初代 M4 クーペの F82 に乗っていると、ハンドルを切ったとき、ブレーキを踏んで止まる間際、エンジンを止めた後など、いろいろな場面で聞き慣れない音に出会う。走り続けてよいかを分けるのは、音がどこから出ているかと、どんな場面で鳴るかの2つだ。ハンドル操作時の音、走行中のタイヤ付近の音、エンジン付近のガラガラ音やキュルキュル音なら走らずに点検を頼み、ワイパーのビビり音ならまず自分で手入れをする、という順で考えればよい。
まずは音の場所と鳴る場面で急ぎ度を分ける
JAF の案内のとおり、走行中の異音は発生源が多岐にわたり、原因も1つとは限らない。だから最初にやるのは原因の当てずっぽうではなく、「どこから」(エンジン・ハンドル・前輪・タイヤ・後ろの車軸・ブレーキ・車内)と「どんな場面で」(ハンドルを切ったとき・旋回中・止まったまま・減速時・停車の間際・エンジンを止めた後)の2つで音を絞り込むことだ。BMW が米国の 2016 年式 M4 向けに出した整備向けの技術情報の見出しも、この場所と場面の組み合わせで書かれている。
急ぎ度は JAF の案内をもとに、次のように分けておくと判断が早い。
| 急ぎ度 | 音の例 | すること |
|---|---|---|
| 走行を控える | ハンドルを回すと鳴る音、走行中のタイヤ付近の音、エンジン付近のガラガラ音・キュルキュル音 | 走らずに JAF へ救援要請 |
| 早めに点検 | エンジンを止めた後の冷却ファンの回転音が長時間続く | すみやかに販売店か整備工場で点検 |
| まず手入れ | ワイパーのビビり音 | ガラスの汚れ落としなど自分でできる手入れ |
ハンドル操作時の音はステアリング機構の異常の可能性があり、走行は大変危険とされている。どの段に当たるか分からないときも JAF に連絡できるので、迷ったら危険側に寄せて考えるのが正解だ。
対象の M4 F82 と、音に関わる M 専用の装備
ここで扱うのは初代 M4 の F82(2 ドアクーペ)で、販売は 2014〜2020 年。Motor-Fan のカタログでは、型式 CBA-3C30 の掲載が 2014 年 7 月発売モデルから 2020 年 4 月発売モデルまでの区分になっている。2021 年 1 月発売モデルからの区分は型式 3BA-52AZ30 に変わり、これは 2 代目の G82 で別の車だ。自分の車がどちらかは車検証の型式で確かめられる。
BMW の日本法人は 2014 年 2 月 19 日に予約注文の受付を始め、納車は 2014 年 7 月からの予定とした。発表資料が挙げる装備のうち、音の出どころとして頭に入れておきたいのは次のものだ。
- エンジン: S55B30A 型の 2,979cc 直列 6 気筒ツインターボ(M ツインパワー・ターボ・エンジン)、駆動方式は FR
- 変速機: 6速MT と 7速M DCT
- 後輪: パワーを左右の後輪の間で配分するアクティブMディファレンシャル
- ブレーキ: 標準は Mコンパウンド・ブレーキ・システム、Mカーボン・セラミック・ブレーキ・システムはオプション装備
- 排気: M デュアル・ツイン・エキゾースト・テールパイプ
とくにブレーキは、オプションのカーボンセラミックが付いているかで読むべき話が変わる。自分の車の装備を先に確かめておこう。
エンジンまわりの音
ガラガラ音・キュルキュル音
JAF の案内では、エンジン付近のガラガラ音はエンジンオイルの不足や潤滑不良、キュルキュル音はベルトの滑りの可能性がある。どちらも点検が必要な状態で、JAF への救援要請が案内されている。潤滑や冷却が足りないとエンジンが焼き付く(金属の部品が過熱して溶着する)おそれがあり、焼き付くと始動できなくなることもある。日常点検でエンジンオイルの量を確かめる習慣が、いちばん手前の予防になる。オイルの交換時期と量は次の記事にまとめてある。
エンジンを止めた後の回転音
一部の車種では、エンジンを冷やすために停止後もしばらく冷却ファンが回り続ける(JAF)。ただし M4 F82 がその車種に当たるかは確かめられていない。長時間回り続けるなら故障の可能性もあるので、すみやかに販売店か整備工場で点検を受ける。
猫などの鳴き声
エンジンルームのあたりから猫などの鳴き声がしたら、エンジンをかけない。ベルトなどに動物が巻き込まれることがあるからだ。ボンネットのあたりをやさしくたたいても解決しなければ JAF に救援を頼む。不用意に手を入れると噛まれて怪我や感染症のおそれがある。
ハンドル操作時・前輪のあたりの音
JAF の案内では、ハンドルを回したときの異音はステアリング機構の異常の可能性がある。異常があるとハンドル操作ができなくなるおそれがあり、走行は大変危険だ。ハンドル操作時の振動やハンドルの重さを伴うこともある。この場合は自分で原因を探るより、走らずに JAF を呼ぶほうを先にする。
そのうえで、米国の不具合情報の集約サイト CarComplaints が載せる、2016 年式 M4 向けの BMW の技術情報(TSB)の見出しには、前輪まわりの音の例がある。
- 止まったままや駐車の操作でハンドルを切ったとき、前輪の車軸のあたりからパキッという音が出る(B310112・2018 年 1 月、同趣旨の B310318)。要約の頁に原因と処置の記載は無い
- 旋回するときの外側の前輪から、軽い金属のカチカチ音が聞こえる(B340814・2015 年 7 月)。コーナリング・取り回し・駐車・駐車スペースからの発進のときに出るとされ、要約では原因を「ブレーキディスクとホイールベアリングハブの間の動き」としている。処置は要約の頁に載っていない
これらは米国で整備向けに出された文書の見出しと要約で、リコールとは別のものだ。米国の 2016 年式 M4 向けの技術情報が、日本仕様の車やほかの年式、自分の車に当てはまるか、どんな処置になるかは、この情報からは分からない。症状が近いと感じたら、車台番号を添えて BMW の正規販売店に、同じ症状の技術情報が出ているかを相談する材料にする。
タイヤ付近・後ろの車軸のあたりの音
走行中にタイヤ付近から音がするとき、JAF はタイヤに異物が刺さっている、走行関係の部品が傷んでいるなど、発生源が多岐にわたり複数の原因が考えられるとしている。ここも点検が必要な状態で、JAF への救援要請が案内されている。タイヤを見るついでに純正サイズを確かめたいときは次の記事が使える。
米国の 2016 年式 M4 向けの BMW の技術情報(TSB)の要約と見出しには、後ろまわりの音の例もある。
- 走行中に後ろの車軸のあたりから耳障りな音が出る症状について、小石や路面の砂などの異物が、ブレーキの防護板(バッキングプレート)とブレーキディスクの間に挟まることがある、とされる(B340615)
- 荷重が切り替わるとき(加速と減速の切り替わりなど、駆動の力の向きが変わるとき)に、後ろの車軸のあたりから強いノック音が聞こえる症状(B330318)。見出しには振動やこもり音も並ぶ。要約の文は途中で切れており、原因は断定できない
- 減速時に後ろの車軸からタービンのような音が聞こえるもの(B340921)と、後ろの車軸からのこもり音(B330119)。この2つは見出ししか確かめられていない
どれも処置は要約の頁に載っていない。当てはまるかは、前輪の項と同じく車台番号で販売店に確かめる前提で読んでほしい。
ブレーキの鳴きと、カーボンセラミックブレーキの音
一般的なブレーキ鳴き
くるまのニュースの記事では、ブレーキを踏んだときのキーキー音について、ブレーキパッドには一定量摩耗すると高い音を出して交換時期を伝える仕組みのものがあり、パッドの減りのほか、ディスクローターやキャリパーに異常が起きている可能性もゼロではないとしている。JAF も、残量が減ると音で知らせる仕組みは多くの国産車にあると説明している。ただし M4 F82 のパッドが音で知らせる仕組みかどうかは確かめられていない。
パッドの残量は、ホイールを外し、ブレーキキャリパー(パッドをディスクに押しつける装置)の点検用の窓から目で見て確かめる(JAF)。目安の厚みを下回ったら交換で、放置すると効きが落ちて事故につながるおそれがある。あわせてディスクに傷などの異常が無いかも見る。ブレーキ液の減少で警告灯が点くこともあり、そのときは早めに整備工場で点検を受ける。
対処について、くるまのニュースの記事はブレーキのクリーニングか部品の交換を挙げている。パッドやディスクの表面をきれいにする、専用の鳴き止め剤を塗る方法もあり、摩耗が原因なら部品交換が要る。しばらく走っても鳴り止まず不安なら、プロに見てもらう。
Mカーボン・セラミック・ブレーキ装着車の音
BMW の日本法人の発表資料では、M4 クーペの Mカーボン・セラミック・ブレーキ・システムはオプション装備だ。米国の 2016 年式 M4 向けの BMW の技術情報(TSB B340714・2018 年 11 月)の要約では、このオプションのカーボンセラミックブレーキで、低速走行時や停車の間際にキーキー音やホーンに似た音が出ることは素材の既知の特性とされ、部品交換では音は消えないとしている。制動性能とのトレードオフで、性能・耐久性・動作の信頼性には影響しない旨を顧客に説明するよう指示されている。
この話は Mカーボン・セラミック・ブレーキ装着車に限ったもので、標準の Mコンパウンド・ブレーキの音や、摩耗・異物の挟まりによる音には当てはめない。装着車でも、日本仕様の車や自分の車に当てはまるかは販売店で確かめる。
車内・ボディまわり・ワイパーの音
米国の 2016 年式 M4 の頁に載る BMW の技術情報の見出しには、車体・内装の音の例として次のものがある。
- A ピラー下部からのガタつき音(B512518)
- A ピラーのドアストップからのうなり音(B512515)
- ドアトリムパネルのきしみ音(B513216)
- ドアミラーからのうなり音(B512415)
- シートの背もたれからのパキッという音(B520919)
幌の C ピラー付近の音(B540218)はカブリオレの話で、クーペの F82 には当たらない。どれも原因と処置は見出ししか確かめられていない。
ワイパーを動かしたときのビビり音は、JAF の案内ではガラス面の汚れ、水をはじくコーティングの影響、ワイパーゴムの劣化が原因として考えられる。まず窓ガラスの汚れを落とし、コーティングをしているならワイパーゴムにビビり防止剤を塗る。それでも直らなければワイパーゴムかワイパーブレードごと交換する。自分での交換が難しければ販売店や整備工場に相談する。
リコールの対象かを確かめる・不具合を届け出る
国土交通省の案内では、リコールの対象になるとハガキ等で自動車メーカー等から直接通知が届く。通知が無い、あるいは心配なときは、自動車メーカーか車を買った販売店に相談する。国土交通省のリコール情報検索は対象を車台番号の幅で示しているので、個別の車の確認はメーカーに車台番号で問い合わせるのが確実だ。
気になる不具合は、国土交通省の「自動車不具合情報ホットライン」に寄せることもできる。寄せられた情報は、リコールの隠ぺいの防止や欠陥車両の早期発見などに使われる。
点検を頼むときの伝え方と、JAF の呼び方
販売店や整備工場に相談するときは、症状をまとめて伝えると話が早い(JAF)。音の場所と鳴る場面をメモしておくだけで伝わり方が変わる。たとえば「前輪・止まったままハンドルを切ったとき」「後ろの車軸・荷重が切り替わるとき」のような書き方だ。米国の 2016 年式 M4 向けの技術情報に近い症状があれば、その番号を添えて、自分の車に当てはまるかを販売店で確かめてもらう。
当てはまる症状か判断できない、状況が分からないときは JAF に連絡できる。JAF は現場での応急対応・点検・販売店や整備工場への搬送に対応している。呼ぶときは、まず自分の安全を確かめてから連絡し、今の状況を伝える。依頼はウェブサイト・アプリ・電話・FAX の4つでできて、ウェブサイトとアプリは GPS で現在地を特定できるので場所の説明が要らない。
よくある質問
エンジンを止めた後もファンの音がするのは故障?
故障とは限らないが、M4 F82 が停止後もしばらく冷却ファンが回る車種に当たるかは確かめられていない。長く続くなら販売店か整備工場で点検を受ける。
カーボンセラミックブレーキの鳴きは部品交換で消える?
米国の 2016 年式 M4 向けの BMW の技術情報(TSB B340714)の要約では、オプションの Mカーボン・セラミック・ブレーキで低速走行時や停車の間際にキーキー音やホーンに似た音が出ることは素材の既知の特性で、部品交換では消えないとされる。Mカーボン・セラミック・ブレーキ装着車に限った話で、標準の Mコンパウンド・ブレーキの音や、摩耗・異物の挟まりによる音には当てはめない。日本仕様の車や自分の車に当てはまるかは販売店で確かめる。
自分の M4 がリコールの対象か知るには?
対象ならメーカー等からハガキ等で通知が届く。通知が無くて心配なら、車台番号を伝えてメーカーか買った販売店に問い合わせる。
ワイパーのビビり音は自分で直せる?
まず自分で試せる。ガラスの汚れを落とし、コーティングをしているならワイパーゴムにビビり防止剤を塗り、直らなければゴムかブレードを交換する。
まとめ
M4 F82 の異音は原因が1つとは限らないので、まず音の場所と鳴る場面の2つで絞り込み、そのうえで急ぎ度に合わせて動く、という順で進めるとよい。
- ハンドル操作時・走行中のタイヤ付近・エンジン付近のガラガラ音やキュルキュル音は、走らずに JAF へ救援要請
- エンジン停止後の冷却ファンの回転音が長く続くなら、すみやかに販売店か整備工場で点検
- ワイパーのビビり音は、まず自分で手入れ
- 米国の 2016 年式 M4 向けの技術情報にある前輪・後ろの車軸・カーボンセラミックブレーキ・内装の音の例は、当てはまるかを車台番号で販売店に確かめる材料
- 判断に迷ったら JAF か販売店に相談する
兄弟車の M3 F80 の異音や、ドライブレコーダーの取り付けも、あわせて確かめておくとよい。

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