M3 E90 の社外ホイール選びで見落としやすいのが、純正のオフセットが前と後で違うことだ。前輪の数字だけを基準に前後同じ考え方で選ぶと、後輪の出方が見積もりとずれる。海外のタイヤ・ホイール販売店の諸元表では、取り付けは PCD 5×120・ハブ径 72.6mm、純正18インチは前 8.5J ET29・後 9.5J ET23 になっている。
M3 E90 のホイール取り付け寸法と純正サイズ
対象は M3 E90(4.0L V8・エンジン型式 S65B40A)。PCD とハブ径と純正サイズは、海外のタイヤ・ホイール販売店が公開している車種別のホイール諸元(E90・E92・E93 の M3 をまとめた表)、ボルトの規格と締付トルクは BMW の整備資料の締付トルク表による。
| 項目 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| PCD・穴数 | 5×120(5穴) | 販売店の諸元表 |
| ハブ径 | 72.6mm | 販売店の諸元表 |
| 留め方 | ボルト(ねじ M12x1.5) | BMW の整備資料 |
| 締付トルク | 120 Nm | BMW の整備資料 |
| 純正18インチ 前輪 | 8.5Jx18 ET29・245/40ZR18 93Y | 販売店の諸元表 |
| 純正18インチ 後輪 | 9.5Jx18 ET23・265/40ZR18 97Y | 販売店の諸元表 |
純正は後ろのほうがリム幅が1J広く、オフセットが6mm小さい。この前後差が、社外ホイールやスペーサーを選ぶときの基準になる。
PCD とオフセットの意味
PCD と穴数
PCD は、ホイールのボルト穴の中心を結んだ円の直径。5×120 は穴が5つで、その円の直径が120mm という意味だ。穴の数か PCD のどちらかが違うホイールは、そのままでは取り付けられない。
オフセット(インセット)の向き
オフセットは日本ではインセットとも呼び、ET の後の数字で表す。リム幅の中心線からホイールの取り付け面までの距離(mm)で、数字が小さいほどホイールは外側(フェンダー側)へ出て、大きいほど内側へ入る。
リム幅とオフセットの計算
リム幅が1J(1インチ=約25.4mm)広がると、オフセットが同じなら外側と内側にそれぞれ約12.7mm ずつ張り出す。幅が同じでオフセットを5mm 小さくすると、ホイールは外側へ5mm 出て、内側は5mm 引っ込む。外側の出は「幅の増えた分の半分+オフセットの減った分」で見積もれる。
M3 E90 はこの計算を前と後で別々にする。たとえば前輪に後輪の純正と同じ 9.5J ET23 を履かせると、前輪は純正(8.5J ET29)より幅の増えた1J の半分(約12.7mm)と、オフセットの減った6mm を足した分だけ外へ出る。後輪は純正と同じなので出入りは変わらない。前後同じサイズにしても、純正からの差は前と後で変わる。
純正18インチと19インチの組み合わせ
純正18インチ(前後異サイズ)
販売店の諸元表で OEM(純正)と記された18インチは、前輪 8.5Jx18 ET29、後輪 9.5Jx18 ET23 の組み合わせだ。同じ表は適合オフセットの幅として、前輪 27〜31mm、後輪 21〜25mm(純正の ET29・ET23 のそれぞれ前後2mm)を載せている。
この 4.0L(S65B40A)の行は、販売地域にカナダ・欧州・日本・中東・ロシアほか・米国ほかを挙げており、日本で売られた車も同じ行に入る。
19インチの組み合わせ
同じ表には、OEM の印の無い19インチの組み合わせとして次の2つが載っている。
| 組み合わせ | 前輪 | 後輪 |
|---|---|---|
| A | 8.5Jx19 ET29(245/35ZR19 93Y) | 9.5Jx19 ET23(265/35ZR19 98Y) |
| B | 9Jx19 ET31(245/35ZR19 93Y) | 10Jx19 ET25(265/35ZR19 98Y) |
これらが工場装着のオプションかどうかは、この表からは決められない。19インチを考えるときの目安として使い、前後それぞれ純正18インチからの出入りを計算して確かめる。
社外ホイールが付くかを確かめる順番
確かめる順番
- 穴数5・PCD 120 か
- ホイールの中心穴が 72.6mm 以上か(大きいならハブリングで合わせる)
- 前後それぞれのリム幅とオフセットが、純正(前 8.5J ET29・後 9.5J ET23)からどれだけ外・内へ動くか
- 使うボルトがねじ M12x1.5 で、座面の形がホイール側と合うか
- 付けた後に、フェンダーからのはみ出し、ブレーキや足回りとのすき間、ボルトの締付トルクを確かめる
迷いやすいのは3番だ。前と後を別々に計算することだけは省かない。
中心穴とハブリング
社外ホイールの中心穴がハブ径(72.6mm)より大きい場合は、すき間を埋めるハブリングで中心を合わせる方法がある。中心穴がハブ径より小さいホイールは、ハブに入らないので付かない。
幅を大きく広げた装着例
米国のホイール販売店の適合ガイドには、E90 の M3 に前 19×10 +20・後 19×11 +35 の社外ホイールを履かせた例が載っている。その例では、フェンダーの爪折りと引き出しが必要だったと書かれている。純正から幅を大きく広げるなら、ボディ側の加工まで見込んでおく。
ホイールボルトの規格・締付トルク・座面
ねじの規格と締付トルク
BMW の整備資料の締付トルク表では、E90 を含む E81・E82・E87・E88・E90・E91・E92・E93 のホイールボルトはねじ M12x1.5、締付トルク 120 Nm で、取り付けた後に全部のホイールボルトのトルクをもう一度確かめるよう指示している。ホイールはハブにボルトをねじ込んで留める方式だ。
締付トルクは出典で値が違い、海外の販売店の諸元表には 115 Nm とある。作業では BMW の整備資料・取扱説明書・ディーラーの値を使い、二次の情報サイトの値で決めない。ジャッキアップからの作業の流れは次の記事にまとめている。
座面の形
ホイールボルトの座面(ホイールに当たる部分の形)は、ホイール側の座面と同じ形のものを使う。後で紹介する2つのボルト商品は、商品名に「60度 テーパー」とある。純正ボルトと純正ホイールの座面の形は今回の出典では確かめていないので、純正ホイール・社外ホイールのどちらに使う場合も、ホイール側の座面と合うかを販売店に確かめる。
ボルトの長さ
ハブとホイールの間に挟むだけのスペーサー(スペーサー自体にボルトが無い型)は、挟んだ厚みの分だけボルトのねじ込みが浅くなる。純正と同じ長さのボルトのままでは足りなくなるので、挟む厚みに合わせて首下の長いボルトに替える。必要な長さは、今付いているボルトの首下長さにスペーサーの厚みを足した長さを目安に、販売店やショップと確かめる。
スペーサーでオフセットを変える
スペーサーの厚みとオフセット
ホイールスペーサーは、その厚みの分だけホイールを外側へ出す。働きはオフセットを同じ数だけ小さくしたのと同じ向きで、後輪の純正 ET23 のホイールに10mm を挟むと、取り付け面の位置は ET13 相当になる。リム幅は変わらないので、外側へ出る量は厚みと同じだ。
SHLPDFM のハブセントリックスペーサー
SHLPDFM のスペーサーは、商品名で4個セット・厚さ 12mm と 15mm。販売ページの商品説明では、PCD 5×120・ねじピッチ M12x1.5・センターボア 72.6mm・合金製で、用途は BMW 3シリーズ M3 E30・E36・E46・E90・E91・E92・E93 に対応と書かれている(出品者の記載)。
一方で、取り付けに使うボルトやナットが付属するか、ハブへの固定のしかた(スペーサー側のボルトで留めるのか、長いボルトで挟むのか)、4個の厚みの内訳は、商品名と商品説明の箇条書きのどちらにも記載が無い。M3 の名前が出品者の記載にあるのはこちらなので、候補の先頭に置くならこれだが、上の3点は購入前に出品者へ確かめる。
SHLPDFM ハブセントリックホイールスペーサー 12mm & 15mm 5×120 M12x1.5 センターボア72.6mm(4個セット)
AUTOPA の2枚セットのワイドスペーサー
AUTOPA のアルミ鍛造ワイドスペーサー 10mm は、商品名と商品説明で 2枚セット・フロント リア共通・5/120・72.6 と書かれ、対応する型式として F30 F31 E90 E91 E92 E93 E46 E36 E30 を並べている(出品者の記載)。
AUTOPA のスペーサーの商品名と商品説明の箇条書きは、型式を並べるだけで M3 の名前が無く、ボルトの付属の有無・長いボルトへの交換の要否・ねじの規格の記載も無い。M3 E90 に使えるかは、車名と型式を伝えて出品者に確かめる。出品者に確かめて使えると分かれば、前輪だけ、または後輪だけを10mm 出したいときの候補になる。
AUTOPA アルミ鍛造 ワイドスペーサー 10mm 5/120 72.6(2枚セット)
スペーサーと一緒に使うロングボルト
首下35mm のボルト
HAPAD のホイールボルトは、商品名で M12 P1.5・60度 テーパー・首下35mm・17HEX・ブラック・10本セット。商品説明には「ホイール用 ロングボルト 10本セット」、対応は 1シリーズ E82 E87 E88/3シリーズ E90 E91 E92 E93 E46/X1 E84/Z4 E85 E86 E89 等と書かれている(出品者の記載)。対応の一覧は 3シリーズの型式を並べたもので、M3 の名前は無い。HAPAD のボルトの商品説明には、インパクトレンチや十字レンチを使わず、必ずトルクレンチを使って規定の締め付けで取り付けるよう注意書きがある。
HAPAD ホイールボルト M12 P1.5 60度テーパー 首下35mm(10本セット)
首下50mm のボルト
BMW互換品(ノーブランド)のホイールボルトは、商品名で M12 P1.5・60度 テーパー・首下50mm・17HEX・ブラック・10本セット。商品説明には「ホイール用 ロングボルト 10本セット」、対応は 1シリーズ E82 E87 E88・3シリーズ E90 E91 E92 E93 E46・X1 E84・Z4 E85 E86 E89 等と書かれている(出品者の記載)。対応の一覧に M3 の名前は無い。
BMW互換品 ホイールボルト M12 P1.5 60度テーパー 首下50mm(10本セット)
首下35mm と 50mm のどちらが、どの厚みのスペーサーに合うかは、2商品の商品名と商品説明の箇条書きのどちらにも記載が無い。長さはスペーサーの厚みと今のボルトの首下長さから決め、販売店に確かめる。2商品とも商品説明に、輸入品のため細かな傷やバリなどがある場合があるとの記載がある。
オフセットを外へ出すときのはみ出しの決まり
乗りものニュースが国土交通省への取材として報じた内容では、2017年6月22日の保安基準の一部改正で、ハンドルを直進にした状態でタイヤの中心から前方30度・後方50度の範囲について、タイヤが車体から10mm未満はみ出すことは認められるようになった。認められたのはタイヤだけで、ホイールのはみ出しは対象外。改正前は、タイヤ・ホイール・ホイールナット・センターキャップなどの回転部分が、真上の車体より少しでも出ると違法とされていた。改正は車の製造年月日を問わない。
オフセットを小さくする・スペーサーを挟む・リム幅を広げると、ホイールのリム面が外へ出る。付けた後に、ハンドルを直進にした状態でホイールがフェンダーから出ていないか、タイヤのはみ出しが10mm未満に収まっているかを確かめる。
よくある質問
ホイールはナットで留めるのか
ナットではなく、ハブにボルトをねじ込んで留める。BMW の整備資料ではねじ M12x1.5・締付トルク 120 Nm で、取り付け後に全部のボルトのトルクを再確認するよう指示している。
19インチにできるか
販売店の諸元表には、OEM の印の無い19インチの組み合わせが2つ載っているが、工場装着のオプションかどうかはこの表からは決められない。選ぶなら前後それぞれ純正18インチからの出入りを計算して確かめる。
中心穴が大きい社外ホイールは使えるか
中心穴がハブ径(72.6mm)より大きいなら、ハブリングで中心を合わせる方法がある。小さいホイールはハブに入らないので付かない。付けた後に走行中の音が気になったときは、原因の絞り方の記事が参考になる。
タイヤはどこまではみ出してよいか
乗りものニュースの報道では、2017年6月22日の改正で、ハンドルを直進にした状態でタイヤの中心から前方30度・後方50度の範囲について、タイヤが車体から10mm未満はみ出すことは認められた。ホイールのはみ出しは対象外だ。
まとめ
M3 E90 は PCD 5×120・ハブ径 72.6mm・ねじ M12x1.5 のボルト留めで、純正18インチは前 8.5J ET29・後 9.5J ET23 と前後で違う。まずホイールかスペーサーの候補を1つに絞り、前後それぞれの出入りとボルトの長さ・座面を計算してから、その候補について出品者・販売店の適合情報で最終確認する。
諸元は BMW の整備資料と海外の販売店の諸元表によるもの。前のオーナーの交換・改造で今付いているホイールやボルトが純正と違うこともあるので、購入前に今のホイールのサイズ表記とボルトの長さを現車で確かめ、ディーラーや販売店にも確かめる。
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