BMW M5 F90 のタイヤを自分で外す場面は、主に出先でのパンクと、季節ごとの履き替えだ。どちらの場面かで、車載ジャッキを使ってよいか、店に任せるかの判断が分かれる。BMW M5 の取扱説明書(2018 年版)に沿った作業の骨組みは、交換するタイヤに最も近い四角い凹みにジャッキを当てて最大 3cm だけ上げ、車を下ろしてからホイールボルトを 140Nm で十字の順に締める、という流れになる。
F90 のジャッキポイントと締め付けトルク
| 項目 | 取扱説明書(2018 年版)の内容 |
|---|---|
| ジャッキポイント | 交換するタイヤに最も近い四角い凹み(ホイールハウスの脇) |
| 持ち上げる高さ | タイヤが地面から最大 3cm 浮くまで |
| ホイールボルトの締め付けトルク | 140Nm(約 101lb ft)。ロックボルトも 140Nm |
| 締める順番 | 十字(対角)の順 |
表と以下の手順は、英国向けの BMW M5 取扱説明書 2018 年版(前期型の時期の版)による。2020 年以降の後期型(LCI)の文言や、日本仕様の車ごとの装備(車載工具・ジャッキ・応急用タイヤの有無)は、自分の車の取扱説明書(車載のデジタル版など)で確かめる。
作業の前に確かめること
車載工具とジャッキの有無
取扱説明書(2018 年版)には「装備によっては」工具と応急用タイヤを車から出す、と書かれている。つまり装備によって、車載のホイール交換工具や応急用タイヤの有無が違う。必要なら、ホイール交換用の工具はメーカーの販売店や整備工場でオプションの用品として手に入る。
JAF(日本自動車連盟)も、最近はジャッキやレンチ、応急用(テンパー)タイヤが標準装備されていない車が増えていると案内している。荷室の工具とパンク修理キットの有無は、パンクする前に見ておく。修理キットを使うときは、空気が抜けてもすぐにホイールを交換しなくてよい場合がある。
車載ジャッキは季節の履き替え向けではない
取扱説明書(2018 年版)では、車両メーカーが用意するジャッキは故障したときのホイール交換のためのもので、夏タイヤから冬タイヤへの履き替えのような頻繁な使用向けではない。頻繁に使うと固着したり傷んだりするおそれがあり、パンクしたときに応急用タイヤやスペアへ替えるときだけ使う、とされている。ほかの車や物を上げるのにも使わない。季節の履き替えは、車載ジャッキで済ませずにタイヤ専門店などへ任せるのが筋だ。
作業場所と車の準備
停める場所と車の状態
取扱説明書(2018 年版)の作業前の準備は次のとおり。
- 交通から安全な距離をとり、硬く滑らない地面に停める
- ハザードランプを点ける
- パーキングブレーキをかけ、セレクトレバーを P に入れる
- 交通の状況が許せば乗っている人を全員降ろし、ガードレールの外など危険な場所の外へ誘導する
- 必要なら停止表示板(または点滅灯)を適切な距離に置く
- 輪止めで車が転がらないようにする
- ジャッキで上げる前に、ホイールボルトを半回転ゆるめておく
タイヤメーカーのブリヂストンは、できるだけ平坦で、舗装された地面やコンクリートの上などの安定した場所で作業し、砂利や土の上は避けるよう案内している。自動車メーカーの一般向けの案内(トヨタ自動車)では、走った直後はホイールやブレーキのまわりが高温でやけどのおそれがあること、レンチを足で踏んで使わないことが挙げられている。
輪止めの置き方
平らな所では、交換するタイヤと対角にあるタイヤの前と後ろに、輪止めか適当な物を置く。緩い下り坂で交換しなければならないときは、前と後ろの車軸のタイヤの、車が転がる向きと反対の側に、輪止めや石などを置く。どちらも取扱説明書(2018 年版)の勧めだ。
ジャッキポイントの位置とジャッキの当て方
ジャッキポイントは四角い凹み
BMW M5 の取扱説明書(2018 年版)では、ジャッキポイントは図で示した印の位置にあり、文章での位置の説明は無い。車載ジャッキは、交換するタイヤに最も近いジャッキポイントの四角い凹みに差し込む。伸ばすときは、ホイールハウス(タイヤの収まる部分)の脇のジャッキポイントにジャッキが導かれていることを確かめる。決められたジャッキポイントから外れていると、伸ばしたときに車を傷めたり、ジャッキが滑ったりするおそれがある。作業の前に、自分の車の取扱説明書の図で印の位置を見ておくと迷わない。
上げる高さは最大 3cm
取扱説明書(2018 年版)のジャッキの使い方は次の順だ。
- 片手でジャッキを持ち、もう片方の手でクランク(またはレバー)を持つ
- 交換するタイヤに最も近いジャッキポイントの四角い凹みにジャッキを導く
- クランクを時計回りに回してジャッキを伸ばす
- ジャッキに荷重がかかったらジャッキから手を離し、片手でクランクを回し続ける
- ジャッキの底がジャッキポイントの真下に垂直に伸びていることを確かめる
- ジャッキの底が地面に全面で接し、交換するタイヤが地面から最大 3cm 浮くまで上げる
手や指を挟むおそれがあるので、決めた手の位置は途中で変えない。
上げた車でやってはいけないこと
取扱説明書(2018 年版)は、ジャッキはホイール交換のときに短い時間だけ車を上げるためのもので、安全の決まりを守っても滑って車が倒れるおそれがあり、けがや死亡の危険があるとしている。次のことはしない。
- ジャッキで上げた車の下に横たわる
- 上げたままエンジンをかける
- ジャッキの下に木の台などを置く(高さが制限されてジャッキが本来の荷重に耐えられず、台の耐荷重を超えて車が倒れるおそれがある)
- 雪・氷・タイルなど柔らかい、凸凹の、滑りやすい地面でジャッキを使う
- 上げた車に横から力をかけたり、急に引っ張ったりする
ホイールの外し方と付け方
ボルトは十字の順で指締めから
取扱説明書(2018 年版)の付け替えの順は次のとおり。
- ホイールボルトを外す
- ホイールを外す
- 新しいホイール(または応急用タイヤ)を当て、少なくとも 2 本のボルトを十字の順で指で締める
- 残りのボルトも指で締めてから、全部のボルトを十字の順で締める
- クランクを反時計回りに回してジャッキを縮め、車を下ろす
- ジャッキを外してしまう
応急用タイヤは、付けるとしても 1 本までとされている。海外のタイヤ・ホイール販売店の車種別データ(Koleso.ee)でも、F90 はナットではなくボルトで留める方式と載っている(規格はサイズの節)。
当てる前に、自動車メーカーの一般向けの案内(トヨタ自動車)が挙げるとおり、ホイールの接触面とボルトのネジ部の汚れをふき取り、手で仮締めして引っ掛かりがあれば販売店で点検を受ける。タイヤメーカーのコンチネンタルタイヤは、ネジ部やホイールとの間にゴミ・砂・サビがあると「偽のトルク」が出て正しく締まらないことがあると説明している。
ロックボルトはアダプターで回す
取扱説明書(2018 年版)では、ロックボルト(盗難防止ボルト)には特殊な符号があり、合うアダプターでしか回せない。アダプターは車載工具のキットか、その中の小物入れにある。
- 外すとき: アダプターをボルトに当てて回し、外したらアダプターを外す
- 付けるとき: アダプターを当て(合わなければ合うまでアダプターを回す)、140Nm で締めてからアダプターを外してしまう
社外ホイールのボルト
取扱説明書(2018 年版)では、車両メーカー以外の社外のアルミホイールを付けるときは、そのホイール用のボルトを使わなければならない場合がある。スチールホイールは付けない、とされている。
本締めはトルクレンチで十字の順に
車を下ろしたら、ボルトを 140Nm で十字(星形)の順に締める。BMW M5 の取扱説明書(2018 年版)も十字の順を指示しており、タイヤメーカーのコンチネンタルタイヤは、ナット(ボルト)が 5〜10 個あるホイールは星を描くように締めていくのが正しい順番と説明している。ブリヂストンは、1 か所をいきなり締めず、2〜3 回に分けて対角線の順で均等に締めるよう案内している。
トルクレンチは用意しておきたい。ブリヂストンは、本締めは必ずトルクレンチで規定のトルクに締めるよう案内し、手で締めると締め付け不足や締めすぎを招き、走行中にホイールが外れる脱輪事故につながる危険があるとしている。コンチネンタルタイヤは、整備士はまず規定トルクの半分で各ナットを締めてから規定のトルクまで締めると説明し、締めすぎるとネジ山がつぶれたり、ブレーキのローターやハブが歪んだりすることもあるとしている。
後期型については、海外のタイヤ・ホイール販売店の車種別データ(Koleso.ee)で、F90 の前期型(2017〜2020 年)と後期型(LCI・2020〜2023 年)のどちらも締め付けトルクは 140Nm と載っている。
交換の後にやること
取扱説明書(2018 年版)の交換後の手順は次のとおり。
- ボルトを十字の順で 140Nm で締める
- 必要なら外したタイヤを荷室に積む(大きさのため荷室の床下には収まらない)
- 次の機会に空気圧を点検して補正する
- ランフラットインジケーター(RPA)を初期化し、タイヤ空気圧モニター(TPM)をリセットする
- 校正したトルクレンチで、ボルトが締まっているか確かめる
- 近くのメーカーの販売店や整備工場で、傷んだタイヤを交換してもらう
空気圧と RPA・TPM のリセット
取扱説明書(2018 年版)では、空気圧は運転席ドアのピラー(柱)に表示されている。タイヤが冷えているとき(走った距離が 2km 以内、または走った後に 2 時間以上止めていたとき)に点検し、月に 2 回や長距離の前など定期的に調整する。空気圧を合わせたら、RPA の初期化と TPM のリセットまで済ませて作業を終える。操作の手順は自分の車の取扱説明書の該当の節で確かめる。
増し締めの目安
増し締めの距離は、BMW の取扱説明書(2018 年版)には記載が無く、交換の後に校正したトルクレンチでボルトの締まりを確かめるよう書かれている。距離の目安はタイヤメーカーの一般の案内によるもので、コンチネンタルタイヤは交換後 50〜100km を目安に走ってからの増し締めを、ブリヂストンは約 100km 走った段階でトルクレンチによる点検を勧めている。走ることで部品がなじみ、初期の緩みが出ることがあるからだ。
交換の後に普段と違う音が出るなど異常を感じたら、すぐに販売店へ相談するよう、自動車メーカーの一般向けの案内(トヨタ自動車)は勧めている。
純正タイヤのサイズとホイールの留め方
海外のタイヤ・ホイール販売店の車種別データ(Koleso.ee)の F90 の行では、純正(OEM)のタイヤは前と後ろでサイズが違う。
| グレード | 前 | 後ろ |
|---|---|---|
| M5 | 275/40ZR19(9.5J×19 ET26) | 285/40ZR19(10.5J×19 ET28) |
| M5 Competition(後期型は M5 CS も) | 275/35ZR20(9.5J×20 ET28) | 285/35ZR20(10.5J×20 ET28) |
同じデータでは、ホイールはボルト(Lug bolts)で留める方式で、ねじの規格は M14×1.25、PCD は 5×112、ハブ径は 66.6mm と載っている(前期型・後期型とも同じ)。履き替え用のタイヤを買うときは、前と後ろのサイズをそれぞれ自分の車のタイヤの側面で確かめてから選ぶ。社外ホイールのボルトとスチールホイールの扱いは、付け方の節のとおりだ。
パンクしたときは修理キットの制限を守る
BMW M5 の取扱説明書(2018 年版)のホイールとタイヤの章(空気圧からホイール交換までの節)には、ランフラットタイヤの節とスペアタイヤの節が無く、パンクしたときはパンク修理キット(Mobility System)を使う構成になっている。空気が少ない・抜けた通常のタイヤは操縦や制動を損なうので、走り続けずに、パンクを修理するかホイールを交換する、と書かれている。
同じ取扱説明書による Mobility System の使い方と制限は次のとおり。
- 荷室の左側の収納にあり、液体のシーラントをタイヤに入れて小さな損傷を内側からふさぐ
- 約 4mm より大きい損傷には効かないことがある
- 走り続けるには空気圧 2bar 以上が要る
- 入れた後すぐに約 10km 走り、シーラントをタイヤの中に行き渡らせる
- 速度は 80km/h を超えない
- シーラントで TPM のホイール側の電子部品が傷むことがあり、その場合は早めに交換する
- 容器の使用期限を確かめ、パンクしたタイヤと容器はできるだけ早く交換する
自分でやらずに店や JAF に頼む場面
次のどれかに当てはまるなら、無理に自分で作業しない。
- 作業場所で安全を確保できない、手順に分からない点がある: ブリヂストンは、無理をせずタイヤ専門店などに頼むよう案内している
- 工具や応急用タイヤがない、整備に慣れていない: JAF は、無理をせず JAF に任せるよう案内している
- トルクレンチがない: JAF は、本締めの後できるだけ早くガソリンスタンドや修理工場などで規定のトルクで締めてもらうよう案内している
- ホイールが固着して外れない: 取扱説明書(2018 年版)は、メーカーの販売店や整備工場で外してもらうよう書いている
店に預けるなら、ほかの整備や取り付けも同じ日にまとめると手間が減る。
よくある質問
F90 に車載ジャッキは付いている?
BMW M5 の取扱説明書(2018 年版)には「装備によっては」工具と応急用タイヤを出す、とあり、装備によって有無が違う。自分の車にあるかは、荷室と自分の車の取扱説明書で確かめる。無ければ、ホイール交換用の工具はメーカーの販売店や整備工場でオプションの用品として手に入る。
ホイールボルトの締め付けトルクは?
BMW M5 の取扱説明書(2018 年版)では 140Nm(約 101lb ft)で、ロックボルトも同じ 140Nm だ。海外のタイヤ・ホイール販売店の車種別データ(Koleso.ee)では、F90 の前期型・後期型(LCI)とも 140Nm と載っている。旧型の F10 は別の車なので、値は F90 と分けて確かめる。
増し締めはいつ?
タイヤメーカーの一般の目安では、コンチネンタルタイヤが交換後 50〜100km、ブリヂストンが約 100km 走った段階を勧めている。BMW の取扱説明書(2018 年版)には増し締めの距離の記載は無い。
冬タイヤへの履き替えに車載ジャッキを使ってよい?
勧めない。取扱説明書(2018 年版)では、車両メーカーのジャッキは故障したときのホイール交換のためのもので、夏タイヤから冬タイヤへの履き替えのような頻繁な使用向けではないとされている。履き替えはタイヤ専門店などに任せたい。
パンクしたら走り続けられる?
取扱説明書(2018 年版)は、空気が少ない・抜けた通常のタイヤで走り続けず、修理するかホイールを交換するよう書いている。同じ取扱説明書のホイールとタイヤの章(空気圧からホイール交換までの節)にはランフラットタイヤの節が無く、パンク修理キット(Mobility System)を使う構成だ。キットで走るときも 80km/h を超えず、約 4mm より大きい損傷には効かないことがある。
まとめ:作業前のチェックリスト
- 荷室に工具・ジャッキ・ロックボルトのアダプター・パンク修理キットがあるか(有無は装備によって違う)
- パンクの応急か、季節の履き替えか(季節の履き替えは店へ)
- 平らで硬い地面、P とパーキングブレーキ、輪止め、上げる前のボルトの半回転ゆるめ
- ジャッキは交換するタイヤに最も近い四角い凹みへ、上げるのは最大 3cm まで
- 車を下ろしてから 140Nm・十字の順で本締め(取扱説明書 2018 年版の値)。トルクレンチが無ければ早めに店で締めてもらう
- 交換後は空気圧の補正、RPA の初期化と TPM のリセット、走った後の増し締め(距離はタイヤメーカーの目安)
- ホイールが固着して外れない、手順に分からない点があるときは店や JAF へ

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