XM のタイヤ交換で見落としやすいのは、パンク用に用意されたメーカーのジャッキを、夏冬の履き替えにも使い回すことだ。BMW XM の取扱説明書(北米向け)では、このジャッキはパンク時に短時間持ち上げるためのもので、頻繁な使用向けには作られていないとされている。ジャッキポイントの位置と140Nmの本締めを押さえたうえで、自分でやる範囲と店に頼む範囲を決めておきたい。
ジャッキポイントと締め付けトルクを先に確認
対象は BMW XM(モデルコード G09)。2022年12月に米国サウスカロライナ州のスパータンバーグ工場で生産が始まり、日本発売時の Car Watch の記事によると、日本では2023年1月18日に発売された。
先に押さえる要点は3つある。
- ジャッキポイントは各タイヤのホイールハウス脇にあり、交換するタイヤにいちばん近い四角いくぼみにジャッキを差し込む
- ホイールボルトは十字の順に140Nmで本締めする(G09・北米向けの取扱説明書の値)
- 北米向けの取扱説明書では、ジャッキは標準装備として書かれていない(日本仕様の装備は車両で確かめる)
作業の前に道具がそろうか確かめる
車載ジャッキと応急用タイヤの扱い
北米向けの取扱説明書では、ジャッキなどのホイール交換用の道具は「必要ならディーラーや整備工場で用品として手に入る」と書かれている。応急用タイヤも「装備されている場合」の扱いで、パンクしたときはタイヤ修理キットを使えば、すぐにホイールを交換しなくてよい場合があるとしている。日本仕様の装備は、自分の車の荷室で事前に確かめておく。
JAF の解説では、ジャッキやレンチ、応急用タイヤが標準で積まれていない車が増えているとし、道具が無いときや作業に慣れていないときは無理をせずロードサービスに頼むよう勧めている。トルクレンチが無いまま締めたときは、できるだけ早くガソリンスタンドや整備工場で規定のトルクで締めてもらう。
タイヤ修理キットの置き場所と効かない条件
取扱説明書によると、タイヤ修理キットは小さな傷を一時的にふさいで走り続けるためのもので、穴が約4mmより大きいと効かないことがある。刺さった異物は抜かない。キットは装備により、荷室の床下、荷室の左右どちらか、荷室の側面の内張りの裏のいずれかに収まっている。使うときはシーラントのボトルの警告ラベルをホイールに貼る。荷室まわりの収納は
も参考になる。
ロックボルトのアダプター
XM のホイールボルトにはロックボルト(盗難防止のコード付きボルト)があり、コードの合うアダプターでしか外せない。取扱説明書では、アダプターは車載工具の中かその近くの収納にあり、車載工具は荷室の左側の収納にある。ロックボルトはインパクトレンチを使わず、手で回すホイールレンチだけで脱着する。インパクトレンチでゆるめたり締めたりすると、ロックボルトを傷めるおそれがある。
車を上げる前の準備
- 交通から安全な距離をとった、固く滑りにくい地面に停める
- ハザードランプを点け、パーキングブレーキをかける
- 前輪をまっすぐにしてハンドルロックをかけ、セレクターレバーを P に入れる
- 交通の状況が許せば同乗者を全員降ろし、必要なら三角表示板などを適切な距離に置く
- 装備に応じて、ホイール交換用の道具や応急用タイヤを車から出す
- 交換するタイヤと対角のタイヤの前後に、輪止め(または代わりになる物)を置く。右前を交換するなら左後ろ
- タイヤが地面に着いているうちに、ホイールボルトを半回転だけゆるめる
ジャッキポイントの見つけ方と上げ方
四角いくぼみに差し込む
取扱説明書では、ジャッキポイントは各タイヤのホイールハウス(タイヤが収まる車体のくぼみ)の脇にあり、交換するタイヤにいちばん近いジャッキポイントの四角いくぼみにジャッキを差し込むとしている。位置は図で示されていて、文で書かれているのは「ホイールハウスの脇」「四角いくぼみ」までだ。正確な位置は、自分の車の取扱説明書の図で確かめる。
上げるのは最大3cmまで
ジャッキのハンドル(クランク)を時計回りに回して伸ばし、荷重がかかったらジャッキから手を離す。ジャッキの足が垂直に伸び、ジャッキポイントの真下で直角になっているかを確かめる。ジャッキの底面全体が地面に着いた状態で、交換するタイヤが地面から最大3cm浮くまで上げる。高く上げ過ぎると車体が不安定になる。
ジャッキの下に木の板などの台は敷かない。ジャッキが支えられる重さが落ちるおそれがあると取扱説明書にある。柔らかい地面、凹凸のある地面、雪・氷・タイルのような滑りやすい地面ではジャッキが滑るおそれがあるので、平らで固い場所を選ぶ。
高電圧部品と床下を傷めないために
XM はプラグインハイブリッド車だ(日本発売時の Car Watch の記事による)。取扱説明書は、ジャッキの扱いを誤ると車体の床下を傷め、高電圧の部品が露出するおそれがあると警告し、床下の部品を傷めないよう求めている。メーカーのジャッキは、この車のジャッキポイントに合わせて作られている。
上げている間は次を守る。
- 車の下に横たわらない・入らない
- 走行できる状態(ドライブ・レディ)にしない
- 上げた車体に横から力をかけたり、急に引っ張ったりしない。ジャッキが倒れると車体が落ちるおそれがある
- 片手でジャッキ本体、もう片方の手でハンドルという、取扱説明書が示す手の位置を変えない(手や指を挟まないように)
夏冬の履き替えは店に頼むかを決める
取扱説明書によると、車両メーカーのジャッキは故障(パンク)時のホイール交換用で、夏タイヤから冬タイヤへの履き替えのような頻繁な使用向けではない。固着して外れないホイールは、ディーラーや整備工場で外してもらうよう書かれている。タイヤをホイールに組み付ける作業とバランス取りも、ディーラーや整備工場に任せる扱いだ。
車体も大きい。日本発売時の Car Watch の記事によると、全長5110mm×全幅2005mm×全高1755mm、車両重量2710kgで、いずれも欧州仕様値として報じられた値だ(日本仕様の値ではない)。自分でやるのは、次がそろうときに限る。
- ジャッキ(北米向けの取扱説明書では用品扱い)
- ロックボルト用のアダプター
- 140Nm で締められるトルクレンチ
- 平らで固く滑りにくい作業場所
1つでも欠けるなら、ディーラー・タイヤ販売店・整備工場かロードサービスに頼む。季節の履き替えは、店に任せるのが無難だ。
ホイールの外し方と付け方
外して付ける手順
- ホイールボルトを外し、ホイールを外す
- 新しいホイール(または応急用タイヤ)を付け、少なくとも2本のボルトを十字(対角)の順で手で締める
- 残りのボルトも手で入れ、全部のボルトを十字の順で締め込む
- ジャッキのハンドルを反時計回りに回して縮め、車を下ろす
- ジャッキを外して片付ける
- ボルトを十字の順で、規定のトルクで本締めする
BMW XM の取扱説明書(北米向け)では、G09 のホイールボルト(ロックボルトを含む)の締め付けトルクは140Nm(101 lbs ft)だ。外した傷んだタイヤは、必要に応じて荷室に積む。
ブリヂストンのタイヤ交換の解説では、外したタイヤとホイールを車体の下に置いておくと、万一ジャッキが外れたときに車体が落ちるのを防ぐ助けになるとしている。その場合も、車の下に体を入れない。
トルクレンチで本締めする
本締めは必ずトルクレンチで行う。手だけで締めると締め付け不足や締め過ぎになり、走行中にホイールが外れる事故につながるおそれがある。いったん全部を規定トルクの半分で締め、その後規定の値で締め直す方法もある。いきなり1か所を締め切らず、2〜3回に分けて対角線(星を描く順)で均等に締める。締め過ぎるとネジ山がつぶれることがあり、ネジ部や座面にゴミ・砂・サビがあると正しく締まらないことがある。
純正以外のホイールを付けるとき
取扱説明書には、車両メーカーの純正ではない軽合金ホイールを付けるときは、そのホイールに付いてくるボルトを使う必要がある場合があるとある。純正ホイールのボルトをそのまま流用できると決めつけない。
交換した後にやること
- 早めにタイヤの空気圧を確かめて直す
- パンク警告(フラット・タイヤ・モニター)を初期化するか、タイヤ空気圧モニター(TPM)をリセットする
- 校正されたトルクレンチで、ボルトが締まっているか確かめる
- 傷んだタイヤは交換してもらう
交換後しばらく走ると部品がなじんで、まれにボルトやナットが緩むことがある。タイヤメーカーのコンチネンタルは交換後50〜100km、ブリヂストンは約100km走った段階で、トルクレンチで緩みを点検(増し締め)するよう勧めている。
その後も、空気圧はたとえば月に2回と長距離を走る前に確かめて直すよう取扱説明書にある。タイヤ側面に書かれた最大空気圧は超えない。応急用タイヤを積んでいる場合は、その空気圧も定期的に確かめる。
タイヤサイズと前後の入れ替え
取扱説明書の表に載るサイズ
北米向けの XM の取扱説明書の空気圧の表(BMW XM・BMW XM Label)には、次のタイヤサイズが載っている。どの組み合わせも前と後ろでサイズが違う。
| ホイール | 前 | 後 |
|---|---|---|
| 21インチ | 275/45R21 110Y XL | 315/40R21 115Y XL |
| 22インチ | 275/40R22 107Y XL | 315/35R22 111Y XL |
| 22インチ(M+S) | 275/40R22 107H XL | 315/35R22 111H XL |
| 23インチ | 275/35R23 108Y XL(HL) | 315/30R23 111Y XL(HL) |
M+S は冬用・全天候向けの表示。23インチの前275/35R23・後315/30R23は、英語版 Wikipedia にも同じ値がある。これは北米向けの表の値で、日本仕様の車がどのサイズを履いているかは車ごとに確かめる。日本発売時の報道は23インチホイールに触れている。指定の空気圧は、運転席側ドアの柱(ピラー)のラベルにもある。
入れ替えと付ける前の確認
XM の取扱説明書では、前と後ろでタイヤやリムのサイズが違う車は、前後をまたぐタイヤの入れ替え(ローテーション)をしないとしている。XM は前後でサイズが違う。
付ける前には、タイヤ側面の刻印で回転方向の指定(矢印と「ROTATION」)や、外側・内側の指定(「OUTSIDE」「INSIDE」)があるかを見る。残り溝が1.6mmになるとスリップサインが出て、そのタイヤは法律上使えないので、履き替えのときに溝も確かめる。
よくある質問
ホイールボルトの締め付けトルクは?
XM(G09)は、ロックボルトを含めて140Nmだ(北米向けの取扱説明書の値)。車を下ろしてから、十字の順にトルクレンチで締める。
インパクトレンチで外してよい?
ロックボルトには使わない。取扱説明書は、ロックボルトを傷めるおそれがあるとして、手で回すホイールレンチでの脱着を求めている。
前後のタイヤを入れ替えてよい?
入れ替えない。XM の取扱説明書は前後でサイズが違う車の前後ローテーションをしないとしており、北米向けの表に載るサイズは、どの組み合わせも前と後ろで違う。
車載ジャッキは付いている?
北米向けの XM の取扱説明書では標準装備として書かれておらず、ディーラーや整備工場で手に入る用品の扱いだ。日本仕様の装備は車両で確かめる。
増し締めはいつ?
交換後に少し走って部品がなじんだ頃に、トルクレンチで1度点検する。タイヤメーカーが勧める走行距離の目安は、「交換した後にやること」の節に書いた。
まとめ(作業前の確認リスト)
- ジャッキ・ロックボルトのアダプター・トルクレンチが手元にあるか
- ホイールハウス脇の四角いくぼみの位置を、取扱説明書の図で見たか
- 地面から最大3cmで止め、車の下に入らない段取りになっているか
- 本締めを十字の順で140Nm(G09・北米向けの取扱説明書の値)にできるか
- 季節の履き替えをパンク用のジャッキで繰り返すことになるなら、店に頼む案と比べたか
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