後席を倒したフィットの荷室に寝袋だけを敷いて横になると、背中の下に段差の稜線が当たって朝まで眠れない。原因はマットの品質ではなく、寝床として使える床が何ミリあるのかを測らないままマットを選んだことにある。フィットの荷室は後席を倒しても長さ1,430〜1,440mm、ホイールハウス間の幅は1,010mm(いずれもHonda公表値)で、成人がまっすぐ手足を伸ばせる寸法ではない。この2つの数字から逆算すると、必要なマットの厚みと幅、そして助手席をどう使うかが自動的に決まる。
フィットの寸法と、車中泊で効く数字
Hondaが公表している数字のうち、マット選びに直接効くのは室内寸法ではなく荷室寸法のほうになる。両者は測っている場所が違い、混同すると2倍近い誤差が出る。
室内長1,955mmは寝床の長さではない
現行フィットの客室内寸法は、Honda公式の主要諸元で長さ1,955mm×幅1,445mm×高さ1,260mmと公表されている。この室内長1,955mmはダッシュボードの裏から後席の後ろまでを含んだ数字で、前席のシートやセンターコンソールが占める体積もこの中に入っている。室内長をマットの長さと読み替えると、実際には収まらないサイズを買うことになる。
車中泊で寝床になるのは、後席を倒したあとに残る平面だけになる。フィットの場合、その平面の長さはHondaが荷室長として別に公表している。
荷室長は5名乗車時640〜660mm、後席収納時1,440mm
Honda公式Q&Aの荷室サイズ表によると、フィットの荷室長は5名乗車時で640〜660mm(駆動方式で差がある)、助手席側後席シートを収納した状態で1,440mm、e:HEVの4WDのみ1,430mmとなる。CROSSTAR e:HEVは5名乗車時がFF・4WDとも640mmと注記されている。
つまり後席を倒しても、荷室の床は1.44mしかない。身長160cmの人でも、荷室の中だけで足を伸ばして寝る長さには届かない。 フィットの車中泊がフルフラットのミニバンと同じ発想では成立しないのは、この一点に尽きる。
荷室幅1,010mmと荷室高870mmが上限を決める
同じHonda公式Q&Aで、荷室幅(ホイールハウス)は全タイプ1,010mm、最大幅はe:HEVで1,150mm・ガソリンで1,220mm、荷室高は全タイプ870mmと公表されている。開口部地上高はFFが610mm、4WDが630mm。
マットが接する床面で効くのはホイールハウス間の1,010mmのほうで、最大幅の1,150〜1,220mmはタイヤハウスより上の高さで測った数字になる。厚みのあるマットを敷くほど、実際に使える幅は1,010mmに近づいていく。
| 項目 | Hondaの公表値 |
|---|---|
| 客室内寸法(長さ/幅/高さ) | 1,955 / 1,445 / 1,260 mm |
| 荷室長(5名乗車時) | 640〜660mm |
| 荷室長(助手席側後席シート収納時) | 1,440mm(e:HEV 4WDは1,430mm) |
| 荷室幅(ホイールハウス) | 1,010mm |
| 荷室最大幅 | e:HEV 1,150mm / ガソリン 1,220mm |
| 荷室高 | 870mm |
| 開口部地上高 | FF 610mm / 4WD 630mm |
| 荷室容量(アンダーボックス含む) | e:HEV FF 292L・4WD 227L / ガソリン 308L |
世代で変わる型式と室内寸法
Honda公式の主要諸元では、現行フィットの型式はe:HEVが6AA-GR3(FF)・6AA-GR4(4WD)、CROSSTAR e:HEVが6AA-GR6・6AA-GR8、ガソリンが5BA-GS4・5BA-GS6となっている。2020年からの4代目前期ではガソリンが6BA-GR1・6BA-GR2、CROSSTARのガソリンが6BA-GR5・6BA-GR7で、客室内寸法は前期・現行とも1,955×1,445×1,260mmで変わらない。
3代目(GK系)はガソリンがDBA-GK3〜GK6、ハイブリッドがDAA-GP5・GP6で、客室内寸法は長さ1,935mm×幅1,450mm×高さ1,280mmと公表されている。4代目より室内長は20mm短く、室内高は20mm高い。中古のGK系で車中泊を組む場合も、荷室の実寸は自分の車で測り直す前提になる。
Hondaが公式に案内するシートアレンジは3つ
現行フィットの公式サイトで紹介されているシートアレンジは、ユーティリティー・モード、ロング・モード、トール・モードの3つになる。フィットはHondaがセンタータンクレイアウトと呼ぶ、燃料タンクを前席下に配置するパッケージングを採っており、後席の座面を跳ね上げる動きが成立するのはこの設計による。
ユーティリティー・モード(後席を倒す)
Hondaの説明は「後席をたたむと、より広い空間に。荷室開口部が広く、積み降ろしが楽に。」というもの。車中泊で最初に作る形がこれで、このとき床の長さが前述の1,430〜1,440mmになる。
荷室床と倒した背もたれの間には段差と傾斜が残るため、この状態のままでは平面にならない。 Hondaが数字として公表しているのは荷室の長さ・幅・高さと容量までで、段差の高さは公表値が存在しない。
ロング・モード(助手席まで倒す)
Hondaの説明は「後席と助手席を倒せば長い荷物も詰めるスペースが生まれる。」となる。荷室から助手席の背もたれの上までを一続きに使う形で、成人が足を伸ばして寝るには実質この形しかない。
参考として、2代目(GE系)のHonda公式アーカイブでは、同じ発想のロングモードで長さ2,400mmと公表されていた。現行では長さの公表が無いため、助手席を倒した状態の前後長は実車で測る工程が要る。
トール・モード(座面を跳ね上げる)は寝床にならない
Hondaの説明は「後席の座面をはね上げることで、背の高い荷物も積み込みが可能に。」というもの。座面を跳ね上げて後席の足元に縦方向の空間を作るモードで、床面積そのものは増えない。背の高い荷物を積むためのモードであって、寝るためのモードではない。
車中泊の道具を現地まで運ぶときには効くので、マットやクーラーボックスを立てて積む用途として覚えておくと荷室が片づく。
2代目のリフレッシュモードとの違い
2代目のHonda公式アーカイブには、フロントシートを倒してセミフラットの空間を作るリフレッシュモードの記載があり、ロングモード2,400mm・トールモード高さ1,280mmという数値も併記されていた。現行フィットの公式サイトではリフレッシュモードの名称は使われておらず、案内は3モードにまとまっている。
呼び名が消えても前席が倒れる構造そのものは残っているため、実際の運用は助手席を倒して足を逃がすという2代目と同じ発想になる。ただし公表値が無い以上、寸法は実測が前提になる。
段差と傾斜は自分で測る
Hondaが公表しているのは荷室の長さ・幅・高さ・容量までで、後席を倒したときにできる段差の高さと背もたれの傾斜は公表されていない。マットの厚みを決める数字がまさにここにあるため、車中泊マットを選ぶ前にメジャーを入れる工程が要る。
測るのは3か所
1つ目は、荷室の床から倒した後席背もたれの最も高い位置までの段差。2つ目は、背もたれ面の傾斜が生む前後の高低差。3つ目は、寝る向きに実際に体を置いたとき、肩と腰が乗る位置の高さの差になる。
計測には金属製の直尺を1本渡してから測ると誤差が減る。柔らかいメジャーを床の凹凸に沿わせると、段差を実際より小さく読み違える。
段差を厚みに翻訳する
測った段差が30mmなら、30mm以上沈み込まない厚みのマットが要る。人が乗った状態で潰れた後の厚みが問題になるため、カタログ上の厚みではなく、体重をかけたときに残る厚みで考える。厚み50mmのマットでも、体重で20mmまで潰れれば30mmの段差は消えない。
段差が大きい場合は、マット1枚で埋めようとせず、低い側にタオルやクッションを詰めて下地を作ってからマットを重ねるほうが安定する。
天井までの残り高さも見る
Hondaが荷室高として公表している870mmを基準にすると、厚み100mmのマットを敷いた分だけ頭上の余裕が減る。座って着替える、荷物を探すといった動作を車内でするなら、この残り高さが自分の座高を下回っていないかを先に確かめておく。
厚いマットは寝心地を上げる一方で、車内での身動きを削る。段差が埋まる最小の厚みを選ぶのが、全長4m級のフィットでは効いてくる。
フィットの車中泊マットの選び方
寸法が出たら、マットは厚み・幅・長さ・構造の4点で絞れる。フィットの荷室では、幅と長さの制約が先に効く。
厚みは段差の実測値から逆算する
段差が小さければ薄いマットで足り、大きければ厚みが要る。フィットは後席の座面が薄く畳めるぶんミニバンほど大きな段差にはなりにくい一方、背もたれの傾斜が残るため頭側と足側で高さが変わる。
段差の実測値に対して、体重をかけて潰れた後も残る厚みを確保できるマットを選ぶ。 インフレーターマットの厚み表記は膨らんだ状態の数字なので、寝たときの沈み込みを見込んで一段厚いものを取るのが安全側になる。
幅は室内幅1,445mmで選ばない
室内幅1,445mmはドアの内張り間で測った数字で、荷室の床面ではホイールハウス間の1,010mmが効く。幅600mm前後のシングルマットなら余裕をもって収まり、2枚並べて1,200mmにするとホイールハウスに乗り上げる。
フィットの荷室は、大人2人が横に並んで寝る幅の車ではない。 2人で使うなら、1人が荷室、もう1人がロング・モードで助手席側を縦に使う形になる。
長さは1,440mmで割り切るか、助手席を使うか
荷室だけで完結させるなら、長さ1,400mm前後のマットを選び、膝を曲げて寝る形になる。身長の低い人や子どもならこれで収まり、設営も撤収も速い。
成人が足を伸ばすなら、ロング・モードで助手席を前に出して背もたれを倒し、荷室から助手席までを一続きの面にする。この場合、マットは1,800〜1,900mm級の長尺か、短いマットを2枚継ぐ形になる。継ぎ目が腰の下に来ないよう、置く位置を決めてから枚数を決める。
インフレーターマットとエアマットの使い分け
自動膨張式のインフレーターマットは、バルブを開けると中のウレタンが復元して膨らむ構造で、段差の吸収と地面からの断熱を同時に稼げる。空気だけのエアマットは軽く畳めて厚みを出しやすい反面、底づきしやすく、冬は下から冷える。
フィットのように段差を埋める目的が主なら、ウレタン入りのインフレーターマットのほうが計算が立つ。荷室容量はe:HEVのFFで292L、ガソリンで308L(いずれもアンダーボックス含む・Honda公表値)なので、畳んだマットの収納サイズも積載計画に入れておく。
マット以外に効く車中泊の装備
マットで背中の問題が消えても、光・空気・電気の3つが残る。フィットは全長4m級で車内の空気量が少なく、この3つの影響が大きく出る。
目隠しと遮光
窓からの視線と朝日を遮ると、睡眠の質が変わる。フィットは前方視界を広く取った設計でガラス面積が大きいため、囲うべき面積もそのぶん広くなる。
吸盤式の簡易シェードは結露で剥がれ落ちることがあるため、車種別の形状に合わせたものを選ぶほうが手間が減る。 目隠しの選び方は、フィット用サンシェードの記事で遮光率と形状別に扱っている。
換気と結露
締め切った車内では、呼気の水分が窓とルーフの内側に結露する。窓を数センチ開けて空気の通り道を作り、虫の侵入が気になる季節は網状のウインドウネットを併用する。
朝の結露を拭き取らないまま走り出すと、視界が曇るだけでなく内装のカビにつながる。吸水タオルを1枚積んでおくと処理が早い。
車内の明かりと電源
エンジンを止めた車内は完全に暗くなるため、手元を照らす光源が要る。天井のルームランプを一晩点けるとバッテリーを消耗するので、ランタンやLEDライトを別に持ち込むのが基本になる。
充電はポータブル電源に寄せ、車両のバッテリーからは長時間取らない。停車中に車両側から給電を続けると、翌朝エンジンが始動しない事態を招く。
一酸化炭素と積雪
暖房のためにエンジンをかけたまま眠るのは避ける。特に積雪時はマフラーの排気口が雪で塞がれ、排気ガスが車内に回り込んで一酸化炭素中毒の事故につながる。
寒さは寝袋と断熱性のあるマットで受け止め、エンジンは止めて眠る。マットの断熱性能は、床から奪われる体温を直接減らす方向に効く。
よくある質問
フィットの後席はフルフラットになりますか
後席を倒しても完全な平面にはならず、荷室の床と倒した背もたれの間に段差と傾斜が残る。Hondaは荷室長・荷室幅・荷室高・荷室容量までは公表しているが、倒したときの段差の高さは公表していないため、実車で測ってからマットの厚みを決める形になる。
フィットで大人2人は寝られますか
荷室の床面で効く幅はホイールハウス間の1,010mmで、大人2人が横に並んで寝る幅としては足りない。2人で車中泊をするなら、1人が荷室、もう1人がロング・モードで助手席側を縦に使う分け方が現実的になる。
車中泊マットの厚みは何cmを選べばいいですか
段差の実測値で変わる。測った段差を、体重で潰れた後も埋められる厚みが最低ラインになる。一方でHondaが公表する荷室高870mmから厚みを引いた分が頭上の余裕になるため、厚くしすぎると車内での動作が窮屈になる。
CROSSTARやe:HEVで荷室の数字は変わりますか
変わる。Honda公式Q&Aでは、荷室長(助手席側後席シート収納時)はe:HEVの4WDだけ1,430mmで他は1,440mm、荷室最大幅はe:HEVが1,150mm・ガソリンが1,220mm、荷室容量はe:HEVのFFが292L・4WDが227L・ガソリンが308Lと差がついている。CROSSTAR e:HEVは5名乗車時の荷室長がFF・4WDとも640mmと注記されている。
まとめ:測ってから買う
フィットの車中泊マット選びは、カタログの室内長1,955mmではなく、後席を倒したときの荷室長1,430〜1,440mmとホイールハウス間の幅1,010mmから始まる。この床に対して段差を埋める厚みと収まる幅のマットを選び、成人が足を伸ばすならロング・モードで助手席まで倒して長さを作る。
Hondaが公表していない唯一の数字が、段差の高さと背もたれの傾斜になる。これだけは自分の車で測るしかない。メジャーを1本先に積んでおけば、マットの厚みも枚数も迷わずに決まる。

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