夜、対向車とすれ違った瞬間に、片側のヘッドライトだけ光が弱いと気づく。交換球を買おうとして手が止まるのは、ワゴンRが同じ車名のまま20年以上作られ続け、世代ごとに灯火の中身を入れ替えてきたからだ。MH21SからMH95Sまでの間には、ヘッドライトがH4のハロゲン球で済む型式もあれば、ロービームが純正LEDで電球そのものが入っていない型式もある。自分の型式と仕様さえ先に確定させれば、必要な規格は数分で決まる。
型式別バルブ規格の早見表
先に表で当てる。数値と規格はバルブメーカー・LED専門店の車種別適合表(LIGHT COLLECTION/スフィアライト/fcl)に掲載されている値で、年式は西暦に直してある。
ヘッドライトとフォグランプ
前照灯まわりは、同じ型式でもハロゲン仕様とHID仕様・LED仕様で規格が変わる。ここが世代表を読むときの最大の分岐点になる。
| 型式(年式) | 仕様 | ロービーム | ハイビーム | フォグランプ |
|---|---|---|---|---|
| MH21S 前期(2003.9〜2005.8) | ハロゲン | H4 | H4に一体 | H8 |
| MH21S/MH22S 後期(2005.9〜2008.9) | ハロゲン | H4 | H4に一体 | H8 |
| MH23S(2008.9〜2012.9) | ハロゲン | H4 | H4に一体 | H8 |
| MH23S(2008.9〜2012.9) | HID | D2R | H11 | H8 |
| MH34S 前期(2012.9〜2014.7) | ハロゲン | H4 | H4に一体 | 設定なし |
| MH34S/MH44S 後期(2014.8〜2017.2) | ハロゲン | H4 | H4に一体 | H8 |
| MH34S/MH44S 後期(2014.8〜2017.2) | HID | D4R | H9 | H8 |
| MH35S/MH55S(2017.2〜2020.1) | ハロゲン | H4 | H4に一体 | グレード別 |
| MH55S FZ ほか(2017.2〜2020.1) | 純正LED | LED(交換球なし) | HB3 | グレード別 |
| MH85S/MH95S(2020.1〜) | ハロゲン | H4 | H4に一体 | LED |
| MH95S(2020.1〜2022.8) | 純正LED | LED(交換球なし) | HB3 | LED |
ハロゲン仕様のロービームは、MH21SからMH85S/MH95Sまで一貫してH4。20年ぶんの世代をまたいでも規格が変わっていない、この車で最も安定した部分だ。分かれるのはHIDとLEDのグレードで、MH23SのHIDがD2R、MH34S/MH44SのHIDがD4Rと、同じ放電灯でも系統が違う。
そのほかの灯火と室内灯
車幅灯から室内灯までは、前照灯ほど複雑ではない。
| 位置 | MH21S/MH22S | MH23S | MH34S/MH44S | MH35S/MH55S | MH85S/MH95S |
|---|---|---|---|---|---|
| ポジション(車幅灯) | T10 | T10 | T10 | T10 ※LED仕様は純正LED | T10 ※LED仕様は純正LED |
| フロントウインカー | S25 ピン角違い アンバー | T20 ピンチ部違い アンバー | T20 ピンチ部違い アンバー | T20 ピンチ部違い アンバー | T20 ピンチ部違い アンバー |
| リアウインカー | 前期 T20/後期 S25 | S25 ピン角違い | S25 ピン角違い | T20 ピンチ部違い アンバー | T20 ピンチ部違い アンバー |
| テール/ストップ | 前期 T20ダブル/後期 S25ダブル | T20 ダブル | 前期 LED/後期 T20ダブル | 交換球の設定なし | 交換球の設定なし |
| バックランプ | T16 | T16 | T16 | T16 | T16 |
| ナンバー灯 | T10 | T10 | T10 | T10 | T10 |
| ルームランプ | 前 T10/後 T10×31 | 前 T10/後 T10×31 | T10×31 | T10×31 | T10×31 |
適合表にある「設定なし」は、その灯火に差し替え用の電球が用意されていないという意味になる。純正でLEDユニット化されているか、そのグレードに装備自体がないか、のどちらかだ。
世代をまたいで変わらない3か所
表を縦に見ると、どの型式でも動いていない行が3つある。バックランプはT16、ナンバー灯はT10、リアのルームランプはT10×31。ワゴンRのオーナーが最初に手を出す定番のLED化がこの3か所に集中しているのは、規格が世代で割れず、球の入手も交換作業もやさしいからだ。逆にここを間違えるとしたら、型式ではなく球の色や明るさの選び方のほうになる。
H4に「ハイビーム設定なし」と書かれる理由
適合表のハイビーム欄が空欄や「設定なし」になっていて、故障を疑って読み返す人がいる。これは表の抜けではない。
1個の球で2つの光を作っている
H4は、ひとつのガラス球の中にロービーム用とハイビーム用のフィラメントを2本持つ構造をしている。ライトスイッチをハイに入れると点灯するフィラメントが切り替わるだけで、光源そのものは1個のままだ。ハイビーム専用のバルブが独立して存在しないから、適合表のハイビーム欄には書くものがない。ワゴンRのハロゲン仕様は全世代がこの方式で、片側につき前照灯のバルブは1本だけ買えば足りる。
切れ方でどちらのフィラメントが死んだか分かる
H4のフィラメントは片方だけ切れることがある。ロービームは点くのにハイビームだけ点かない、あるいはその逆という症状が出たら、球の寿命を疑う順番が先になる。バルブごと交換すれば両方が復活するため、リレーやスイッチを疑って配線を追う前に、まず新品のH4を挿してみるのが早い。
LED仕様車はハイビームだけ電球が残る
純正LEDヘッドライトのMH55SやMH95Sでは、ロービームがLEDユニットで交換球の設定がない一方、ハイビームにはHB3(9005)のハロゲン球が残っている。ロービームが白く光るのにハイビームだけ黄色っぽい、という見え方になる車はこれが理由だ。ハイビームの色味をロービームに揃えたい場合、交換対象はHB3の1種類だけで済む。
自分のワゴンRがどの仕様かを見分ける
型式が分かっても、ハロゲンかHIDかLEDかを外さないと球を買い間違える。判別は3段階で進める。
車検証の型式と初度登録年月で世代を絞る
車検証の「型式」欄にはMH21S、MH23S、MH34S、MH55Sといった記号が入っている。ここでまず世代が決まる。次に「初度登録年月」を見て、MH21SとMH34Sについては前期か後期かを分ける。MH34Sの前後期の境目は2014年8月で、前期はフォグランプの設定がなく、後期でH8のフォグが加わるという違いが出る。同じMH34Sでも、前期の車にフォグ用のH8を買っても付ける場所がない。
ヘッドライトを点けて色を見る
ハロゲンのH4は、点灯直後から黄色みを帯びた白で安定する。HID(D2R・D4R)は点灯直後にわずかに青みや緑がかった立ち上がりを見せ、数十秒かけて色が落ち着く。純正LEDは点けた瞬間から白く、立ち上がりの色変化がない。夜間に自分でスイッチを入れて数十秒眺めるだけで、3つの仕様はほぼ判別できる。
フォグは同じ世代でもグレードで割れる
MH35S/MH55Sの世代は、フォグの扱いが型式では決まらない。LED専門店の適合表を見ると、この世代のスティングレー系にはH8のハロゲンフォグが記載されている一方、FZなどのLED仕様には交換球の設定がない。フォグだけは型式と年式が合っていても、自分の車のバンパーを覗いて球かLEDかを確かめる工程が要る。MH85S/MH95S世代になると、適合表のフォグはLED表記に統一されている。
世代ごとに引っかかりやすい点
MH21S/MH22Sは前期と後期でリア周りが変わる
初代のMH21S系は、フロントウインカーがS25のピン角違いアンバーで全期共通だが、リアが動く。適合表では前期(2003.9〜2005.8)のリアウインカーがT20、テール/ストップがT20ダブル。後期(2005.9〜2008.9)ではリアウインカーがS25、テール/ストップがS25ダブルに変わっている。リアの球を買うときだけは、MH21Sという型式に加えて年式まで見る。フロント用の感覚でまとめ買いすると、後ろのソケットに入らない。
MH23SのHID仕様はD2RとH11の組み合わせ
MH23SはHID仕様の設定がある世代で、ここが最も混乱しやすい。ハロゲン仕様がH4の1本で完結するのに対し、HID仕様はロービームがD2R、ハイビームが独立してH11、フォグがH8という3種類の構成になる。適合表の表記も別ページに分かれており、ハロゲンの表を見たままHID車の球を買うと、D2Rのソケットに入らないH4が届く。
MH34S/MH44SのHIDはD4RでハイビームはH9
MH34S/MH44Sの後期HID仕様は、ロービームがD4R、ハイビームがH9、フォグがH8。MH23SのD2R+H11とは、ロービーム・ハイビームの両方で規格が違う。同じワゴンRのHID車という括りで部品を使い回すことはできない。D2RとD4Rは水銀の有無やバラストとの組み合わせが異なり、口金の形状も互換ではない。
MH35S以降の純正LEDは交換の単位が変わる
MH55SやMH95Sの純正LEDグレードでは、ロービーム・ポジション・フォグに交換球の設定がない。この位置が暗くなったり点かなくなったりした場合、直す対象は電球ではなくLEDユニットそのものになり、費用の桁も作業の内容も電球交換とは別物になる。一方で、バックランプ・ナンバー灯・ルームランプ・ウインカーには従来どおり電球が残っているため、LED仕様車でも手を入れられる余地は後ろ側と室内に残っている。作業手順を具体的に追いたい場合は、こちらが参考になる。
球を買う前に間違えやすいポイント
規格名が合っていても、現物が入らないという失敗はここから生まれる。
T20の「ピンチ部違い」とS25の「ピン角違い」
適合表のウインカー欄に並ぶ「T20ピンチ部違い」「S25ピン角違い」という但し書きは、飾りではない。T20には根元の切り欠き(ピンチ部)の形が左右対称のものと非対称のものがあり、S25には口金のピンが向かい合わせのものと角度をずらしたものがある。通販で規格名だけを見てT20やS25を選ぶと、ソケットに差し込めないか、差さっても点かない。商品ページの但し書きまで型式に合わせて読む。
ウインカーは橙色(アンバー)の光が要る
ワゴンRのウインカーは、適合表のどの世代を見てもアンバー指定になっている。レンズがクリアな世代では、電球側が橙色に光ることで方向指示器としての色が成立している。ここを白いLEDや透明なバルブに置き換えると、光る色が変わって車検で見られる部分に触れる。ウインカーをLED化する場合は、アンバー発光を明記した製品を選ぶ。
ハイマウントストップランプとテールは触れない世代がある
MH23Sのハイマウントストップランプは適合表でLED表記になっており、MH34S前期はテール/ストップがLEDと記載されている。MH35S以降はテール/ストップに交換球の設定そのものがない。「テールをLEDにしたい」と考えて調べ始めても、その位置がすでにLEDで、交換する電球が存在しない世代のほうが多い。
よくある質問
ワゴンRのヘッドライトは全部H4ですか
ハロゲン仕様であればMH21SからMH85S/MH95SまでH4で共通している。ただしHID仕様とLED仕様は別で、MH23SのHID車はD2R、MH34S/MH44SのHID車はD4R、MH55SやMH95SのLED車はロービームが純正LEDユニットで交換球の設定がない。「ワゴンR=H4」で全部を片付けると、HID車とLED車で外す。
ハイビームのバルブが適合表に載っていません
ハロゲン仕様のワゴンRはH4を使っており、H4は1個の球にロービームとハイビームのフィラメントを両方持っている。ハイビーム専用の球が独立して存在しないため、適合表の欄が空になる。故障や記載漏れではない。なお純正LEDのMH55S・MH95Sだけは、ハイビームにHB3(9005)のハロゲン球が別に付く。
MH35SとMH55Sでバルブの型番は違いますか
MH35SとMH55Sは適合表で同じ行に載っており、ハロゲン仕様であればロービームはどちらもH4になる。分かれるのは型式ではなくグレードで、FZのような純正LEDヘッドライトのグレードはロービームが交換球なし、ハイビームがHB3という構成に変わる。買う前に見るべきは末尾の数字より、自分のグレードの灯火がLEDかどうかになる。
バックランプとナンバー灯だけ替えたいのですが
この2か所は世代を問わず規格が動かない。バックランプがT16、ナンバー灯がT10で、MH21SからMH95Sまで共通している。ワゴンRのLED化で最初に手を付ける場所として選ばれやすいのは、型式を細かく確認しなくても球が合い、工具もほとんど要らないからだ。
純正LEDのロービームが暗くなったら交換できますか
電球を差し替えるという方法が取れない。MH55SやMH95SのLED仕様では、ロービームは灯体と一体のLEDユニットになっており、適合表にも交換球の設定がない。片側だけ暗い・点かないという症状が出た場合は、ユニット単位での修理・交換を前提に見積もりを取ることになる。ハロゲン車のように数千円の球で復活する話とは費用の桁が変わる。
ワゴンRのバルブ選びのまとめ
ワゴンRの灯火は、ハロゲン仕様であれば驚くほど素直だ。ロービームはMH21SからMH95SまでH4のまま、バックランプはT16、ナンバー灯はT10で世代をまたいで動かない。つまずくのは分岐のほうで、MH23SのHIDがD2R+H11、MH34S/MH44SのHIDがD4R+H9、MH55S・MH95SのLED仕様はロービームが交換不可でハイビームだけHB3という構成になる。ウインカーのT20とS25も、ピンチ部やピン角の違いまで見ないと現物が入らない。車検証の型式と初度登録年月を押さえ、ヘッドライトを点灯させて色の立ち上がりを確認する。この2手を先に済ませてから表を引けば、買い間違いはほぼ起きない。

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