BMW M3 ツーリング(G81)の異音は、原因を1つに決めつけず、音が出る場面・聞こえる場所・音の種類の3つを組み合わせて切り分けるのが近道だ。場面と場所が分かれば、ブレーキ・車輪・駆動系・エンジンと排気・荷室のどれを先に疑うかが絞れる。ただし金属がこすれる音、だんだん大きくなる音、タイヤのまわりの音は、切り分けより先に安全な場所に止めて相談する音だ。
音が出た場面から、先に疑う場所を決める
G81 は BMW が初めての M3 ツーリング(ステーションワゴン)として出した型式で、ツーリング独自の荷室の装備も音の出どころになる。まず下の表で、音が出た場面から先に見る場所を決める。
| 音が出る場面 | 先に疑う場所 |
|---|---|
| ブレーキを踏んだとき、洗車や雨の後 | ブレーキ(前輪か後輪か) |
| 走行中に周期的に鳴る、走行音が大きい | 車輪のまわり、床下の中央 |
| ハンドルを切ったとき | ステアリングや駆動系のジョイント |
| 加速や一定の速さで続くうなり、笛のような音 | 駆動系 |
| 冷えた状態での始動時のカタカタ音、振動 | エンジンルーム |
| テールゲートの開閉、段差を越えたとき | 荷室 |
場所が絞れたら、音の種類(キーキー、ゴー、ウー、カタカタ、コトコト、ガリガリなど)を言葉にしておく。場面・場所・音の3つがそろうと、販売店での原因の特定が早くなる。 止めるべき音は「走り続けてはいけない音」の節にまとめた。
G81 の基本と、音の出どころになる装備
日本での発売と 2024年の改良
G81 は 2022年6月のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで世界初公開され、2022年9月にミュンヘン工場の生産ラインに初めて載った。日本では「M3 Competition M xDrive Touring」の名で 2023年1月20日に発売された。右ハンドルで、ドライブロジック付きの 8 速 M ステップトロニック AT、4 輪駆動の M xDrive、アクティブ M ディファレンシャル、M スポーツエキゾースト、DSC を備える。エンジンは直列 6 気筒 3.0 リッターのツインパワーターボのガソリンで、発売時の最高出力は 510PS(375kW)/6250rpm、最大トルクは 650Nm/2750〜5500rpm。
2024年9月10日に発表された一部改良で、出力は 20PS 上がって 530PS になった(BMW の資料では 390kW/530hp で、エンジン制御ユニットの設定の見直しによる)。最大トルクは 650Nm で、発生する回転域の上限が 5730rpm に広がった。日本での納車は 2024年10月からの予定とされた。
音の出どころになる装備
BMW の発表資料(2022年6月と 2024年9月)では、G81 の装備は次のように説明されている。
- ブレーキ: 前輪と後輪でキャリパーの形式が違う(次の節で詳しく書く)
- 駆動: M xDrive はトランスファーの電子制御の多板クラッチで前後に駆動力を配り、標準は 4WD の設定。後輪の左右への配分はアクティブ M ディファレンシャルが受け持つ
- 足回り: アダプティブ M サスペンション(電子制御のショックアブソーバー)が標準。前は M 専用のダブルジョイント・スプリングストラット、後ろは M 専用のホイールキャリアとウィッシュボーンを持つ 5 リンク。ホイールは前 19 インチ・後 20 インチ
- 排気: 電気で制御するフラップを持つ M 専用品
- 荷室: 自動で開閉するテールゲートが標準で、閉じた後に荷室の床からゴム付きの滑り止めのレールが立ち上がる。容量は 500 リットルから 1510 リットルまで広げられる
電子制御で動く部品と、荷室の動く装備が多いことが、G81 の異音を考えるときの前提になる。
ブレーキを踏んだときの音
BMW の発表資料では、G81 のブレーキは M コンパウンド・ブレーキが標準で、前輪は 6 ピストンの固定キャリパー、後輪は 1 ピストンの浮動キャリパーを組み合わせる。オプションに M カーボン・セラミック・ブレーキがあり、2 つはブレーキの部品そのものが違う。作動・倍力・制御を 1 つの小さなモジュールにまとめた方式で、M 用はセットアップのメニューからペダルの感触を 2 つの設定から選べる。資料は海外向けで、日本仕様の一台ごとの装備はそれだけで決められないので、自分の G81 がどちらのブレーキかは注文時の仕様書か販売店で確かめる。
切り分けは、ブレーキを踏んだときだけ出るのか、踏まなくても出るのかを分けることから始める。前輪と後輪でキャリパーの形式が違うので、前と後ろのどちらから聞こえるかも分けて伝えたい。
洗車や雨の後の音
BMW M のブレーキ担当者(クラウス・ドゥリンガー氏)の説明を紹介した記事によると、洗車の後などにディスクとパッドの間に水が入ったときの音(本人は「ウェット・ホンキング」と呼ぶ)は、洗車機から出たときに聞こえるのと同じ音で、ブレーキを 2〜3 回使えばたいてい消える。同じ記事では、M の車では適度なブレーキを定期的にかけることが勧められ、ゆっくりすぎる運転ばかりだと良くない影響が出ることがあるとされる。サーキットで強いブレーキを繰り返すと起きる現象(記事では「ブレーキ・ライニング」)は、何回かの適度な、または軽いブレーキで直せるという。どれも 2019年の動画の紹介で、当時販売中の M モデル全般の話であり、G81 に限った説明ではない。
洗車や雨の後だけ出る音なら、周りの安全を確かめたうえで何回か普通にブレーキを使い、消えるかを見る。消えない、大きくなる、踏んだ感触が変わるときは販売店で点検を受ける。
摩耗やディスク・キャリパーが原因の音
オイル・ケミカルのメーカー、リキモリの解説では、ブレーキをかけたときの振動を伴わないきしみ音の原因として、摩耗したブレーキパッド、規定の寸法を下回ったブレーキディスク、ディスクのバリやエッジを挙げ、パッドとディスクの損傷・摩耗・安全性を確かめて、必要なら交換するよう勧めている。
ブレーキメーカーのディクセルを紹介する記事では、ディスク(記事ではローター)の周りに段がある、または表面に凹凸があるときは、偏った摩耗が鳴きの原因である見込みが大きく、新品に替えると不快な鳴きを解消できるとしている。ピストンシールやダストブーツといったキャリパーのゴム部品の劣化も音の原因になりやすく、キャリパーのオーバーホールで対処するという。
どちらも車種を限らない一般の解説だ。G81 はブレーキの種類で部品が違うので、交換やオーバーホールが要るかは販売店の点検で決めてもらう。
タイヤ・車輪のまわりから聞こえる音
JAF の会員誌の記事では、タイヤ付近からの異音には、ホイールナットの緩みや、ドライブシャフトブーツが破れてグリースが漏れたことによるハブベアリングの故障など、さまざまな場合があるとしている。タイヤからの音と思っても、実際は車体の真ん中にあるプロペラシャフトが原因の場合もある。ブレーキのディスクの裏にある、ほこりよけと放熱のための薄い鉄板(バックプレート)との隙間に小石が挟まる場合もあり、バックプレートが変形していると異物が挟まりやすいので、定期点検が大切だという。
リキモリの解説では、走行中の周期的でリズミカルな振動や大きな走行音はホイールベアリング(ハブベアリング)の摩耗の可能性があり、できるだけ早く交換が要るとしている。どちらも車種を限らない一般の解説だ。
G81 はホイールが前 19 インチ・後 20 インチで、前後で大きさが違う。音がどの車輪のあたりから聞こえるのか、床下の中央からなのかを分けて伝えると切り分けが進む。同じ JAF の記事は、タイヤからの異音は重大なトラブルに発展する場合があるとして、異常を感じたら早めに JAF へ連絡するよう勧めている。
ハンドルを切ったとき・加速や一定の速さで続く音
リキモリの解説では、ハンドルを切ったときのカチカチ音や低いブーンという音は、ステアリングかドライブシャフトのジョイントの摩耗が原因になりうるとし、ジョイントとほこりを防ぐ保護スリーブを点検して必要なら交換すること、ステアリングギアとパワーステアリングの点検を頼むことを勧めている。続けて出るうなり音や笛のような音は、ギアボックスに問題がある可能性があるので整備工場に相談するよう勧めている。いずれも車種を限らない一般の解説だ。
G81 では、M xDrive が前後の配分を、アクティブ M ディファレンシャルが後輪の左右の配分を受け持ち、電子制御で駆動力を配っている。2024年の改良時の資料でも、後輪寄りの設定の 4 輪駆動とアクティブ M ディファレンシャルの組み合わせと説明されている。駆動系の音は外から確かめにくいので、ハンドルの角度、速さ、選んでいた走行の設定を書き留めて、販売店で診てもらうのが早い。
エンジンルームと排気の音
リキモリの解説では、エンジンルームのカタカタ音の原因の例として、冷えた状態で始動したときの油圧タペットの音や、タイミングチェーン・チェーンテンショナーからの音を挙げ、チェーンからの音なら専門の整備工場に点検を頼むよう勧めている。振動や異常な揺れがあるときはエンジンマウントの摩耗や劣化の可能性があり、その場合は交換が唯一の対策だという。どれも車種を限らない一般の解説で、G81 のエンジンの部品の構成をこの出典で確かめたものではない。
G81 の排気系は、電気で制御するフラップを持つ M 専用品で、BMW は豊かなサウンドを生むと説明している。排気の音がいつもと違うと感じたら、エンジンが冷えていたか暖まっていたか、速さと走行の設定を書き留めて販売店に伝える。
荷室・車体のまわりの音
G81 には、自動で開閉するテールゲートと、閉じた後に荷室の床から立ち上がるレールという、ツーリングならではの動く装備がある。荷室のまわりの音は、テールゲートの開閉中や閉じた直後に出るのか、走行中の段差で出るのかを分けて記録する。装備の作動に合わせた音かどうかを伝えると、販売店が切り分けやすい。走行中の音なら、積んだ荷物や工具の固定が緩んでいないかを先に見る。
G80(M3 セダン)や M4 など兄弟車向けの不具合の情報や体験談は、G81 にそのまま当てはまるとは限らない。G81 には自動テールゲートや荷室の床のレール、リアの追加のトーション・ストラット(2024年の改良時の資料)のようなツーリング独自の部分があり、G81 は米国では販売されていない。兄弟車や海外の情報を当てはめるときは、その情報の対象に G81 が入っているかを確かめ、分からなければ販売店に車台番号で確かめてもらう。
販売店に伝える前の記録と、リコールの確かめ方
書き留めておく4つのこと
異音に気づいたら、次の4つを書き留める。
- いつ鳴るか: 冷えているとき・暖まった後、発進や加速、一定の速さ、減速や止まる直前、ハンドルを切ったとき、段差を越えたとき、雨や洗車の後
- どこから聞こえるか: 前・後ろ、右・左、床下の中央、荷室、エンジンルーム
- どんな音か: キーキー、ゴー、ウー、カタカタ、コトコト、ガリガリなど
- そのときの速さと、選んでいた走行の設定
録音や録画は、止まっている間に撮るか同乗者に頼み、運転中に自分で操作しない。
G81 は駆動力の配分(M xDrive・アクティブ M ディファレンシャル)、ブレーキ、ダンパーが電子制御で、足回りにも M 専用の部品が使われている。原因の特定と修理は、BMW の正規販売店か M モデルを扱える整備工場に相談し、書き留めた内容と録音を見せると話が早い。
リコールと不具合情報の窓口
国土交通省の「自動車不具合情報ホットライン」(自動車安全情報ポータルサイト)には「リコール情報検索」と「リコール届出情報一覧」があり、届出の内容を調べられる。クルマの不具合の情報を、電話か WEB 入力で国に伝えることもできる。検索の結果が自分の G81 に当たるか迷ったら、販売店に車台番号で確かめてもらう。
走り続けてはいけない音
金属がこすれるような音、だんだん大きくなる音、ハンドルやブレーキの感触の変化を伴う音、タイヤのまわりからの音が出たら、走り続けずに安全な場所に止め、ロードサービスか販売店に相談する。 小さな原因でも、走り続けると危険が大きくなる場合がある。
JAF の会員誌の記事で紹介された事例では、前輪からの小さな音が次第に不安を感じる音量になり、走り続けるとタイヤの脱落やパンクなどの危険が予測されたため救援を頼んだ。原因はバックプレートに挟まった小石で、ホイールを外してバックプレートを手で広げると落ちてきたという。
よくある質問
洗車の後にブレーキが鳴るのは異常?
BMW M のブレーキ担当者の説明を紹介した記事では、ディスクとパッドの間に水が入ったときの音は、ブレーキを 2〜3 回使えばたいてい消えるとされる。ただし M モデル全般の話で、一台ごとの診断の代わりにはならないので、消えない音は点検を受ける。
G80(M3 セダン)向けの不具合情報は G81 にも当てはまる?
そのまま当てはまるとは限らない。G81 には自動テールゲートなどツーリング独自の部分があり、米国では販売されていない。情報の対象に G81 が入っているかを確かめ、分からなければ販売店に車台番号で確かめてもらう。
リコールが出ているかはどこで確かめる?
国土交通省の自動車不具合情報ホットライン(自動車安全情報ポータルサイト)の「リコール情報検索」と「リコール届出情報一覧」で調べられる。
自分の G81 のブレーキがどちらの種類かはどう確かめる?
注文時の仕様書か販売店で確かめる。BMW の発表資料では、G81 は M コンパウンド・ブレーキが標準で、オプションに M カーボン・セラミック・ブレーキがあるとされるが、海外向けの資料で、日本仕様の一台ごとの装備はそれだけで決められない。
まとめ
G81 の異音は、まず場面と場所から疑う場所を1つに絞り、そのうえで記録を持って販売店で確かめてもらう、という順で動くのが早い。
- 場面(ブレーキ、加速、ハンドル、段差、冷えた状態の始動、テールゲート)と場所(車輪、床下の中央、エンジンルーム、荷室)を組み合わせて、先に見る場所を決める
- いつ・どこ・どんな音・速さと走行の設定を書き留め、録音は止まっている間か同乗者に頼む
- 金属がこすれる音、大きくなる音、感触が変わる音、タイヤのまわりの音は、止めて相談する
- 兄弟車や海外の情報は、対象に G81 が入っているかを確かめてから使う
G81 の手入れや装備の記事も合わせて見ておくとよい。

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