」のようなインチ数はホイールの直径を表す。
インセットやリム幅を変えるときの考え方
マイナス側にずらすと外へ出る
インセットが純正値よりマイナス側になるほどホイールがフェンダーからはみ出す可能性があり、プラス側になるほどサスペンションやタイヤハウスの内側に干渉するおそれがある。リム幅を変えるときは、広すぎるとタイヤのサイドウォールが引っ張られて変形し、狭すぎるとタイヤが膨らむので、タイヤメーカーの適合表で組み合わせるタイヤサイズに合うかを確かめる。
米国のホイール販売店の解説では、M3 F80 は車高を下げるとキャンバーは付くが、サスペンションが縮んだときのすき間は減るとされ、幅の広いホイールではスプリングの受け皿との干渉にも触れている。車高を変えた車は、静止状態で収まっていても走行中に当たることがある。
海外で語られる目安
海外のホイール適合データベース(koleso)は、M3 F80 の工場装着の行にオフセットの幅としてフロント27〜31mm・リア38〜42mmを併記している。この幅をメーカーが示したものかどうかは、この出典からは分からない。
米国のホイール販売店の解説では、M3 F80 の社外ホイールの多くの組み合わせはフロントET20〜25・リアET30〜40、フロント10Jに ET20 は「極めて攻めた」設定とされ、フェンダーを加工しない場合のタイヤ幅はフロント275mm・リア305mmまでが目安とされている。これは米国の販売店の見解で、日本のはみ出しの決まりに合うかは別に確かめる必要がある。
日本のはみ出しの決まり
国土交通省の不正改造の例では、タイヤ・ホイールの車体外へのはみ出しが挙げられている。回転部分が歩行者の衣服などを巻き込むおそれがあるためで、根拠は保安基準第18条「回転部分が突出する等他の交通の安全を妨げるおそれのあるものでないこと」。2017年6月22日施行の改正で、ハンドルを直進にしたときのタイヤ中心から前方30度・後方50度の範囲で10mm未満のはみ出しが認められるようになったが、対象はタイヤ(ゴムの部分)だけ。ホイールやリムのはみ出しは認められない。
ハブ径とハブリング
ハブ径(センターボア)はホイール中心の穴の直径。車側のハブ径がホイールの穴径を上回るとそのホイールは付かず、ホイール側の穴が大きすぎると芯が出ずにハンドルの振動につながる。社外ホイールは穴径を大きめに作ることが多く、そのすき間はハブリングで埋める。ハブリングを入れると荷重をハブの中心で支えられる。
米国のホイール販売店の解説では、M3 F80 はハブセンターでの位置決めが欠かせず、社外ホイールの多くは穴径が73.1mmか74.1mmでハブリングが要るとされ、芯が出ないと振動やベアリングの摩耗の元になるとしている。
ハブリングのサイズは、車両側のハブ径とホイール側のハブ径の両方の数値を確かめて決める。選ぶならツバ付きのものがよい。純正ホイールに戻すときはハブリングの外し忘れに注意する。走行中の振動や音が気になるときは、こちらも参考になる。
ボルトのねじ径・座面・長さと締付トルク
M3 F80 はナットではなくボルトでホイールを留める。ボルトを別に用意するときは、車両の取付穴数・PCD・ハブ径・標準のボルトのサイズに合うものを選ぶ。工具をかける頭の二面幅は、純正と同じ寸法でなくてもよい。
座面の形を合わせる
ホイールを留める部品の座面には「テーパー座(60°)」「球面座」「平面座」の3種類があり、ホイール側の穴の形と一致していないと正しく締結できない(ナットの座面についての解説)。社外ホイールに替えるときは、使うボルトの座面がそのホイールの座面と合うかを確かめる。M3 F80 の純正ボルトの座面形状は、今回の出典では確認できていない。
ボルトの長さ
社外ホイール用に互換ボルトを探すなら、次の2つが候補になる。どちらもBMWの純正品ではなく互換品で、商品名は「BMW互換品」「M14 P1.25」「60度 テーパー」「首下35mm」「17HEX」「ブラック」。販売ページの商品説明では、対応として「3シリーズ G20 G21 F30 F31 F80 等」を挙げ、「ホイール用 ロングボルト」としている。輸入品のため、微細な小キズ・わずかなたわみ・汚れ・型抜きのバリが付いている場合があるとの記載もある。
BMW互換 ホイールボルト M14 P1.25 60度テーパー 首下35mm 10本セット
BMW互換 ホイールボルト M14 P1.25 60度テーパー 首下35mm 20本セット
選び分けは本数で決めればよい。5穴なので4輪すべてを替えるなら20本セット、2輪分なら10本セットになる。ただし、M3 F80 の純正ボルトの座面形状と首下の長さは今回の出典で確認できていない。この2つの互換ボルトを使う前に、使うホイールの座面とボルト穴の厚み、スペーサーの有無に合う長さかを、ホイールの販売店か取り付け店で確かめる。
締付トルク
海外のホイール適合データベース(koleso)は、M3 F80 のホイールの締付トルクを140N·mとしている。実際に締めるときは、取扱説明書など手元の資料の値と照らしてからにする。ジャッキポイントを含む作業の流れはこちら。
スペーサーでツライチにするときの注意
フェンダーとホイールの面をそろえる(いわゆるツライチ)目的でスペーサーを使うなら、種類の選び方が先に来る。米国のホイール販売店の解説では、M3 F80 に使うスペーサーはハブセンター式に限り、5mmを超える厚みでは延長したボルトが必要とされている。安価なラグセンター式(ボルトだけで位置を決める物)は、振動や部品への負担の元になるとして避けるよう注意している。
ワイドトレッドスペーサーは15mm以上の厚みになり、ハブからホイールまでの距離が長くなりがちなため、ハブリングを組み合わせている製品もある。外へ出した分だけ、前述のはみ出しの決まりにも近づく。
ブレーキキャリパーとのすき間
米国のホイール販売店の解説では、M3 F80 の大きなブレーキキャリパーに当たるホイールのデザインがあり、特に18インチや古いデザインではすき間を必ず確かめるよう注意している。同じ解説は、19インチの純正(スタイル437M)を Mカーボン・セラミック・ブレーキのパッケージに必須のホイールとしている。この装備の車は、インチを下げる選択を取る前に取り付け店に相談したい。グレードで純正サイズが違う点は、前述のとおり。
ホイール交換で使う道具と手入れ
ボルト締めの車は、ホイールを持ち上げたまま穴の位置を合わせる作業が手間になる。そこで役立つのが位置合わせ用のガイドボルトだ。
INEX ホイールガイドボルトは、商品名に「M14×1.25」「2本」「シルバー」「輸入車」「タイヤ交換」「セッティングボルト」「BMW M3 F80対応」とある。販売ページの商品説明では、ホイールの位置合わせをするときのタイヤの落下などを防ぐための物とし、説明書は付かないとしている。同じ商品説明には「記載メーカーや車種であっても適合サイズが異なる場合がございます。ご購入前に現車のハブボルトサイズをご確認ください。」とあり、商品名に車種名があっても、購入前に自分の車のボルトのねじがM14×1.25かを確かめる。
INEX ホイールガイドボルト M14×1.25 2本
付けるときは、ハブとの接触面の錆を落として防錆しておくと、固着や取り付け不良を防げる。取り付けた後は、締め付けた部品の緩みに注意する。
社外ホイールを買う前の確認手順
次の順で確かめると抜けが出にくい。
- 穴数とPCD(M3 F80は5穴・120mm)が同じか
- ホイール側のハブ径が72.6mm以上か、大きければ合うハブリングがあるか
- フロント用・リア用それぞれのリム幅とインセットが、純正(前9J・ET29、後10J・ET40。M3 CS は出典の間で食い違う)からどれだけ変わり、内側の干渉や外へのはみ出しが起きないか
- ボルトのねじ(M14×1.25)・座面の形・長さが、ホイールとスペーサーの有無に合うか
- ブレーキキャリパーとのすき間
- タイヤとホイールが車体からはみ出さないか
ホイールメーカーのウェッズは適合検索の注意で、適合サイズはノーマル車両の静止状態でのすき間を基準に作られ、左右のフェンダーのばらつきで誤差が出ることがあり、保安基準・車検・点検に適合することを保証するものではない、としている。適合表の値は目安として使い、最終的な確認は取り付け店で行う。
よくある質問
前後で同じホイールを付けられる?
M3 F80(2014〜2018年)の純正は、海外のホイール適合データベースなどでフロント9J・ET29、リア10J・ET40と、前後でリム幅もインセットもタイヤサイズも違う組み合わせになっている(グレードで純正サイズが違い、M3 CS は出典の間で食い違う)。前後同じホイールにするなら、フロント用とリア用それぞれで純正値からのずれを確かめる。
社外ホイールにハブリングは要る?
米国のホイール販売店の解説では、M3 F80(2014〜2018年)向けの社外ホイールの多くは穴径が73.1mmか74.1mmでハブリングが要るとされる。買うホイールの穴径が72.6mmより大きければ、合うハブリングを用意する。
スペーサーを入れたらボルトは?
米国のホイール販売店の解説では、M3 F80(2014〜2018年)のスペーサーはハブセンター式に限り、5mmを超える厚みでは延長したボルトが要るとされる。長さは取り付け店で確かめる。
タイヤのはみ出しはどこまで許される?
2017年6月22日施行の改正で認められるようになったのは、ハンドルを直進にしたときのタイヤ中心から前方30度・後方50度の範囲での、タイヤ(ゴムの部分)の10mm未満のはみ出しだけ。ホイールやリムのはみ出しは認められない(詳しくは「日本のはみ出しの決まり」の項)。
まとめ
注文前に、次の5つを手元の値と突き合わせておく。
- 規格の照合: M3 F80(2014〜2018年)は5穴・PCD 120mm・M14×1.25のボルト締め(海外のデータベースなどの値)
- 前後別の注文: 純正はフロント9J・ET29、リア10J・ET40(海外のデータベースなどの値。グレードで純正サイズが違い、M3 CS は出典の間で食い違うので、装着ホイールの刻印や車両の書類で確かめる)
- ハブリングの要否: ホイールの穴径がハブ径72.6mmより大きいか
- ボルト: 座面の形と長さを、ホイールとスペーサーに合わせる
- 最後の確認: キャリパーとのすき間と、車体からのはみ出し
ほかの整備もあわせて確かめておきたい人はこちら。
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