M5 F90 の異音は、音の出る場所と場面、それに年式や装備(ブレーキの種類・走行モードの設定)で答えが分かれる。止まる直前のブレーキの鳴き(米国の2020年型 M5 の技術情報に項がある)や排気音の変化のように、技術情報や仕様の説明がある音もあれば、ハンドルを回したときの音やエンジン付近のガラガラのように急いで点検に出すべき音もある。まず自分の車の音がどこから・どの場面で出ているかを確かめ、そのうえで年式と装備から当てはまる情報を絞っていこう。
M5 F90 の異音は「場所」と「場面」で急ぎ度が分かれる
異音は「どこから(エンジン付近・走行中のタイヤ付近・ハンドル・室内)」と「どんな場面で(走行中・ハンドルを回したとき・止まる直前のブレーキ・座席やハンドルの位置の調整のとき)」で分けると、原因の候補と点検の急ぎ度が絞れる。JAF も異音をエンジン付近・タイヤ付近・ハンドルを回したときの部位別に説明している。
| 音の出る場所・場面 | 原因の候補 | 急ぎ度 |
|---|---|---|
| 走行中にハンドルを回したとき | ハンドル機構の異常の可能性(JAF) | すぐ点検 |
| エンジン付近のガラガラ・キュルキュル | オイルの不足・潤滑不良、ベルトの滑り(JAF) | すぐ点検 |
| 走行中のタイヤ付近 | 異物の刺さり・走行関係の部品の傷みなど | 点検が必要 |
| 止まる直前のブレーキ | 米国の2020年型 M5 の技術情報に項あり | 効きに違和感があればすぐ点検 |
| 排気音の大小の変化 | 走行モードと M Sound Control の設定 | まず設定を確かめる |
| ハンドルの位置の調整のときだけ | 米国の2020年型 M5 の技術情報に項あり | 販売店に相談 |
| 室内(内気循環・低音用スピーカー) | 米国の2020年型 M5 の技術情報に項あり | 販売店に相談 |
JAF の説明では、ハンドルを回したときの異音はハンドル機構の異常の可能性があり走行は大変危険、エンジン付近のガラガラやキュルキュルも点検が必要な状態とされる。この2つは様子を見ずに点検を頼む音だと覚えておけばいい。一方、米国の BMW の販売店向けの技術情報(2020年型 M5 の一覧)では止まる直前のブレーキの作動音が扱われ、BMW の米国向けの発表資料では排気音が走行モードと M Sound Control で変わると説明されている。
M5 F90 で音の出どころになる仕組み
エンジンと駆動
BMW の発表資料によると、F90 の M5 は M TwinPower Turbo の 4.4L V8 に、Drivelogic 付きの8速 M ステップトロニック・トランスミッションを組み合わせる。エンジン型式は S63B44B だ。駆動は M xDrive で、4WD・4WD Sport・後輪だけで走る2WD のモードがあり、後輪の左右の間の駆動の配分は Active M Differential が受け持つ。音が気になったら、そのとき選んでいた駆動のモードと走行モードも思い出しておきたい。
F90 の M5 は2017年8月に発表され、改良(LCI)は本国で2020年5月、日本で2020年9月28日に発表された。後継の G90 の M5 は2024年7月にフルモデルチェンジし、日本ではセダンが2024年10月2日に発表されている。
ブレーキの種類
BMW の米国向けの発表資料では、M5 は M コンパウンド・ブレーキが標準で、前は M のロゴ入りの青い6ピストンの固定式キャリパー、後ろは1ピストンの浮動式キャリパーとされる。オプションの M カーボン・セラミック・ブレーキは、M のロゴ入りの金色のキャリパーで見分けられる。
ただしこれは米国向けの資料の説明で、日本仕様の装備や選べたオプションが同じとは限らない。キャリパーの色は目安にとどめ、どちらのブレーキかは販売店で車両識別番号から装備を確かめてもらうのが確実だ。
ブレーキの鳴き(キーキー・ブー)の原因と見分け方
止まる直前に鳴く
米国の BMW の販売店向けの技術情報(2020年型 M5 の一覧)には、止まる直前にブレーキをかけたときに出る「機能上の音(キーキー・ブーという音)」を扱う B340714(2023年10月公開)が載っている。一覧の要約で読めるのは症状と、原因の欄が素材の性質の話で始まるところまでで、処置の中身は確かめられていない。
同じ一覧の B341019(2021年7月公開)は、標準の M コンパウンドとオプションの M カーボン・セラミックのブレーキはどちらもスポーツ走行向けに作られたブレーキで、部品の素材の性質から音が出ることがあること、ブレーキの踏み方で音を防いだり早く収めたりできることを、販売店が顧客に説明するよう求めている。止まる直前の鳴きは、2020年型 M5 の米国の技術情報ではブレーキの性質として説明されている音だ。自分の車の年式や日本仕様に同じ説明が当たるかは、後の節の方法で確かめてほしい。
パッドやローターが原因の鳴き
ブレーキ部品の会社の区画の解説記事では、車種を限らない一般の説明として、鳴きの主な原因を3つ挙げている。
- パッドの残量が危険域まで減っている
- ローターの偏摩耗(外周の段差や表面の凹凸。新品のパッドに替えても鳴きが止まらないときに多い)
- キャリパーのピストンシールやダストブーツなどゴム部品の劣化(パッドとローターが新品でも鳴くとき。走行距離が多い車や、スポーツ走行でキャリパーの温度が上がる車に多い)
同じ解説は、パッドが減ると金属のセンサーがローターに当たってキーキー鳴る仕組みは日本車に多く、輸入車ではまれとしている。M5 F90 のパッドの減りの知らせ方は今回の出典では確かめられていないので、鳴きを「パッドが減った合図」と決めつけず、メーターの表示と点検で確かめよう。
効きに違和感があるとき
ブレーキの効きが落ちた、踏んだ感触がいつもと違う、片側に引っ張られるなど、音のほかにも違和感があるときは話が別だ。鳴きの種類にかかわらず走行を続けず、販売店や整備工場で点検を受ける。性質として説明されている音かどうかを考えるのは、効きに異常がないときだけにしたい。
ハンドル・ステアリングまわりの音
コラムの位置の調整のときだけ鳴る
米国の BMW の販売店向けの技術情報(2020年型 M5 の一覧)には、ステアリングまわりの音の項が3つある。そのうち2つは位置の調整に関わるもので、電動ステアリングコラムの高さを調整するときのうなる音(B320420)と、ステアリングコラムを前後(軸の方向)に動かしたときだけ出る音で、動き始めに1回ドンと鳴る音を含むもの(B320223)だ。調整のときだけ鳴るなら、点検の際にこの技術情報が自分の車に当たるかを販売店に聞いてみるといい。
走行中にハンドルを回すと鳴る
残る1つは、ハンドルを回したときにハンドル付近から出るうなる・こする・キュッという音(B610721)だ。ただ、技術情報の項があっても、走行中にハンドルを回して出る音は、JAF がハンドル機構の異常の可能性がありハンドル操作が行えなくなるおそれがあるので走行は大変危険としている場面に当たる。JAF の説明では、ハンドル操作のときの振動や、操作が重くなることもほかの症状に挙がっている。位置の調整のときだけの音と、走行中にハンドルを回すと出る音は分けて考え、後者は自己判断で様子を見ずに点検を受ける。
エンジン付近・排気の音
排気音が大きくなった・小さくなった
BMW の米国向けの発表資料では、M5 の排気系はフラップで音を変える方式で、選んだ走行モードによって音が変わり、M Sound Control のボタンでさらに音を調整できると説明されている。排気音が大きく・小さくなったと感じたら、まず走行モードとこのボタンの状態を確かめる。設定を戻しても変化が説明できないときや、ほかの音が混じるときは点検に回そう。
ガラガラ・キュルキュルという音
JAF の説明では、エンジン付近のガラガラ音はエンジンオイルの不足や潤滑不良、キュルキュル音はベルトの滑りの可能性があり、どちらも点検が必要な状態とされる。状況により、潤滑不良や冷却不良でエンジンが焼き付き、かからなくなることもあるという(車種を限らない一般の説明)。
エンジン付近からガラガラという音がするときは、走り続けずに点検を頼み、あわせてエンジンオイルの量と交換時期の表示を確かめよう。オイルの量と交換の目安は次の記事にまとめている。
走行中のタイヤ付近・駆動系の音と振動
JAF の説明では、走行中にタイヤ付近から異音がする場合、タイヤへの異物の刺さりや走行関係の部品の傷みなど発生源は多岐にわたり、複数の原因が推測されるとして、点検が必要な状態とされている(車種を限らない一般の説明)。タイヤ付近の音は原因が1つに絞りにくいので、自分で決めつけずに点検へ回すのが早い。
駆動系では、米国の BMW の販売店向けの技術情報(2020年型 M5 の一覧)に、xDrive のトランスファー(ATX13-X)について、曲がるときや低速からの加速のとき、低〜中程度の負荷でドライブラインからぎくしゃく・震えが出る症状の B270220(2020年5月)が載っている。これは音ではなく体感の症状として載っている項なので、音と一緒にぎくしゃくや震えを感じるなら、その場面も含めて販売店に伝えたい。
室内(エアコン・スピーカー)から聞こえる音
室内の音にも、米国の BMW の販売店向けの技術情報(2020年型 M5 の一覧)に載る項がある。
- 内気循環のフラップ付近の音: 窓の曇りと、内気循環のフラップ付近の音の異常(フラップが開け閉めを繰り返す)を扱う SIB640222(2022年5月)
- 低音用スピーカーの音: 低音が出ない、または割れたような音が出る症状の B650121(2021年2月)。走行の部品ではなく音響の症状
エアコンまわりから音がして窓が曇りやすいなら、フラップの症状として販売店に伝えるといい。エアコンフィルターの型番は次の記事で確かめられる。
リコールや技術情報が自分の車に当たるか確かめる
技術情報は米国の2020年型の一覧のもの
ここまで挙げた技術情報は、米国の2020年型 M5 の一覧に載る販売店向けの情報だ。ほかの年式や日本仕様の車に同じ処置が当たるかは、一覧からは分からない。自分の車に当たるかは、販売店で車両識別番号から確かめてもらう。
車両識別番号でリコールを確かめる
BMW グループのリコール確認ページでは、17桁の車両識別番号を入れて、未解決のリコールの対象かどうかを確かめられる。対象なら BMW パートナーがリコールや技術的なアップデートを無料で行う。番号は車両の右前半分の刻印、市場によってはフロントガラスの後ろ、左右どちらかの B ピラーのタイププレートに記されている。日本向けの詳しい情報は、日本の BMW のホームページで確かめるよう案内されている。
国土交通省のリコール・不具合情報のサイトでは、リコール情報の検索と不具合情報の検索ができ、車の不具合の情報を電話か WEB の入力で国に伝えることもできる。
なお、ガリバーの新車カタログでは、M5 のベースグレードの型式は2019年10月〜2020年2月の掲載が ABA-JF44M、2020年2月〜4月の掲載が 3BA-JF44MM(どちらもエンジンは S63B44B、8速 M ステップトロニック Drivelogic 付き、駆動はフルタイム4WD)とされる。年式で型式が変わるので、リコールを照らすときは車検証の型式と車台番号で確かめよう。
点検に出す前に記録しておくこと
異音は店で再現できないと原因を追いにくい。音の出る場所、速度、ハンドルの切り具合、ブレーキを踏んでいたか、エンジンが温まる前か後か、雨や寒さなどの天候を書き留め、安全な場所で録音しておくと伝えやすい。ドラレコを付けているなら、音を拾った場面の記録も手掛かりになる。
ブレーキ・ステアリング・駆動系は走行の安全に直結するので、自分で分解して原因を探さないこと。自分でやるのは、音の記録、メーターの警告表示の確認、排気音のモードやボタンの状態の確認、車両識別番号でのリコールの確認までにとどめる。走行中に異音が出て JAF に救援を頼むときは、必ず自分の安全を確かめてから呼び、連絡のときに今の状況を説明しよう。
よくある質問
止まる直前のブレーキの鳴きは故障ですか
鳴きだけで故障とは決められない。米国の2020年型 M5 の技術情報 B341019 は、標準の M コンパウンドとオプションの M カーボン・セラミックのどちらも、素材の性質から音が出ることがあると説明している。ただし効きや踏んだ感触に違和感があれば点検を受け、ほかの年式や日本仕様に当たるかは販売店で確かめる。
M5 F90 はパッドが減ると金属音で知らせますか
M5 F90 のパッドの減りの知らせ方は、今回の出典では確かめられていない。ブレーキ部品の会社の解説では、金属のセンサーが鳴る仕組みは日本車に多く輸入車ではまれとされるので、メーターの表示と点検で確かめるのがいい。
排気音が急に大きくなったのは故障ですか
M5 の排気音は、BMW の米国向けの発表資料によると走行モードと M Sound Control のボタンで変わる。まずその2つの状態を確かめ、設定で説明がつかないときやほかの音が混じるときは点検に出す。
ハンドルの位置を調整するとうなる音は急いで点検に出すべきですか
米国の2020年型 M5 の技術情報には、電動ステアリングコラムの高さの調整のときのうなる音の項(B320420)がある。調整のときだけ鳴るなら、その技術情報が自分の車に当たるかを販売店に聞けばいい。走行中にハンドルを回して鳴る音は別で、こちらは点検を急ぐ。
米国の技術情報は日本の車にも当たりますか
一覧からは分からない。ここで挙げた技術情報は米国の2020年型 M5 の一覧のものなので、販売店で車両識別番号から確かめてもらう。
まとめ
- 最初にやるのは実車の確認だ。音がエンジン付近・タイヤ付近・ハンドル・室内のどこから、どの場面で出るかを確かめ、あわせてキャリパーの色、排気音の走行モードと M Sound Control のボタンの状態を見ておく
- 走行中にハンドルを回したときの音と、エンジン付近のガラガラ・キュルキュルは様子を見ずに点検へ
- 止まる直前のブレーキの鳴きや室内の音は、米国の2020年型 M5 の技術情報に項がある。効きに違和感があればブレーキは音の種類にかかわらず点検
- 次に車検証の型式と車台番号を手元に置き、BMW グループの確認ページで17桁の車両識別番号から未解決のリコールを確かめる。技術情報が自分の車に当たるかは販売店で番号から確かめてもらう

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