E90 型の M3 セダンは、買うべきバッテリーの型番が 1 つに決まらない。米国の BMW 純正部品の通販の掲載には容量の違う 3 つの純正品が載っているが、日本仕様の車に載っている物と同じかはこの掲載だけでは決められないので、交換品はトランクに今載っているバッテリーのラベル(容量・形式番号・種類)を見て決めるか、車台番号でディーラーに品番を問い合わせて決める。交換したあとは診断機での登録まで済ませて作業が終わる。
E90 M3 のバッテリーの場所と型番の決め方、登録の要否
先に答えを 3 つにまとめておく。
- 場所:BMW の整備手順の解説サイト(BMW Repair Guide)によると、2007〜2013 年の 3 シリーズ(E90・E92・E93。車種の表に E90 M3 も含まれる)では、バッテリーはトランクの右側にあり、右側の内張りのカバーを外すと見える。
- 型番:米国の BMW 純正部品の通販の掲載では、E90 型 M3 セダンに当てはまる純正のバッテリーが 70Ah・80Ah・92Ah の 3 つあり、1 つの型番には決まらない。今のバッテリーのラベルで決めるか、車台番号でディーラーに品番を問い合わせる。
- 登録:2006 年以降の 3 シリーズ(E90・E91・E92・E93)は、交換後に診断機でバッテリーの登録が要る。
それぞれの理由と手順を、以下の節で順に説明する。
対象の車(E90 型 M3 セダン・ABA-VA40)
国内の中古車カタログでは、E90 型の BMW M3 セダンの日本での型式は ABA-VA40。エンジンは S65B40A 型の V 型 8 気筒(4000cc)で、駆動は FR。M3 セダンの販売期間として 2008 年 3 月からの期間が載っていて、変速機は 6MT と 7AT がある。
車検証の型式欄が ABA-VA40 の車を対象に話を進める。同じ車のほかの作業は次の記事にまとめてある。
純正のバッテリーの品番と容量
容量ごとの純正品番
米国の BMW 純正部品の通販の掲載では、E90 型の M3 セダンに当てはまる純正のバッテリーとして、次の 3 つが載っている。
| 容量 | 純正品番 | 掲載上の対象の年式・車体 |
|---|---|---|
| 70Ah | 61212353806(後継の品番は 61212353817) | 2008〜2011 年の E90 セダン |
| 80Ah | 61212353808 | 2008〜2013 年の E92 クーペと E90 セダン |
| 92Ah | 61212353812(後継の品番は 61215A40E29) | 2008〜2013 年の E90 セダン・E92 クーペ・E93 カブリオレ |
年式は米国の通販の表記で、日本仕様の車に載っている物と同じかは、この掲載だけでは決められない。また、掲載の品名には容量は書かれているが、AGM か液式(開放型)かは書かれていない。
今のバッテリーのラベルで確かめる
品番が複数ある以上、型番を決める手がかりは今の車に載っているバッテリーになる。トランク右側のカバーを外し、ラベルの容量(Ah)・形式番号・種類(AGM か液式か)を書き留めておく。ラベルが読めない、または前の持ち主が純正と違う物に替えている心配があるなら、車検証に載っている車台番号を伝えてディーラーに品番を問い合わせるのが確実だ。
欧州車用バッテリーの形式番号とサイズの読み方
形式番号の読み方
パナソニックの説明では、欧州車用(DIN 規格)のバッテリーの形式番号は次のように読む。例として「5 55-59」の形で示されている。
- 先頭の 1 桁:5 なら 12V で 100Ah 未満、6 なら 12V で 100Ah 以上
- 次の 2 桁:20 時間率の公称容量
- 後ろの番号:そのバッテリーの固有の番号で、端子の位置やケースの形を示す
ラベルに形式番号があれば、先頭と次の 2 桁で容量の見当がつき、後ろの番号で端子の位置やケースの形の違いを見分けられる。
LN 規格の寸法
パナソニックのバッテリーの互換表では、LN 規格の寸法は次のとおり。
| 呼び名 | 長さ | 幅 | 高さ |
|---|---|---|---|
| LN1 | 212mm | 175mm | 190mm |
| LN2 | 246mm | 175mm | 190mm |
| LN3 | 278mm | 175mm | 190mm |
| LN5 | 353mm | 175mm | 190mm |
LN4 はこの表に載っていない。幅と高さはどれも同じで、違うのは長さだ。
E90 M3 の純正の各容量(70Ah・80Ah・92Ah)が LN 規格のどのサイズに当たるかは、確かめた出典には書かれていない。LN の呼び名だけで選ばず、今のバッテリーの長さを実際に測って、同じ長さの物を選ぶ。
交換するバッテリーの選び方
BMW の整備手順の解説サイトは、今と同じ種類(AGM か液式か)で、外形の長さが同じ物を選ぶよう勧めている。これを踏まえて、基準は次の 3 つにそろえる。
- 種類:今のバッテリーと同じ AGM か液式か
- 大きさ:今のバッテリーと同じ外形の長さで、トランクの台とサポートレールに収まること(LN の呼び名ではなく実測の長さで比べる)
- 容量:今のバッテリーのラベルの容量(Ah)にそろえる
迷ったら、この順で優先する。種類と長さが合わない物は、容量が合っていても候補から外す。液式から AGM に替えたいときは、交換後の登録の作業の中でその変更を充電を制御するコンピューターに知らせる必要がある。
BMW の別の世代のバッテリー交換は、次の記事にある。
トランクのバッテリーの交換の手順
手順の出典は、BMW の整備手順の解説サイトにある 2011 年式 335i セダンでの作業例だ。出典は 2007〜2013 年の 3 シリーズに小さな違いで当てはまるとし、車種の表に M3 も挙げているが、M3 だけの違いは書かれていない。作業の前に、自分の車の内張りや留め具の形を見て確かめてほしい。
内張りとブラケットを外す
トランク右側の内張りのカバーの留めを回して、カバーを外す。次にロールオーバーブラケットの 10mm のボルト 2 本を外してブラケットを外し、長いエクステンション(約 20〜30cm)を付けたソケットで 10mm のバッテリーサポートレールを外す。
マイナスから外す
10mm のソケットで、マイナスのケーブルを先にバッテリーの端子から外す。マイナスのケーブルに付いている IBS のコネクタの留めをつまんで、コネクタも外す。
プラスを外してバッテリーを出す
プラスのケーブルを車体に留めている樹脂のバンドを外す。プラスの端子のカバーを上げて 10mm のソケットでケーブルをゆるめ、両側の金属の留めを押し下げて、プラスのケーブルの一式をまとめて持ち上げて外す。
最後に取っ手を持ってバッテリーを持ち上げて出す。バッテリーはとても重いので、手伝ってくれる人と 2 人で作業するよう勧められている。
取り付けは逆の順
新しいバッテリーの取り付けは、外したときと逆の順で行う。サポートレールのボルトは、10mm のソケットの先にマスキングテープを詰めてボルトを保持し、レールを置いて手でボルトを掛けてから締めると落とさずに済む。取り付けが終わったら、次の節の登録に進む。
交換後のバッテリーの登録
登録が要る理由
米国の整備業界誌 MOTOR によると、2006 年以降の 3 シリーズ(E90・E91・E92・E93)は、オルタネーターを制御するコンピューターが、新しいバッテリーを古いバッテリーと同じようには充電しない。そのため交換後にバッテリーの登録が要り、MOTOR は該当する BMW では新しいバッテリーを必ず登録するよう勧めている。BMW の整備手順の解説サイトも、登録は新しいバッテリーが付いたことをエンジンの制御装置(DME)に知らせるためで、バッテリーの寿命を保つために行うとしている。
液式から AGM に替えたときは、その変更も登録の作業の中で充電を制御するコンピューターに知らせる。
登録を飛ばすとどうなるか
MOTOR によると、登録を飛ばすとバッテリーの寿命が大きく縮むことがあり、AGM のバッテリーは過充電で寿命が縮むおそれがある。しかも登録を飛ばしても、故障コードは出ず、警告灯も点かない。車が何も知らせないので、忘れたまま乗り続けやすい。
登録に要る道具
登録の作業そのものは簡単だが、BMW と正しく通信できる診断機(OBD の差し込み口につなぐスキャンツール)が要る。手持ちの診断機が BMW の登録に対応しているかは、道具の説明で確かめる。道具を持っていなければ、近くの整備工場に頼む道がある。
IBS とは
IBS(インテリジェント・バッテリー・センサー)は、バッテリーのマイナス側のケーブルに付いている部品だ。米国の欧州車の整備工場 Eurowise の整備例では、E90 型 M3(6 速 MT)でバッテリーとあわせて IBS を交換していて、IBS が壊れると一部の制御装置や電装品への電力が制限される、と説明されている。
別の BMW の 12V バッテリーの交換と登録は、次の記事にある。
バッテリーが上がったときのつなぎ方
BMW の整備手順の解説サイトによると、バッテリーが上がると、トランクは手では開けられない。ジャンプスタートは、ボンネットの中にあるプラスの端子にケーブルをつなぎ、マイナス側はストラットブレースのボルトにつなぐ。トランクの中のバッテリーに、ジャンプのケーブルや充電器を直接つながない。
自分で交換するか、店に頼むか
分かれ目は 2 つある。1 つはバッテリーの重さで、トランクの中で重い物を持ち上げる作業になり、2 人での作業が勧められている。もう 1 つは登録の道具で、自分で交換しても、登録できる診断機が無ければ、登録だけを整備工場に頼むことになる。
店に頼むと、部品代のほかに交換の工賃と登録の作業の費用がかかる。BMW の登録に対応した診断機を持っていて、手伝ってくれる人がいるなら自分で交換する価値はある。どちらかが欠けるなら、交換から登録までまとめて店に頼むほうが、手間も行き来も少なくて済む。
ほかの消耗品の交換も一緒に考えるなら、同じ E90 系の記事が参考になる。
よくある質問
同じ容量の物に替えても登録は要る?
要る。2006 年以降の 3 シリーズ(E90・E91・E92・E93)は、容量や種類にかかわらず、新しいバッテリーを付けたら登録する。飛ばしても警告灯は点かないので、自分で覚えておく必要がある。
液式から AGM に変えてもいい?
基本は今と同じ種類を選ぶのが勧められている。変えるときは、登録の作業の中で種類の変更を充電を制御するコンピューターに知らせる必要がある。
純正の品番は 1 つに決まる?
決まらない。米国の BMW 純正部品の通販の掲載では、E90 型 M3 セダン向けに 70Ah・80Ah・92Ah の 3 つが載っていて、日本仕様の車と同じかもその掲載だけでは決められない。今のバッテリーのラベルか、車台番号でのディーラーへの問い合わせで決める。
バッテリーが上がったときはどこにケーブルをつなぐ?
ボンネットの中のプラスの端子と、ストラットブレースのボルト(マイナス側)につなぐ。トランクの中のバッテリーには直接つながない。
まとめ
最初にやることは、トランク右側のカバーを外して、今のバッテリーのラベル(容量・形式番号・種類)を読み、外形の長さを測ることだ。E90 型 M3 セダンの純正品は、米国の BMW 純正部品の通販の掲載に 70Ah・80Ah・92Ah の 3 つがあって 1 つに決まらないので、答えは今付いている現物で確かめるのが早い。ラベルが読めないときは、車検証の車台番号でディーラーに品番を問い合わせる。
- 型番は今のバッテリーのラベルと長さで決める(または車台番号でディーラーに問い合わせる)
- 今と同じ種類(AGM か液式か)・同じ長さの物を選ぶ
- 交換後は診断機で登録する(2006 年以降の 3 シリーズ〈E90・E91・E92・E93〉)

コメント