クロスビーのマフラー選びで最初につまずくのが、2WD用と4WD用が別々の品番になっている点だ。市販されている主要な製品はどれか一方の専用品で、共用できるものがない。だから商品名や見た目から入るより、型式が MN71S かどうかと、駆動方式が2WDか4WDかの2つを先に確定させたほうが早い。この2つが決まれば、選べる候補はほぼ1本に絞られる。
駆動方式で候補が排他的に分かれる
MN71S 型クロスビーで選べるマフラーを、駆動方式ごとに並べる。2WD用と4WD用は入れ替えが効かないので、まずこの行を間違えないことがすべての前提になる。
| 区分 | 製品 | テール材質 | 近接排気騒音(メーカー公表) | 認証の表示 |
|---|---|---|---|---|
| 2WD専用 | HKS silent Hi-Power 31019-AS010 | SUS304 | 85dB(ノーマル79dB) | 政府認証番号 JQR10181097 |
| 4WD専用 | ロッソモデロ COLBASSO IKUSA-Ti | チタン | 83dB(4125回転時) | JASMA認定品 |
| 4WD専用 | ロッソモデロ COLBASSO IKUSA-Si | ステンレス | 83dB(4125回転時) | JASMA認定品 |
| 本体交換なし | MN71S用マフラーカッター | ステンレス | — | — |
比べる順番は、駆動方式の適合、認証表示の有無、近接排気騒音の公表値、材質、テール外径とパイプ径、装着後の地上高、出口の向き、受注生産か即納か、の順で使えばいい。ここで注意したいのは、騒音の数値が大きいほど良い製品ということではないことだ。測定条件も製品ごとに違うので、数値を並べて静かさの順位を決めることはできない。自分が住んでいる場所や早朝にエンジンをかけるかどうかで、許せる音量は変わる。
自分の型式と駆動方式を確かめる
車検証のどこを見るか
見るのは型式欄と駆動方式の記載だ。型式は接頭記号が付いた形で書かれていて、MN71S 型なら DAA-MN71S か 4AA-MN71S、2025年10月以降の新型なら 5AA-MND1S になる。先頭のアルファベットと数字は排出ガスや燃費の区分を示すものなので、世代を判別するときは後半の MN71S / MND1S だけを見ればいい。HKS は「DAA-, 4AA-MN71S」、ロッソモデロは「DAA/4AA-MN71S」と表記していて、どちらも MN71S を対象としている。
MN71S と MND1S は何が違うか
MN71S は2017年12月25日に発売され、2025年10月まで約8年間販売された。エンジンは K10C 型 996cc の直列3気筒 直噴DOHC ターボ、マイルドハイブリッドのモーターは WA05A 型、変速機は6速AT、駆動方式は前輪駆動と四輪駆動の2種類だ。2025年10月2日のビッグマイナーチェンジで型式が MND1S に変わり、エンジンは Z12E 型 1197cc の自然吸気、モーターは WA06D 型、変速機は CVT になった。スズキ公式サイトの現行クロスビーのページでも変速機は CVT と記載されている。1.0Lターボと6速ATを前提にした排気系とは、条件が別物だと考えたほうがいい。
車検で見られる基準を先に知っておく
近接排気騒音はどう測るか
マイクをマフラー出口と同じ高さで中心に向け、出口から外側45度・50cm の位置に置く。車を止めたままエンジンを最高出力回転数の75%まで回して測る。車検で通常測られるのはこの近接排気騒音のほうで、走行しながらの測定ではない。規制値は平成10年規制車で96dB以下(後部エンジン車は100dB以下)とされ、生産年月日によって適用される規制が変わる。
加速走行騒音と表示の区分
平成22年4月1日以降に生産された車では、近接排気騒音96dB以下に加えて、装着するマフラーが加速走行騒音を有効に防ぐものであることが求められる。MN71S は2017年12月以降の生産なので、この区分に入る。加速走行騒音の基準値は82dB以下だ。適合していることは、純正品表示、装置型式指定品表示、性能等確認済表示、ECE規則のEマーク、EU指令のeマークのいずれかで示される。製品を選ぶときは、この表示があるかを商品ページと現物の両方で確認する。国土交通省によれば、交換用マフラー事前認証制度は騒音防止性能を持つ製品が選ばれる環境を整えるために大臣告示で作られたもので、登録性能等確認機関が確認した製品に性能等確認済表示が付く。乗車定員11人以上や車両総重量3.5トン超などは対象外だが、クロスビーは対象に入る。
指定部品でも保安基準は免除されない
自動車技術総合機構の説明では、指定部品はボルトや接着剤で装着する場合に車検証の記載事項の変更手続きが要らないとされている。ただし同機構は、指定部品を装着した車も道路運送車両の保安基準に適合していなければならないと明記している。手続きが不要なことと、基準を満たさなくてよいことは別だ。マフラーまわりでは、最低地上高が全面9cm以上あること、鋭い突起がなく回転部分が突出していないことが求められる。工具なしでインナーサイレンサーを抜き差しできるような、騒音低減の仕組みを簡単に外せる構造も認められない。
2WDなら HKS silent Hi-Power
HKS の公式製品データベースによると、silent Hi-Power(品番 31019-AS010)の適合は DAA-/4AA-MN71S、エンジン型式 K10C(TURBO)、2017年12月以降で、4AA-MN71S は2020年10月以降が適合可とされている。適合表には2WD専用と明記されていて、4WDには使えない。材質は SUS304、重量3.4kg で純正比約27%減、テールエンド径65mm、中間パイプ径45mm。近接排気騒音はノーマル79dB に対して85dB、政府認証番号は JQR10181097 で、製品取り付けによる地上高の変化はなし(168mm)とされている。備考には受注生産品と記載がある。Amazon実売価格は確認時点で¥48,889だが、価格は変動するので購入時に見直してほしい。
HKS silent Hi-Power 31019-AS010 クロスビー MN71S 2WD専用(SUS304・3.4kg・政府認証 JQR10181097)
4WDならロッソモデロ COLBASSO IKUSA
ロッソモデロ公式の適合情報では、クロスビー4WD用の COLBASSO IKUSA は対応型式 DAA/4AA-MN71S、対応グレード MZ/MX の4WD車、エンジン K10C(ハイブリッドターボ)、対応年式は平成29年12月から令和7年9月まで。材質は SUS304、テール外径80φ、メインパイプ径50.8φ、近接騒音値83dB(4125回転時)、地上高はタイコ部210mm・テール部220mm、出口は左出し、リアピースの交換タイプで、JASMA認定品とされている。2WD(FF)には別の品番が用意されているので、商品ページの駆動方式の記載を見ずに買わないこと。Amazon実売価格は Ti・Si とも確認時点で¥79,200 だった。
IKUSA-Ti を選ぶ場合
テール部がチタン製になる仕様だ。公式サイトによれば、テール色はチタニウムシルバー・チタニウムブラック・標準色ブルーから選べ、色を変えると6,000円(税別)アップになる。チタンテールはスライドして突出量を調整できる製品があるとの注記もあるので、エアロを付けている車はこの点が効いてくる。
ロッソモデロ COLBASSO IKUSA-Ti クロスビー MN71S 4WD専用(チタンテール・80φ・JASMA認定品)
IKUSA-Si を選ぶ場合
テール部までステンレスで揃う仕様で、本体側の構成は Ti と共通だ。公式サイトの価格例(ハスラー4WD用は Ti・Si とも73,700円)が示すとおり、同じ車種なら Ti と Si は同価格帯に置かれている。つまり両者の差はテールの材質と色の選択肢であって、音や取り回しの違いを買うものではない。色を変えないなら Si で足りるし、テールの見え方を作り込みたいなら Ti を選ぶ、という分け方でいい。
ロッソモデロ COLBASSO IKUSA-Si クロスビー MN71S 4WD専用(ステンレステール仕様・SUS304)
本体を替えないならマフラーカッター
排気系には手を入れず、出口の見た目だけを変えたい場合の選択肢になる。商品ページに記載された仕様では、MN71S 用としてステンレス材質・耐高温・防食防錆・脱落防止・穴あけ不要・排水口付きを掲げた製品が流通している(黒チタニウム色などの仕上げ)。Amazon実売価格は確認時点で¥2,388 と、本体マフラーより一桁低い。
ただしこれはテールに被せる外装部品で、本体マフラーの代わりにはならない。排気の流路や消音の構造は変わらないので、音や重さが本体交換のように変わることを見込んで選ぶものではない。逆に言えば、騒音値に関わる要素を動かさずに外観だけ変えたいときには噛み合う。保安基準の側は本体交換と同じで、鋭い突起がないことと確実に固定されていることが要る。走行中の脱落は危険と基準の両方に関わるので、締め付けは手を抜かないほうがいい。
クロスビー MN71S 用 マフラーカッター(ステンレス・穴あけ不要・脱落防止・排水口付き)
発注前に済ませておく確認
ロッソモデロの4WD用にはガスケット・ボルト・ナット・左側設置用ブラケット一式が付属するが、公式の注記に「牽引フックは使用できなくなります」とある。牽引フックを日常的に使っている人は、装着前にそれを許容できるか決めておきたい。HKS 側は受注生産品なので、手元に届くまでの時間が在庫品より読みにくい。車検の期限や作業の予約日から逆算し、納期は注文前に販売店へ聞いておく。
エアロを付けている車は、テールの突出量がリアバンパーやディフューザーに当たらないかを先に見ておく。ロッソモデロにはテールをスライドさせて突出量を調整できる製品があると公式に注記があるので、調整できるかどうかを購入元に確認しておけば手戻りが減る。装着後に地上高が基準を割らないことも、取り付けを頼む店と一緒に見ておきたい。
2025年10月以降の新型に乗っている場合
MND1S は動力系が MN71S と別物で、排出ガス性能も平成30年排出ガス基準50%低減レベル(☆☆☆☆)に上がっている。ここまで挙げた3製品はいずれも適合型式を MN71S(DAA-/4AA-)と明記していて、ロッソモデロは対応年式の末尾を令和7年9月としている。MN71S 用をそのまま新型に流用できる前提で読まないほうがいい。新型で社外マフラーを検討するなら、メーカーの適合表に自分の型式が入っているかを一度確認してから話を進める。
よくある質問
社外マフラーに替えると車検に通らなくなりますか
認証の表示がある製品を選べば、通す前提で作られたものを選んだことにはなる。ただし装着後の地上高、テールの突出、整備の状態、実際に測った騒音値によって判定は変わるので、製品を選んだ時点で合格が確定するわけではない。取り付けを頼む店に、装着後の状態も見てもらうといい。
マフラーを替えると構造変更の手続きが必要ですか
自動車技術総合機構の説明では、指定部品をボルトなどで装着する場合、車検証の記載事項の変更手続きは不要とされている。ただし同じ説明の中で、装着した車は保安基準に適合しなければならないと明記されている。手続きの有無と基準の適合は別の話だ。
2WD用のマフラーを4WDに付けられますか
付けられない。HKS の 31019-AS010 は公式データベースで2WD専用と明記され、ロッソモデロのクロスビー用として本記事で扱った品番は対応グレードが MZ/MX の4WD車と明記されている。取り回しが成立しないので、駆動方式を確かめてから品番を選ぶ。
マフラー交換でパワーは上がりますか
今回確認したメーカー公表の情報の中に、出力やトルクの向上幅を示す数値はない。数字が出ていない以上、何馬力上がるという言い方はできない。HKS が数値で示しているのは重量が3.4kg で純正比約27%減という点で、上がる方向ではなく減る方向の値だ。
音はどのくらい大きくなりますか
HKS はノーマル79dB に対して85dB、ロッソモデロ4WD用は83dB(4125回転時)を公表している。ただし測定の回転数の取り方が製品ごとに違うため、この2つを並べて静かさの順位を決めることはできない。音量だけでなく音質の好みと、住んでいる場所での使い方に照らして選ぶ数値だと考えたほうがいい。
まとめ
最初にやることは、車の後ろに回ってマフラーの出口が左右どちら側にあるか、テールがどんな形をしているかを実車で見ることだ。交換後の見え方は現物との比較でしか判断できない。そのうえで車検証を開き、型式欄が MN71S か MND1S か、駆動方式が2WDか4WDかを読む。
順番は型式、駆動方式、認証表示の3段だ。MN71S の2WDなら HKS silent Hi-Power、MN71S の4WDならロッソモデロ COLBASSO IKUSA-Ti か IKUSA-Si、本体を替えずに外観だけ変えたいならマフラーカッターに落ち着く。Ti と Si の間で迷ったら、テールの色を選びたいかどうかで決めればいい。
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