ソリオのブレーキパッドは、車検証の型式欄を見ないと選べない。2015年8月を境に、フロントの適合品番が別のものに分かれているからだ。しかも交換の対象になるのはフロント側だけで、リア用のパッドという部品はソリオには用意されていない。まずは自分のソリオがどちら側かを確かめるところから入る。
ソリオで交換するのはフロント用パッドだけ
曙ブレーキ工業の解説によると、ディスクブレーキは回転するディスクローターをブレーキパッドという摩擦材ではさんで止める仕組み、ドラムブレーキは回転するブレーキドラムにブレーキライニングという摩擦材を内側から押しつけて止める仕組みで、両者は別の部品である。ソリオはリアがドラムなので、パッドとして交換するのはフロント側だけになる。実際、ブレーキ部品メーカーのディクセルが公開している適合品番一覧(販売店掲載分)でも、ソリオはどの型式もリア欄が DRUM の表記で、リア用パッドの品番設定が無い。
型式と品番の対応は次のとおり。
| 車検証の型式 | 年式の区切り | フロント品番 | リア |
|---|---|---|---|
| MA15S | 2011年1月〜2015年8月 | 371039 | DRUM(パッドの設定なし) |
| MA26S・MA36S・MA46S | 2015年8月〜2020年12月 | 371058 | DRUM(パッドの設定なし) |
| MA27S・MA37S | 2020年12月〜 | 371058 | DRUM(パッドの設定なし) |
| MA47S・MAD7S | 2022年11月〜 | 適合表に行が無い | — |
分かれ目は2015年8月の1か所だけ。ここさえ押さえれば、あとは商品側の適合表記と突き合わせる作業になる。
交換のサインは音・警告灯・残量の3つ
日本自動車連盟のQ&Aによれば、ほとんどの国産車にはパッドウェアインジケーターが付いており、パッドの残量が少なくなるとこれが直接ブレーキディスクに接して「キーキー」と音を出し、交換時期を知らせる。さらにパッドが減るとブレーキ液がリザーバータンクの下限ラインを下回り、ブレーキ警告灯も点灯する。残量そのものは、ホイールを外してブレーキキャリパー(パッドをディスクに押しつける装置)の点検用の窓から確認する。同Q&Aでは、残量が2mm以下程度になったら交換すると定められており、これを超えると効きが悪くなって重大な事故につながる恐れがある、としている。
厚みが残っているうちは大丈夫、と考えないほうがいい。ディクセルの解説では、パッドは裏板と摩擦材から成り、摩擦材は層を作ってそれぞれの役割を果たしているため、残量が少なくなると本来の制動力が出なくなるとされている。減り方も一定ではなく、半分まで減ると二次曲線的に摩耗の進行が早まるという。同社が示す目安は、摩擦材が半分になったら交換を検討、残り3分の1になったら早めに交換。半分を切ったあとは、それまでと同じペースで減ると思って先送りしないほうが安全側に立てる。
国土交通省が示している自家用乗用車の定期点検は1年ごとに29項目、2年ごとに60項目で、項目は点検整備記録簿に示されている。整備工場に任せている人は、点検のたびに残量を聞いておくと交換の見当が付く。キーキー音が出はじめた段階で他の音と区別が付かないときは、まず音の出所を切り分けたい。
車検証の型式で世代を確定させる
型式が分かれば、選ぶべき品番も決まる。順に確かめていく。
型式と製作期間の対応
スズキが公開しているリコール等情報の対象車両一覧で確認できる型式と製作期間は、DBA-MA15S が平成22年12月22日から平成27年7月31日、DBA-MA26S が平成27年7月27日から、DAA-MA36S が平成27年7月29日から令和2年10月26日まで、DAA-MA46S が平成27年12月2日から令和2年9月28日まで、5AA-MA37S が令和2年11月5日から、5AA-MA47S が令和4年11月4日から。自動車カタログの型式一覧には、これらに加えて 5BA-MA27S と 5AA-MAD7S、さらに2010年以前の MA34S 系が載っている。車検証の型式欄に書かれた記号が、そのままどの区切りに属するかの答えになる。
2015年8月で品番が分かれる
パッド選びで効いてくるのは2015年8月の線だけだ。ディクセルの適合品番一覧では、2代目の MA26S・MA36S・MA46S と現行型の MA27S・MA37S に同じフロント品番 371058 が割り当てられている。世代をまたいで共通なので、商品名に「MA36S MA37S」のように複数世代の型式が並んでいても、それ自体は不自然な表記ではない。一方 MA15S だけは 371039 で別部品になる。
適合表に行が無い MA47S と MAD7S
注意したいのが MA47S と MAD7S で、この2つは今回確認した適合品番一覧に行が無い。MA47S はスズキのリコール等情報に 5AA-MA47S として実在が確認できる型式、MAD7S も型式一覧に載っている型式だが、371058 が適合するかどうかまでは確認できていない。この2つに乗っている場合は、商品名の型式表記だけで決めず、販売元か整備工場に型式を伝えて確認してほしい。型式の読み取りに慣れておくと、他の部品を買うときも迷わない。
比べる順番は適合、摩擦材、付属品
商品を並べる前に、判断の軸を決めておく。優先順位は次の3つで、価格はこの3つを満たした中での比較材料として最後に置く。
1. 適合が合っているか
車検証の型式が商品側の適合表記に入っているかを最優先で見る。ここが合わなければ、残りの条件は意味を持たない。
2. 摩擦材の系統が使い方に合うか
曙ブレーキ工業の説明では、摩擦材には金属系(メタリック)、ロースチール、ノンスチール、焼結合金、C/Cコンポジットがある。金属系は高温・高負荷の条件でも強度を発揮する必要がある場合に使われ、ロースチールは高速からブレーキをかけることが多い主に欧州地域向け、ノンスチールは乗用車向けの主力で、効き・強度・鳴きにくさを高い次元でバランスできるとされる。街乗り中心のソリオなら、乗用車向け主力であるノンスチール系の性格に沿った製品が素直な選択になる。同社によると摩擦材は10〜20種類もの原材料を配合してつくられ、原材料は結合材(主にフェノール樹脂)、補強材(アラミド繊維や金属繊維など)、摩擦調整材(潤滑剤・有機充填材・無機充填材など)の3つの役割に分かれる。同じパッドでも配合で性格が変わるのはここに理由がある。
なお曙ブレーキ工業は銅の環境規制の動きを受けて銅フリー摩擦材の開発・製造に取り組み、補修用は2007年から、新車装着用は2014年から納入を開始したとしている。いま出回っている補修用パッドは、その流れの上にある。
3. 付属品と鳴き対策があるか
鳴き止めシムやグリースが同梱されているかどうかは、作業の手間と鳴きの出にくさに直結する。ディクセルの場合、軽自動車専用の KPタイプが鳴き止めの高性能シムとグリースを標準装備と案内している。ソリオは軽自動車ではないのでこのタイプ自体は対象外だが、付属品の有無を見る観点として覚えておくといい。
2015年8月以降のソリオ向け2点
MA26S・MA36S・MA46S、MA27S・MA37S に乗っているなら、性格の違う2点から選ぶ形になる。以下の価格はいずれもAmazonの実売価格を確認した時点のもので、変動する。
純正装着と同じ部品メーカーで揃える
曙ブレーキ工業のAN-661WK を使ったフロント用パッドがある。販売ページの掲載名は「スズキ ソリオ/ソリオバンディット ブレーキパッド フロント H27.8-R2.11/MA36S [1200cc/-] AN-661WK メーカー純正採用 アケボノブレーキ」で、対象は平成27年8月から令和2年11月の MA36S、価格は¥4,090。曙ブレーキ工業は新車装着用の摩擦材も手がけており、補修用ラインアップのうちスタンダードパッドは効き・摩耗・鳴き性能のすべての面でバランスのとれたパッドとして車種ごとに適した摩擦材を採用しているとされる。同社のラインアップにはミニバン専用の APC、軽自動車専用の K4、プロシリーズの AX・AZ もあるが、ソリオはミニバンでも軽自動車でもないので、この区分ではスタンダードパッドの系統にあたる。
曙ブレーキ AN-661WK ソリオ/ソリオバンディット MA36S フロント用
費用を抑えて選ぶ
掲載名が「【エムズ部品】ソリオバンディット MA36S MA37S MA46S MA47S フロント ブレーキパッド B22」となっている商品がある。価格は¥2,150。掲載表記の上では2代目の MA36S・MA46S と現行型の MA37S・MA47S をまたいでおり、2015年8月以降のフロント品番が世代をまたいで共通であることと方向は一致する。ただし MA47S だけは部品メーカーの適合表側で確認が取れていないため、掲載表記をそのまま適合の裏づけとして扱わないでほしい。
エムズ部品 ソリオバンディット MA36S・MA37S 系 フロントブレーキパッド
ハイブリッド系と初代 MA15S の選択肢
2代目のハイブリッド系を名指しした互換品もある。掲載名は「ソリオ ハイブリット DAA-MA36S フロント ブレーキパッド 左右セット 前輪用 55810-60J10 55810-80G13 互換品ブレーキパット ディスクパッド 耐摩耗」で、対象として明記されているのは DAA-MA36S、左右セットの構成、価格は¥2,100。掲載されている55810で始まる数字は出品者が示す互換品番であり、自動車メーカーの部品カタログや部品メーカーの適合表で裏を取ったものではない。互換品は「ソリオ用」と書かれていても対象の型式が限られるので、自分の型式が明記されているかどうかだけを見て判断する。
ソリオ ハイブリッド DAA-MA36S 用 フロントブレーキパッド 左右セット
初代の MA15S に乗り続けているなら、品番が 371039 で別部品になる分、商品も別の括りで探すことになる。掲載名が「フロント ブレーキパッド 左右セット スズキ スプラッシュ(XB32S) ソリオ ソリオバンディッド(MA15S) 互換品 55810-71L02 55810-63J00」となっている互換品はソリオ側の対象型式として MA15S を明記しており、価格は¥1,210。スプラッシュと同じ括りで売られているのは、MA15S 世代のフロントパッドが他のスズキ車と品番を共有しているためと読める。こちらの数字も出品者側の互換品番である。
ソリオ/ソリオバンディット MA15S 用 フロントブレーキパッド 左右セット
買う前に確認しておくこと
販売ページに書かれている適合車種・型式・純正品番は、あくまで出品者側の記載であって、部品メーカーが公開している適合表そのものではない。購入前に車検証を手元に置き、型式と年式(初度登録年月)を確認したうえで、商品側の適合表記に自分の型式が明記されているかを見る。表記が曖昧だったり、MA47S・MAD7S のように部品メーカー側の適合表に行が無い型式だったりする場合は、販売元か整備工場に型式を伝えて確認してから買うのが結局は早い。車台番号を求められることもあるので、車検証は撮影しておくと問い合わせが1往復で済む。
もうひとつ、リア用のパッドを探して時間を使わないこと。今回ソリオ向けとして検索できた範囲では、流通しているブレーキパッドはすべてフロント用の表記で、リア用として売られているものは1件も無かった。ディクセルの各タイプもいずれもフロント用として掲載されている。リア側の摩耗品を探しているなら、それはパッドではない別の部品にあたる。足回りに手を入れる予定があるなら、交換のタイミングを合わせておくと工賃の面でも無駄が出にくい。
自分で交換するなら押さえる3点
ディクセルは使用上の注意として、交換の際はディスクローターに異常摩耗、段減り、クラック、振れ等がないかを十分に点検するよう求めている。パッドだけを新品にしてもローター側が傷んでいれば、効きも鳴きも改善しない。外したときに必ず見る工程として組み込んでおく。
同社はまた、交換直後はパッドとローターに馴染み(当たり)が出ていないため一般的に制動力が若干低下する、馴染みが出るまでは安全運転を心がけて無理なブレーキングは控えるように、としている。交換した直後がいちばん効くわけではないという点は、その日のうちに家族にも伝えておきたい。作業のタイミングにも条件がある。走行直後はパッドやローターが非常に高温になっていて危険なので、交換は必ず十分に冷えてから行うこと。適正温度を超える範囲での使用や、ディスクローターの急激な加熱・冷却も、割れ・歪み・ジャダーの原因になるとして避けるよう案内されている。
法令の線引きも見ておく。道路運送車両法施行規則 第三条は、分解整備にあたる作業のひとつとして「制動装置の……ディスク・ブレーキのキャリパを取り外し……て行う自動車の整備又は改造」を挙げており、これは法第四十九条第二項の特定整備の一種にあたる。条文が名指ししているのはキャリパを取り外して行う整備であって、ブレーキパッド交換という作業名そのものではない。自分の作業がどちらに当たるのか判断が付かないなら、整備工場に相談してから手を付けるのが筋だ。工具や消耗品まで含めた費用の考え方は、他のカスタムと同じ枠で見ておくといい。
よくある質問
ブレーキパッドの残りはどこを見れば分かるのか
日本自動車連盟のQ&Aでは、ホイールを外し、ブレーキキャリパーの点検用の窓から確認するとされている。目視できない状態で無理に判断せず、タイヤ交換のついでに見てもらうのが現実的だ。
ソリオのリア側にもブレーキパッドはあるのか
無い。自動車カタログの諸元表で確認できた 5BA-MA27S のグレード G(2023年5月)では、ブレーキ形式は前がベンチレーテッドディスク、後ろがドラム(リーディングトレーディング)だった。確認したのは1グレードだが、適合品番一覧のリア欄も全型式で DRUM の表記なので、確認できた範囲ではリア側はドラムということになる。
純正と同じ部品メーカーを選ぶ意味はあるのか
新車装着時の性格に近い挙動を期待できる、という点では意味がある。ただし曙ブレーキ工業の表現も「バランスのとれた」という相対的なもので、他社品より必ず効くという話ではない。使い方が街乗り中心なら、価格帯で選んでも大きく外れない。
定期点検に出していればパッドは自分で気にしなくてよいのか
国土交通省が示す定期点検は1年ごと29項目、2年ごと60項目だが、公表資料で確認できるのは周期と項目数までで、パッドの摩耗が個別項目としてどう扱われるかは確認できていない。点検のたびに残量を口頭で聞いておくほうが確実だ。
材質のタイプはどう選び分けるのか
ディクセルの場合、ECタイプは材質 NAO で適正温度0〜450℃、ノーマルパッドの効きが物足りない人や初めてスポーツパッドを試す人向け、ESタイプは適正温度0〜600℃でハイウェイやワインディング、ミニサーキットを走る人向けとされている。街乗り主体なら上位タイプへ上げる必然性は薄い。ダスト量や鳴きは相対評価のグラフで示されるだけで、具体的な数値は公開されていない。
バッテリーなど他の消耗品と同時に替えたほうがいいのか
同時作業でまとめられるものは、入庫回数を減らせる分だけ手間が減る。交換周期の考え方は部品ごとに違うので、それぞれの目安を確認しておく。
まとめ
買う前に確認しておく点を並べておく。
- 車検証の型式欄を見る(MA15S かどうかで品番が 371039 と 371058 に分かれる)
- 探すのはフロント用だけ。リア用パッドの設定は無い
- MA47S・MAD7S は部品メーカーの適合表に行が無いので、販売元か整備工場に確認する
- 商品側の適合表記に自分の型式が明記されているかを見る(互換品はとくに)
- 街乗り中心なら乗用車向け主力の摩擦材で足りる。鳴き止めシムやグリースの同梱も見ておく
- 交換のサインはキーキー音・ブレーキ警告灯・点検窓での残量。半分を切ったら早めに動く
型式さえ確定すれば、あとの選択肢は多くない。音が出てから慌てるより、点検のたびに残量を聞いておくほうが選ぶ時間を確保できる。
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