AZK10のSAIで気になる音が出たとき、擬音から部位を当てにいくのが一番外しやすい。エンジンが勝手に止まったり動き出したりする車で、しかも取扱説明書が異常ではないと名指ししている音だけで9項目ある。先に潰すべきなのは音の印象ではなく、車台番号で機械的に白黒がつくリコールの対象可否のほうで、そこから正常音の消し込み、警告灯、部位の順に降りていく。
AZK10の音を4段階で切り分ける
トヨタが運営するクルマ情報サイトのカタログによると、SAIの生産期間は2009年12月〜2017年11月で、フルモデルチェンジはなく型式はDAA-AZK10の1世代だけ。2013年8月のマイナーチェンジを境に前期型・後期型と呼び分けるのが通例だが、これはメーカーの公式呼称ではない。取扱説明書も2013年7月までの版と2013年8月以降の版に分かれている。
音の切り分けは次の順で降りるのが早い。
- 車台番号を控え、AZK10に関係するリコール3件(届出番号2466・3676・4120)の対象可否を公式のリコール検索か販売店で確認する
- 取扱説明書が異常ではないとしている音、装備が出している作動音に当てはまらないかを見る
- 警告灯が出ているかを見る
- 残った音を、ブレーキ→足回りとタイヤ→エンジンまわりの順に絞る
最初にリコールを置くのは、そこだけが音の聞こえ方に左右されず、車台番号と製作期間で機械的に決まるから。2番目以降は聞き分けが要る話になるので後ろへ回す。
取扱説明書が異常ではないとしている音
ハイブリッドシステム始動後の9項目
SAIの取扱説明書(2016年8月〜2018年2月適用版)には「ハイブリッド車特有の音と振動について」という節があり、システム始動後に出ても異常ではない音・振動として9項目が並んでいる。
- エンジンルームからのモーター音
- ハイブリッドシステムの始動時・停止時に聞こえる車両後方および駆動用電池からの音
- トランクを開けたときの作動音
- ガソリンエンジンの始動時・停止時に聞こえるトランスミッション付近からの音
- 急加速時のエンジン音
- ブレーキペダルを踏んだとき、アクセルペダルをゆるめたときの回生ブレーキの音
- ブレーキペダルを操作したときの作動音やモーター音
- ガソリンエンジンの始動・停止による振動
- リヤシート横(左側)にある空気の取り入れ口から聞こえるファンの音
この9項目は2011年10月〜2013年7月適用版と2016年8月〜2018年2月適用版で項目数・並び・内容が一致していて、差は句読点の表記だけ。前期か後期かで正常音の扱いが変わるわけではない。9番目のファン音には、エコドライブモード時は通常走行時に比べて音が大きくなることがある、という注記が付く。
装備が鳴らしている作動音
9項目の外側にも、取扱説明書が異常ではないとしている音がある。誤認しやすいのはこの4つ。
- 車両接近通報装置:エンジンが停止した状態での走行中に車速に応じた音階で鳴る。約25km/hをこえると消音し、スイッチで消してもハイブリッドシステムを始動するたびONへ戻る。装置が車両前側にあるため、車両後方では聞こえにくい
- EPSモーター:ハンドル操作時のウィーンという音。停車中や極低速で長時間まわし続けるとオーバーヒートを避けるため効きが下がるが、操作を控えるかシステムを停止すれば10分程度で戻る
- ABS・ブレーキアシスト・TRC・VSC:システム始動時や発進直後、ブレーキペダルをくり返し踏んだときにエンジンルームから作動音。作動中の車体やハンドルの振動、停車後のモーター音、ABS作動時のペダルの小刻みな動きも異常ではないとされている
- アクセサリーコンセント:使用中にリヤシート付近から冷却用ファンの音。駐車中や停車中に使うと、駆動用電池の残量が少なくなったときに自動でエンジンが始動して充電する
AZK10に届け出られているリコール3件
国土交通省に届け出られたリコール届出一覧表によると、AZK10のSAIが対象に含まれるリコールは3件ある。届出日は2466が2010年2月9日、3676が2015年11月18日、4120が2017年10月4日。
3件それぞれの対象範囲
| 届出番号 | 不具合の部位 | 対象車台番号 | 製作期間 | 対象台数 |
|---|---|---|---|---|
| 2466 | 制動装置(ABS制御コンピュータ) | AZK10-2000150〜2010991 | 2009年10月2日〜2010年2月8日 | 10,820台 |
| 3676 | 燃料装置(燃料ポンプ) | AZK10-2000102〜2061633 | 2009年10月1日〜2013年8月2日 | 60,836台 |
| 4120 | 動力伝達装置(電気式無段変速機) | AZK10-2000102〜2038257 | 2009年10月1日〜2010年12月1日 | 34,123台 |
届出書に書かれている原因と症状
届出書の中身は3件とも別物になる。2466はABSの制御プログラムが不適切で、作動完了後の制動力が作動直前より低下し、空走感や制動遅れを生じるおそれ。改善措置は制御プログラムの修正で、不具合件数84件。3676は燃料ポンプのモータ回転数の設定が不適切でモータブラシが早期に摩滅することがあり、警告灯が点灯して燃料が供給できず走行不能に至るおそれ。改善措置は対策用配線の追加と燃料ポンプの新品交換で、不具合件数52件。4120は電気式無段変速機の発電用モータで、マグネット保持用プレートのかしめが不適切なため、長時間のアイドリングや高負荷走行でプレートが摩耗しコイルと接触して短絡することがあり、警告灯が点灯して最悪の場合はハイブリッドシステムが停止して走行不能となるおそれ。改善措置は電気式無段変速機の良品交換で、不具合件数156件。
音を根拠にリコールと決めない
3件のどの届出書にも「異音」という語は出てこない。書かれている症状は警告灯の点灯・走行不能・制動力低下であって、聞こえている音を根拠にこれらへ該当すると決めることはできない。届出一覧表には注意事項として、対象車の車台番号の範囲には対象とならない車両も含まれている場合がある、とも明記されている。範囲に入っていること自体は対象の証明にならないし、3件は製作期間がそれぞれ違うので1件の対象外でも残り2件は残る。対象可否の判定は公式のリコール検索か販売店に任せる。
リヤシート横のファン音は駆動用電池の冷却
取扱説明書によると、リヤシート横(左側)部にあるのは駆動用電池を冷やすための空気の取り入れ口で、9項目の最後にあるファン音はここから出る。同じ節の注意には、ここをふさぐと駆動用電池の過熱や出力低下の原因になるとして、ふさぐように荷物を置かないこと、目づまりしないよう定期的に清掃すること、水や異物を入れないこと、駆動用電池周辺に多量の水をこぼさないこと(こぼした場合は販売店で点検)が挙げられている。音が気になるからと取り入れ口を覆う対処だけは取ってはいけない。
エコドライブモードで音が大きくなることも、アクセサリーコンセントの使用中に鳴ることも、取扱説明書が異常ではないとしている範囲に入る。なお駆動用電池は長時間放置すると少しずつ放電するため、少なくとも2〜3ヶ月に一度、約30分間または16kmほど運転するよう書かれている。
荷室に物を積む機会が多い人は、取り入れ口をふさがない置き場所を先に決めておきたい。
残った音を部位で絞る
ブレーキまわり
トヨタが公開している主要諸元表(2015年1月版)によると、AZK10のブレーキは油圧・回生ブレーキ協調式で、フロントがベンチレーテッドディスク、リヤがディスク。この諸元表は後期型に対応する版で、前期型の諸元表は今回確認していない。ペダル操作時の作動音やモーター音、回生ブレーキの音は9項目に入っているので、切り離して扱うのは継続的に出るキーキー音のほうになる。取扱説明書はできるだけ早く販売店で点検を受け、ブレーキパッドを交換するよう警告しており、交換されないとディスクローターの損傷につながる場合がある、摩耗の限度をこえて走行すると故障だけでなく事故につながるおそれがある、とも書いている。赤色のブレーキ警告灯、黄色の電子制御ブレーキ警告灯、ABS&ブレーキアシスト警告灯が出ているなら、音の種類にかかわらずそちらの指示が先。
足回りとタイヤ
同じ諸元表では、サスペンションはフロントがストラット式コイルスプリング、リヤがダブルウィッシュボーン式コイルスプリングで、どちらもスタビライザー付き。所有者が自分で見られるのはタイヤ側で、取扱説明書の点検項目は空気圧(タイヤが冷えているときに点検)、亀裂・損傷の有無、溝の深さ、異常摩耗の有無の4つ。摩耗を均等にして寿命をのばすためのローテーションは5,000kmごととされている。走行中に異常な音や振動がある、ハンドルがとられる、車両が異常に傾くときはパンクや損傷が考えられるので、ハンドルを強く握り、徐々にブレーキをかけて速度を落とす。冠水した道路を走って水に浸かってしまった後は、各ベアリング・各ジョイント部の潤滑不良も販売店の点検項目に挙がっている。
エンジンまわり
搭載エンジンは2AZ-FXEの水冷直列4気筒で、モーターと電気式無段変速機を組み合わせた前輪駆動。エンジンが自動で始動・停止するので、同じ操作をしても音の出方がそろわない。暖機中、駆動用電池の温度が高いか低いとき、駆動用電池の充電時、暖房をかけているときは自動停止しないことがある。補機バッテリーがあがったり交換で取りはずしたりした後も自動停止が行われないことがあり、その状態が2〜3日続く場合は販売店へ連絡するよう書かれている。あがった後の最初の始動操作でシステムが始動できないのは異常ではなく、もう一度始動操作を行えばよい。指定燃料は無鉛レギュラーガソリンで、指定以外の燃料を使うとエンジンからの異音や振動(ノッキング)が発生するおそれがある、という注意も取扱説明書にある。音源を探そうとしてボンネット内へ手を入れるのは避けたい。システムが作動しているとエンジンが自動的に動き出したり、停止していても冷却ファンが急にまわり出したりするうえ、最高約650Vの高電圧部位もある。
そのまま走らずに連絡する線引き
取扱説明書のけん引の項には、駆動系の故障が考えられるため販売店または専門業者に連絡すべき場合として、ハイブリッドシステム警告メッセージが表示されて車が動かないときと、異常な音がするときの2つが挙げられている。この場合はレッカー車または車両運搬車の使用がすすめられ、やむを得ず他車にロープでけん引してもらうときも、車両積載車までの移動などできるだけ短距離にとどめるとされている。
警告灯側の線引きも合わせて持っておきたい。赤色のブレーキ警告灯はブレーキ液の不足やブレーキ系統の異常で、ただちに安全な場所へ停車して連絡する。高水温警告灯は点滅がオーバーヒート気味、点灯がオーバーヒートで車両を止める、と意味が分かれる。一度点いても消灯すれば異常ではないが、同じ現象が再び出たら点検を受ける。
販売店へ持ち込む前にそろえる情報
取扱説明書は音を「どの操作・どの状態のときに出るか」とセットで書いている。裏を返せば、伝えるべき情報もその形で整理できる。
- 音の種類(連続か断続か、金属的か低いうなりか)
- 出る速度域
- READYインジケーターの点灯直後か、走行中か
- ブレーキペダルやハンドルの操作と連動するか
- エアコンやアクセサリーコンセントの使用中か
- 警告灯やマルチインフォメーションディスプレイの警告メッセージの有無
- 車台番号
車台番号だけは音の出方と無関係に必要になる。リコール対象可否の判定に使う値なので、車検証を見て控えていく。
よくある質問
低速で走ると外から聞こえるメロディのような音は故障か
車両接近通報装置の音で、故障ではない。エンジンが停止した状態での走行時に、車両の接近を周囲へ知らせるため車速に応じた音階で鳴る装置で、約25km/hをこえると消音する。スイッチで消しても、ハイブリッドシステムを始動するたびONへ戻る仕様になっている。
前期型と後期型で異音の出やすさは違うのか
正常音として扱われる範囲は変わらない。取扱説明書の9項目は2011年10月適用版と2016年8月適用版で一致している。違うのはリコール側で、3件は対象の製作期間がそれぞれ異なるため、年式によって関係する届出の数が変わる。
リコールが済んでいるか自分で調べられるか
車台番号があれば公式のリコール検索で調べられる。ただし届出一覧表の注意事項に、車台番号の範囲には対象とならない車両も含まれている場合があると書かれているので、範囲内かどうかだけで判断はしない。3676と4120については、改善実施済みの車に運転者席側ドア開口部のドアストライカー付近へ届出番号のステッカーが貼付される。
ブレーキのキーキー音はしばらく様子を見てよいか
継続的に出ているなら様子見にしない。取扱説明書はできるだけ早く販売店で点検を受けてブレーキパッドを交換するよう警告しており、交換しないままだとディスクローターの損傷につながる場合があるとしている。
関連するおすすめ記事
同じAZK10の別トピックと、判定の考え方が近い他車種の記事を置いておく。
まとめ
販売店へ行く前に、手元で片付く順に確認しておきたい。
- 車検証で車台番号を控え、リコール3件の対象可否を公式検索か販売店で確認する
- 取扱説明書の9項目と、車両接近通報装置・EPS・ABS系・アクセサリーコンセントの作動音に当てはまるか照らす
- 警告灯とディスプレイの警告メッセージの有無を確認する
- 残った音は、鳴る操作と速度域を控えたうえでブレーキ・足回り・エンジンの順に相談する
- 異常な音が出ているなら自走を続けず、レッカー車か車両運搬車を前提に連絡する
音から逆算して、公式の文書に書かれていない因果をこしらえないこと。これが最後の線引きになる。

コメント