車検の見積もりでブレーキパッド交換を出され、部品だけ通販で買って工場に持ち込もうとした人が、まず引っかかるのがここだ。車検証の型式を入れて検索しても候補が1つに絞れない。フィットは同じ型式でも、フロントに履いているホイールのインチと、リヤがドラムかディスクかで指定品番が変わるからだ。先に確定させるのは型式・フロントのインチ・リヤの形式の3点で、そこまで決まれば、あとは純正相当で戻すか効きとダストを変えるかの選択しか残らない。
買う前に確定させる3点
曙ブレーキ工業と Astemo が公開している車種適用表を並べると、フィットで品番が割れる条件は3つに集約できる。世代と型式、フロント側の装着ホイールまたはタイヤのインチ、そしてリヤがドラム(ブレーキシュー)かディスク(ブレーキパッド)かだ。車検証の型式欄だけでは1つに決まらないため、購入前に型式・初度登録年月に加えて、装着ホイールのインチとリヤブレーキの形式を確認し、販売店またはメーカーの適用表で照合しておく。
| 確定させる項目 | 見る場所 | 分かれ方の例 |
|---|---|---|
| 型式と初度登録年月 | 車検証 | GE6・GK3・GR3 など世代ごとに別品番 |
| フロントのインチ | 装着しているホイールとタイヤ | GE6・GK3 は14インチと15インチで別品番 |
| リヤの形式 | リヤの足まわり | ドラムならシュー、ディスクならパッド |
もうひとつ、ブレーキパッドはフロント用とリヤ用が別部品で品番も別だ。曙ブレーキの適用表もフロント欄とリヤー欄が独立していて、同じ型式でも前後で違う品番が指定されている。1台分をまとめて交換するなら、フロント用とリヤ用をそれぞれ用意することになる。
フィットの世代と型式・年式
曙ブレーキ工業の車種適用表に載っている型式と年式の対応は次のとおり。車検証の型式をこの表に当てて、自分がどの世代かをまず特定する。
| 世代の区分 | 型式 | 年式 |
|---|---|---|
| 2代目(1300cc) | GE6・GE7 | H19.10〜H25.9 |
| 2代目(1500cc) | GE8・GE9 | H19.10〜H25.9 |
| 3代目(1300cc) | GK3・GK4 | H25.9〜R2.2 |
| 3代目(1500cc) | GK5・GK6 | H25.9〜R2.2 |
| ハイブリッド | GP1 | H22.10〜H25.9 |
| ハイブリッド | GP4 | H24.5〜H25.9 |
| ハイブリッド | GP5 | H25.9〜R2.2 |
| ハイブリッド(4WD) | GP6 | H26.1〜R2.2 |
| 4代目 | GR1・GR2・GR5・GR7/GR3・GR4・GR6・GR8 | R2.2〜 |
| 4代目 | GS4・GS5・GS6・GS7 | R4.10〜 |
現行型については、ホンダが公開している主要諸元表に 6AA-GR3・6AA-GR4・6AA-GR6・6AA-GR8・5BA-GS4・5BA-GS6 が記載されている。同じ表のタイヤサイズは 185/60R15・185/60R16・185/55R16 の設定だ。
フロントはインチ違いで品番が割れる
世代をまたいで共通する品番がある
曙ブレーキの適用表では、フロントの AN-763WK が GE6〜GE9 の後期(H21.11〜H25.9)から GK3・GK4・GK5・GK6、ハイブリッドの GP1・GP4・GP5・GP6、さらに GR1〜GR8・GS4〜GS7 まで広く指定されている。フロント側は世代が変わっても同じ品番が使える車型が多い、というのがフィットの特徴的なところだ。Astemo のカタログでも、GK3 の LF・S パッケージ(13G を除く)以降、GK4・GK5・GK6・GP1・GP4・GP5・GP6 と GR1〜GR8 まで HH015Z が指定されている(GK3 の 13G はフロント欄が「-」で設定がない)。
ただし、各社の適用表はそれぞれ自社品番の適合を示しているだけで、曙と Astemo の品番どうしが同じ物だという確認は取れていない。どちらか一方のメーカーで揃えて選ぶ。
GE6 と GK3 はインチで別品番になる
共通化されているとはいえ、例外が2つある。曙ブレーキの適用表では、GE6(1300cc)の標準仕様が H19.10〜H25.9 でフロント AN-378WK・リヤー NN4524(シュー)。ところが15インチアルミホイールを装着したオプション車は H19.10〜H21.11 がフロント AN-376WK、15インチタイヤ装着車は H21.11〜H25.9 がフロント AN-763WK と、同じ GE6 で3通りに分かれる。Astemo 側も GE6 は14インチホイールが HH003Z、15インチホイール(OP)が HH001Z(07.10〜09.11)と HH015Z(09.11〜13.09)に区分されている。
GK3 も同様で、H25.9〜H29.6 の期間は14インチタイヤ装着車がフロント AN-790WK・リヤー NN4524、15インチタイヤ装着車がフロント AN-763WK・リヤー NN4526。H29.7〜R2.2 になると AN-763WK・NN4526 に一本化される。GE6 と GK3 に乗っているなら、型式より先に足元のインチを見る。
リヤはドラムかディスクかで部品名から変わる
適用表の記号でリヤの形式が分かる
曙ブレーキの適用表のリヤー欄には、AN- で始まるディスクブレーキパッドの品番が入る車型と、NN で始まるブレーキシューの品番が入る車型がある。Astemo のカタログも同じ型式の中を「R ドラム」「R ディスク」に区分し、R ドラムの行はリヤ品番が「-」だ。つまりリヤがドラムの車で必要なのはパッドではなくブレーキシューで、「1台分のパッドセット」という買い方はできない。
GE8 と GK5 はグレードで前後が入れ替わる
この区分がグレードや装備で入れ替わるのが厄介なところだ。GE8 の RS(5速MT)H21.11〜H25.9 はフロント AN-376WK・リヤー AN-411WK でリヤがディスクパッド、同じ GE8 でも RS(無段変速AT)はフロント AN-763WK・リヤー AN-411WK、X はフロント AN-763WK・リヤー NN4526(シュー)、X の VSA 装着車はリヤー AN-411WK と、前後の品番が組み合わせで変わる。Astemo 側も GE8 を「R ドラム」「R ディスク」「R ディスク(RS MT 車)」「R ディスク(除く RS MT 車)」に分け、RS MT 車のリヤは HH011Z としている。
3代目も同じで、GK5 の標準仕様(H25.9〜R2.2)はフロント AN-763WK・リヤー NN4526(シュー)だが、RS はリヤー AN-411WK(ディスクパッド)。GK6 は H25.9〜R2.2 でフロント AN-763WK・リヤー NN4526 だ。
4代目は前後ともディスク
一方、4代目は迷う要素がない。ホンダの主要諸元表で主ブレーキの種類・形式が前/後とも「油圧式ベンチレーテッドディスク/油圧式ディスク」と記載されていて、曙ブレーキの適用表でも GR1〜GR8(R2.2〜)と GS4〜GS7(R4.10〜)はフロント AN-763WK・リヤー AN-848WK で揃っている。
交換時期は距離の目安と法定点検で見る
ホンダが示す距離の目安
ホンダは交換部品ページで、ブレーキパッドおよびブレーキシューについて「クルマの走行状況によって異なりますが、交換は走行距離30,000kmを目安に行ってください」と案内している。あわせて、ハードなブレーキングを多用したり渋滞走行が多い場合は摩耗が早くなるとしている。3万kmはあくまで目安で、実際の減り方は乗り方で変わるという前提で読む数字だ。
放置したときの影響もホンダが同じページで説明していて、規定値以上に摩耗が進んだまま使い続けると「急速に摩耗が進行して、制動力が低下し、ディスクローターやドラムに損傷を与えることがあります」としている。パッド代だけで済んだはずの出費が、ローターやドラムまで巻き込む。
残量は点検で見てもらう
では残量を自分で測るのかというと、そこは点検に預けるのが現実的だ。ホンダが公開している法定点検の項目一覧では、法定12ヵ月定期点検の「足廻り」に「ブレーキ ディスクとパッドとのすき間」「ブレーキ パッドの摩耗」が入り、法定24ヵ月定期点検にはこれらに加えて「ブレーキ ディスクの摩耗、損傷」も含まれる。同ページは、自動車の使用者には定められた期間ごとの定期点検整備が義務づけられていると記載している。警告灯についても、ディクセルは製品ページで機械式センサーと鳴き止めシムを装着済み(一部品番を除く)とする一方、共通の使用上の注意ではウェアセンサー(残量警告装置)は装着されていない(一部品番除く)としていて、品番ごとに違う。灯りが点くまで待つ前提では組まれていない。
なお、ディクセルが摩耗保証の条件として公表している「パッドは残厚が2mm以下」という値は、保証を適用するかどうかの線引きであって、交換を勧める残量の基準として出されたものではない。
純正相当で戻すか、効きとダストを変えるか
型式とフロント/リヤが決まれば、残る選択は2つに割れる。純正の状態に戻したいだけなら、車種適用表に載っている標準グレードの品番をそのまま買えばいい。効きの物足りなさやブレーキダストの汚れに不満があるなら、社外のグレードアップ品に替える。後者では材質と適正温度域、そして自分の走り方をどこまで想定するかで選ぶ。
材質では差がつかない
材質については、ディクセルの EC・ES はいずれも NAO(ノンアスベスト・オーガニック)で、ホンダの純正相当ブランド HAMP のパッドも材質は100%ノンアスベスト材と案内されている。いまの乗用車用パッドはノンアスベストが前提で、ここでの差はつかない。差が出るのは温度域と想定ステージだ。
温度域と想定ステージで分ける
| 項目 | EC(EXTRA Cruise) | ES(EXTRA Speed) |
|---|---|---|
| 材質 | NAO | NAO |
| 適正温度 | 0〜450℃ | 0〜600℃ |
| SAE J2522 第2フェード Max.μ | 0.50 | 0.48 |
| 同 Ave.μ | 0.41 | 0.35 |
| 同 Min.μ | 0.35 | 0.34 |
| 対象ステージ | ストリート/ワインディング(ノーマル) | ストリート/ワインディング(ノーマル・ハード) |
| 位置づけ | 車検交換・補修タイプ | ストリート・ハイウェイタイプ |
ディクセル自身は、EC をストリートのみで使う人・車検時のブレーキ交換でコストをかけたくない人向け、ES をノーマルパッドの効きが物足りない人・初めてスポーツパッドを試す人向けと整理している。通勤と買い物が主なフィットなら EC の温度域で足りるというのが素直な読み方で、峠を走る頻度があるなら ES を見る。ただし EC についてディクセルは「ECタイプはストリート専用です。サーキットでのご使用はできません」と明記していて、サーキット走行を考えているならこの選択肢は外れる。
型式別に買えるもの
条件が確定した人から順に、そのまま買える品を挙げる。いずれも曙ブレーキやディクセルの適用表で該当する型式の行があるものだが、価格はいずれも Amazon の実売価格(確認時点)で、在庫も価格も変動する。
現行 GR3 に乗っている(フロント)
曙ブレーキの適用表で GR3(R2.2〜)のフロントに指定されているのが AN-763WK。GR3 はホンダの主要諸元表で 6AA-GR3 として載っている1.5Lの e:HEV だ。4代目はリヤもディスクなので、リヤまで手を入れるなら別途 AN-848WK 側を用意することになる。価格は¥5,090(確認時点)。
アケボノ AN-763WK フロント ブレーキパッド(フィット GR3・R2.2〜/1500cc)
出品タイトルには「メーカー純正採用」とあるが、ブランド欄は「ノーブランド品」で、純正部品そのものであることをメーカーの公式資料で確認できたわけではない。ここで言えるのは、曙ブレーキの車種適用表にこの型式とこの品番の組み合わせが載っている、というところまでだ。
GK5 で効きとダストを変えたい(フロント)
3代目の1500ccで、補修ではなく踏んだときの手応えを変えたいならディクセルの EC。¥7,920(確認時点)で、GK5 の H25.9〜R2.1・15X 向けの設定だ。ディクセルは EC の製品ページで、アルファードのフルノーマル車を使い時速80km/hからのフルブレーキングで制動距離を測った自社テストを公開していて、最大・最小を除く3回の平均がノーマルパッド21.87m、EC 18.37m、制動距離が平均で3.5m縮まったとしている(フィットでの測定値ではない点は割り引いて読む)。同じページの価格比較表にはフィット 13/09〜20/01 GK5(RS)の行があり、純正定価の前後合計17,000円に対し EC 定価の前後合計15,800円、差額-1,200円と記載されている。あくまで定価どうしの比較で、実売価格ではない。
DIXCEL EC エクストラクルーズ フロント用(フィット GK5・H25.9〜R2.1 15X)
GE6 の標準仕様(フロント)
2代目の1300ccで14インチのままなら AN-378WK。曙ブレーキの適用表で GE6 の H19.10〜H25.9 のフロントに指定されている品番だ。¥4,490(確認時点)。15インチのオプション車は品番が変わるので、買う前に足元を見る。
アケボノ AN-378WK フロント ブレーキパッド(フィット GE6・H19.10〜H25.9/1300cc)
GE8 の RS・5速MT(リヤ)
リヤがディスクの車型のうち、曙ブレーキの適用表で GE8 の RS(5速MT)H21.11〜H25.9 のリヤーに指定されているのが AN-411WK。¥3,390(確認時点)で、フロント側は同じ行で AN-376WK が指定されている。リヤがシューの車型では使えない。
アケボノ AN-411WK リア ブレーキパッド(フィット GE8 RS 5速MT・H21.11〜H25.9)
部品を買ったあとにやること
取り付けを自分でやるかどうかは、そもそも選択肢に入れないほうがいい。ディクセルは使用上の注意の警告として「ブレーキパッド・ローターは重要保安部品です。交換・取付作業は必ず陸運局認定の整備工場で行って下さい」「ブレーキパッド・ローターの交換は自動車メーカーが発行しているサービスマニュアルに従って行って下さい。また取付前に車への適合をご確認下さい」と明記している。部品だけ通販で買って、取り付けは整備工場に頼むのが部品メーカー側の想定する使い方だ。
工場に渡すときに一緒に伝えておくことが2つある。1つは左右同時交換で、ディクセルは片輪のみの交換はブレーキの片効きの原因になり危険だとしている。もう1つはディスクローターの状態確認で、同社はパッド交換の際にローターの異常摩耗・段減り・クラック・振れがないかを点検するよう案内している。ローターの摩耗限界値は各ローターに「MIN TH ○○」と刻印されていて、値は品番ごとに違う。
受け取った部品を持ち込むときの扱いにも注意がいる。ディクセルは、摩擦材に含まれる金属繊維が手に刺さる恐れがあるとして手袋の使用を求めているほか、走行直後はパッドやローターが高温で危険なため十分に冷えてから作業するよう注意している。交換後についても、パッドとローターに当たりが出るまでは制動力が一般的に若干低下するとしていて、しばらくは無理なブレーキングを避けて走ることになる。
よくある質問
同じ型式なのに適合品番が違うと表示されるのはなぜですか
フィットは型式が同じでも、装着ホイールやタイヤのインチ、グレード、リヤがドラムかディスクか、VSA 装着の有無で適用表の行が分かれるためだ。GE6 と GK3 はインチ違い、GE8 と GK5 はグレード違いで指定品番が変わる代表例になっている。
リヤの部品が「ブレーキパッド」で出てこないのはなぜですか
その車型のリヤがドラムブレーキだからだ。曙ブレーキの適用表ではリヤー欄に NN で始まるブレーキシューの品番が入り、Astemo のカタログでも R ドラムの行はリヤのパッド品番が「-」になっている。探す部品名を「ブレーキシュー」に変える。
何kmで交換すればよいですか
ホンダは走行距離30,000kmを目安と案内している。ただし乗り方で摩耗の進み方は変わるので、法定12ヵ月点検・24ヵ月点検にパッドの摩耗点検が項目として入っていることを使い、点検のたびに残量を見てもらう流れにしておくほうが確かだ。
フロントだけ交換してもよいですか
前後は別部品なので、フロントだけの交換自体は成り立つ。ただし左右は必ずセットで、ディクセルは片輪のみの交換を片効きの原因として避けるよう求めている。前後どちらを替えるべきかは残量次第なので、点検の結果で決める。
パッドと一緒にディスクローターも替えるべきですか
ディクセルは同時交換が望ましいとしたうえで、新車時にパッドをグレードアップさせる場合などローターが全く摩耗していない状態なら交換の必要はない、逆にローター表面がレコード盤のようだったりエッジが立っているような状態なら必ず交換が必要、と説明している。判断は現物を見てからになる。
まとめ
買う前に手を動かす順番はこれだけだ。
- 車検証で型式と初度登録年月を読む(GE6・GK3 なら足元のインチも見る)
- リヤがドラムかディスクかを確認する(ドラムならパッドではなくシュー)
- 純正相当で戻すのか、効きとダストを変えたいのかを決める
- 選んだ品番を販売店またはメーカーの適用表で照合する
- 取り付けは陸運局認定の整備工場に頼み、左右同時交換とローターの点検を伝える
型式と3つの条件さえ確定すれば、フィットのブレーキパッド選びで外す余地はほとんどなくなる。
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