夜道でヘッドライトが片側だけ暗くなり、カー用品店の電球コーナーに立ってみたものの、棚に並ぶのは H4、H11、T10 といった記号ばかり——そこで手が止まる人は少なくない。車のバルブは灯火の部位ごとに使える規格が決まっていて、同じ車種でも年式やグレードで中身が入れ替わる。ここでは小糸製作所が公開している型式一覧をもとに、部位別に使われる規格を早見表にまとめ、自分の車の型番を1つに絞り込む手順と、車検で問われる色・明るさの基準まで通しでたどる。
灯火の部位ごとに使う規格は決まっている
バルブの型番は、車種名ではなく「どの灯火に付くか」で大枠が決まる。ヘッドライトなら H4 や H11、ウインカーなら T20 や S25 というように、部位ごとに候補は数種類まで絞られる。まず部位から当たりをつけ、そのうえで車種別の適合を照合するのが最短の道筋になる。
| 灯火の部位 | よく使われる規格 | 形状の要点 |
|---|---|---|
| ヘッドライト(2灯式・ハイとロー一体) | H4 | ダブルフィラメント・12V60/55W |
| ヘッドライト(4灯式・ロービーム) | H7/H11/HB4(9006)/HIR2 | いずれもシングル・12V55W |
| ヘッドライト(4灯式・ハイビーム) | HB3(9005)/H1 | シングルフィラメント |
| ヘッドライト(純正HID) | D2S/D2R/D4S/D4R | 35W・S と R で灯体が違う |
| フォグランプ | H8/H11/H16/H3 | H16 は 12V19W と低め |
| 車幅灯(ポジション) | T10/G18 | T10=12V5W、G18=12V10W |
| ウインカー | T20アンバー/S25アンバー | 12V21W・橙色 |
| テール&ストップ | T20ダブル/S25ダブル | 12V21/5W の2段階 |
| バックランプ | T16/T20シングル/S25シングル | 12V16W〜21W |
| ハイマウントストップ | T16 | 12V16W |
| ルームランプ・マップランプ | T10 | 12V5W(ウェッジ)/12V8W(両口金) |
部位が決まれば候補は数種類まで絞れるものの、最終的にどれが入るかは車種・年式・グレードで変わる。以下、規格ごとの中身を系統別に見ていく。
ヘッドライト・フォグに使うハロゲン球(H系)
小糸製作所の型式一覧では、ハロゲンバルブは用途と口金の組み合わせで整理されている。H4 だけがダブルフィラメント(ハイとローが1本のバルブに同居)で、ほかはシングルフィラメントになる。
| 型式 | 定格 | 口金 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| H1 | 12V55W | P14.5s | 4灯式ヘッドランプ |
| H3 | 12V55W | PK22s | フォグランプ |
| H4 | 12V60/55W | P43t-38 | 2灯式ヘッドランプ(ダブル) |
| H7 | 12V55W | PX26d | 4灯式ヘッドランプ(シングル) |
| H8 | 12V35W | PGJ19-1 | フォグランプ |
| H11 | 12V55W | PGJ19-2 | 4灯式ヘッドランプ・フォグランプ |
| H16 | 12V19W | PGJ19-3 | フォグランプ専用 |
| HB3(9005) | ― | P20d | 4灯式ヘッドランプ(ハイビーム) |
| HB4(9006) | 12V55W | P22d | 4灯式ヘッドランプ(ロービーム) |
| HIR2 | 12V55W | PX22d | 4灯式ヘッドランプ |
H8・H11・H16 は口金がいずれも PGJ19 系(-1/-2/-3)で見た目が近いが、爪の位置が違うため差し替えは成立しない。なお HB3 の定格は小糸の資料でも掲載ページによって 12V60W と 12V65W で表記が分かれるため、買う前に製品側の表示を見ておく。
純正HIDに使うディスチャージ球(D系)
純正で HID(ディスチャージ)を積む車は、ハロゲンとは別系統の D 系バルブを使う。小糸のノーマルHIDバルブは、純正交換用として次の4型式が用意されている。
| 型式 | 定格 | 口金 | 色温度 | 対応する灯体 |
|---|---|---|---|---|
| D2S | 85V35W | P32d-2 | 4000K | プロジェクター用 |
| D2R | 85V35W | P32d-3 | 4000K | リフレクタータイプ用 |
| D4S | 42V35W | P32d-5 | 4200K | プロジェクター用 |
| D4R | 42V35W | P32d-6 | 4200K | リフレクタータイプ用 |
D2型とD4型に互換性はないと小糸自身が明記している。点灯電圧が 85V と 42V で違うため、形が似ていても差し替えは通らない。
車幅灯・ウインカー・テールに使う小球(T・S・G系)
ウェッジ球(T系)は樹脂ベースを差し込むタイプ、口金球(S系・G系)は金属の口金をひねって固定するタイプ。同じ数字でも、シングルとダブルで口金の形が変わる。
| 型式 | 定格 | 口金 | フィラメント | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| T10 | 12V5W | W2.1×9.5d | シングル | 車幅灯・サイドウインカー・ルームランプ |
| T10(両口金) | 12V8W | S-8.5/8.5 | シングル | ルームランプ・マップランプ |
| T16 | 12V16W | W2.1×9.5d | シングル | ハイマウントストップ・バックランプ |
| T20 | 12V21/5W | W3×16q | ダブル | ストップ/テール・コーナーリング・車幅灯 |
| T20 | 12V21W | W3×16d | シングル | バックランプ・コーナーリング・ウインカー |
| T20アンバー | 12V21W | WX3×16d | シングル | ウインカー |
| S25 | 12V21/5W | BAY15d | ダブル | テール&ストップ |
| S25 | 12V21W | BA15s | シングル | バックランプ・コーナーリング・ウインカー |
| S25アンバー | 12V21W | BAU15s | シングル | ウインカー(アンバー色) |
| G18 | 12V10W | BA15s | シングル | 車幅灯・サイドウインカー |
型式記号の読み方と間違えやすい組み合わせ
記号は「形が同じかどうか」までは教えてくれない。系統の中で取り違えが起きやすい組み合わせを4つ押さえておく。
HB3(9005)とHB4(9006)は役割が逆
小糸の一覧では HB3 がハイビーム用、HB4 がロービーム用と用途が分かれ、口金も P20d と P22d で違う。数字が近いだけで互換性はなく、入れ替えて使うことはできない。型式一覧では 9005(HB3)/9006(HB4)と数字が併記されているので、製品表示にどちらの書き方が使われていても同じものを指す。
D2とD4、SとRの違い
D2 と D4 は点灯電圧の系統差(85V と 42V)で、S と R は灯体側の違いを表す。S がプロジェクター用、R がリフレクタータイプ用で、灯体の奥にレンズが見えるならプロジェクター、反射鏡が広がって見えるならリフレクターと判別できる。同じ車種でもグレードで灯体が変わることがあるため、実車を覗いて確かめる。
T10とT16は口金が同じで定格が違う
小糸の一覧では、T10(12V5W)も T16(12V16W)も口金は同じ W2.1×9.5d。ソケットの形としては同じで、物理的には入ってしまう。車幅灯用の T10 をバックランプに入れれば暗く、逆に T16 をポジションに入れればレンズやソケットに熱の負担がかかる。数字だけで選ばず、元から付いていた球の定格を控えておく。
同じS25でもピンの形が3種類ある
S25 はテール&ストップ用がダブルの BAY15d、バックランプやウインカー用がシングルの BA15s、橙色のウインカー用が BAU15s。BAU15s はピンの角度が違うため、通常の BA15s のソケットには収まらない。S25 という表記だけを頼りに買うと入らないことがあるのは、この口金差が理由になる。
自分の車のバルブ型番を確定させる手順
早見表で候補を絞ったら、車両側の情報で1つに確定させる。順番は次のとおり。
取扱説明書と現物で確認する
多くの取扱説明書には電球交換のページがあり、部位ごとの型式とワット数が一覧で載っている。手元に無ければ、実際に外した球の樹脂ベースや金属口金の表示を読む。H4・H11・9006 のような型式は球側に表示されていることが多く、外した球の表示を読むのが最も精度の高い確認方法になる。
車種別の電球適合表で引く
電球メーカーやカー用品店は、車名・年式・型式から部位別の電球型番を引ける適合表を公開している。車検証の「型式」欄と初度登録年月を手元に置いてから引くと、前期・後期の切り分けまで含めて絞り込める。年式をまたいで灯体が変わる車種ほど、この照合の価値が大きい。
純正品番から社外品を探す
ディーラーやパーツカタログで純正の電球品番が分かれば、その品番を手がかりに社外品の適合を追える。純正がLEDユニット一体型の車では「電球単体の設定が無い」ことも同時に分かるため、買ってから入らないという失敗を避けられる。
同じ車種でも型番が変わる3つの条件
型番が1つに決まらないときの原因は、たいてい次の3つに集約される。
年式・マイナーチェンジ
同じ車名でも、マイナーチェンジで灯体ごと設計変更されることがある。前期はハロゲンの H11、後期は純正LED、という入れ替わりは珍しくない。初度登録年月を基準に前期・後期を切り分ける。
グレードによる光源の違い
上位グレードだけ純正LEDやHID、下位グレードはハロゲンという作り分けは一般的で、同じ型式の車でも隣の個体と球が違うことがある。カタログのグレード表で光源の記載を追うと早い。
灯体の構造(プロジェクターかリフレクターか)
HID車では、灯体がプロジェクターなら S タイプ(D2S/D4S)、リフレクターなら R タイプ(D2R/D4R)になる。灯体の構造を目で確かめるまで、S か R かは確定しない。
バルブ交換で車検に関わる基準
灯火の色は保安基準で灯火ごとに決められていて、球を替えるときはここから外れないことが前提になる。
灯光の色は灯火ごとに指定されている
| 灯火 | 灯光の色 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| すれ違い用前照灯(ロービーム) | 白色又は淡黄色・すべて同一であること | 第32条 |
| 車幅灯(ポジション) | 白色 | 第34条 |
| 番号灯(ナンバー灯) | 白色 | 第36条 |
| 尾灯(テール) | 赤色 | 第37条 |
| 制動灯(ブレーキ) | 赤色・自動点滅する構造でないこと | 第39条 |
| 後退灯(バック) | 白色 | 第40条 |
| 方向指示器(ウインカー) | 橙色・点滅は毎分60回以上120回以下 | 第41条 |
前照灯の色は条文上「白色又は淡黄色」だが、淡黄色が認められるのは平成17年12月31日以前に製作された車まで。平成18年1月1日以降に製作された車は白色のみとなるため、黄色い光のバルブを前照灯へ入れる改造は年式で可否が分かれる。フォグランプは前照灯とは別の灯火なので、この制限とは扱いが異なる。
明るさと個数の基準
すれ違い用前照灯は数が2個で、夜間に前方40メートルの障害物を確認できる性能が求められる(第32条)。車検の光度は2015年からロービームで測定されるようになり、最低光度は片側6,400カンデラ以上が必要とされる。ワット数を上げれば通るという話ではなく、灯体との相性で配光が崩れれば光度は出ない。
交換前に押さえたい注意点
規格が合っていても、電気的な条件で不具合が出ることがある。
LED化で起きるハイフラと球切れ警告
ウインカーをLEDに替えると消費電力が下がり、点滅が速くなる(ハイフラ)。方向指示器の点滅は毎分60回以上120回以下と決められているため、速すぎる点滅は基準から外れてしまう。抵抗を内蔵したタイプや専用リレーで点滅速度を戻すのが定石で、車種によっては球切れ警告灯が点くこともある。LEDの規格ごとの選び方はLEDバルブの規格と種類で扱っている。
極性とガラス面の扱い
LEDバルブには極性があり、向きが逆だと点灯しない。点かないときは180度回して挿し直すと直ることが多い。ハロゲン球はガラス面を素手で触らない。皮脂が残ったまま点灯させると、その部分だけ温度が上がって寿命を縮める原因になる。
よくある質問
ヘッドライトがH4かH11かを調べる方法は?
灯体が1つでハイとローを兼ねていれば H4 の可能性が高く、ハイとローで灯体が分かれる4灯式なら H7・H11・HB3・HB4・HIR2 のいずれかになる。確定させるには、球を外して型式表示を読むか、車検証の型式と初度登録年月をもとに適合表を引く。
HB3とHB4は入れ替えて使えますか?
使えない。小糸の型式一覧では HB3(9005)がハイビーム用、HB4(9006)がロービーム用で、口金も P20d と P22d と異なる。数字が近いだけで、用途も形状も別物になる。
純正HIDのD2SとD4Sは交換できますか?
できない。小糸は D2型と D4型に互換性が無いことを明記している。定格も D2 が 85V35W、D4 が 42V35W と点灯電圧の段階から違うため、形が似ていても成立しない。
バルブを替えると車検に通らなくなりますか?
色と明るさの基準を外さなければ問題にならない。前照灯なら白色(平成18年1月1日以降に製作された車の場合)で、ロービームの光度が片側6,400カンデラ以上あることが条件になる。色温度を上げすぎて青白い光になると、白色の範囲から外れて不合格の側へ傾く。
まとめ
車のバルブ型番は、まず灯火の部位で候補が数種類に絞られ、そこから車種・年式・グレード・灯体の構造で1つに確定する。ヘッドライトは H4(2灯式)と H7・H11・HB3・HB4・HIR2(4灯式)、純正HIDは D2/D4 の S・R、小球は T10・T16・T20・S25 が主軸になる。数字が近くても口金が違えば入らず、口金が同じでも定格が違えば使い道が変わる(T10 と T16 が典型例)。色は保安基準で灯火ごとに決まっていて、前照灯は平成18年1月1日以降に製作された車で白色のみ。外した球の型式表示を読み、車検証の型式と年式で適合表を照合する——この2手で型番はほぼ確定する。

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