E90 型の M3 セダンのタイヤ交換は、サイドシル下面にある4か所のジャッキパッドにジャッキを当てて上げ、ホイールボルトをトルクレンチで規定の値まで締めれば済む。気を付けるのは手順そのものより、パッドを割らずに上げること、純正の18インチ・19インチで前用と後用を取り違えないこと、交換後のパンク警告の初期化を忘れないことの3つだ。
ジャッキを当てる場所と締め付けトルク
先に答えを3つ並べる。
- 当てる場所: サイドシル(ロッカーパネル)の下面に付いているジャッキパッド。E90 は新車のときに4個付いていて、ジャッキポイントは左右の前後の4か所になる。BMW の取扱説明書(M3 セダン・2009年版)でも、タイヤ交換の項でこの位置を図で示している。
- 締め付けトルク: BMW の整備書の締め付けトルク表(E90 M3 用)では、ホイールボルトは 120 N·m。
- 道具: 取扱説明書では、タイヤ交換の道具は BMW の販売店で別売りのアクセサリーとして用意されている。ジャッキなどは自分で用意する。
対象は E90(セダン)の M3(2008〜2011年)
E90(セダン)の M3 は2008年に登場し、セダンの生産は2011年に終わった。同じ世代のクーペ(E92)は2013年7月まで作られたが、パッドの扱いは違う。米国の BMW 部品販売店の適合一覧の注記では、交換用のジャッキパッドが合うのは E90(セダン)だけで、E92(クーペ)と E93(カブリオレ)には合わないとされている。クーペ・カブリオレのパッドはここでは扱わない。
根拠にした取扱説明書は、M3 セダンの2009年版の米国仕様だ。日本仕様や年式によって、装備(パンク修理キット・空気圧の警告の仕組み)や表の中身が違う場合がある。自分の車の取扱説明書と、運転席側のドアの柱のラベルで確かめてから作業に入ってほしい。
作業の前に決めておく止める場所と安全の手順
BMW の取扱説明書(M3 セダン・2009年版)は、パンクのときの安全の手順として次を挙げている。自宅での履き替えでも、止める場所とブレーキの扱いは同じ考え方で進める。
- 走っている車からできるだけ離れた、固い地面に止める
- ハザードランプを点ける
- パーキングブレーキを掛け、ギアを1速かリバースに入れる
- 同乗者を全員降ろし、ガードレールの外など危険の及ばない所へ移す
- 必要なら警告三角板などを、国の決まりに従って適切な距離に置く
もう1つ、ジャッキだけで支えた車の下に体を入れない。下に潜る作業をするなら、ジャッキで上げた後にジャッキスタンド(ウマ)で支える。作業は平らで固い所で行い、反対側のタイヤに輪止めをする。
用意する道具
道具は車に積まれている前提にせず、次を揃えておく。
- 車体の低い車でも入るフロアジャッキ
- トルクレンチと、ホイールボルトに合うソケット(ボルトの頭の寸法は、自分の車のボルトに当てて確かめる)
- ボルトをゆるめるためのレンチ
- ジャッキの受け皿とジャッキパッドの間に挟むゴムのパッドか、ジャッキパッド用のアダプター
- 輪止め、作業用の手袋
- 盗難防止のロックボルトを付けている車は、その専用のアダプター
ゴムのパッドかアダプターは省かない方がいい。理由は次の節で書く。
ジャッキポイントの位置と当て方
4か所の場所
E90 のジャッキポイントは、サイドシル(ロッカーパネル)の下面にある。そこに硬いブロック状のジャッキパッドが付いていて、左右の前後で4か所。交換するタイヤに近い側のパッドを使う。取扱説明書のタイヤ交換の項の図と、実車の位置を一度見比べておくと迷わない。
車体中央で持ち上げる位置は、E90 M3 の資料で確かめられていないので、ここでは扱わない。4か所のジャッキパッドだけを使う。
パッドを傷めない当て方
フロアジャッキの金属の受け皿を直にジャッキパッドへ当てると、パッドを割ったりつぶしたりしやすい。受け皿とパッドの間にゴムのパッドかアダプターを挟み、パッドの中心に真っすぐ当ててから、少しずつ上げる。
当てる前に、4か所のパッドが割れたり抜けたりしていないかも見ておく。傷んでいたときの対処は後の節にまとめた。
タイヤ交換の手順
- ボルトを少しゆるめる: タイヤが地面に着いたまま、交換するタイヤのホイールボルトを少しだけゆるめる。上げてからだとタイヤが回ってゆるめにくい。
- 上げる: 交換するタイヤの側のジャッキパッドにジャッキを当て、タイヤが地面から少し浮くまで上げる。
- 外す: ホイールボルトを外してタイヤを外す。最後の1本を外すときは、タイヤが落ちないように手で支える。外したボルトは砂などが付かない所に置く。
- 付けて仮締め: 付けるタイヤの穴をハブに合わせ、ボルトを手で回して入れてから、対角の順に軽く締める。ここで前用と後用のサイズを取り違えていないか確かめる。
- 下ろして本締め: ジャッキを下ろしてタイヤに車の重さが掛かってから、トルクレンチで規定のトルクまで対角の順に締める。
ホイールボルトの締め付けトルクと確かめ方
BMW の整備書の締め付けトルク表(E90 M3 の巻)では、ホイールボルト(ねじは M12x1.5)の締め付けトルクは 120 N·m。取り付けた後に、全部のホイールボルトのトルクをもう一度確かめるよう指示している。この表は2007年12月の版で、「次の版が出るまで有効」と断っている。
締め方は、1本を締め切らずに対角の順で少しずつ締めていく。インパクトレンチで一気に締め込まず、最後はトルクレンチで規定の値に合わせる。交換の後しばらく走ったら、もう一度トルクを確かめる。
社外のホイールや社外のボルトに替えている場合は、そのホイールやボルトのメーカーの指定も確かめる。
取扱説明書の表に載るタイヤサイズと前後の違い
BMW の取扱説明書(M3 セダン・米国仕様・2009年版)の空気圧の表に載るタイヤサイズは次のとおり。
| ホイール | 前 | 後 |
|---|---|---|
| 18インチ | 245/40 ZR 18 | 265/40 ZR 18 |
| 19インチ | 245/35 ZR 19 | 265/35 ZR 19 |
ほかに 235/40 R 18 M+S も載っているが、前後の別の記載は無い。
18インチ・19インチの純正サイズは前と後で幅が違うので、前後を入れ替えるローテーションはできない。夏冬の履き替えでは、外したタイヤに前・後と左右の印を付けておくと、次に付けるときの取り違えを防げる。
交換の後にやること
空気圧
取扱説明書では、空気圧の指定値は運転席側のドアを開けたドアの柱にも書かれている。空気圧はタイヤが冷えているとき、つまり走った距離が2km以内か、2時間以上止めた後に確かめる。空気圧を直したら、続けてパンク警告の初期化をする。
パンク警告の初期化
BMW の取扱説明書(M3 セダン・2009年版)は、空気圧を直したときや、ホイールかタイヤを替えたときは、毎回パンク警告(Flat Tire Monitor)の初期化が要るとしている。センターコンソールのボタンで行う場合は次の流れになる。
- エンジンを掛けて、車が止まった状態にする
- メーターの警告灯が黄色に点くまで、ボタンを約4秒押す
- そのまま走り出す。初期化は走っている間に終わり、終わった知らせは出ない
チェーンを付けたまま初期化しない。また、この仕組みは急な大きい損傷は知らせられない。
取扱説明書には「Flat Tire Monitor の初期化」と「Tire Pressure Monitor のリセット」の両方の書き方があり、見出しに装備による違いを示す印が付いている。自分の車がどちらの仕組みか、操作の道がボタンか iDrive かは、自分の車の取扱説明書で確かめる。
交換の後に走って、足回りから聞き慣れない音が出るときは、音の種類と場所から原因を絞る。
ジャッキパッドが割れた・無くなったときの交換
ジャッキパッドは抜け落ちたり傷んだりすることがある。そうなると下の金属がむき出しになり、さびや腐食のおそれがある。見つけたら早めに交換用を付ける。
交換用を選ぶ目安
米国の BMW 部品販売店の適合一覧では、E90/E91/E92/E93(2006〜2013年)の M3 の行に、BMW 品番 51717237195 と 51717123311 の代わりになるジャッキパッドが載っている。販売店の頁では1個売りだ。ただし同じ一覧の注記では、合うのは E90(セダン)だけとされている。選ぶときは次の3点を見る。
- 品番が 51717237195 か(一覧が E90 の M3 の行に載せる BMW 品番と同じか)
- E90(セダン)用か(E92・E93 は別)
- 純正品か互換品か
取り上げる交換用パッド
販売ページの商品説明(出品者の記載)では、商品名と商品説明に E82・E87・E84・X1・E90・E91 と、116i〜335i・M3 などの名、品番 51717237195 が並び、「BMW互換品」とされている。純正品ではない。
この商品の商品説明は、挙げた車種にグレードや型式の記載がある場合でも、年式・仕様などで合わない場合がある、と断っている。商品名と商品説明の箇条書きのどちらにも、E92(クーペ)・E93(カブリオレ)の記載は無い。品番が上の目安の 51717237195 と同じなので、E90 の M3 セダンで交換用を探すなら候補になるが、自分の車のパッドの品番と照らしてから選ぶ。
BMW E90 用 ジャッキポイント(リフトサポート)品番 51717237195 互換品
出先でパンクしたとき
BMW の取扱説明書(M3 セダン・米国仕様・2009年版)では、パンクの修理キット(M Mobility System)が荷室の床板の下にある。日本仕様の車で載っているかは、自分の車の荷室で確かめる。
使う流れは、シーラントを入れ(コンプレッサーを約3分回す)、すぐに約3km走ってタイヤの中にシーラントを行き渡らせ、その後に空気を入れる。決められた順序を守らないと、シーラントが高い圧力で噴き出すおそれがある。
取扱説明書が挙げる制限は次のとおり。
- 約4mmより大きい傷には効かないことがある
- コンプレッサーは10分を超えて回さない(過熱して壊れるおそれ)
- 空気圧が200kPa以上にならなければ、走るのをやめる
- 修理の後は80km/hを超えない
- 傷んだタイヤとシーラントの瓶は、できるだけ早く交換する
よくある質問
クーペ(E92)も同じジャッキパッドで良い?
良くない。米国の BMW 部品販売店の適合一覧の注記では、品番 51717237195 などの代わりになるジャッキパッドが合うのは E90(セダン)だけで、E92(クーペ)と E93(カブリオレ)には合わないとされている。
ホイールボルトは何 N·m で締める?
BMW の整備書の締め付けトルク表(E90 M3 用)では、M12x1.5 のホイールボルトは 120 N·m。社外のホイールやボルトなら、そのメーカーの指定も確かめる。
タイヤを替えたら警告の初期化は要る?
要る。BMW の取扱説明書(M3 セダン・2009年版)は、ホイールかタイヤを替えたときは毎回パンク警告の初期化が要るとしている。仕組みと操作の道は装備で違うので、「交換の後にやること」の節と自分の車の取扱説明書で確かめる。
ジャッキパッドが取れていたら?
下の金属がむき出しになり、さびや腐食のおそれがある。交換用を選ぶ目安は「ジャッキパッドが割れた・無くなったときの交換」の節にまとめた。
まとめ:作業の前後に確かめること
- 平らで固い所に止め、パーキングブレーキを掛け、反対側のタイヤに輪止めをしたか
- サイドシル下面の4か所のジャッキパッドが割れたり抜けたりしていないか
- 受け皿とパッドの間にゴムのパッドかアダプターを挟んだか
- 前用と後用を取り違えていないか(18インチ・19インチの純正サイズは前後で幅が違う)
- 本締めは対角の順に、E90 M3 の整備書の値 120 N·m で締め、しばらく走った後にもう一度確かめたか
- 空気圧を冷えているときに確かめ、パンク警告の初期化をしたか
同じ E90 の M3 で自分でできる整備は、次の記事にまとめている。
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