BMW i8 クーペ(I12・2014〜2020 年)のタイヤ交換で見落としやすいのは、ジャッキを当てる場所をほかの車の感覚で決めてしまうことだ。BMW の i8 クーペの取扱説明書(北米向け)は、ジャッキの扱いを誤ると車体の下側が傷み、高電圧部品が露出するおそれがあると警告している。当てる場所は交換するタイヤに一番近い、ホイールハウスのそばのジャッキポイントの四角いくぼみで、ボルトは車を下ろしてから対角の順で 140 Nm に締める。
ジャッキを当てる場所・締付トルク・前後のタイヤサイズ
I12 は BMW i8 のクーペの開発コードで、ロードスターは I15 だ。i8 のクーペは国内のカタログに 2014 年 8 月の版から載り(型式 DLA-2Z15・フルタイム 4WD)、i8 は 2020 年に生産を終えた。ここで扱うのはクーペ(I12)で、ロードスター(I15)の値は扱わない。
| 項目 | 2014〜2020 年の I12(クーペ) | 根拠 |
|---|---|---|
| ジャッキを当てる場所 | 交換するタイヤに一番近い、ホイールハウスのそばのジャッキポイントの四角いくぼみ | 取扱説明書(北米向け) |
| ホイールボルトの本締め | 車を下ろしてから対角の順で 140 Nm | 取扱説明書(北米向け) |
| 標準のタイヤサイズ | 前 195/50R20・後 215/45R20 | 国内のカタログ(2014 年 8 月・2017 年 10 月の版) |
ジャッキはジャッキポイント以外に当てない。 車体の下の高電圧部品を傷めないための一番の決まりで、理由は次の次の節で書く。
i8 I12 のタイヤサイズと純正の銘柄
国内カタログの標準サイズ
国内のカタログ情報(Motor-Fan)では、2014 年 8 月・2017 年 10 月の版とも、標準のタイヤサイズは前 195/50R20・後 215/45R20、ホイールは 20 インチのアルミホイールだ。前と後でサイズが違う。 北米向けの取扱説明書のタイヤの表にも、前 195/50 R 20 93 W XL・後 215/45 R 20 95 W XL の組み合わせが載る。
2014 年の新車装着の報道(MarkLines)では、ブリヂストンのポテンザ S001 が i8 の新車装着タイヤに選ばれ、サイズは前 195/50R20 93W XL・後 215/45R20 95W XL とされた。
取扱説明書の表に載るほかの組み合わせ
BMW の i8 クーペの取扱説明書(北米向け)のタイヤの章の表には、上の組み合わせのほかに、前 215/45 R 20 95 W XL・後 245/40 R 20 99 W XL の組み合わせと、冬用(M+S)の 215/45 R 20 95 V XL も載っている。これは北米向けの表に載る組み合わせで、国内のカタログの標準は前 195/50R20・後 215/45R20 だ。自分の車がどの組み合わせかは、装着しているタイヤの側面か、運転席側のドアピラーのラベルで確かめる。空気圧の値もこのラベルに載っている(冷えたタイヤでの値)。
以下の手順と数値の根拠は、i8 クーペの北米向けの取扱説明書(2018 年版)だ。国内仕様の車では装備や表示が違う点があり得るので、手元の取扱説明書(車載の物か iDrive の画面の物)と運転席側のドアピラーのラベルを合わせて見てほしい。
推奨銘柄の見分け方
取扱説明書では、BMW はタイヤサイズごとに推奨する銘柄を決めていて、推奨銘柄はタイヤの側面の星印で見分けられる。同じメーカーの同じトレッドパターンのタイヤだけを使うよう書かれているので、買い替えのときは星印の有無と銘柄を確かめてから選ぶ。
ジャッキポイントの場所と、車体の下で傷めてはいけない物
ホイールハウスのそばの四角いくぼみ
BMW の i8 クーペの取扱説明書(北米向け)では、車載ジャッキのジャッキポイントは図に示した位置にあり、ジャッキは交換するタイヤに一番近いジャッキポイントの四角いくぼみに差し込む。上げるときは、ジャッキがホイールハウスのそばのジャッキポイントに差し込まれていることを確かめる。具体的な位置は取扱説明書の図で示されていて、本文の文字には書かれていない。作業の前に、手元の取扱説明書の図で位置を見て、実車のくぼみと照らし合わせておく。
車載ジャッキは、この車をこの車のジャッキポイントで持ち上げるためだけに作られていて、ほかの車や荷物を持ち上げてはいけない、とも書かれている。
高電圧部品と床下パネルへの注意
取扱説明書は、ジャッキの扱いを誤ると車体の下側が傷み、高電圧部品が露出するおそれがある(けがや物の損害の危険)と警告している。決まったジャッキポイントに差し込まないと、車体が傷むか、上げている途中でジャッキが滑るおそれもある。床下のパネルも傷めないようにする。
i8 は乗員の入るキャビンに CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使い、パワートレインなどを収めるドライブモジュールや車体の骨格にはアルミニウムを使っている。ほかの車で覚えた当て位置の感覚は持ち込まず、くぼみ以外には当てないと決めておくのがいい。
ガレージジャッキやリフトで上げるとき
取扱説明書の車輪の交換の章の本文が書いているのは車載ジャッキを使う手順で、ガレージジャッキ(フロアジャッキ)やリフトで上げるときの当て位置の説明は本文に無い。この場合の当て位置は自分で決めず、ディーラーに確かめるか、i8 を扱える店に任せる。
作業の前の準備と輪止め
取扱説明書の準備の手順は次のとおり。
- 車の通りから離れた、固く滑らない地面に止める
- ハザードランプを点ける
- パーキングブレーキをかける
- セレクターレバーを P にする
- 車の流れが許せばすぐに同乗者全員を降ろし、ガードレールの裏など安全な場所にいてもらう
- 装備に応じて、車輪の交換の工具と、要るなら応急用のタイヤを車から出す
- 要るなら三角表示板などを適切な距離に置く
- 輪止めで転がりを防ぐ
- 車を上げる前に、ホイールボルトを半回転だけ緩める(ロックボルトは次の節のアダプターを使う)
輪止めは、平らな所なら交換するタイヤの対角にあるタイヤの前と後ろに置く(石など適当な物でもよい)。ゆるい下り坂では、前の車軸と後ろの車軸の両方のタイヤの下に、転がる向きに対して置く。
工具と応急用のタイヤは装備によって違い、取扱説明書は「装備に応じて車から出す」と書くだけだ。自分の車に何が積まれているかは、パンクする前に確かめておく。 要るなら、車輪の交換の工具はディーラーや整備工場で用品として手に入る。
ロックボルトのアダプターの場所と使い方
取扱説明書では、ホイールボルト(ロックボルト)には特別なコードがあり、コードの合うアダプターでしか外せない。アダプターは荷室の左側の内張りの裏にしまってある。
- 外すとき: アダプターをボルトに当てる → ボルトを回して外す → アダプターを外す
- 締めるとき: アダプターをボルトに当てる(合わなければアダプターを回して合わせる)→ ボルトを 140 Nm で締める → アダプターを外してしまう
ホイール販売店の適合データの BMW i8 2013〜2018 の行では、ホイールの留め方はナットでなくボルト式で、ねじは M14×1.25、PCD は 5 穴の 112、ハブ径は 66.5 mm、締付トルクは 140 Nm(取扱説明書の値と同じ)とされている。2019〜2020 年の車はこの行の範囲の外なので、ホイールを買い替えるときは店で適合を確かめる。
ジャッキアップの手順
取扱説明書のジャッキアップの手順は次のとおり。
- 片手でジャッキを持ち、もう片方の手でジャッキのハンドル(クランク)を握る。手や指を挟むおそれがあるので、手の位置は途中で変えない
- 交換するタイヤに一番近いジャッキポイントの四角いくぼみにジャッキを差し込む
- ハンドルを時計回りに回してジャッキを伸ばす
- ジャッキに荷重がかかったらジャッキから手を離し、片手でハンドルを回し続ける
- ジャッキの足がジャッキポイントの真下に垂直に立っているか確かめる(伸ばした後も確かめる)
- ジャッキの底の面全体が地面に着き、そのタイヤが地面から最大 3 cm 浮くまで上げる
上げている間は車の下に入らず、エンジンをかけない。ジャッキの下に木の台などを置かない。取扱説明書は、上げた車に横から力がかかるとジャッキから落ちるおそれがあると警告しているので、車に横から力をかけたり、急に引っぱったりしない。
タイヤの付け替えと本締め
- ホイールボルトを外す
- タイヤを外す
- 新しいタイヤ(または応急用のタイヤ)を付け、ボルトを最低 2 本、対角の順で手で締まるところまでねじ込む
- 残りのボルトも手で締め、全部のボルトを対角の順でよく締める
- ハンドルを反時計回りに回してジャッキを縮め、車を下ろす
- ジャッキを外して確実にしまう
- 下ろした後に、ボルトを対角の順で 140 Nm(101 lb ft) に締める
取扱説明書によると、BMW の純正ではないアルミホイールを付けるときは、付属のボルトを使う必要がある場合がある。応急用のタイヤは要る分の 1 本だけ付ける。固着して外れないタイヤは、力ずくで外そうとせず、ディーラーや整備工場で外してもらう。
交換した後にやること
- 外したタイヤは、要るなら荷室に積む。大きさのため荷室の床下には入らない
- なるべく早く空気圧を確かめて直す(値は運転席側のドアピラーのラベル)
- タイヤ空気圧警告(TPM)をリセットする
- 校正したトルクレンチで、ボルトが締まっているか確かめる
- 傷んだタイヤは、近くのディーラーや整備工場で替えてもらう
取扱説明書のタイヤの章では、新品のタイヤは作られ方の都合で最初は性能を出し切れず、慣らしの後に本来のグリップになる。最初の 300 km は控えめに走る。
季節の履き替えは店に任せたい理由
取扱説明書は、車載ジャッキを車輪の交換のための短い時間の持ち上げ用とし、故障のときに応急用か予備のタイヤを付けるためだけに使うとしている。夏タイヤと冬タイヤの履き替えのような頻繁な使い方は想定しておらず、頻繁に使うと固着したり壊れたりするおそれがある。なるべく平らで固く滑らない面で替えるよう書かれている。
だから、毎年くり返す履き替えはディーラーやタイヤ店に任せるのが安全だ。 2014〜2020 年の I12 は前後で標準のタイヤサイズが違うので、前後を入れ替えずに同じ位置に付け直すよう店に伝える。外したタイヤは涼しく乾いた暗い場所に置き、油・グリス・溶剤に触れさせず、ビニール袋に入れたままにしない(取扱説明書の保管の注意)。
よくある質問
前後のタイヤを入れ替えてもいい?
入れ替えはできない。取扱説明書のタイヤの章では、前後でタイヤサイズやリムのサイズが違う車は前後の入れ替えが認められていない。2014〜2020 年の I12 の標準は前 195/50R20・後 215/45R20 と前後でサイズが違う。
スノーチェーンはどこに付ける?
取扱説明書(北米向け)では、目の細かいチェーンを勧め、後ろのタイヤに 2 本 1 組でだけ付ける。付けられるのはタイヤサイズ 215/45 R 20 のときで、チェーンを付けたら時速 50 km を超えない。
タイヤは何年・何 mm で替える?
取扱説明書(北米向け)では、溝の残りに関わらず少なくとも 6 年ごとに替える。製造の時期はタイヤの側面に表示されている。溝は法律で決まった最低 1.6 mm が要り、側面の TWI(トレッドウェアインジケーター)の印の位置で減りの目安を見られる。
パンクしたらすぐ交換が要る?
取扱説明書では、パンク修理キットを使った場合は、空気が抜けた後すぐにタイヤを替えなくてよい場合がある。修理の前は、交通から離れた固い地面に止め、ハザードを点け、パーキングブレーキをかけ、前輪をまっすぐにしてハンドルロックをかけ、要るなら三角表示板を置く。
まとめ
最初にやることは、自分の i8 の現物を見ることだ。タイヤの側面でいま付いているサイズを、ホイールハウスのそばのジャッキポイントの四角いくぼみを、荷室の左側の内張りの裏のロックボルトのアダプターを、実車で確かめる。そのうえで、手元の取扱説明書の図と運転席側のドアピラーのラベルを合わせて見る。
- 2014〜2020 年の I12 では、ジャッキは交換するタイヤに一番近いジャッキポイントの四角いくぼみに差し込む。扱いを誤ると車体の下側が傷み、高電圧部品が露出するおそれがある
- I12 のボルトは車を下ろしてから対角の順で 140 Nm(北米向けの取扱説明書の値)。ロックボルトはアダプターで外して締める
- 夏冬の履き替えは店に任せる
ほかの i8 I12 の記事も合わせて読んでおくと、点検や部品の準備がまとめて進む。

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