Z4 G29 のタイヤ交換は、履いているのがランフラットタイヤかどうか、荷室に車載ジャッキや応急用ホイールが積まれているかで、最初にやることが変わる。まずタイヤ側面のマークと荷室の中身で自分の車がどちら側かを確かめ、交換が要るなら取扱説明書が示すジャッキアップポイントと締め付けトルクに沿って進める。
ジャッキアップポイントの位置とボルトの締め付けトルク
BMW Z4 Roadster の取扱説明書(米国向け・2019年版と2023年版)では、車載ジャッキは交換するタイヤに最も近いジャッキアップポイントの四角いくぼみに差し込む。ジャッキアップポイントはホイールハウス(タイヤの収まる部分)の近くにあり、位置は図で示されていて、字では細かく説明されていない。場所はお手元の取扱説明書の図で確かめる。
ホイールボルトは交換の後に対角の順に締め、締め付けトルクは140Nm(101 lb ft)。2019年版と、改良後の2023年版で同じ値で、ロックボルトも140Nmだ。
どちらの版も米国向けの英語版で、日本仕様の取扱説明書ではない。日本仕様の車では、積んでいる工具や車載ジャッキ、応急用ホイールや修理キットの有無と置き場所、タイヤの種類が違うことがありうる。値と手順はお手元の取扱説明書でも確かめてほしい。
対象の型式と年式
英語版 Wikipedia の BMW Z4 (G29) の項目によると、G29 は Z4 の第3世代で、2018年8月23日に米国ペブルビーチの催しで発表され、2019年3月に2019年モデルとして販売が始まった。生産は2018〜2026年で、オーストリアのグラーツ(マグナ・シュタイヤー)で作られた。先代は E89(2009〜2016年)なので、調べ物で型式を取り違えないようにしたい。改良型(LCI)は2022年9月に発表された。生産の終わりは、英語版 Wikipedia の BMW Z の項目が2026年3月としている。
グレードは sDrive20i(一部の市場だけ)・sDrive30i・M40i。ただし参照した2つの取扱説明書は、重量や空気圧の表で sDrive30i と M40i を名指ししており、参照した頁に sDrive20i の字は無い。
G29 はトヨタ スープラ(J29)と土台を共有し、同じ工場で作られた。それでも、ここで示すジャッキアップポイントや締め付けトルクは Z4 Roadster の取扱説明書から取った値で、スープラの取扱説明書は確かめていない。スープラの記事や値をそのまま Z4 G29 に当てはめない。
パンクしたら、まずタイヤ交換が要るかを見極める
取扱説明書では、ランフラットタイヤや修理キットを使っているときは、すぐにホイール交換が要るとは限らない。路肩でジャッキを出す前に、自分の車の条件を確かめる。
ランフラットタイヤの見分け方
ランフラットタイヤは、空気が完全に抜けても限られた条件で走り続けられるタイヤで、側面の RSC の文字が入った丸いマーク(Run-flat System Component)で見分ける。パンクしたら穏やかに運転して80km/hを超えない。急ブレーキや急なハンドル操作を避け、次の機会に4本すべての空気圧を確かめる。走れる距離は、平均的な積載でよい条件なら最大80kmほどで、運転の仕方で短くも長くもなる。走行中の振動や大きな音は、タイヤが最終的に壊れかけているしるしのことがある。
スペアの扱いは版で書き方が違う。2019年版は、安全のためランフラットタイヤだけを使い、パンクのときのスペアタイヤは無いとしている。2023年版は、ランフラットタイヤから普通のタイヤに替えるときは、応急用ホイールかタイヤの修理キットを積んでおく必要があるとしている。
修理キットで足りる損傷
タイヤ修理キット(2019年版では Mobility System)は小さな損傷を中から一時的に塞ぐもので、穴がおよそ4mm以上だと効かないことがある。刺さった異物は抜かない(2023年版)。コンプレッサーは10分を超えて回さず、2023年版は修理剤を入れたらすぐに10kmほど走って行き渡らせ、80km/hを超えないよう書いている。2019年版は、修理剤がタイヤの空気圧の監視の部品(ホイール側の電子部品)を傷めるおそれがあるとしている。
置き場所は、2019年版では荷室の右側の収納、2023年版では装備により荷室の床下・荷室の左右・荷室の側面の内張りの奥のどれかだ。
応急用ホイールを付けたとき
装備により応急用ホイールを積む車がある。特別な寸法の一時的なホイールで、故障したタイヤ・ホイールを替えるまでの使用に限られ、付けたら穏やかに運転して80km/hを超えない。付けるのは必要なときに1本だけで、荷室にある間も空気圧を定期的に確かめる。
交換に使う道具と積んである場所
取扱説明書(米国向け)では、車の装備によって、ホイール交換の工具と必要なら応急用ホイールを取り出すとあり、どちらも荷室の袋に入っていると書かれている。一方で、ホイール交換の工具(2023年版では例として車載ジャッキ)は販売店などでアクセサリーとして入手できるともあり、車載ジャッキや工具が積まれていない車もありうる。日本仕様の装備は確かめていないので、出先で困る前に荷室の中身を見ておきたい。
ロックボルトのアダプター
ロックボルトには特殊なコードがあり、そのコードに合うアダプターでしか外せない。アダプターは車載工具の中か、その近くの収納にある。外すときはアダプターをロックボルトに当ててボルトを回して外し、外したらアダプターを外す。付けるときは必要に応じてアダプターを回してロックボルトに合わせ、140Nmで締めてからアダプターを外して片付ける。2023年版は、インパクトレンチで緩めたり締めたりするとロックボルトを傷めるおそれがあるとし、手で回すホイールレンチだけを使うよう注意している。
トルクレンチを用意する理由
タイヤメーカーのブリヂストンは、本締めは必ずトルクレンチを使い、自動車メーカーが定める規定のトルクで締めるよう求めている。トルクレンチを使わず手で締めると締め付け不足や締めすぎを招き、走行中にホイールが外れる脱輪事故につながる危険があるという。タイヤメーカーのコンチネンタルタイヤも、締めすぎるとネジ山がつぶれたりボルト側の部品が伸びたりし、ブレーキのローターやハブが歪むこともあるとしている。ネジ部やホイールとの間にゴミ・砂・サビがあると「偽のトルク」が出て、正しく締まらないこともあるという。
ジャッキをかける前の準備
取扱説明書の準備の手順は次のとおり。
- 交通から安全な距離をとった、固く滑らない場所に停める
- ハザードランプをつけ、パーキングブレーキをかける
- ギアに入れるか、セレクターレバーを P に入れる
- 交通の状況が許せばすぐに同乗者全員を降ろし、ガードレールの後ろなど安全な場所にいてもらう
- 装備に応じてホイール交換の工具と、必要なら応急用ホイールを取り出す
- 必要なら三角表示板などを適切な距離に置く
- 車が転がらないよう、さらに固定する
- ジャッキで上げる前に、ホイールボルトを半回転緩める
固定は、平らな場所なら交換するタイヤと対角の位置にあるタイヤの前と後ろに、輪止めか適当な物を置く。2019年版は、ゆるい下り坂では前後両方の車軸のタイヤの下に、転がる方向に逆らうよう輪止めや石などを置くとしている。ボルトを先に緩める順は JAF の案内も同じで、輪止めをしてからボルトを少しだけ緩め、それからジャッキアップする。
ジャッキアップポイントへのかけ方と上げる高さ
取扱説明書の手順では、片手でジャッキを持ち、もう片方の手でハンドル(クランク)かレバーを握る。ジャッキを四角いくぼみに差し込み、ハンドルを時計回りに回して伸ばす。ジャッキに荷重がかかったらジャッキから手を離し、片手でハンドルを回し続ける。ジャッキの足がジャッキアップポイントの真下で垂直・直角に立ち、底面全体が地面に着いていることを確かめながら、交換するタイヤが地面から最大3cm浮くまで上げる。手や指を挟むおそれがあるので、説明どおりの手の位置を守り、使っている間に手の位置を変えない。
車載ジャッキを使うときの禁止事項
取扱説明書は、安全の対策をすべて守ってもジャッキが傾けば車が落ちるおそれがあるとし、次のことをしないよう求めている。
- ジャッキで上げた車の下に寝そべる、車を走行できる状態にする
- ジャッキの下に木片などの台を挟む(支える力が落ちる)
- 上げている間に車へ横から力をかけたり、急に引いたりする
- ほかの車や荷物を持ち上げる
柔らかい・凹凸のある・滑る地面(雪・氷・タイルなど)ではジャッキが滑るおそれがあるので、できれば平らで固く滑らない場所で交換する。固着して外れないホイールは、販売店の整備工場などに外してもらう。
ジャッキだけで支えない備えも要る。乗りものニュースの記事では、車を支えるリジッドラック(通称ウマ)を用意できるのがベストで、用意できない場合は代わりに車体の下にタイヤ・ホイールを置くよう勧めている。ブリヂストンも、外したタイヤとホイールを車体の下に入れておけば万一ジャッキが外れても車体が落ちるのを防げるとし、タイヤは少し浮く程度でよく、高く上げすぎると車体が不安定になるとしている。
ホイールの付け外しと締める順
付け外しの手順
Z4 Roadster の取扱説明書は、ホイールを留める部品をボルト(ホイールボルト)と書いており、ナットで留める車とは違う。純正以外の軽合金ホイールを付けるときは、そのホイールに付属するボルトを使う必要がある場合がある。取扱説明書の手順は次の順だ。
- ボルトを外し、ホイールを外す
- 新しいホイール(または応急用ホイール)を当て、少なくとも2本のボルトを対角の順に手で締まるところまでねじ込む
- 残りのボルトも手で締め、すべてのボルトを対角の順に締める
- ハンドルを反時計回りに回してジャッキを縮め、車を下ろす
- ジャッキを外して片付け、ボルトを対角の順に140Nmで締める
締める順とタイヤの向き
ブリヂストンは、1か所をいきなり締めず、それぞれを均等に2〜3回に分け、時計回りに隣へ移るのではなくできるだけ対角線の順で締めると確実に締まるとしている。コンチネンタルタイヤは星を描くように締めるのが正しい順番とし、整備士はまず規定トルクの半分の値で締め、その後で規定トルクまで締めるという。
付ける前にはタイヤの向きも確かめる。ブリヂストンによると、回転方向の指定があるタイヤは側面に矢印と ROTATION の文字、外側と内側の指定があるタイヤは OUTSIDE や INSIDE の文字が刻印されており、指定どおりに付けないとタイヤ本来の性能が出ないうえ、安全面にも影響するおそれがある。
交換した後に確かめること
取扱説明書が挙げる交換後の作業
取扱説明書が挙げる交換後の作業は次のとおり。
- 外したホイールは必要なら荷室に積む(2019年版は、大きさのため荷室の床板の下には収まらないとしている)
- 次の機会にタイヤの空気圧を確かめて調整する
- パンクの警告の機能をやり直す(Flat Tire Monitor の初期化、または Tire Pressure Monitor のリセット)
- 校正されたトルクレンチでボルトが締まっていることを確かめる
- 損傷したタイヤは最寄りの販売店の整備工場などで交換してもらう
2019年版は、タイヤやホイールを替えた後に初期化が要るとし、雪道でチェーンを付けて走っているときは初期化しないよう注意している。
走ってからの増し締めと JAF の案内
走ってからの増し締めの距離は、BMW の取扱説明書の指定ではなく、タイヤメーカーの一般的な案内だ。コンチネンタルタイヤは交換後50〜100kmを目安に走ってから点検し、必要なら締め直すよう勧め、締め付けトルクが適切でなかったり初期走行の変化などで、まれに緩むことがあるとしている。ブリヂストンは約100km走った段階でトルクレンチで緩みを点検するよう案内している。
JAF の案内では、無理に締め付けるとボルトが破損する場合があるので、取扱説明書の規定のトルクで締めるよう求めている。トルクレンチが無い場合は、できるだけ早くガソリンスタンドや修理工場で規定のトルクで本締めしてもらうか、不安が残れば JAF に連絡する。応急用タイヤはあくまで応急用で、パンクしたタイヤは速やかに修理して元に戻す(修理できなければ交換)。
交換の後に走行中の振動や異音が気になるときは、原因の見分け方をこちらにまとめている。
季節の履き替えは自分でやるか店に任せるか
取扱説明書(2019年版)は、車載ジャッキは故障時に応急用またはスペアのホイールを付けるときだけ使うもので、夏タイヤから冬タイヤへの履き替えのような頻繁な使用向けには作られていないとし、頻繁に使うと動かなくなったり壊れたりすることがあるとしている。年2回の履き替えに車載ジャッキを使うのは、本来の使い道から外れる。
乗りものニュースの記事では、ジャッキはパンタグラフ式よりフロアジャッキなどが望ましく、リジッドラックもあるとよいとしたうえで、夏タイヤとスタッドレスタイヤの交換で年に2回くらいしか作業しないなら、ディーラーや整備工場、カー用品店に任せるのが費用面でも安全面でもおすすめだとしている。ブリヂストンも、安全な作業場所を確保できない場合や少しでも不安がある場合は、無理せずタイヤ専門店に頼むよう勧めている。道具と場所がそろわないうちは、店に任せるのが現実的だ。
フロアジャッキを使うときの注意
取扱説明書が示すのは車載ジャッキを差し込むジャッキアップポイント(四角いくぼみ)で、参照した頁には、整備用のリフトやフロアジャッキをかける位置、フロアジャッキ用のゴム製アダプター(ジャッキパッド)の記載は無い。BMW 用・BMW/MINI 用として売られているジャッキパッドの Z4 G29 への適合も確かめていない。使う場合は販売元の適合の案内と、お手元の車のジャッキアップポイントの形を照らし、分からなければ整備工場に相談する。
冬用にスチールホイールを使ってよいか
取扱説明書(2019年版)は、スチールホイールを付けるとホイールボルトがひとりでに緩むなどの技術的な問題が起こりうるとし、スチールホイールを付けないよう書いている。冬用タイヤを別のホイールに組むなら、スチールホイールは候補から外す。タイヤの組み付けとバランス取りは、販売店の整備工場などで行うよう書かれている。
前後の入れ替えをしてよいか
取扱説明書(2019年版・2023年版)は、前の車軸と後ろの車軸でタイヤのサイズやリムのサイズが違う車では、前後でタイヤを入れ替えないよう書いている。お手元の車の前後のサイズは、タイヤ側面の表示と取扱説明書で確かめる。
よくある質問
ジャッキアップポイントはどこにある?
米国向けの取扱説明書(2019年版・2023年版)では、交換するタイヤに最も近い、ホイールハウス近くの四角いくぼみ。位置は図で示されているので、お手元の取扱説明書の図で見る。
ホイールボルトの締め付けトルクは?
米国向けの取扱説明書(2019年版・2023年版)では、対角の順に140Nm。ロックボルトも同じ値だ。
ランフラットタイヤがパンクしたらすぐ交換が要る?
すぐに要るとは限らない。取扱説明書(米国向け)の条件は、80km/hを超えないこと、走れる距離は平均的な積載でよい条件なら最大80kmほどで、短くなることもある。詳しくはパンクの節に書いた。
ロックボルトのアダプターはどこにある?
取扱説明書では、車載工具の中か、その近くの収納にある。コードの合うアダプターでしか外せないので、出かける前に在りかを見ておく。
車載ジャッキが見当たらないときは?
米国向けの取扱説明書では、工具は車の装備によるとされ、2023年版は車載ジャッキを例に、販売店などでアクセサリーとして入手できると書いている。お手元の車の装備を販売店に確かめ、要るなら入手する。
季節の履き替えに車載ジャッキを使ってよい?
取扱説明書(2019年版)は、夏冬の履き替えのような頻繁な使用向けではないとしている。履き替えはフロアジャッキとリジッドラックをそろえるか、店に任せる。
まとめ:作業の前に自分の車で見ておくこと
まず今の車の現物を見る。タイヤ側面に RSC の丸いマークがあるか、荷室に車載ジャッキ・ホイール交換の工具・ロックボルトのアダプター・応急用ホイールや修理キットがあるかを確かめ、そのうえでお手元の取扱説明書の図でジャッキアップポイントの位置を見ておく。
- 米国向けの取扱説明書(2019年版・2023年版)では、車載ジャッキは交換するタイヤに最も近いジャッキアップポイントの四角いくぼみに差し込み、タイヤが地面から最大3cm浮くまで上げる
- ボルトは対角の順に140Nm(米国向けの取扱説明書・2019年版と2023年版)
- 交換後は空気圧の確認、パンクの警告の機能のやり直し、校正されたトルクレンチでの確認をする
- 出典は米国向けの取扱説明書なので、日本仕様の値と装備はお手元の取扱説明書で確かめる
同じ Z4 G29 の記事もあわせて確かめておくと、手入れの段取りが組みやすい。

コメント