毎回同じ場面で同じ音が鳴っているのに、調べて出てくる80系ヴォクシーの解説が ZRR80W や ZRR85W の話で、自分の車に当てはまるのか判断できないまま止まってしまうことがある。トヨタが公開しているヴォクシーの主要諸元表(2018年6月)では、ZRR80G はガソリン車・2WD の V/X グレードに与えられた型式で、エアロ仕様の ZS(ZRR80W)とは寸法もリヤブレーキの形式も別だ。音の切り分けは、擬音から部位を当てにいくより、公式の文書で説明がつくものを順に外していくほうが早い。順番は、取扱説明書の音さくいん14項目 → 取扱説明書が異常ではないと書いている作動音 → 車台番号で機械的に決まる公式対応 → 残りを販売店へ、の4段になる。
ZRR80G の異音を切り分ける4段の順番
| 段 | 見るもの | 分かること |
|---|---|---|
| 1 | 取扱説明書の音さくいん(14項目) | 車が意図して鳴らしている警告音か |
| 2 | 取扱説明書が異常ではないと書いた作動音 | ブレーキ・EPS・アイドリングストップの正常な音か |
| 3 | 車台番号で決まる公式対応 | 無料で直る対象に入っているか |
| 4 | ここまでで残った音 | 販売店に渡す材料をそろえる |
1段目と2段目は、取扱説明書が手元にあれば今日のうちに終わる。 費用も予約もかからないので、販売店に電話する前にここを済ませておくと話が早い。
ただし例外が1つある。ブレーキ付近から間欠的に鳴るキーキー音だけは、トヨタのヴォクシー取扱説明書(80系ガソリン車・2020年10月版)が警告として早期の点検を指示している項目なので、順番を待たずに扱う。
音さくいん14項目に自分の状況があるか
同取扱説明書には「車から音が鳴ったときは(音さくいん)」という独立した章があり、冒頭に、次の状況のとき車の状況や誤操作などを知らせるために各種の警告音が鳴る、と書かれている。表は乗降時6行・走行時8行の計14行で、次のページからは別のさくいんに変わる。トヨタが意図して鳴らしている音の全体像は、この14項目に収まっている。
車に乗るとき・降りるとき(6項目)
| 状況 | 原因 |
|---|---|
| ドアを開閉したとき | シフトポジションが P 以外になっている |
| ドアを開閉したとき | 窓・リヤムーンルーフが開いている(エンジン停止中のみ) |
| ドアを開閉したとき | 車幅灯・ヘッドランプが点灯している |
| エンジンを停止したとき | スマートキーの電池残量が少なくなっている |
| 施錠できないとき | いずれかのドアが確実に閉まっていない |
| 施錠できないとき | スマートキーを車内に置き忘れている |
走行しているとき(8項目)
| 状況 | 原因 |
|---|---|
| 走り出したとき | いずれかのドアが閉まりきっていない |
| 走り出したとき | パーキングブレーキが解除されていない |
| 走り出したとき | 運転席・助手席のシートベルトを着用していない |
| シフトダウンしたとき | シフトダウン制限をこえて操作した |
| ブレーキペダルを踏んだとき(きしみ・ひっかき音) | ブレーキパッドが摩耗しているおそれがある |
| 前方の車両と衝突しそうになったとき | PCS(プリクラッシュセーフティ)が作動した |
| 車線からはずれそうになったとき | LDA の車線逸脱警報機能が作動した |
| 前の車が発進しても停車し続けたとき | 先行車発進告知機能が作動した |
シートベルトの行には、助手席に荷物を置いている場合にもブザーが鳴ることがあるという注記が付いている。14項目のうち部品の摩耗を原因に挙げているのはブレーキペダルの行だけで、残りは操作か状態の知らせだ。
装備によっては該当しない行がある
表には、グレードやオプションによって該当の有無がある、という注記が付いている。リヤムーンルーフ、PCS、LDA、先行車発進告知機能が付いていない ZRR80G では、その行はそもそも該当しない。自分の車の装備は取扱説明書と実車で確認してほしい。音の種類や部位ごとの基本は別記事にまとめてある。
取扱説明書が「異常ではありません」と書いている音
14項目に当てはまらなかったら、次は正常な作動音を外す。以下はいずれも同取扱説明書が異常ではないと明記しているものだ。
ブレーキ・ABS・VSC まわりの作動音
エンジン始動時や発進直後、ブレーキペダルをくり返し踏んだときなどにエンジンルームから作動音が聞こえることがあるが、異常ではないと書かれている。あわせて、車体やハンドルに振動を感じる、車両停止後もモーター音が聞こえる、ABS の作動時にブレーキペダルが小刻みに動く、ABS の作動終了後にブレーキペダルが少し奥に入る、の4つも異常ではないとされている。エンジンを切ったあとに音が続く場面は、故障と誤認されやすい代表格。
ハンドルを切ったときのウィーン音
ハンドル操作を行ったときにモーターの音(ウィーンという音)が聞こえることがあるが異常ではない、と書かれている。擬音まで含めて正常だと名指しされている数少ない例だ。据え切りを繰り返したあとにハンドルが重くなる場合も、EPS のオーバーヒートを避けるために効果が下がる保護動作として説明されており、ハンドル操作を控えるか停車してエンジンを止めれば10分程度でもとに戻るとされている。
アイドリングストップからの再始動音
主要諸元表によれば ZRR80G はアイドリングストップ装置と電動パワーステアリングを最初から積んでいる。同取扱説明書には、エンジン停止中にエアコンを ON にしたとき、シフトポジションを D または M 以外にしたとき、運転席シートベルトをはずしたとき、運転席ドアを開けたとき、ハンドルを操作したとき、アクセルペダルを踏んだときなどに自動で再始動する、と書かれている。バッテリーの充電量が低下しているときにも再始動する場合があるとされ、逆にエンジン停止そのものが行われない条件にも、バッテリーが十分に充電されていないとき、バッテリーが劣化しているとき、バッテリーを交換したあとしばらくの期間などが並ぶ。音そのものより、どの操作の直後に鳴ったかで見分ける。 バッテリーの状態で挙動が変わる点は、下の記事の考え方がそのまま参考になる。
ブレーキのキーキー音は様子見にしない
同取扱説明書の「運転にあたって」には、守らないと重大な傷害におよぶか最悪の場合死亡につながるおそれがある、という前置きの警告ボックスがある。その中に「間欠的にブレーキ付近から警告音(キーキー音)が発生したとき」の項目が置かれ、できるだけ早く販売店で点検を受けてブレーキパッドを交換すること、交換が行われないとディスクローターの損傷につながる場合があること、が書かれている。音さくいんの走行時の表にも同じ内容が摩耗の警告として載っている。取扱説明書が音を理由に「できるだけ早く販売店へ」と指示しているのは、この項目だけだ。
ここで1つ前提がある。主要諸元表では ZRR80G のブレーキはフロントがベンチレーテッドディスク、リヤがリーディングトレーリング式ドラムで、パッドやディスクローターという部品名が指すのは前輪側になる。リヤをディスク前提で説明している情報(キャリパーの固着など)は、2WD ガソリンの ZRR80G には当てはまらない。リヤがディスクになるのは4WD の ZRR85G とハイブリッドの ZWR80G/ZWR80W だ。
車台番号で決まる公式対応を確認する
音とは無関係に、対象なら無料で直る枠が ZRR80G にはある。判定は車台番号と製作期間で機械的に決まるので、音の切り分けと並行して進めておく。
CVTトルクコンバータの無料修理
トヨタが公表している「無段変速機トルクコンバータの修理」(2017年7月)の案内によれば、CVT のトルクコンバータで、製造ばらつきによりロックアップクラッチの構成部品の一部に強度が不足しているものがあり、頻繁に加減速を繰り返すとクラッチが作動しなくなって警告灯が点灯しフェールセーフ走行となる場合がある、とされている。保証期間は新車を登録した日から5年または10万km以内から、新車を登録した日から13年以内へ延長されている。ZRR80G の対象は車台番号 ZRR80-0001002〜ZRR80-0202109、製作期間は平成25年12月〜平成28年2月。
ZRR80G が対象に含まれるリコール4件
トヨタが公表している国土交通省へのリコール届出内容のうち、型式 ZRR80G が対象に含まれるものは4件ある。
| 届出番号 | 内容 | ZRR80G の車台番号 | 製作期間 |
|---|---|---|---|
| 4567 | シートリクライニング機構(シートバックを保持できなくなるおそれ) | ZRR80-0315734〜ZRR80-0427677 | 平成29年4月10日〜平成30年5月9日 |
| 4683 | 低圧燃料ポンプ | ZRR80-0055660〜ZRR80-0087878 | 平成26年9月1日〜平成26年12月4日 |
| 4830 | 低圧燃料ポンプ | ZRR80-0435898〜ZRR80-0485820 | 平成30年6月12日〜平成30年12月24日 |
| 5404 | 低圧燃料ポンプ(4683・4830 の対象拡大) | ZRR80-0341990〜ZRR80-0529111 | 平成29年7月7日〜令和元年5月15日 |
5404 は、4683 と 4830 の検証を進めた結果として対象拡大の必要が判明したため新たに届け出たもの、とトヨタが説明している。改善はいずれも低圧燃料ポンプを対策品と交換する内容だ。
範囲に入っていても対象外の車両がある
各ページには共通の注意書きがあり、対象車の含まれる車台番号の範囲には対象とならない車両も含まれること、対象車の製作期間は購入の時期とは異なること、が明記されている。確定はメーカーのリコール等情報対象車両検索か販売店への問い合わせになる。CVT の修理も、販売店で点検した結果として該当する場合に交換する扱いなので、範囲内であることと修理を受けられることは同じではない。
公式文書に「異音」という語は出てこない
ここは正直に書いておきたい。ZRR80G に関係する公式対応5件の「不具合の状況」を読むと、どこにも異音という語がない。CVT は警告灯の点灯とフェールセーフ走行、燃料ポンプは作動不良で最悪の場合走行中のエンスト、シートリクライニング機構は意図せずシートバックが倒れるおそれ。燃料ポンプのリコールに付いた運転時のお願いでも、挙げられているのはエンジンが掛かりにくい、エンジン警告灯の点灯、加速不良などのエンジン不調で、音は指標になっていない。
つまり、鳴っている音を根拠に「これはリコールのはずだ」と逆算する筋道は最初から用意されていない。車台番号での対象判定と、音の切り分けは別の作業として並行させる。
残った音を販売店に渡す
ここまでで説明のつかなかった音は、素人が部位を断定しないほうがいい。参考までに ZRR80G の構造は、主要諸元表ではエンジンが3ZR-FAE(直列4気筒・総排気量1.986L)、変速機が Super CVT-i、サスペンションがフロント=マクファーソン・ストラット式、リヤ=トーションビーム式。ハイブリッド車の電気式無段変速機とは別の機構なので、90系やハイブリッドの事例をそのまま当てはめない。
記録するのは4点
音さくいんの状況欄は「ドアを開閉したとき」「走り出したとき」「ブレーキペダルを踏んだとき」のように、操作と場面で引く作りになっている。メーカー自身がそう引く以上、どんな音かより先に、どの操作で鳴ったかを特定するほうが通じる。記録するのは、鳴った操作または場面、鳴りはじめた時期、毎回鳴るのか特定の条件だけか、警告灯やメーター表示が同時に出ているか、の4点。
持ち込む前にそろえるもの
車検証(車台番号と初度登録年月が書かれており、リコールと保証延長の対象判定はここから始まる)、上の4点のメモ、これまでの整備の記録と領収書・修理明細書。CVT の無料修理は新車登録から13年で区切られるため、初度登録年月の確認は優先度が高い。
走行中にエンジン不調が出たとき
燃料ポンプのリコール告知に付いた運転時のお願いが、そのまま行動の目安になる。エンジンが掛かりにくい、エンジン警告灯の点灯、加速不良などが出たら速やかに販売店へ連絡する。やむを得ず停車する場合はハザードランプで後続車へ合図し、路肩など安全な場所に停める。高速道路などでは周囲に注意しながら車両後方に発炎筒や停止表示板を置き、乗員はガードレールの外や待避所など安全な場所へ避難する。
リコールになっていない不具合の届け先
国土交通省の自動車不具合情報ホットラインは、自動車やタイヤ、チャイルドシートに異常を感じたら連絡してほしい、として所有者からの情報を集めている。窓口はウェブの受付フォームとフリーダイヤル0120-744-960(年中無休・24時間、オペレーター受付は平日9:30〜12:00と13:00〜17:30)で、連絡時は車検証など車両情報が分かるものを用意するよう案内されている。商品性や金銭に関わる問い合わせは受付の対象外だ。あわせて、現時点でリコールになっていなくても将来リコールとなった場合には修理代金の返還等が行われる場合があり、必要な書類はメーカーによって異なる、とも書かれている。自費で直した明細を残しておく意味はここにある。なお同省の説明では、リコールは設計・製造過程に問題があったものを対象とする制度で、整備を行っていない場合などに発生する故障とは分けて分析される。年数と距離を重ねた個体の音の多くは、後者の整備の領域に入る。
よくある質問
80系はZRR80WやZRR85Wと書かれていますが、自分のZRR80Gは同じ車ですか
同じ80系だが、型式が違えば中身も違う。主要諸元表では ZRR80G は5ナンバーで全長4,695mm・全幅1,695mm・全高1,825mm、ホイールベース2,850mm。ZS の ZRR80W は3ナンバーで全長4,710mm・全幅1,735mm と寸法から別だ。リヤブレーキも ZRR80G はドラム、4WD の ZRR85G とハイブリッドはディスクになる。ZRR80W/ZRR85W だけを扱った情報は、80系のうち ZS の話でしかない。
取扱説明書はどの版を見ればよいですか
トヨタの取扱説明書サイトでは、80系ヴォクシーのガソリン車向けが2014年1月から2021年12月までをカバーする9版に分かれて公開されている。この記事が引いたのは2020年10月版(2020年4月〜2021年12月生産車向け)なので、それより前の年式では記載が異なる場合がある。自分の年式に対応する版で確かめてほしい。
CVTの無料修理は今からでも受けられますか
期間は新車を登録した日から13年以内で、ZRR80G の対象は車台番号 ZRR80-0001002〜ZRR80-0202109、製作期間は平成25年12月〜平成28年2月。ただし範囲に入っていても対象外の車両が含まれるため、車検証の車台番号でメーカーの対象車両検索を使うか、販売店に確認するところまでが必要になる。
ブレーキのキーキー音は少し様子を見てもいいですか
取扱説明書が警告として、できるだけ早く販売店で点検を受けてパッドを交換するよう指示している項目なので、様子見の対象にはしない。交換が遅れるとディスクローターの損傷につながる場合がある、とも書かれている。
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まとめ
ZRR80G の異音は、音さくいん14項目 → 取扱説明書が異常ではないと書いた作動音 → 車台番号で決まる公式対応 → 残りを販売店へ、の4段で外していくと、最後に残ったものだけが本当に見てもらうべき音になる。
今日やることは2つに絞れる。鳴った操作・時期・再現性・警告灯の有無の4点をメモすることと、車検証の車台番号を控えてメーカーの対象車両検索にかけること。公式文書のどこにも異音の記載がない以上、音の切り分けと対象判定は別々に進めて、最終的な確定は販売店の点検に預けるのが順当だ。

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