現行型フィットで、冬を前にスタッドレスタイヤへの履き替えを自分でやるなら、最初に確かめるのはジャッキをどこにかけるかと、そのジャッキが車に積んであるかの2つだ。ジャッキの置き方は Honda の取扱説明書に手順として書かれている一方、ジャッキの有無は取扱説明書の版によって記載が違う。締め付けトルクやナットの工具のサイズは Honda の公式の値でそろうので、作業の前に順に確かめておこう。
ジャッキポイントの探し方とジャッキの置き方
取扱説明書が示すジャッキの置き方
Honda の取扱説明書の2020年版・2023年版と、FIT e:HEV の2026年版は、同じ字でジャッキのかけ方を示している。交換するタイヤにもっとも近いジャッキポイントの下にジャッキを置き、ジャッキの上部がジャッキポイントに接するまで回して、「ジャッキの溝にジャッキポイントがはまったことを確認します。」という流れだ。溝にはまったのを目で見てから上げ始める、ここは省かないでほしい。
ただし、ジャッキポイントの場所そのものは、Web 版の取扱説明書(2020年版・2023年版)の本文には字で書かれておらず、図で示されている。自分の車のジャッキポイントは、取扱説明書の図で確かめるのが出発点になる。
車体の下にある目印
図と実車を見比べるときの手がかりとして、車の情報サイト car-me の解説では、車種を限らない一般的な見つけ方が紹介されている。前輪と後輪の間の車体の下部に逆三角形もしくは矢印のマークがあり、それは「この奥にジャッキアップポイントがある」という意味だという。マークの奥をのぞき込むとプレスラインに切り欠きがある箇所があり、ジャッキはその切り欠きに合わせてセットする。
MOTA の解説も、乗用車では一般的に車体下部のサイドシル(ドア下の縁)に設けられた補強部分がジャッキアップポイントになるとしたうえで、正確な位置は必ず車両の取扱説明書で確かめ、分からなければディーラーや整備士に相談するよう勧めている。これらは車種を限らない話なので、フィットでの最終的な確認は取扱説明書の図で行う。
ジャッキが積んであるかは取扱説明書の版で違う
Honda の Web 版の取扱説明書は、版によってジャッキの書き方が違う。なお、2020年版の取扱説明書には「スペアタイヤの装備はありません。」とあるので、この記事は用意したタイヤとホイールへの付け替えとして話を進める。
| 取扱説明書の版 | ジャッキについての記載 |
|---|---|
| 2020年版 | 「カーゴリッドを開ける。」から始まり、ジャッキなどを取り出す手順 |
| 2021年版 | 同じ手順と「この車に搭載されているジャッキをお使いください。」 |
| 2023年版 | 「この車には、ジャッキが標準で搭載されていません。」 |
| FIT e:HEV の2026年版 | 同じ文があり、手順のジャッキ類に「(別売り)」の字 |
2020年版・2021年版の取扱説明書の場合
Honda の取扱説明書の2020年版と2021年版は、ジャッキの手順を「カーゴリッドを開ける。」から始め、ジャッキ、ジャッキハンドルバー、ジャッキハンドルを取り出すとしている。2020年版の「工具、発炎筒」の項には「工具はカーゴスペース内に収納されています。」とあり、これらの版にはジャッキが標準搭載でない旨の文は無い。荷室まわりの使い方は次の記事でも扱っている。
2023年版と FIT e:HEV の2026年版の場合
Honda の取扱説明書の2023年版と FIT e:HEV の2026年版には「この車には、ジャッキが標準で搭載されていません。ジャッキアップをする場合は、この車専用のジャッキをお使いください。詳しくはHonda 販売店にご相談ください。」とある。FIT e:HEV の2026年版の手順では、ジャッキ・ジャッキハンドル・ジャッキハンドルバーに「(別売り)」と書かれている。
どの版がどの車に当たるかは、ここでは確かめていない。作業の前に、車に積まれた取扱説明書のジャッキの項と、カーゴスペースにジャッキと工具があるかを実際に見る。ジャッキが無ければ、取扱説明書の案内どおり Honda 販売店に相談する。
純正以外のジャッキを使うときの注意
Honda の取扱説明書(2020年版・2021年版・2023年版)は、この車のジャッキ(2023年版では「この車専用のジャッキ」)を使うよう案内し、その理由を「他のジャッキでは支えられる重量(呼荷重)が不足したり、形状が合わないことがあります。」としている。手持ちのジャッキを流用する前に、この一文は頭に入れておきたい。
作業の前に場所と工具をそろえる
作業する場所と車の状態
Honda の取扱説明書(2020年版)は、準備として次の順を示している。
- 地面が固く、滑らず、水平な場所に車を停める
- パーキングブレーキをかけ、シフトレバーをPに入れる
- パワーモードをOFFにする
- 交換するタイヤの対角線上にあるタイヤの前後に、石などで輪留めをする
間違えやすいのは4番目で、輪留めは上げるタイヤの対角線上のタイヤにかける。右前を上げるなら、左後ろのタイヤの前後だ。
そろえる工具
- ナットを回すレンチやソケット: Honda公式サイトのQ&Aによると、2020年2月以降の現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)のナット二面幅は19mm。19mmの物を使う(ほかの値は後の表にまとめた)
- トルクレンチ: タイヤメーカーのコンチネンタルタイヤは、ナットを正しく締めたりゆるめたりするために、トルクレンチという専用の工具が必要としている。規定の締め付けトルクで締めるために用意する
- ジャッキ: 車に積んであるジャッキか、この車専用のジャッキ。MOTA の解説では、パンタジャッキはX字型の構造を持つジャッキで車載用として多くの車両に標準装備され、フロアジャッキはタイヤ交換などで最も一般的に使われるジャッキだという。フロアジャッキを使う場合の注意は後の節で扱う
- 輪留めと、持ち上げた車を支える備え(後の安全の節を参照)
タイヤ交換の手順
ナットを緩めてからジャッキアップする
JAF の案内では、輪留めをしたあと、ホイールキャップが付いているものは外し、ジャッキアップの前にホイールナットを少しだけ緩める。そのあとジャッキアップポイントを確かめてジャッキをかけ、タイヤが路面から少し離れるまで持ち上げる。
Honda の取扱説明書(2020年版)でも、前の節の置き方でジャッキを合わせ、溝にジャッキポイントがはまったことを確かめてから、「ジャッキハンドルとジャッキハンドルバーを使って、タイヤが地面から離れるまで車体を上げる。」としている。上げすぎず、タイヤが浮いたところで止める。
タイヤを外して付け替える
緩めておいたナットを外してタイヤを外し、用意したタイヤを付ける。Honda の取扱説明書(2020年版)の「タイヤのローテーション」の項には「図のように回転指示マークが前へ向くように取り付けてください。」とある。回転方向の指定があるタイヤは、付け替えのときにマークの向きを確かめる。左右を取り違えやすいので、外す前に置き場所を決めておくと迷わない。
仮締めと本締め
JAF の案内では、ホイールナットを取り付け、タイヤががたつかなくなるまで2回から3回に分けて仮締めする。車体を下ろし、ジャッキを外してから、仮締めと同じようにナットを本締めする。無理に締め付けるとボルトが破損する場合があるので、取扱説明書に記載の規定のトルクで締める。トヨタのよくある質問でも、ナットは対角線の順序で2〜3回に分けて締め、手で仮締めしたときに引っ掛かりがある場合は販売店で点検を受けるよう案内している。
締める順は、コンチネンタルタイヤの案内では、ナットが4本しかついていないホイールは十字型に対角線順だ。Honda公式サイトのQ&Aの表で、現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)のホイールは4穴なので、十字型の対角線順で締める。
本締めのトルクは、現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)で108N·m。Honda公式サイトのQ&Aの表に「108N・m」(中央値)とあり、Honda の取扱説明書(2020年版)の「タイヤのローテーション」の項にも「108 N・m (11 kgf・m)」とある。
ジャッキアップで事故を起こさないために
取扱説明書の警告と注意
Honda の取扱説明書(2023年版。2020年版にも同じ警告がある)は、「車がジャッキだけで支えられているときは、車の下に入らない。」と警告し、「車がジャッキから外れて、車の下にいる人が重大な傷害を負うおそれがあります。」としている。2023年版のジャッキの注意の項目は次のとおりだ。
- エンジンをかけたままにしない
- 地面が固い平らなところ以外では使用しない
- ジャッキポイント以外にかけない
- 人や荷物を乗せたままにしない
- ジャッキ使用中に車内に入らない
- ジャッキの上や下にものを入れたりしない
ジャッキポイント以外にかけない理由について、car-me の解説では、ジャッキアップポイントは車体の重さがかかっても損傷しないよう補強されており、強度がないところにジャッキを入れると車体やプレスラインの変形につながる可能性があるとしている。乗りものニュースの解説も、ジャッキアップポイント以外の部分にかけると車体の重さでクルマを壊してしまう可能性があるとしている。
持ち上げた車を支える備え
乗りものニュースの解説では、ジャッキだけで支えていると、ジャッキが外れてクルマが落ちた場合に挟まれる危険がある。リジットラック(ジャッキスタンド)を使うのが好ましく、用意できない場合は代わりの保険として、車体の下に交換するタイヤ・ホイールを置いておくとしている。MOTA の解説も、ジャッキは車を持ち上げるための道具で、持ち上げた状態を保持するためのものではないとしている。ジャッキスタンドか、車体の下のタイヤ。どちらかは必ず用意してから上げる。
フロアジャッキとジャッキパッドを使う場合
フロアジャッキを使う前に確かめること
取扱説明書が案内しているのは、この車のジャッキ(2023年版では専用のジャッキ)だ。フロアジャッキを使うのは自分の判断になる。MOTA の解説では、ジャッキで持ち上げるのは基本的に車の片側なので、必要な耐荷重の目安は車両総重量の半分で、計算上の重さに対して1.5tや2tといった余裕のある耐荷重のジャッキを選ぶよう勧めている。耐荷重と受け皿の形が、自分のフィットのジャッキポイントに合うかを確かめてから使う。
ジャッキパッドを使うときの注意
フロアジャッキ向けの品として、エムトラストの汎用ジャッキパッドアダプター(ASIN B07GWNGNJX)がある。商品名には「ソリッドゴム」「ジャッキアップポイントの保護に」とあり、対応の例として国産メーカー等のトヨタ・ホンダ・ニッサン・スズキ・ミツビシ・マツダ・フォルクスワーゲンの名が挙がる。販売ページの商品説明では、セット内容はジャッキパッドアダプター1個、本体の材質は硬質ソリッドゴムだ。
この商品は汎用品で、商品名と商品説明の箇条書きのどちらにも、パッドの寸法や、フィットの型式・年式への適合の記載は無い。商品名の「フィット」の字は「ラバー フィット パッド」という語の一部で、ホンダ フィットへの対応を示す字ではない。車の対応として商品名に挙がるのはメーカー名(ホンダなど)だけだ。販売ページの商品説明は「必ずサイズをご確認の上お求め下さい」とし、サイズが合わないのに無理に使用すると、ジャッキアップポイントの破損や、ジャッキアップ中に車が落下するなどの大事故につながる恐れがあるとしている。このパッドを使うなら、自分のフロアジャッキの受け皿とフィットのジャッキポイントに合うかを確かめる。パッドを挟んでも、ジャッキスタンドや車体の下のタイヤの備えは省かない。
エムトラスト 汎用 ジャッキパッドアダプター ソリッドゴム(1個)
付け替えるタイヤとホイールが合っているか確かめる
タイヤサイズの確かめ方
Honda の取扱説明書(2020年版)の車両仕様一覧に載るタイヤサイズは 185/60R15 84H、185/55R16 83V、185/60R16 86H の3つで、リムサイズは15インチホイール装備車が15×6J、16インチホイール装備車が16×6J。Honda公式サイトのQ&Aの表には 185/60R15 88H の字もある。同じ一覧に「タイヤの指定サイズは、運転席横の車体に貼ってあるラベルをご覧ください。」とあるとおり、自分の車の指定サイズは運転席横のラベルで確かめる。どのグレードがどのサイズかは、ここでは決めない。
同じ取扱説明書の「タイヤとホイールの交換」の項は、「タイヤは、四輪とも同一指定サイズ、同一種類、同一銘柄および摩耗差のないタイヤをお使いください。」とし、4本同時の交換を勧めている。4本同時にできない場合は、前輪または後輪の左右をセットで交換する。ホイールは、仕様が純正ホイールと同一か確かめる。
ホイールとナットの値
Honda公式サイトのQ&Aの表による、2020年2月以降の現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)の値をまとめた。ホイールの表は「2020年2月~2026年6月までのモデル」と「2026年7月~」に分かれており、下はその共通の値だ。純正のホイールには、15インチのスチールホイールと16インチのアルミホイールがある。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| P.C.D. | 100mm |
| ハブ径 | 56mm |
| 穴数 | 4穴 |
| リム幅 | 6J |
| ネジ径 | M12 |
| ネジのピッチ | 1.5mm |
| ナット二面幅 | 19mm |
| 座面形状 | 球面座(球面 R12) |
| 締め付けトルク | 108N・m(中央値) |
社外ホイールに履き替えるなら、この表の値と見比べてから選ぶ。
交換したあとの増し締め
タイヤメーカーのコンチネンタルタイヤは、新しいタイヤに交換したときは、交換後50〜100kmを目安に走行してからホイールナットの増し締めをするよう案内している。交換時の締め付けトルクが適切でなかったり、初期走行の環境変化などで、まれにナットが緩むことがあり、ナットが緩むと最悪の場合、走行中にホイールが外れることもあるという。増し締めも、トルクレンチで現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)の108N·mに合わせて締める。
GK系など先代以前のフィットの場合
Motor-Fan のグレード一覧では、現行型フィットの型式は、2020年2月発売の GR1・GR2・GR3・GR4・GR5・GR6・GR7・GR8 と、2022年10月発売の GS4・GS5・GS6・GS7 がある(GR2・GR4・GR7・GR8・GS6・GS7 はフルタイム4WD、ほかは FF)。
Honda の Web 版の取扱説明書の年式選択では、FIT に並ぶのは「2026年」「2023年」「2021年」「2020年」だけだ。この記事の取扱説明書の材料は2020年2月以降の現行型のもので、先代(Honda公式サイトの生産終了モデルのQ&Aによると、ハイブリッド GP5・GP6、ガソリン GK3・GK4・GK5・GK6、2013年9月〜2020年1月)以前のジャッキポイントや締め付けトルクは、この記事の出典では確かめていない。先代以前は、車に積まれた取扱説明書でジャッキポイントと締め付けトルクを確かめる。
よくある質問
フィットにスペアタイヤは積んである?
Honda の取扱説明書(2020年版)の「パンクしたとき」の項には「スペアタイヤの装備はありません。」とある。タイヤに小さな穴がある場合は、タイヤパンク応急修理キットで損傷を一時的に補修し、最寄りの販売店まで運転できるとしている。
ホイールナットの締め付けトルクは?
2020年2月以降の現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)は108N·mだ。Honda公式サイトのQ&Aと取扱説明書(2020年版)の値で、GK系・GP系など先代以前には当てはめない。
ナットを回す工具のサイズは?
現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)は、ナット二面幅が19mmなので、19mmのレンチやソケットを使う。
ジャッキが見当たらないときは?
取扱説明書の2023年版と FIT e:HEV の2026年版には、ジャッキが標準で搭載されていないとある。手元の取扱説明書のジャッキの項を見て、この車専用のジャッキは Honda 販売店に相談する。
自分でやるのが不安なときは?
JAF の案内では、工具が無い場合や自動車整備に不慣れで自信がない場合は、無理をせず JAF に任せるよう勧めている。ジャッキの用意から迷うなら、Honda 販売店に相談するのが早い。
まとめ
最初にやることは、実車のカーゴスペースを開けて、ジャッキと工具が積んであるかを見ることだ。あわせて、取扱説明書の図を見ながら車体の下のジャッキポイントを目で確かめておく。そのうえで、車に積まれた取扱説明書のジャッキの項を読み、版ごとに違うジャッキの扱いを確かめる。
- ジャッキは交換するタイヤにもっとも近いジャッキポイントの下に置き、溝にはまったのを見てから上げる
- 取扱説明書の2023年版と FIT e:HEV の2026年版には、ジャッキが標準で搭載されていないとある
- 締め付けトルクは現行型(GR1〜GR8・GS4〜GS7)で108N·m、十字型の対角線順で締める
- 新しいタイヤに交換したときは、交換後50〜100kmを目安に走ってから増し締めする(コンチネンタルタイヤの案内)
履き替えるタイヤやホイールをこれから選ぶなら、次の記事も参考にしてほしい。
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