M2(G87)の季節の履き替えを自宅で済ませようとすると、ナット留めの車に慣れた人でも迷う所が2つある。ジャッキをどこにかけるかと、ホイールをどの順でどこまで締めるかだ。先に答えを言うと、ジャッキは車体下の専用のジャッキパッドにかけ、ホイールは対角の順にトルクレンチで規定トルクまで締め、50〜100km走ったら増し締めをする。
G87 のジャッキのかけ方と締め付けの要点
作業の要は次の4つだ。
- ジャッキは車体下の四角い樹脂製のジャッキパッドにかける(BMW 用アダプターの販売店の説明による。詳しくは後の節)。
- ホイールの適合データベースの掲載値では、G87 のホイールはボルトで留める方式で、ボルトのねじは M14×1.25。2023〜2024年の掲載と、改良後の2024〜2025年の掲載で同じ値だ。
- 締め付けトルクは、同じ適合データベースの掲載値で140N・m(2023〜2025年の G87)。BMW の公式値としては確認が取れていない。
- ジャッキパッドの位置と締め付けトルクは、作業の前に車両の取扱説明書で最終確認する。確認が取れていない項目は「作業の前に確かめておくこと」の節にまとめた。
G87 のホイールとタイヤの基本値
BMW M2 の2代目(G87)は2023年から生産されている現行型で、2023年4月に発売され、2025年モデルで小改良を受けた。純正のタイヤとホイール、ボルトの規格は、ホイールの適合データベースの2023〜2024年の掲載と、改良後の2024〜2025年の掲載で同じ値になっている。
前後でサイズが違う
| 位置 | 純正タイヤ | 純正ホイール |
|---|---|---|
| 前 | 275/35ZR19 100Y | 9.5J×19 ET20 |
| 後ろ | 285/30ZR20 99Y | 10.5J×20 ET20 |
2023〜2025年の G87 は前が19インチ、後ろが20インチで、ホイールの径もタイヤの幅も違う。前後のタイヤ・ホイールを入れ替えて付けることはできないので、外したホイールは前後と左右が分かるようにして保管し、元の位置に戻す。
ボルトの規格
| 項目 | 適合データベースの掲載値 |
|---|---|
| 留め方 | ボルト留め(ラグボルト) |
| ボルトのねじ | M14×1.25 |
| PCD | 5×112 |
| ハブ径 | 66.6mm |
| 締め付けトルク | 140N・m |
ボルトのねじの規格は、後で選ぶホイールガイドボルトのサイズにそのまま関わる。
ジャッキポイントは車体下の樹脂製パッド
BMW 用ジャッキパッドアダプターの販売店の説明では、BMW は車体の下に樹脂製の専用ジャッキパッド(ジャッキサポートパッド)を設けて、持ち上げてよい場所を決めている。純正のパッドの形は四角(長方形)で、G87 の M2 クーペも、この四角い純正パッドに合わせたアダプターの適合一覧に載っている。
ジャッキは、ジャッキアップポイントのように車体を持ち上げられる場所にかける。それ以外の場所にかけると、車体の重さで車を壊すおそれがある。場所は取扱説明書に載っているので、分からないときは取扱説明書で確かめる。
気を付けたいのはパッドの傷みだ。G87 用の交換ジャッキパッドを作る部品メーカー(Verus Engineering)の説明では、G87 の純正ジャッキパッドは樹脂製で、整備やサーキットでのタイヤ交換などで傷みやすい。このメーカーは、アルミ製の交換パッドを車体に恒久的な加工をせずに取り付けられるとしている。
かける前にパッドを点検する
持ち上げる前に、樹脂のパッドにひび・欠け・大きな傷みがないかを見る。ジャッキ(とアダプター)がパッドの中心に当たっているのを確かめてから力をかけ、ゆっくり上げる。上げている間も、当たっている所がずれないかを見ながら作業する。
アダプターを挟む方法
フロアジャッキの受け皿と純正パッドの間に、四角い純正パッドに合わせたアダプターを挟む方法がある。ただし、アダプターは割れたり欠けたりしたパッドの代わりにはならない。
用意する道具
| 道具 | 何のために使うか |
|---|---|
| トルクレンチ | 本締めを規定のトルクで締める |
| 輪止め | 作業中に車が動かないようにする |
| フロアジャッキ | ジャッキパッドで車体を持ち上げる |
| リジッドラック(ウマ) | 上げた車体を支える |
| ホイールガイドボルト | 取り付けのときの位置合わせ |
| パッド用アダプター(必要なら) | 受け皿とパッドの間に挟む |
中でもトルクレンチは欠かせない。本締めは必ずトルクレンチを使い、自動車メーカーが定める規定のトルクで締める。手の感覚で締めると締め付け不足や締めすぎを招き、走行中にホイールが外れる脱輪事故につながる危険がある。車を上げる前には、ジャッキとリジッドラックの耐荷重も確かめておく。
タイヤ交換の手順
ホイールを外すまで
- 周囲の安全を確かめ、ほかの車の邪魔にならない場所に止める。交換するタイヤとは対角線上にあるタイヤに輪止めをかける。
- ジャッキで上げる前に、ホイールを留めているボルトを少しだけ緩めておく。
- ジャッキパッドにジャッキをかけ、タイヤが路面から少し浮くまで上げる。あまり高く上げる必要はない。
- 定格の合うリジッドラックを、持ち上げや支えに認められた丈夫な場所にかける。
- ボルトを外してホイールを外す。
ジャッキだけで支えた車の下には入らない。ジャッキが外れて車が落ちると挟まれる危険がある。リジッドラックが用意できないときの保険として、外したタイヤ・ホイールを車体の下に置いておく方法もある。
取り付けて締めるまで
- ホイールの穴と車体側の穴の位置を先に合わせてから付ける。ガイドボルトがあれば、この位置合わせに使う。
- 曲がったり傾いたりしていないかを確かめながら、ホイールを奥まで当てる。ホイールとボルトの座面の形が合っているかも確かめる。
- 1か所をいきなり締めず、対角線の順に、それぞれを均等に2〜3回に分けて、ホイールががたつかなくなるまで仮締めする。
- 車体を下ろしてジャッキを外し、仮締めと同じ順で本締めする(締め方は後の節)。
ボルト留めの車で使うホイールガイドボルト
ホイールガイドボルト(セッティングボルト)は、ホイールの位置を合わせる際のタイヤの落下などを防ぐための道具だ。ここで扱う2商品とも、販売ページの商品説明にこの用途が書かれている。1人で付け直すなら、用意しておくことを勧める。
選び方
選ぶ基準は、ねじ径とピッチが車両のホイールボルトと同じであること。適合データベースの掲載値では、2023〜2025年の G87 のボルトのねじは M14×1.25 なので、M14 でピッチ1.25の物が候補になる。購入前に現車のボルトのサイズを確かめる。
G87 対応と書かれた2商品
INEX のホイールガイドボルトは、商品名に M14×1.25・2本入り・シルバー・輸入車のタイヤ交換用・BMW M2 G87対応と書かれている。
INEX ホイールガイドボルト M14×1.25 2本(BMW M2 G87対応と記載)
RIDE のホイールガイドボルトも、商品名に M14×1.25・2本入り・シルバー・輸入車のタイヤ交換用・BMW M2 G87対応と書かれている。
RIDE ホイールガイドボルト M14×1.25 2本(BMW M2 G87対応と記載)
INEX と RIDE のホイールガイドボルトは、どちらも販売ページの商品説明に「説明書はない」と書かれている。また、どちらの商品説明にも、出品者の記載として「記載のメーカーや車種でも適合サイズが異なる場合がある。購入前に現車のハブボルトのサイズを確認する」とある。INEX と RIDE のどちらも、商品名に G87 対応とあっても購入前に現車のハブボルトのサイズを確かめる。
2商品の商品名に並ぶ記載は同じなので、決め手はリンク先の最新の価格と在庫になる。価格は変わるので、リンク先で確かめてから選べばよい。
締め付けの順番と増し締め
規定のトルクは、ホイールの適合データベースの掲載値では2023〜2025年の G87 で140N・m だ。BMW の取扱説明書の値は確認が取れていないので、作業前に取扱説明書で確かめ、そちらの値に合わせる。
規定トルクまで2段階で締める
トルクレンチをまず規定トルクの半分の値に合わせて全部のボルトを締め、次に規定トルクに合わせ直して正しい値まで締める。順番は仮締めと同じだ。締め具が5〜10個あるホイールは星を描くように締めていくのが正しい順番で、2023〜2025年の G87 のホイールは5穴(PCD 5×112)なので、星形の順で締める。
締めすぎと汚れに気を付ける
締めすぎると、ねじ山がつぶれたり伸びたりして重大な問題につながるおそれがあり、無理に締め付けるとボルトが破損する場合もある。また、ねじ部や、ボルトとホイールの間にごみ・砂・さびがあると、取り付けのときに見かけだけのトルク(偽のトルク)が出て、正しく締まらないことがある。取り付ける前に汚れを落としておく。
50〜100km 走ったら増し締め
タイヤ交換の後、50〜100kmほど走ったら、トルクレンチで緩みがないかを点検し、必要なら締め直す。増し締めまでがタイヤ交換の作業と考えておく。
作業の前に確かめておくこと
次の項目は、BMW の資料での確認が取れていない。作業の前に車両の取扱説明書で確認する。
- G87 のジャッキパッドの数と正確な位置
- 締め付けトルクの BMW 公式の値
- スペアタイヤやパンク修理キットの有無
あわせて、ジャッキだけで支えた車の下に入らないことと、前後のホイールを入れ替えて付けないことは、作業の間ずっと守る。道具がそろわないときや作業に自信がないときは、無理をせずロードサービスや専門店に任せる。
よくある質問
前後のタイヤを入れ替えてローテーションできますか
できない。適合データベースの掲載値では、2023〜2025年の G87 は前が19インチ、後ろが20インチで、ホイールの径もタイヤの幅も違う。
締め付けトルクはいくつですか
ホイールの適合データベースの掲載値では、2023〜2025年の G87 で140N・m。BMW の公式値としては確認が取れていないので、取扱説明書の値で締める。
増し締めはいつしますか
交換の後に50〜100kmほど走ったころに、トルクレンチで緩みを点検する。
純正のジャッキパッドが割れていたら
割れたパッドにはジャッキをかけず、アダプターで代用もしない。G87 用にアルミ製の交換パッドを作る部品メーカーもあるので、交換も含めて専門店に相談する。
まとめ
ガイドボルトを買うなら、INEX と RIDE のどちらか1つに絞り、購入前に現車のハブボルトのサイズを確かめてから注文する。作業の前には、ジャッキパッドの位置と締め付けトルクを取扱説明書で確かめる。そのうえで、作業では次の3つを守る。
- G87 のジャッキは車体下の樹脂製パッドにかけ、ひび・欠けがないかを先に見る
- 仮締めは対角の順、本締めは車体を下ろしてからトルクレンチで規定トルクの半分、次に規定トルク
- 50〜100km 走ったら増し締めをする
ほかの整備は次の記事も参考にしてほしい。
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