荷物は全部入ったのに、テールゲートが最後まで下りてこない——X6でこれが起きるとき、足りていないのは床ではなく天井側の余白になる。F16型X6の荷室はBMWの公式資料で580ℓ、後席を倒せば最大1,525ℓまで広がる。ところが同じ世代のX5(F15)は620ℓから最大1,870ℓで、最大値では345ℓもの開きがつく。同じ土台を持つ兄弟車でこれだけ差が出る理由と、その前提でどう積むかを、手を動かす順番に落とし込んだ。
F16の荷室は580ℓ|数字で全体像をつかむ
F16は2014年に登場した2代目X6で、2019年まで生産され、後継のG06へ引き継がれた。日本にはxDrive35i(N55型3.0ℓ直6ターボ・306ps)とxDrive50i(N63型4.4ℓV8ツインターボ・450ps)が導入されている。荷室まわりの数字を先に並べておくと、この後のシートアレンジもテールゲートの使い方も一本の線でつながる。
| 項目 | 数値・仕様 |
|---|---|
| 荷室容量(後席使用時) | 580ℓ |
| 荷室容量(後席前倒し時) | 最大1,525ℓ(先代E71より10〜75ℓ増) |
| 後席の分割方式 | 40:20:40の3分割可倒式(3人掛けリヤ・シートに標準装備) |
| テールゲート | 一体式(オートマチック・テールゲート・オペレーション標準装備) |
| 乗車定員/ドア数 | 5名/5ドア |
| ボディサイズ | 全長4,909×全幅1,989×全高1,702mm |
| ホイールベース | 2,933mm |
| 積載量(DIN) | 715kg |
| 許容ルーフ積載荷重 | 100kg |
| 生産期間 | 2014年〜2019年(後継はG06) |
※諸元値はxDrive50iのもの。
公式値は580ℓから最大1,525ℓ
BMWがF16の発表時に出した資料では、リヤ・シートのバックレストを40:20:40の割合で分割して折りたためること、それによって荷室容量が580ℓから段階的に最大1,525ℓまで拡張できることが記されている。先代E71と比べたラゲージ・スペースの拡大幅は10〜75ℓになる。「段階的に」という書き方が示すとおり、580ℓと1,525ℓの間には中央だけ・片側だけを倒した中間の状態がいくつも存在する——後席を全部倒すか倒さないかの二択で考えている限り、この荷室は使い切れない。
同じ世代のX5 F15とは最大値で345ℓ違う
X6 F16は、同じ世代のX5(F15)にクーペ・ルーフを与えた兄弟車になる。ところが荷室容量は、X5が620ℓから最大1,870ℓなのに対し、X6は580ℓから最大1,525ℓにとどまる。後席を起こした状態の差は40ℓにすぎないのに、後席を倒したときの差は345ℓへ跳ね上がる。
この開き方に、X6という車の性格がそのまま出ている。床に近い部分の容積は両車で大きく変わらず、削られているのは後席から後ろへ向かって屋根が下がっていく分——つまり荷室の奥の、高い位置にあるはずだった空間になる。X6で失うのは床の広さではなく、高く積み上げる余地のほうだと考えると、実際の使い勝手と数字がきれいに一致する。
容量(ℓ)とは別に積載量715kgという天井がある
体積の話とは別に、重さの上限も諸元表に書かれている。xDrive50iの積載量(DIN)は715kgで、これは乗員と荷物を合わせた上限になる。車両重量2,170kgと許容総重量2,885kgの差が、そのまま715kgという数字になる。
大人が5人乗れば、そこから荷物へ回せる余地は目に見えて減る。1,525ℓという体積を信じて積み込んでも、密度の高い荷物なら体積を使い切る前に重量の天井へ当たる——タイル、土のう、工具箱、飲料のケースを運ぶ日は、ℓではなくkgで組み立てるほうが実態に合う。ルーフに積む場合の上限(後述の100kg)も、この715kgとは別枠の制限になる。
テールゲートは一体式|X5の「下だけ開ける」は使えない
X5 F15の荷室で知られているのが上下2分割式のテールゲートで、下半分を後ろへ倒して水平な台として使える。X6 F16にこの構造はない。上方へ大きく開く一体式のゲートが1枚あるだけで、開けるか閉じるかの二択になる。X5から乗り換えた人が最初に戸惑うのがこの点で、積み方の組み立ても変わってくる。
開けるときに必要なのは後ろではなく上の余白
一体式のテールゲートは、跳ね上がった状態で車体後端の上方へ大きくせり出す。駐車位置を決めるときに測るべきなのは、後ろの壁までの距離ではなく頭上の余白のほうになる。天井の低い屋内駐車場、シャッター付きのガレージ、立体駐車場の入庫レーンでは、ゲートが天井やレールに当たる。X5なら下半分だけを開けて逃げられた場面でも、X6にその逃げ道は用意されていない。
現実的な回避策は2つになる。ひとつは、天井の低い場所では車を数十センチ前へ出してから開けること。もうひとつは、荷室をあきらめてリヤ・ドアから積むこと。後席側のドアは横へ開くので上方の余白を必要とせず、鞄や紙袋のような軽い荷物であれば後席の足元と座面に置くほうが早い。荷室に固執しないと決めた時点で、天井の低さは問題でなくなる。
電動・ソフトクローズ・スマート・オープナーの使い分け
F16にはオートマチック・テールゲート・オペレーションが標準装備されていて、リモート・コントロールのボタン、または運転席のボタンで開閉を操作できる。テールゲートにはソフト・クローズ・オートマチック機能も標準で付き、閉じきる手前まで下ろせば残りは機構が引き込む。両手が荷物でふさがる場面を前提にするなら、力を込めずに閉じられるこの2つを最初に手癖へ組み込んでおきたい。
オプションのコンフォート・アクセスを装着した個体には、テールゲート・スマート・オープナーが含まれる。リヤ・エプロン(後端下部)の下で足先を軽くかざすとセンサーが動きを感知し、その信号でテールゲートが電動で作動する。キーをポケットに入れたまま、荷物を抱えた姿勢で開けられる。自分のF16にこの機能があるかどうかは、キーを持って車体後方に立ち、バンパーの下で足を出し入れしてみれば判別できる。
縁に一度載せて滑らせる
下部ゲートという台を持たないX6では、重い荷物を持ち上げたまま荷室の奥へ運ぶ動作になりやすい。腰を痛めるのはこの一連の動きで、対策は単純になる。荷室開口部の縁にいったん荷物の底を載せ、そこから体重を使って奥へ滑らせる。持ち上げる高さを最小に抑え、残りを水平移動へ置き換えるという発想だ。硬い樹脂のフロアに直接こすりつけると内張りが傷むため、縁から奥まで一枚の面が続くラゲッジマットを敷いておくと、この滑らせる動作をそのまま日常に使える。
40:20:40の中央「20」がF16最大の武器
F16の後席は3人掛けで、バックレストは40:20:40の3分割可倒式が標準になる。左・中央・右を独立して倒せるので、3枚をどう組み合わせるかがそのまま荷室のバリエーションになる。
中央だけ倒して長尺物を通す
中央の20だけを前へ倒すと、左右の座席に人を残したまま、真ん中に細長い通路ができる。スキー板、スノーボード、三脚、釣り竿、テントのポール、カーテンレール——長いだけで幅を取らない荷物は、ここへ通せば後席の定員を削らずに運べる。40:20:40の価値は3枚すべてを倒すことではなく、人と長尺物を同時に積める中央の20にある。
先代E71の6:4では成立しなかった積み方
先代のX6(E71)はシートバックが6:4の分割可倒式で、真ん中だけを倒すという選択肢そのものが存在しなかった。しかもE71は当初、後席中央に大型のコンソールを備えた4人乗りとして売られており、5人乗りになったのは2011年にこのコンソールが廃止されてからになる。F16が3人掛けリヤ・シートと40:20:40を標準装備にしたことで、「後席に2人乗せて、真ん中にスキー板を通す」という積み方がようやく普通にできる車になった。E71から乗り換えたなら、まず中央の20を倒してみたい。
全部倒して1,525ℓにするときの段差
左右と中央をすべて倒せば、580ℓから最大1,525ℓへ、およそ2.6倍まで広がる。引っ越しの段ボール、輪行袋に入れた自転車、大型のスーツケースは、この状態が前提になる。ただし倒したバックレストの上面と荷室フロアは完全な平面には揃わず、前方が高くなる段差と傾斜が残る。硬い箱物なら段差をまたいで置けるが、丸い物や柔らかい物は傾斜を滑って前席側へ寄っていく。ヘッドレストを抜いてから倒すとバックレストがより深く前傾し、段差は小さくなる。シートベルトのバックルがバックレストの上へ飛び出すときは、内側へ寝かせてから荷物を載せると、金具が荷物の底面へ食い込むのを避けられる。
片側の40だけを倒す使い方も覚えておきたい。後席に1人だけ乗せたまま、荷室の片側を縦に長く使える。3枚の板を1枚として扱った瞬間に、F16の荷室は「倒すか倒さないか」だけの平凡なSUVへ戻ってしまう。
クーペ屋根の下では「低く・奥から」積む
X6の荷室で失敗が起きるのは、たいてい高さの読み違いになる。ルーフラインは後席の上あたりから後方へ下がり続け、テールゲートのガラスは大きく寝ている。荷室の断面は、奥へ行くほど低くなる楔(くさび)の形をしている。
高さの余白は後ろへ行くほど無くなる
X5と床の広さが大きく変わらないのに最大容量で345ℓを失うという事実は、そのまま「奥の上部に空気の層が残っていない」ことを意味する。背の高い荷物をテールゲート寄りに置くと、閉じるときにガラスへ当たる——ゴルフバッグやスーツケースを立てて積んだのに蓋が閉まらないのは、容量が不足しているのではなく、置いた位置を間違えているだけのことが多い。
積む順番を固定してしまう
順番を決めておけば、この形の荷室は迷わずに埋まる。①背の高い荷物・硬い荷物を、後席の背もたれに接する最前列(天井が最も高い位置)へ立てて置く。②中くらいの箱物を中央に寝かせる。③テールゲートに近い最後尾には、潰れても構わない柔らかい荷物・薄い荷物だけを残す。この3段階を守れば、ゲートを閉じるときに何かが当たる場面はほとんど消える。
背の高い荷物が最前列に入りきらないときは、中央の20だけを倒し、そこへ荷物の頭を逃がすと収まることがある。荷室の高さが足りない日にも、やはり中央の20が効いてくる。
走行中に荷物を動かさない
荷室を使い切ろうとするほど荷物同士の隙間は減り、一つひとつは重くなる。カーブと制動で動く荷物は内張りを削り、割れ物を割る。積む技術と留める技術は別のもので、後者を省いた荷室は内装から先に傷んでいく。
固定は荷物ではなく床のフックから決める
荷室の床に出ているフック(アンカー)へ留め具を掛け、そこから荷物へベルトを渡すのが固定の基本形になる。先に決めるのは荷物の置き方ではなく、自分のF16の荷室にフックが何個どこに出ているかのほうで、位置さえ分かればどの向きに荷物を置けばベルトを渡せるかが自動的に決まる。市販のラッシングベルトもカーゴネットも、このフックへ留める前提で作られている。
買い物袋やボトルのような軽い小物は、ベルトでは留めきれない。折りたたみコンテナを荷室の隅にひとつ置き、袋物の定位置と決めてしまうほうが手数は少ない。
後席を倒した日ほど前方への飛び出しを止める
急制動で荷物が前席側へ飛び出す事故は、後席を倒して長い荷室を作った日ほど起こりやすい。1,525ℓの空間は、裏を返せば荷物が助走できる距離が伸びたということでもある。後席を倒すときこそ、荷物を前後方向に留める一手を足しておきたい。天井近くまで積み上げるなら、荷物の上面を押さえる面をひとつ作れば、荷崩れが乗員の頭上へ回り込む経路を断てる。
X6は寝たリヤ・ガラスの分だけ後方視界がもともと狭い。荷物を高く積んだ日は、ルーム・ミラーが機能しない前提へ切り替え、ドア・ミラーとリヤ・ビュー・カメラで下がる運転に寄せる。
580ℓで足りない日の逃がし方
積載計画を荷室の中だけで完結させようとすると、いつか行き詰まる。屋根と、荷物そのものの形へ、あらかじめ逃がし先を用意しておく。
ルーフ積載は100kgまで(レールはオプション)
F16の諸元表には、許容ルーフ積載荷重100kgと明記されている。この100kgにはベースキャリアとルーフボックス自体の重量も含まれるため、容量の数字だけでボックスを選ぶと、中身を入れる前に上限へ近づいていることがある。
X6ではもうひとつ、先に確かめることがある。ルーフ・レールはF16では標準装備ではなくオプション(ハイグロス・ブラック仕上げとマット・シルバー仕上げの2種)になる。自分の個体の屋根にレールが走っているかどうかで、屋根へ積むという選択肢が成立するかが決まる。長いだけで軽い荷物——スキー板、サーフボード、ポール類——を屋根へ回し、重くて嵩張る荷物を荷室へ残す。この順序が、重心の面でも積み下ろしの手数の面でも理にかなう。
濡れ物・汚れ物は箱で隔離する
荷室が散らかる原因は容量不足ではなく、形の違う荷物を同じ床へ直に置いていることのほうが多い。濡れた道具や泥の付いた靴は樹脂製のコンテナへ隔離し、細かい物は仕切りのあるボックスへ入れ、自立しない袋物は箱の側面で囲う。この3つを決めるだけで床は片付く。縁の立ち上がったラゲッジマットを1枚敷いておけば、こぼれた水や砂がフロアの隙間へ流れ込むのも止められる。マットは厚みや見た目より、縁が立っているかどうかで選ぶほうが後悔が少ない。
車内の小物には、ドア・ポケットも使える。F16は前席ドアに1.5ℓ、後席ドアに1ℓの飲料ボトルが収まる。荷室で転がりがちなペットボトルは、最初からドア側の定位置へ送っておけばいい。
よくある質問
BMW X6 F16の荷室容量はどのくらいですか?
BMWの公式資料では、後席を使った状態で580ℓ、後席バックレストを40:20:40で倒すと段階的に最大1,525ℓまで広がります。先代のE71と比べたラゲージ・スペースの拡大幅は10〜75ℓです。全部倒すか倒さないかの二択ではなく、中央だけ・片側だけを倒した中間の状態を使えます。
後席は何分割で倒せますか?
3人掛けリヤ・シートに、40:20:40の3分割可倒式バックレストが標準装備されています。中央の20だけを倒せば、左右に2人を乗せたままスキー板や釣り竿のような長尺物を通せます。先代のE71はシートバックが6:4分割で、中央だけを倒す使い方はできませんでした。
X5 F15とどのくらい荷室が違いますか?
X5 F15が620ℓから最大1,870ℓ、X6 F16が580ℓから最大1,525ℓです。後席を使った状態の差は40ℓですが、後席を倒したときの差は345ℓまで広がります。同じ世代の兄弟車で差がつくのは、クーペ形状のルーフが荷室の奥の高い部分を削るためで、床の広さという点では大きく変わりません。
テールゲートは上半分だけ開けられますか?
開けられません。上下2分割式のテールゲートを持つX5 F15と違い、X6 F16のテールゲートは上方へ大きく開く一体式です。天井の低い場所では、車を前へ出してから開けるか、リヤ・ドアから荷物を積むかのどちらかになります。
屋根に荷物を積めますか?
F16の許容ルーフ積載荷重は100kgです。ただしルーフ・レールは標準装備ではなくオプションのため、自分の個体にレールが付いているかを先に確かめます。100kgにはベースキャリアとルーフボックス自体の重量も含まれるので、中身に使える余地はその分だけ減ります。
まとめ:F16の荷室を使い切る順番
F16の荷室は580ℓから最大1,525ℓへ広がる器で、床の広さという点ではX5 F15と大きく変わらない。足りなくなるのは床ではなく、奥へ行くほど下がっていく屋根の下の高さのほうになる。手を付ける順番は、①580ℓ/1,525ℓという体積と、積載量715kgという重量の、2つの天井を頭に入れる、②テールゲートが一体式である前提で、駐車位置は後ろではなく頭上の余白から決める、③40:20:40の中央20を倒し、人と長尺物を同時に運ぶ、④背の高い荷物を後席寄りに立て、テールゲート側には柔らかい荷物だけを残す、⑤荷室のフックを数え、ベルトとネットで留める、⑥それでも足りない日はルーフへ逃がす(100kgまで・レールの有無を先に確認)、の6段階になる。数字を追いかける前に、まず自分のF16の荷室に立って、フックの数と、テールゲートを全開にしたときの高さを測っておきたい。

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