デビューから二十年近く経ったコンパクトセダンでは、エンジンがまだ元気でもナビだけが時代に取り残される。地図データは高速道路の新しい区間を知らず、走行中はテレビが黒いままになる。ベルタのナビをどうにかしたいとき、進む道は二つに分かれる。ダッシュボードに純正のナビが収まっているなら、千円前後のキットを一つ足すだけで化ける。ナビが無い、あるいはオーディオだけの個体なら、社外ナビへの載せ替えになり、200mm窓口用の取付キットが要る。どちらに進むかで費用は十倍以上変わるため、買う前に見るのはグレード表ではなく自分のダッシュボードになる。
ベルタのナビは3ルート|費用と手間の早見表
ベルタでナビを何とかする方法は、大きく三つに整理できる。同じ「ナビが不満」でも、今ダッシュボードに何が付いているかで正解が変わる。
| ルート | 前提になる装備 | 主な費用 | 手間 | 得られるもの |
|---|---|---|---|---|
| ①純正ナビを活かす | メーカーオプションのナビが付いている | 千円前後〜二千円台 | カプラー割り込みのみ | 走行中のテレビ視聴・ナビ操作、外部映像入力 |
| ②社外ナビに載せ替え | オーディオレス/純正オーディオ | ナビ本体+取付キット | パネル脱着と配線 | 最新地図、スマホ連携、大画面 |
| ③スマホ・ポータブルナビ | 何でもよい | USB電源とホルダー | 電源の増設のみ | 常に最新の地図、渋滞情報 |
①のキットは、メーカーオプションのナビが付いている個体にしか効かない。ここを取り違えて先に買ってしまう例が多い。二十年落ちの個体は前オーナーがすでにヘッドユニットを替えていることもあるため、車検証やカタログではなく実車の現物を見るのが早い。
まず見るのはグレード表ではなくダッシュボード
確認は難しくない。ナビ画面が内装のパネルと一体で収まり、画面の周囲に隙間なくパネルが回り込んでいれば、メーカーオプションのナビである可能性が高い。逆に、四角い機械が窓口にはめ込まれていて左右にパネルの継ぎ目が見えるなら、社外品か後付けの機器になる。窓口にオーディオだけが載っている、あるいは小物入れで塞がれているなら、ナビは最初から付いていない。
この見分けが付けば、あとは迷わない。純正ナビがある人は下の①のキットへ、無い人は②の取付キットへ進めばよい。
在庫を確認できたベルタ専用パーツ
ベルタの型式(KSP92/SCP92/NCP96)を明記した製品で、現時点で在庫を確認できたものを並べる。価格は執筆時点の参考値で、変動する。
| 製品 | ピン数 | 参考価格 | 何ができるか |
|---|---|---|---|
| TVキット(STV-T02-SS-5P) | 5ピン | 2,000円 | 走行中のテレビ・DVD視聴とナビ操作 |
| TVキャンセラー(INEX tvc32) | 5ピン | 700円 | 走行中のテレビ・DVD視聴 |
| VTRアダプター(KW-1275A互換) | 6ピン | 910円 | 純正ナビに外部映像を入力 |
| スイッチホールUSBポート | ― | 999円 | 空きスイッチ穴にUSB電源を増設 |
純正ナビが付いている個体で最初に足す一つを選ぶなら、走行中のテレビ視聴とナビ操作の両方に効くタイプになる。停車のたびに目的地を入れ直す手間が消えるのが、価格差の二千円弱に見合う部分だ。
ベルタ KSP92/SCP92/NCP96 走行中テレビ・ナビ操作キット(5ピン)
もう一つ、純正ナビの画面をスマホの映像に使えるようにするのが外部入力のアダプターになる。地デジチューナーを後付けする際の受け口にもなり、こちらは6ピンで刺さる。
ベルタ KSP92/SCP92/NCP96 VTRアダプター 外部入力(6ピン・KW-1275A互換)
KSP92・SCP92・NCP96の違いとナビ部品の共通性
ベルタの型式は三つあり、中身はエンジンと駆動方式で分かれる。ただしナビまわりに関しては、この三つを区別する必要がほとんど無い。
型式は3つ、ナビ部品は共通
トヨタ・ベルタに与えられた型式は、1.0L直3の1KR-FEを積むKSP92、1.3L直4の2SZ-FEを積むSCP92、同じ1.3Lでも4WD用の2NZ-FEを積むNCP96の三つになる。KSP92は1.0LのFF、SCP92は1.3LのFF、NCP96は1.3Lの4WDという整理だ。
| 型式 | 排気量・駆動 | エンジン |
|---|---|---|
| KSP92 | 1.0L・FF | 1KR-FE(直3 DOHC) |
| SCP92 | 1.3L・FF | 2SZ-FE(直4 DOHC) |
| NCP96 | 1.3L・4WD | 2NZ-FE(直4 DOHC) |
ナビ関連のキットは、この三型式をまとめて一つの品番でカバーする。実際、TVキットもVTRアダプターも取付キットも、適合表には「KSP92/SCP92/NCP96」と三つ並ぶ。エンジンが違ってもダッシュボードの内側とオーディオ配線は共通だからだ。KSP92に乗っているなら、SCP92向けと書かれた製品を見つけても、型式欄に三つとも並んでいれば問題なく使える。
対応年式は2005年11月〜2012年6月
ベルタは2005年11月28日に発売され、2012年6月30日で販売を終えた。ナビ関連パーツの適合欄に並ぶ「H17.11〜H24.6」という表記は、この全期間を指している。途中でマイナーチェンジは何度か入っているものの、オーディオ窓口の寸法と配線カプラーは通して変わっていないため、前期でも後期でも同じ品番で足りる。
ボディは全長4,300mm・全幅1,690mm・全高1,460〜1,480mmの5ナンバーサイズ。室内の広さを稼いだ設計のぶん、ダッシュボード中央の窓口も後述のとおり幅に余裕がある。
純正ナビを活かす①|5ピンのTVキットで走行中のテレビとナビ操作
メーカーオプションのナビが載っている個体なら、最初に効くのがこの一手になる。工賃を払わなくても、部品代だけで走行中の制限が外れる。
テレビだけか、ナビ操作までか
同じ「5ピンのキット」でも、外れる制限の範囲が二段階ある。安いほうは走行中のテレビ・DVD映像の制限だけを解除する。もう一段上のタイプは、映像に加えて走行中のナビ操作まで通す。
高速道路を走りながら同乗者が目的地を入れ替えられるかどうかが、この二つの分かれ目になる。テレビが映れば十分なら700円台のキャンセラーで足り、走行中に目的地変更やルート探索までしたいなら2,000円前後のタイプを選ぶ。ベルタの純正ナビは操作系がタッチパネル中心のため、後者のほうが日常の不満は消えやすい。
なお、これらは同乗者が使うことを前提にした装備になる。運転者が走行中に画面を注視する行為は道路交通法の対象で、キットの有無とは関係なく違反になる。
取り付けはカプラーの割り込み
作業は、ナビ本体の裏に刺さっているカプラーを一度抜き、キットを間に挟んでから戻すだけで済む。切ったり繋いだりする配線加工は無い。手間の大半はダッシュボードのパネルを外す工程で、内張り剥がしがあれば数十分の範囲に収まる。
5ピンという数字は、この割り込む先のカプラーの極数を指している。ベルタのメーカーオプションナビは5ピンで、後述する外部入力の6ピンとは別の場所になる。両方を付けることもでき、その場合は刺す場所がそれぞれ違うと覚えておけばよい。
純正ナビを活かす②|6ピンのVTRアダプターで外部映像を入れる
純正ナビの弱点は地図の古さだが、画面そのものは生きている。この画面を外部映像のモニターとして使い直すのが、VTRアダプターの役目になる。
KW-1275A互換の6ピンとは
トヨタの純正ナビには、映像と音声を外から入れるための端子が用意されている。ただし裏側は専用の6ピンカプラーで、そのままではRCA(赤白黄)のケーブルが刺さらない。この6ピンをRCAに変換するのが外部入力アダプターで、トヨタ純正品番のKW-1275Aに相当する互換品が千円前後で流通している。
繋ぐ先は自由になる。スマホの画面を映すHDMI変換、地デジチューナー、ドライブレコーダーの映像、古いDVDプレーヤーまで、映像出力を持つ機器なら受けられる。
スマホの映像を入れるときの限界
期待しすぎないための前提が二つある。ひとつは、これが映像を「映すだけ」の入力だという点。ナビ画面をタッチしてもスマホ側は動かないため、地図アプリの操作はスマホ本体で行うことになる。もうひとつは解像度で、当時のナビ画面にスマホの地図を映すと文字は粗くなる。
ルート案内をきれいな画面で見たいならスマホをそのまま使うほうが速く、VTRアダプターは動画や地デジチューナーの受け皿として考えるのが現実的になる。前席から後席まで一つの画面で動画を流したい、という用途にはよく合う。
社外ナビに載せ替える|200mm窓口と取付キットNKK-Y50D
オーディオレスの個体や、純正ナビの地図がもう使い物にならない場合は、社外ナビへの載せ替えが本線になる。ここで最初に要るのが、車種専用の取付キットだ。
200mmワイドか180mmの2DINか
ベルタのオーディオ窓口は幅200mmで開いている。市販ナビの標準的な2DINサイズは幅180mmのため、そのまま入れると左右に10mmずつ隙間が残る。この隙間を埋めるパネルが入っているのが、車種専用の取付キットになる。
選択肢は二つある。窓口の幅をそのまま使う200mmワイドナビを入れるか、180mmの一般的な2DINナビをスペーサーで左右から挟むか。ワイドナビは画面が大きく取れる一方、対応機種が絞られる。180mmの2DINなら選べる機種が桁違いに多く、価格もこなれている。
ナビ用キットには車速信号の5Pが付く
トヨタ・ダイハツ車用のDINサイズカーAV取付キットとして流通しているのが、カナック企画(日東工業)のNKK-Y50Dになる。適合表にはベルタがH17/11以降・200mm窓口として載り、オーディオレス車も対象に含まれる。
セット内容は、左右のパネル(L)(R)、電源用のコネクター一式(10P/6P)、そして車速信号用コネクター(5P)。この車速信号用の5Pが付いているかどうかが、ナビ用キットとオーディオ用キットの決定的な差になる。カーオーディオを載せるだけならNKK-Y37Dで足りるが、ナビは自車位置の測位に車速パルスを使うため、車速信号を取れないキットを選ぶとトンネル内で自車位置が飛ぶ。
| 品番 | 用途 | 車速信号用コネクター |
|---|---|---|
| NKK-Y50D | カーナビゲーション用 | 付属(5P) |
| NKK-Y37D | カーオーディオ用 | なし |
ステアリングリモコンの配線は別
NKK-Y50Dにステアリングリモコン用の配線は付属しない。ハンドルのスイッチでオーディオを操作していた個体で、載せ替え後もその機能を残したい場合は、社外ナビのメーカーに合わせたステアリングリモコンアダプターを別に用意する。ベルタの下位グレードにはそもそもステアリングスイッチが無い個体も多いため、まず現車のハンドルを見て、スイッチの有無を確かめてから判断すればよい。
スマホナビで済ませる|USB電源を足すだけの最安ルート
三つ目のルートは、車のナビを直さずにスマホへ任せてしまう考え方になる。地図が常に最新で、渋滞情報も無料で入るため、走る距離が短い人ほど費用対効果は高い。
問題になるのは電源で、ベルタの世代にはUSBポートが標準で無い。シガーソケットから取る手もあるが、ダッシュボードの空きスイッチ穴にはめ込むタイプのUSBパネルを使えば、配線を隠したまま見た目を崩さずに済む。ベルタ専用に成形されたスイッチホール用のUSBポートが千円前後で流通しており、これとホルダーを足せば、ナビの機能としては純正ナビを上回る。
3ルートの選び方
三つのうちどれを選ぶかは、好みではなく現車の状態と使い方で決まる。順番に当てはめれば自然に一つ残る。
純正ナビの地図がまだ使えるか
普段の行動範囲が地元中心で、道が変わっていないなら、古い地図でも実害は小さい。この場合はルート①が最も安い。逆に、新しい高速道路やインターが地図に載っていない、目的地検索で施設が出てこない、という状態なら、地図の更新が止まった純正ナビにキットを足しても不満は残る。載せ替えかスマホナビへ進むほうが早い。
予算はどこまで出せるか
ルート①は千円台から二千円台で収まる。ルート②はナビ本体が主役になり、取付キットとアンテナ変換を足すと本体以外にも費用が乗る。工賃を店に払うならさらに加わる。ルート③はホルダーと電源だけで、手持ちのスマホを使うぶん最も安く上がる。
手放す予定があるか
数年内に乗り換える予定があるなら、社外ナビを入れても査定にはほとんど反映されない。この場合はルート①かルート③で使い切るほうが合理的になる。長く乗るつもりなら、載せ替えの費用は年数で割って考えられる。
よくある質問
ベルタには何インチのナビが入りますか
窓口は幅200mmで開いているため、180mm幅の一般的な2DINナビ(7インチクラス)と、200mmワイド対応のナビの両方が候補になる。180mmを入れる場合は、左右の隙間を埋めるパネル入りの取付キットが要る。それより大きな9インチ級の大画面ナビは、ダッシュボードの形状上そのままでは収まらない。
TVキットとTVキャンセラーは別物ですか
呼び方の差で、どちらも走行中の映像制限を解除する部品を指す。ただし中身の機能には段階があり、テレビ・DVDの映像だけを通すタイプと、映像に加えて走行中のナビ操作まで通すタイプに分かれる。商品名ではなく、説明文に「ナビ操作」と書かれているかどうかで見分ける。
走行中にテレビを見るのは違法ではありませんか
映像を表示すること自体ではなく、運転者が運転中に画面を注視する行為が規制の対象になる。キットを付けた状態でも、運転者が走行中に画面を見れば違反にあたる。同乗者が見る、あるいは停車中に操作する範囲で使うのが前提の部品だ。
純正のHDDナビの地図は今も更新できますか
ベルタの販売終了から十年以上が経っており、当時のメーカーオプションナビ向けの地図更新サービスは提供が終わっているものが多い。更新の可否は搭載されているナビの機種ごとに違うため、画面のメニューから機種名を確認したうえでメーカーの対応表にあたる。更新できない機種だった場合、地図の鮮度を取り戻す方法は載せ替えかスマホナビの二つになる。
取り付けは自分でできますか
ルート①のキット類は、カプラーを抜いて間に挟むだけで配線加工が無いため、内張り剥がしがあれば自分で付けられる範囲に収まる。ルート②の社外ナビ載せ替えは、電源・アース・車速信号・アンテナ・バックカメラまで配線が増えるため、経験が無ければ工賃を払う判断も現実的になる。
まとめ
ベルタのナビを何とかする道は三つあり、選ぶ基準は好みではなく現車の状態になる。メーカーオプションのナビが載っているなら、5ピンのTVキットで走行中のテレビとナビ操作を開放し、6ピンのVTRアダプターで外部映像を入れるところまでが、合わせて三千円弱で届く。オーディオレスや地図が死んだ個体なら、200mm窓口に対応したNKK-Y50Dで社外ナビへ載せ替える。走る範囲が狭いなら、スイッチホールにUSB電源を足してスマホに任せる手も残る。
型式がKSP92でもSCP92でもNCP96でも、ナビまわりの部品は共通で選べる。だから買い物を始める前にすることは一つだけで、ダッシュボードを開いて、今そこに何が刺さっているかを見ることになる。
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