納車されたばかりの新型エルグランドで、停車中に突然エンジンが回り出したり、ブレーキを踏んだ瞬間にウィーンという機械音が響いたりすると、まず故障を疑いたくなる。ただしE53型は発電専用エンジンとモーターで走る第3世代e-POWERを積んでおり、日産は取扱説明書のなかで「異常ではない」と明記した作動音を7種類挙げている。切り分けの順番は単純で、その7つに当てはまる音は様子を見てよく、当てはまらない音だけを新車保証でディーラーに持ち込めばよい。音の種類ごとの発生源と、保証を通すための記録の取り方を順に見ていく。
E53で異音に聞こえる音の大半は正常な作動音
新型エルグランドは2026年5月28日に先行受注が始まり、発売日は2026年7月16日。E52型の登場から16年ぶりの全面刷新になる。市場に出たばかりの世代であり、経年劣化による故障が積み上がる段階にはまだ入っていない。納車直後に耳につく音は、その大半が新しいパワートレインの作動音になる。
まず、聞こえた音がどちら側に分類されるかを確かめる。
| 聞こえる音 | 発生タイミング | 一次判定 |
|---|---|---|
| ブルンと震えて始まるエンジン音 | 信号待ちや発進の瞬間に唐突に | 正常(発電のための始動) |
| 高めの回転で唸り続けるエンジン音 | 停車中・登坂中・エアコン使用中 | 正常(駆動用バッテリーの充電) |
| ウィーンという電子的なモーター音 | アクセルを戻したとき、ブレーキ時 | 正常(回生ブレーキの作動音) |
| キーンという高い連続音 | 低速で走行しているとき | 正常(車両接近通報装置) |
| 前席足元からのファン音 | 連続走行などで駆動用電池が温まったとき | 正常(電池の冷却) |
| ゴーという低い唸りが速度に比例して大きくなる | 一定速度以上で継続して | 要点検 |
| カタカタ・コトコトと路面に反応する音 | 段差や荒れた舗装で | 要点検 |
| キーッという金属質な鳴き | 制動のたびに毎回 | 要点検 |
上5行は日産が正常と説明している作動音で、下3行だけがディーラーに持ち込む対象になる。
日産が正常としている7つの音
日産の取扱説明書は、e-POWERシステム特有の音や振動として次の7つを挙げ、いずれも異常ではないと説明している。
- エンジンルームからのモーター音
- エンジンの始動・停止による音や振動
- アクセルペダルから足を離したときやブレーキを踏んだときの作動音やモーター音
- 急加速時のエンジン音
- フロントシート下からのファン作動音
- 歩行者に車両の接近を知らせるための音
- アイドリング中もリチウムイオンバッテリーを充電するために回転が高めになるエンジン音
E53の発電専用エンジンはZR15DDTe型の1.5L直列3気筒ターボで、タイヤを回す仕事はしていない。エンジンは電気をつくるためだけに回り、走行そのものはモーターが担う。そのため、停車しているのにエンジンが唸る、加速していないのに回転だけが上がるという、ガソリン車ではあり得ない挙動が設計どおりに起きる。同じe-POWERを積む車種での音の切り分けはノートe-POWERの異音の原因と対処法でも扱っている。
3つの質問で正常音を切り分ける
車速と音の高さが連動しているかを最初に見る。アクセルの踏み込みや車速と無関係にエンジン音が上下するなら、それは発電のための回転であってe-POWERの正体そのものになる。逆に、速度に比例して大きくなる連続音はタイヤ・ハブ・駆動系のいずれかを疑う。
次に、同じ操作で毎回再現するかを見る。ブレーキを踏むたび、段差を越えるたびに必ず鳴るなら発生源は絞りやすい。ときどきしか鳴らない音は、外気温や湿度の条件が絡んでいる場合が多い。
三つ目に、納車直後からあったのか、途中から出はじめたのかを思い出す。納車直後から一貫して鳴っている音はシステムの作動音である可能性が高く、途中から出はじめた音は部品や組み付けの問題を疑う。
先代E52の異音情報はE53にほぼ当てはまらない
エルグランドの異音を検索すると、CVTの不調やジャダーを扱った記事が上位に並ぶ。それらはすべて先代E52型の話であり、新型に持ち込むと診断を誤る。
E53にはCVTが存在しない
E52は2.5L直列4気筒または3.5L V6にエクストロニックCVTを組み合わせる構成だった。対してE53が積む第3世代e-POWERは、モーター・発電機・インバーター・減速機・増速機の5つを1つにまとめた5-in-1パワートレインユニットになる。この構成にCVTは含まれず、変速比を連続的に変えるベルトとプーリーそのものが車に載っていない。CVTジャダーも、CVTフルードの劣化による唸りも、E53では原因候補から外れる。
経年劣化型の異音は新車には起こらない
ハブベアリングの唸り、サスペンションブッシュのへたり、スライドドアのローラー摩耗。先代で定番だった異音はいずれも走行距離と年数が引き金になる。走行数千kmのE53で同種の音が出たなら、原因は劣化ではなく初期不良か組み付け精度の問題であり、新車保証で直す対象になる。
静かな車ほど小さな音が目立つ
E53は高剛性ボディと徹底した遮音構造を持つe-POWER向けの新設計を採用し、静粛性を大きく引き上げている。ロードノイズと発電エンジン音が下がった結果、これまでなら走行音に紛れて聞こえなかった内装のきしみや電動部品の作動音が耳に届くようになる。静粛性が上がるほど小さな音が相対的に目立つのは、遮音を突き詰めた車に共通する現象になる。
音の発生源を部位別に絞り込む
エンジンルームから聞こえる音
ブルンという始動の振動、加速時に一段高くなる回転音、停車中の唸り。これらは発電エンジンの通常動作にあたる。判別のポイントは、音の変化がアクセル操作ではなく駆動用バッテリーの残量やエアコンの負荷に連動している点にある。夏場にエアコンを強めた状態で停車していると、エンジンが回り続けるのはむしろ設計どおりの挙動になる。
音質そのものにも理由がある。ZR15DDTeは直列3気筒で、4気筒に比べて振動を打ち消し合う効果が構造的に弱く、始動の瞬間の揺れが車体に伝わりやすい。さらに発電中は車速と切り離された回転を保つため、加速の体感と音が一致しない。この「音と加速がずれる感覚」こそがe-POWERを初めて所有した人が異音と受け取る最大の原因になる。
一方、金属同士が擦れるようなシャリシャリ音や、ベルトが滑るようなキュルキュル音がボンネット内から出る場合は作動音の範囲を超えている。始動のたびではなく常時鳴り続ける、回転を上げると音程が上がる、といった特徴があれば補機まわりの点検対象になる。
床下・足元から聞こえる音
速度に比例して高くなるゴーという連続音は、タイヤ由来かハブベアリング由来かをまず分ける。ハンドルを左右に振ったときに音の大きさが変わればハブベアリング側、変わらなければタイヤの偏摩耗やパターンノイズを疑う。納車直後の車両で偏摩耗が起きることはまれで、この場合は空気圧と装着タイヤの銘柄を確認するところから始める。純正サイズはエルグランドのタイヤサイズ純正一覧にまとめている。
減速時に床下でウィーンという音が前後に移動するように聞こえることもある。E53のe-4ORCEは前後にモーターを持ち、減速のたびに前後で回生の配分を制御している。音の出どころが動いて感じられるのはその配分制御によるもので、故障の合図ではない。
段差でコトンと単発で鳴る音はサスペンション周りの取り付けを疑う。E53はインテリジェントダイナミックサスペンションを採用しており、減衰力の制御にともなう微小な作動音が混じることもある。荷物を降ろした状態で同じ段差を通っても鳴るなら、ラゲッジ側ではなく足回り側が発生源になる。
室内・内装から聞こえる音
3列シートを持つ大型ミニバンはパネルの合わせ目が多く、温度差で樹脂が伸縮するとキシキシ、ビリビリという音が出る。冬の朝や真夏の炎天下で鳴りやすく、車内の温度が安定すると消えるのが典型的なパターンになる。内装のきしみは、同乗者に内張りを手のひらで軽く押さえてもらいながら走ると発生源が一度で分かる。
電動スライドドア・バックドアから聞こえる音
開閉時のモーター音とロックの作動音そのものは正常な範囲になる。疑うのは、途中で引っかかるような音とともに動きが止まる、閉まりきる直前に大きな金属音がする、といった動作の異常をともなう場合である。レール内に入り込んだ砂や小石を取り除くだけで解決する例も多い。
原因を特定する3ステップ
ステップ1 音が出る条件を再現する
いつ・どこで・何をしたときに鳴るのかを、条件を変えながら再現する。停車中か走行中か、エアコンのオンオフ、直進か旋回か、路面が荒れているかどうか。再現条件が1つに絞れた時点で、原因候補は半分以下に減る。
ステップ2 停車中・走行中・制動時で切り分ける
停車中だけ鳴るならエンジン・電池冷却ファン・エアコン系。走行中に速度と連動して鳴るならタイヤ・ハブ・駆動系。ブレーキを踏んだときだけ鳴るならブレーキと回生系。この3分類に振り分けるだけで、ディーラーの初動診断は目に見えて速くなる。
制動時の音はもう一段細かく分ける。e-POWERは減速の前半をモーターの回生でまかない、停止直前に油圧ブレーキへ受け渡す協調制御を行う。この受け渡しの瞬間に小さな作動音や踏力の変化を感じるのは正常な範囲になる。同じ制動時の音でも、金属が擦れるキーッという鳴きだけは正常の枠外で、パッドや取り付けの点検対象になる。
ステップ3 音を録音して残す
異音の相談で最も困るのは、入庫したときに再現しないケースになる。スマートフォンのボイスメモを助手席側の足元やドアポケットに置き、鳴っている区間をそのまま録音する。走行速度、シフト位置、エアコンの設定、外気温をメモに添えると、整備士が同じ条件を再現しやすくなる。
新車保証で直せる範囲とディーラーへの持ち込み方
一般保証と特別保証の守備範囲
日産の新車保証は二階建てになっている。一般保証は新車登録日から3年、または走行距離6万kmのどちらか早いほうまでが対象期間で、エアコンやカーナビを含む「クルマを構成するすべての部品」をカバーする(消耗品・油脂類・タイヤ・バッテリーは除く)。特別保証は新車登録日から5年、または走行距離10万kmのどちらか早いほうまでで、走る・曲がる・止まるに関わるエンジンやトランスミッションなど基本性能に関わる部品が対象になる。
納車直後のE53で発生する異音は、原因が部品側にあるかぎりほぼ保証の範囲に収まる。費用を心配して我慢する理由がない。
保証から外れやすいもの
社外パーツの取り付けが原因で生じた異音、消耗品の摩耗による音は保証の対象から外れうる。日産は、法で定められた日常点検や定期点検整備を実施しなかった場合に保証が受けられないことがあると案内している。カスタムを進める前に純正状態の音を把握しておくと、後から原因の切り分けで迷わない。
再現しない異音の伝え方
たまに鳴るだけ、という説明では整備士は動けない。録音データ、発生した日時と外気温、走っていた路面、速度域をセットで渡す。同乗者がいたなら、どの席でどう聞こえたかも添える。再現待ちで数日預ける選択肢もあるため、代車の手配を含めて事前に相談しておく。
自分で切り分けてよい範囲と触らない範囲
内装のきしみは自分で追える
内張りやピラーのきしみは、押さえて音が消えるかどうかで発生源が特定できる。フェルトテープを挟む程度の対処なら保証にも影響しない。ラゲッジの荷物や車中泊用の装備が共振している場合もあるため、いったん車内を空にして走ってみる価値がある。
駆動系・足回り・高電圧系は触らない
5-in-1ユニット、e-4ORCEの前後モーター、駆動用リチウムイオンバッテリーはいずれも高電圧を扱う部位になる。分解や配線の点検を自分で行う対象ではない。足回りも、増し締めの加減を誤れば別の不具合を生む。駆動系・足回り・高電圧系の異音は、保証期間内なら迷わずディーラーに預けるのが正解になる。
よくある質問
停車中にエンジンが唸り出すのは故障ですか?
故障ではない。e-POWERは駆動用バッテリーの残量が減ると、停車中でも発電のためにエンジンを始動する。エアコンを使っているときや外気温が高いときほど頻度が上がる。日産も取扱説明書のなかで、アイドリング中の充電にともなう高めの回転音を正常と説明している。
ブレーキを踏むとウィーンと音がします。異常ですか?
回生ブレーキの作動音であり異常ではない。アクセルを戻したときやブレーキを踏んだときのモーター音は、日産が正常な作動音として挙げる7項目に含まれる。ただし、キーッという金属質な鳴きが制動のたびに出る場合は別で、ブレーキ系の点検対象になる。
新型なのに異音が出るのはハズレを引いたからですか?
新車の異音は個体の当たり外れよりも、組み付けの公差や内装の初期なじみで説明がつく場合が多い。静粛性の高いE53では小さな音ほど目立つため、他の車なら気づかない水準の音が耳につくこともある。保証で直せる範囲なので、記録を取ってディーラーに相談すれば足りる。
異音の修理は新車保証で無料になりますか?
原因が保証対象部品の不具合であれば無償修理になる。一般保証は3年または6万km、特別保証は5年または10万kmが期限で、消耗品・油脂類・タイヤ・バッテリーは対象外。社外パーツが原因と判断された場合も対象から外れる。
慣らし運転をすれば異音は減りますか?
内装のきしみやブレーキの初期の鳴きは、走行を重ねて各部がなじむと収まる例がある。一方で、速度に比例するゴー音や制動時の金属音は走っても改善しない。時間で消えるかどうかを待つより、記録を取って早めに見てもらうほうが結果的に早い。
まとめ
新型エルグランドの異音で最初にやることは、修理工場を探すことではなく、日産が正常と明記した7つの作動音に当てはまるかどうかを確かめることになる。E53は発電専用エンジンとモーターで走る第3世代e-POWERであり、車速と無関係にエンジンが回るという、ガソリン車の常識では説明のつかない挙動が設計どおりに起きる。
そのうえで、速度に比例するゴー音、段差で鳴るカタカタ音、制動のたびの金属音の3つだけは正常の枠から外れる。再現条件を絞り、録音を添えてディーラーに持ち込む。新車登録から3年・6万kmの一般保証と、5年・10万kmの特別保証が効く時期であり、原因が部品側にあるなら費用の心配はいらない。
先代E52で語られてきたCVT由来の異音は、CVTを持たないE53には存在しない。世代が変われば壊れ方も変わるという前提で、参照する情報を選び直すところから始めたい。

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