iQ KGJ10の異音|発生条件6つで絞る手順

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異音が出たとき、多くの人は聞こえた音を擬音に置き換えて検索する。この入り方は候補が広がりすぎるうえ、KGJ10 には構造上あり得ない原因まで残ってしまう。先に絞るのは音の名前ではなく、いつ鳴るかだ。そのうえで、この型式に実在するメーカー届出3件を車台番号で照合する。

目次

音の名前より先に「いつ鳴るか」で絞る

切り分けは発生条件が先に来る。停車したままエンジンをかけて空ぶかしし、音が回転数に連動して変わるか。走り出して車速に比例して速くなるか。ブレーキを踏んだときだけか。ハンドルを切ったときだけか。段差や継ぎ目を越えたときだけか。エンジンを止めた後も続くか。この6つを順に確かめてから調べたほうが、擬音で検索するより早く見る箇所が決まる。

振動も同じ軸で扱える。JAF の解説では、振動はステアリングなどの操作系とボディ全体のものに大別され、ある速度域でステアリングが振れるか、ブレーキペダルを踏んだときに出るか、アクセルを踏んだときに出るか、停車中に車体全体が揺れるかで見る箇所が変わるとされている。

ただし、条件を試す前に走行をやめる判断が要る症状もある。ハンドルを回したときの異音と、ブレーキの踏み代が増える・効きが落ちるという変化の2つだ。理由は後の節に書く。

音の種類から入る整理の枠組みだけ借りたいなら、他車種の記事が近い。

KGJ10の構成を先に押さえる

他車種の記事に書かれていても、KGJ10 には最初から当てはまらない原因がある。自車の構成を先に確認しておけば候補から外せる。

項目 KGJ10(1.0L)
エンジン 1KR-FE・996cc・直列3気筒DOHC・過給機なし
最高出力 68ps(50kW)/6000rpm
変速機 Super CVT-i(自動無段変速機)・FF
ブレーキ 前=ベンチレーテッドディスク/後=ドラム(一部に別表記あり・後述)
サスペンション 前=マクファーソンストラット/後=トーションビーム
ステアリング 電動パワーステアリング(ラック&ピニオン)
タイヤ 前後とも175/65R15
車両重量・ホイールベース 890kg・2000mm

他車種の記事から外せる2つの原因

外せる候補が2つある。1つはパワーステアリングの油圧ポンプに由来する音だ。トヨタが公表しているリコール等情報の届出文には「電動式パワーステアリング制御用コンピュータ」と明記され、改善措置も制御用コンピュータのプログラム修正またはステアリングコラムの交換になっている。iQ のパワーステアリングは電動式なので、油圧ポンプを前提にした説明はそのまま当てはまらない。

もう1つは1.3Lの情報だ。iQ は1.0Lが型式 KGJ10、1.3Lが型式 NGJ10(1NR-FE・2009年8月以降)で分かれており、後で挙げる届出の対象範囲も型式ごとに別に示されている。NGJ10 向けの記述を KGJ10 に持ち込まない。

なお 1KR-FE が属する KR シリーズは、自動車技術メディアのエンジン解説によると直列3気筒でバランスシャフトを備えず、振動対策はクランクシャフトのカウンターウエイトの設定で行っている。この設計事実は次の節で使う。

エンジンの回転に連動する音

空ぶかしで音が変わるなら、エンジンと補機の側を見る。JAF のトラブル診断では、ガラガラ音は「エンジンオイルの不足や潤滑不良が発生している可能性があります」、キュルキュル音は「ベルトが滑っている可能性があります」とされている。どちらも点検が必要な状態として案内されており、擬音と原因が一対一で決まるわけではない。潤滑不良や冷却不良が進むとエンジンが焼き付いて始動できなくなる場合があるので、ガラガラ音を鳴らしたまま距離を伸ばす選択はとらない。

ベルト側も同じ解説で整理できる。補機ベルトはオルタネーター、エアコンのコンプレッサー、ラジエーターファンやウォーターポンプなどを駆動し、近年は電動式に切り替える車種が多くなっている。KGJ10 の場合、ベルトが切れてハンドルが重くなるという筋書きは電動式のため当てはまらない。ただしウォーターポンプ側の冷却は残るので、ベルトの音を軽く見る理由にはならない。

アイドリング時の振動やこもり音は判断が割れやすい。バランスシャフトを持たない3気筒という設計上、構造的に出やすい側であることは確かだ。それでも、設計の話は自車の音が正常だという証明にはならない。以前と比べて変化したかどうかで見る。

エンジンの出力低下を一緒に感じているなら、KGJ10 には排気ガス再循環装置のサービスキャンペーンが出ている。異音の届出ではないが、エンジン系の不調を感じたときに車台番号で確認しておく先にはなる。内容は後の節にまとめた。

ブレーキを踏んだときの音

踏んだときだけキーキー鳴るなら、パッドの摩耗警告が候補に入る。JAF の解説では、ほとんどの国産車に「パッドウェアインジケーター」が取り付けられており、パッドの残量が少なくなるとこれが直接ブレーキディスクと接して音を出し、交換時期を知らせるとされている。残量2mm以下程度になったら交換するように定められており、そのまま使い続けるとブレーキの効きが悪くなる。摩耗が進むとブレーキ液がリザーバータンクの下限ラインを下回り、ブレーキ警告灯も点灯するようになっている。残量の確認は、ホイールを外してブレーキキャリパーの点検用の窓から行う。

この仕組みはディスクブレーキの話だという点に注意がいる。KGJ10 はフロントがベンチレーテッドディスク、リヤがドラム(リーディングトレーディング)で、確認できた6モデルはすべてこの表記だった。一方、特別仕様の1モデルだけリヤを「ディスク」と表記した車両情報がある。全車がリヤドラムだと決めてかからず、後輪側を疑うなら自車の実物か取扱書でブレーキ形式を確認してから対処を選ぶ。

音ではなく踏み代や効きに変化があるなら、別の確認先がある。iQ にはブレーキ配管に関するリコールが届け出られており、内容は次の節に書いた。異音とは書かれていないので、音の原因としてではなく踏み心地が変わったときの照合先として扱う。

ブレーキペダルを踏んだときの振動は系統が別だ。JAF の解説では、パッドの片減りやディスクローターの偏摩耗が原因になるとされている。

ハンドルを切ったときの音

この条件だけは扱いが違う。JAF のトラブル診断では、ハンドルを回した際の異音は「ハンドル(ステアリング)機構に異常が発生している可能性があります」とされ、異常があると操作が行えなくなる可能性があるため走行は大変危険で、点検が必要な状態として案内されている。発生条件を試す前に、自走を続けない側へ倒す。

KGJ10 にはここに関わるリコールが1件ある。現象はハンドルが重くなることで異音ではないが、ステアリング系で気になることがあるなら対象かどうかを先に確認しておくほうが早い。届出の中身と照合の手順は次の節にまとめた。

車速に連動する音と、段差で出る音

車速に比例して速くなる音は、原因を1つに絞りにくい領域だ。JAF のトラブル診断でも、走行中のタイヤ付近の異音は「タイヤに異物が刺さっていたり、走行関係の部品が痛んでいるなど、走行中の異音発生源は多岐にわたり複数の原因が推測されます」とされている。だからこそ、まず自分の目で見える範囲から確認する。異物の刺さりやタイヤの亀裂・損傷、溝の深さ、空気圧は日常点検の項目に含まれていて、前後とも175/65R15なので4本を同じ見方で見られる。

整備で解消する具体例も2つ挙がっている。ある速度に達するとステアリングが激しく振動するシミー現象は、JAF の解説ではホイールバランスやアライメントの狂い、タイヤの偏摩耗によるものとされている。走り始めに車体がガタガタするときは、長時間の駐車でタイヤの一部が平らになるフラットスポットができた可能性がある。どちらも出る速度域と再現性を控えておくと工場での確認が早い。

段差や継ぎ目でだけ音が出るなら、足回り側を見ることになる。KGJ10 のサスペンションはフロントがマクファーソンストラット式コイルスプリング、リヤがトーションビーム式コイルスプリング。ここは目視で分かる範囲が少なく、分解や測定を伴うので工場に渡す領域だ。

「異常ではない音」との線引き

止まった後の音がすべて異常とは限らない。JAF のトラブル診断では、エンジンを停止した後も回転音がしている場合について、一部の車種ではエンジンを冷却するため停止後もしばらく冷却ファンが回り続けるとされている。

ここで気をつけたいのは、「異常ではない例がある」ことと「自分の音が異常ではない」ことは別だという点にある。判断がつかない音を正常と決めつける方向にこの話を使わない。前の節までに挙げた、ハンドル操作時の異音とブレーキの踏み代や効きの変化は、迷ったら点検側に置く。

KGJ10に出ているメーカー届出3件

型式 DBA-KGJ10 には、リコール2件とサービスキャンペーン1件が公表されている。いずれも異音そのものの届出ではないが、車台番号ではっきり決着がつく確認先だ。

電動パワーステアリング制御用コンピュータのリコール

トヨタが公表しているリコール等情報によると、平成22年11月4日に iQ とパッソについて届け出られた(届出番号2645、リコール開始日は11月5日)。制御用コンピュータのプログラムが不適切なため、車線逸脱警告用に凹凸を施した路面を高速で走行すると路面からの振動を誤判定し、パワステ機能が停止してハンドルが重くなるおそれがある、という内容だ。改善内容は、修正可能な車両はプログラムを修正し、その他は対策品の制御用コンピュータが組み込まれたステアリングコラム全体を交換する。対象は車台番号 KGJ10-6000022〜KGJ10-6019578、製作期間は平成20年10月28日〜平成22年10月22日、対象台数19,348台。

ブレーキマスターシリンダとブレーキ配管のリコール

消費者庁のリコール情報によると、平成23年6月1日に届け出られた。ブレーキマスターシリンダとブレーキアクチュエータ間の配管で製造工程の洗浄が不適切なものがあり、付着した異物がマスターシリンダ内のシール部に噛み込むと、ブレーキペダルを踏んだ際の踏み代が増加して制動力が低下するおそれがある。改善措置は全車両でマスターシリンダと当該配管を新品に交換する。対象台数は計21,636台、製作期間は平成20年9月2日〜平成22年5月20日、修理開始日は平成23年6月2日。踏み代や効きの変化を感じているなら、ここを先に照合する。

排気ガス再循環装置のサービスキャンペーン

トヨタが公表しているサービスキャンペーン情報によると、平成28年4月14日より、平成20年から平成23年に生産した iQ の一部を対象に無料修理が実施されている。触媒で浄化する前の排気ガスを再循環させているため排気ガス分配管にカーボンが堆積してガス流量が減少することがあり、そのまま使用を続けると異常燃焼が発生し、それを抑制するエンジン制御によってエンジン出力が低下するおそれがある、という内容だ。改善内容は全車両で触媒コンバータを対策品に交換し、排気ガス分配管を新品に交換する。対象は型式 DBA-KGJ10、車台番号 KGJ10-6000000〜KGJ10-6019751、製作期間は平成20年9月2日〜平成23年2月1日。公表文が述べているのは異常燃焼と出力低下であって、異音ではない。

対象かどうかは車台番号で決まる

3件とも、対象は年式ではなく車台番号で決まる。公表文にも「対象車の含まれる車台番号の範囲には、対象とならない車両も含まれますので、詳細については最寄りのトヨタ販売店にお問い合わせください」「対象車の製作期間はご購入の時期とは異なります」と明記されている。車検証の車台番号を手元に置き、メーカーの対象車両検索にかけるか販売店に確認するのが正規の手順で、改善措置は無料で受けられる。初度登録の年式だけで対象・対象外を決めない。なお対象表に載っているのは DBA-KGJ10 であって、1.3Lの NGJ10 は別に扱われている。

自分で見る範囲と、工場に渡す範囲

線引きは点検整備の区分がそのまま使える。国土交通省が示す区分では、日常点検整備は日頃自動車を使っていく中でユーザー自身が行える点検と位置づけられ、自家用乗用自動車のユーザーは走行距離や運行時の状態などから判断した適切な時期に実施する。専門的な知識・技能・設備が必要な点検整備は、認証を受けた整備工場に依頼できる。定期点検整備はユーザーの義務で、自家用乗用自動車は1年ごとに29項目、2年ごとに1年ごとの29項目を含む計60項目を行う。

JAF が公開している日常点検の項目を見ると、15項目の第14項目が「エンジンのかかり具合および異音」で、異音の確認は最初からユーザー側の仕事に入っている。ほかにブレーキ・ペダルの踏みしろおよびブレーキの利き、タイヤの状態、エンジンオイル・冷却水・ブレーキ液・バッテリー液の量が並ぶ。実施の目安は1カ月に一度、長距離走行前や洗車時などとされている。液量とタイヤは工場に行く前に自分で見ておける。

工場に渡すときは、部品名ではなく発生条件を渡す。空ぶかしで再現するか、車速に連動するか、ブレーキ操作時だけか、ハンドル操作時だけか、段差だけか、停止後も続くか。加えて速度域、走り始めか暖まってからか、毎回出るか時々かをメモしておく。原因の確定は分解や測定を伴うので、切り分けの入口を短くするところがオーナー側の仕事になる。

車内側の作業をまとめて頼む予定があるなら、同じ型式の話は次にも書いた。

よくある質問

走り始めだけ鳴るブレーキの音はどう扱えばよいか

消える条件と出る条件の両方を控えるところから始める。走り始めだけか、その日の1回目だけか、雨の翌日かで工場側の見立てが変わる。パッドウェアインジケーターによる音であれば鳴り出した後に自然に消えることはないので、いつ消えるかは切り分けの材料になる。擬音だけで原因を1つに決めない。

アイドリング中の振動やこもり音は3気筒だから仕方ないのか

その結論には飛ばない。KR シリーズがバランスシャフトを持たないのは設計上の事実だが、自車の音や振動が正常であることの証明にはならない。以前と比べて変化したか、暖まると消えるか、停車中の車体全体の揺れなのかで、見る場所が分かれる。

リコールやサービスキャンペーンの対象かは年式だけで判断してよいか

判断できない。対象は車台番号で決まり、公表された範囲に入っていても対象とならない車両が含まれる。製作期間も購入時期とは一致しない。車検証の車台番号でメーカーの検索にかけるか、販売店に確認する。

1.3Lの iQ 向けの情報をそのまま当てはめてよいか

当てはめない。1.0Lは KGJ10、1.3Lは NGJ10 と型式が分かれていて、届出の対象範囲も型式ごとに示されている。自車の型式は車検証の型式欄で確認できる。同じ iQ でも仕様差が出る箇所は他にもあり、鍵まわりの見分け方は次にまとめた。

まとめ

進め方の順番はこうなる。まず発生条件で候補を絞る。空ぶかしで再現するか、車速に連動するか、ブレーキかハンドルか段差か、停止後も続くか。次に液量とタイヤという自分の目で見える範囲を確認する。そこまでで候補が1つに寄ったら、車検証の車台番号でメーカーの届出情報に当て、対象かどうかを確定させる。最後に、絞り込みの過程をそのまま整備工場へ渡す。

ハンドルを回したときの異音と、ブレーキの踏み代の増加や効きの低下だけは、この順番の外に置く。再現条件を試す前に点検を受ける。

同じ KGJ10 の使い勝手まわりは次にも書いた。

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この記事を書いた人

車種別パーツ適合情報サイト「パーツ選び.com」の編集部。タイヤサイズ・エンジンオイル量・ワイパー適合・フィルター型番など、2,400本以上の記事と全80車種対応の早見表を公開中。適合値はメーカー公式の諸元・取扱説明書や部品メーカーの公式適合表で確認したものを優先し、確認できない数値は載せない方針で運営しています。

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