新車から10年以上が過ぎたAVV50のカムリは走行距離も伸び、中古で手に入れた個体も多い。エンジンが止まったり掛かったりを繰り返す車だから、いつもと違う音に気づいても、それがこの車の普通なのか故障の入り口なのか、その場では決めきれない。この車はメーカー自身が鳴る音を取扱書で名指しして文書化している、珍しい部類の車である。音の名前を当てにいく前に、手元の取扱書の記載と突き合わせて、そこに載っていない音だけを残していく順番で進めるのが早い。
AVV50の音は3つに分かれる
カムリ ハイブリッドの取扱書に載る車両仕様は、型式AVV50、エンジン2AR-FXE、電動機型式2JM、駆動方式FF。この4項目は2011年9月版と2015年10月版で同じ内容で、トヨタ認定中古車の世代一覧では、この代は2011年9月から2017年7月まで売られている。AVV50はハイブリッド専用の1型式で、エンジンも駆動方式も1種類しかない。だから切り分けは型式差ではなく、年式(前期か後期か)と車台番号で行うことになる。
そのうえで、この車で鳴る音は3つに分かれる。取扱書が異常ではないと名指ししている音、取扱書が警告として鳴らしている音、そのどちらにも当てはまらない点検が要る音。まず1つ目を消し、次に2つ目を確かめ、残ったものを持ち込む。
取扱書が「異常ではない」と列挙している9つ
2015年10月版の取扱書には「ハイブリッド車特有の音と振動について」という項目があり、システム始動後に次のような音や振動が出ることがあるが異常ではない、として9つを挙げている。
- エンジンルームからのモーター音
- 始動時・停止時に車両後方および駆動用電池から聞こえる音
- 始動時・停止時に車両後方から聞こえる“コトン”“カチッ”などの高電圧リレーの音
- トランクを開けたときに聞こえる作動音
- エンジンの始動・停止時や低速走行時、アイドリング中にトランスミッション付近から聞こえる音
- 急加速時のエンジン音
- ブレーキペダルを踏んだときやアクセルペダルをゆるめたときの回生ブレーキの音
- エンジンの始動・停止による振動
- リヤシート横(左側)にある吸入口から聞こえるファンの音
最後のファンの音には、エコドライブモード時は通常走行時よりファンの音が大きくなることがある、という補足が付く。ただしこの列挙は、音の種類と場面が両方とも一致する場合の説明であって、いつもと違うと感じた音の安全宣言ではない。場所か場面のどちらかがずれるなら、消さずに残しておく。
なお同じ取扱書は、エンジンが自動停止しない条件として暖機中、駆動用電池の充電時、駆動用電池の温度が高いときや低いとき、暖房使用時を挙げている。エンジンが掛かりっぱなしに感じるときは、まずここに当てはまらないかを見る。
ブレーキとハンドルの音は擬音まで書かれている
取扱書はECB(エレクトロニカリーコントロールドブレーキ)の作動音を3つ挙げている。ブレーキペダルを操作したときにエンジンルームから聞こえる“カチ”“シュー”“ジー”、運転席ドアを開けたときに車両前方から聞こえるブレーキシステムのモーター音である“ジー”、そしてハイブリッドシステムを停止して1〜2分たったころにエンジンルームから聞こえる“カチ”“シュー”“ジー”。車を降りたあとに鳴る音まで、異常ではない側として名指しされているのがこの車の書きぶりである。
ハンドル操作時に聞こえるEPS(エレクトリックパワーステアリング)モーターの“ウィーン”も同じ扱い。ABS、ブレーキアシスト、TRC、VSC、ヒルスタートアシストコントロールが作動したときには、車体やハンドルの振動、車両停止後にも聞こえるモーター音、ABS作動時にブレーキペダルが小刻みに動く、作動終了後にペダルが少し奥に入るといった現象が起こるが異常ではない、とされている。
据え切りを長く続けた直後にハンドルが重くなるのも、取扱書ではEPSのオーバーヒートを避けるために効きを下げる制御として説明されていて、操作を控えるか停車してシステムを止めれば10分程度で戻る。
前期と後期で取扱書の書き方が違う
同じ項目でも版によって記載量が変わる。2011年9月版の列挙には高電圧リレーの音が入っておらず、代わりに別の知識欄で“コトン”“カチッ”の説明が単独で置かれている。トランスミッション付近の音は前期版が「始動時や停止時」だけなのに対し、後期版は低速走行時とアイドリング中まで場面が具体化されている。回生ブレーキの音も、後期版ではアクセルペダルをゆるめたときが加わる。「車から音が鳴ったときは(音さくいん)」は2015年10月版にはあるが2011年9月版には無く、ECBという語も前期版には出てこない。
手元の車載取扱書の版によって載っている情報量が違うので、後期版の記載をそのまま前期型の説明として使わない。前期型で列挙に見当たらない音でも、後期版では異常ではない側に入っていることがある。
音さくいんで警告音の正体を引く
2015年10月版には「車から音が鳴ったときは(音さくいん)」という専用ページがあり、車の状態や誤操作を知らせるために鳴る警告音が、状況と原因の対応表になっている。機械が鳴らしている音なら、ここで原因まで一度にたどり着く。装備の有無はグレードやオプションによる。
乗り降りの場面
ドアを開閉したときは、スマートキーの車内への置き忘れ、シフトポジションがP以外、窓やムーンルーフが開いている(窓の分はハイブリッドシステム停止中のみ)。トランクを閉めたときはスマートキーのトランク内への置き忘れ。ハイブリッドシステムを停止したときはスマートキーの電池残量低下。施錠しようとしたときは、いずれかのドアが確実に閉まっていないか、スマートキーの車内への置き忘れ。
走行の場面
走り出したときは、ドアが閉まっていない、パーキングブレーキが解除されていない、運転席・助手席のシートベルト未着用。助手席に荷物を置いている場合にもブザーが鳴ることがある。ほかに、先行車への接近(レーダークルーズコントロール)、前方の障害物と衝突しそうになったとき(PCS)、車線からの逸脱(LDA)が並ぶ。
ブレーキ付近のキーキー音だけは扱いが違う
音さくいんでも、ブレーキペダルを踏んだときのきしみやひっかき音は、ブレーキパッドの摩耗が原因とされている。取扱書の警告欄はさらに強く、継続的にブレーキ付近から警告音(キーキー音)が発生したときは、できるだけ早くトヨタ販売店で点検を受けてブレーキパッドを交換するよう求め、交換されないとディスクローターの損傷につながる場合があるとしている。ECBの“カチ”“シュー”“ジー”とは、鳴り方が連続的なきしみであることと、ブレーキを使う場面でだけ出ることで線が引ける。この音は様子見に向かない側として書かれている。
低速でだけ鳴る音は車両接近通報装置かもしれない
取扱書によれば、この車にはエンジンが停止した状態での走行時に、周囲へ接近を知らせるため車速に応じた音階で音を鳴らす装置が付いていて、車速が約25km/hをこえると消音する。スイッチで消せるが、ハイブリッドシステムを始動するごとにONに戻る。装置は車両前側にあるため、車両後方では前方に比べて聞こえにくい。駐車場や住宅街の低速でだけ鳴り、速度を上げると消える音なら、この装置がまず候補になる。EVドライブモードの説明でも、静かに走りたい場合はOFFにするよう案内されている。
AVV50に実在する無償修理は3件
トヨタが公開している範囲で、AVV50を対象とする無償修理は3件確認できる。
- 前輪ロアアーム側ボールジョイントのリコール(届出番号3465)
- シフトロック機構のサービスキャンペーン
- ブレーキアクチュエータのサービスキャンペーン
音に触れているのは1件だけ
3件目の案内だけが音に触れている。ブレーキ操作を長期にわたり頻繁に繰り返すと(例としてタクシー等の営業用途)まれに警告灯が同時に点灯し、点灯したまま使い続けると警告音が鳴ってブレーキの効きが悪くなる、という現象である。対象車両表の備考は2表とも事業用で、自家用のカムリは入っていない。
届出番号3465のリコールは、ボールジョイントのゴム製ブーツが搬送工程で損傷し、グリースが漏れてボールジョイントが早期に摩耗、最悪の場合ナックルアームから外れて走行不能になるおそれ、という内容で、公表文に音の記載は無い。だから異音の原因とは断定できない。ただし、前輪の連結部が早期に摩耗しうる届出が40,926台規模で実在するという事実は、点検を頼むときの材料として持っていってよい。シフトロック機構の1件は、意図せず車が動き出すおそれが現象で、こちらも音の記載は無い。
対象かどうかは年式ではなく車台番号で決まる
届出番号3465の対象は型式DAA-AVV50、車台番号AVV50-1000001からAVV50-1041467、製作期間は2011年7月13日から2014年8月4日。ブレーキアクチュエータの分は2表に分かれ、車台番号AVV50-1000040からAVV50-1036596(製作期間2011年8月6日から2013年12月25日)と、AVV50-1036611からAVV50-1058422(製作期間2014年1月6日から2017年4月28日)。
トヨタの案内には、対象車の含まれる車台番号の範囲には対象とならない車両も含まれること、製作期間は購入の時期とは異なることが注記されている。国土交通省のリコール情報検索も、車名・型式・届出日から内容を検索するもので、個別の車台番号による判定はメーカーまたは販売会社に問い合わせるよう案内し、番号が範囲に入っていても仕様の違いで対象外になる場合があるとしている。車台番号が範囲内であることは、対象の確定を意味しない。車検証を手元に置いて販売店に確認するのが、結論の出る唯一の道になる。
足回りとエンジンまわりで今日できる確認
タイヤと足回り
JAFのトラブル診断では、走行中にタイヤ付近から異音がする場合について、異物の刺さりや走行関係の部品の傷みなど発生源は多岐にわたり、複数の原因が推測されるとしている。症状だけから部品を1つに絞る作業は、そもそも成立しない。
自分でできるのは取扱書のタイヤ点検項目までで、空気圧(タイヤが冷えているときに点検)、亀裂や損傷の有無、溝の深さ、異常摩耗の有無の4つ。指定空気圧は215/60R16 95Hが250kPa、215/55R17 93Vが240kPa、応急用タイヤが420kPa。ローテーションは5,000kmごとが推奨されていて、タイヤ空気圧警報システムは日常点検の代用ではないと明記されている。取扱書の注意欄は、ハンドルがとられる、異常な音や振動がある、車両が異常に傾く、のいずれかがあればパンクや損傷が考えられるとし、ハンドルを持って徐々に減速するよう求めている。段差はできるだけゆっくり通過する、という項目も同じ欄にある。
エンジンまわりと、止まっているのに鳴る音
JAFの診断は、ガラガラ音はエンジンオイルの不足や潤滑不良、キュルキュル音はベルトの滑りの可能性として、どちらも点検が必要な状態に分類している。取扱書側では、指定以外のガソリンや他の燃料を使うとノッキングによる異音や振動が起こりうるとされていて、実は412ページの取扱書全体で「異音」という語が出てくるのはこの給油の注意1か所だけである。心当たりがあるなら、まず入れた燃料を思い出す。
止めたはずなのに鳴る音は分けて考える。取扱書は、ハイブリッドシステムが作動しているとエンジンが自動的に動き出したり冷却ファンが急に回り出すことがあるとして、エンジンルームを見る前にインジケーターの消灯確認を求めている。一方でJAFは、停止後に冷却ファンが回る車種はあるとしたうえで、長時間回り続けている場合は故障の可能性があり、すみやかに点検を受けるよう案内している。補機バッテリーがあがったあとやターミナルを脱着したあとにエンジンの自動停止が行われないことがあり、それが2〜3日続く場合は販売店に連絡、という記載も覚えておくとよい。
走行を止める判断と、販売店への伝え方
JAFは、ハンドルを回した際の異音についてハンドル機構の異常の可能性があるとし、走行は大変危険だとして救援要請を求めている。取扱書も、けん引の前に販売店へ連絡が必要な状況のひとつに「異常な音がする」を挙げている。ハンドル操作にともなう音と、駆動系の異常が疑われる音は、自走を続けずに止める側だと考えてよい。
持ち込むときは、音を4点に分けて伝えると再現しやすい。場所・場面・音の質・再現条件の4つである。場所はエンジンルームか車両後方か、リヤシート横か足回りか室内か。場面はシステムの始動時か停止時か、走り出したときか、ブレーキを踏んだときか、ハンドルを回したときか、停止して1〜2分後か。音の質は連続音か単発か、金属的か、擬音で言うとどれに近いか。再現条件は毎回か特定の条件だけか、速度や外気温との関係。取扱書の音の説明が場面ごとに整理されているので、この4点はそのまま記載と突き合わせられる。
日常点検は使用者の義務として法令に定められていて、事業用は1日1回運行の前、自家用乗用車は走行距離や運行時の状態から判断した適切な時期に行うものとされている。国土交通省の案内は、少しでもいつもと違うと感じたら整備工場に相談すること、そして検査(車検)に合格したことをもって点検・整備を省略できるものではないことを、はっきり書いている。車検証を持参すれば、車台番号を使った無償修理の対象確認まで一度で進む。
よくある質問
低速のときだけ鳴る電子音のような音は何ですか
車両接近通報装置の可能性がある。取扱書によれば、エンジンが止まった状態での走行時に車速に応じた音階で鳴り、約25km/hをこえると消音する。速度と音の消え方が一致するかで見当が付く。
年式だけで自分のカムリが無償修理の対象か分かりますか
分からない。トヨタの案内は製作期間が購入の時期とは異なるとしており、対象は車台番号で決まる。しかも範囲内でも対象外の車両が含まれるため、車検証を用意して販売店に確認する。
事業用のサービスキャンペーンは自家用の車でも受けられますか
ブレーキアクチュエータの案内は、対象車両表の備考が2表とも事業用になっている。自家用のAVV50は対象に入っていないので、同じ症状に見えても別の話として販売店に相談する。
パンク修理キットを使ったら大きな音がしました。壊れましたか
取扱書には、応急修理キットの作動中は大きな音がするが故障ではない、と書かれている。ただし使用後はできるだけ早く販売店で点検を受け、空気圧バルブと送信機を交換する必要がある。補修液には有効期限があり、期限切れのものは使わない。
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まとめ
順番はいつも同じでよい。まず取扱書の9項目とECB・EPSの擬音つきの説明で、場所と場面が両方一致する音を消す。次に音さくいんとキーキー音の警告欄で、機械が鳴らしている警告音かどうかを確かめる。それでも残った音は、鳴っている条件を1つに絞り込んでから、車検証を持って販売店に持ち込み、車台番号による無償修理の対象確認までまとめて済ませる。今日できるのは、次に鳴ったときに場所・場面・音の質・再現条件の4点をその場で書き留めておくこと。この4行が、口頭の説明より正確に伝わる。

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