平日は買い物と送迎、週末はもう少し遠くへ。サクラのバックドアを開けて、思ったより浅いと感じた人は多いはずです。日産が公表している荷室容量は107L(VDA方式)で、数字だけを見れば軽ハイトワゴンとしては控えめに映ります。ただ、サクラの積載力を決めているのは、この107Lという固定値ではありません。床下のラゲッジアンダーボックスと、前後スライド・左右分割可倒に対応する後席。この2つをどう動かすかで、同じ車の荷室が別物になります。日産が公表している数値をそろえ、荷物別の積み方まで手順に落とし込みます。
サクラの荷室スペック早見表(107L・耐荷重・車体寸法)
サクラ(型式ZAA-B6AW/KE0型・2022年6月発売)の荷室を扱うとき、覚えておく数字は多くありません。荷室容量107L、ラゲッジボードの耐荷重は約50kg。この2つが、積み方を判断するときの土台になります。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 荷室容量 | 107L(VDA方式) | 日産 よくあるご質問 |
| ゴルフバッグ搭載数(9インチ) | 2名乗車時2個/3名乗車時1個 | 日産 よくあるご質問 |
| ラゲッジボード耐荷重 | 約50kg | 日産 よくあるご質問 |
| 室内長×室内幅×室内高 | 2,115×1,340×1,270mm | 諸元表 |
| 全長×全幅×全高 | 3,395×1,475×1,655mm | 諸元表 |
| ホイールベース | 2,495mm | 諸元表 |
| 乗車定員 | 4名 | 諸元表 |
| 車両重量 | 1,070〜1,080kg(グレード差) | 諸元表 |
| 駆動用バッテリー | 20kWh(床下搭載) | 日産公式 |
グレードはS・X・Gの3種類で、荷室の骨格寸法とラゲッジアンダーボックスはグレードによらず共通です。
VDA方式の107Lをどう読むか
VDA方式は、規定サイズのブロックを荷室に詰めて測る国際基準です。車どうしを同じ物差しで比べるためのもので、家庭の段ボールやベビーカーが入るかどうかを直接示す数字ではありません。107Lは後席を立てたまま、荷室の床からトノ部分までを測った状態の値だと理解しておくと、実際の積み込みで期待値がずれません。
積載を左右するのは容量より後席の位置
サクラの後席は前後にスライドし、リクライニングし、左右を別々に前へ倒せます。つまり荷室は、寸法が固定された箱ではなく、後席の位置で奥行きが変わる可変スペースです。107Lは「後席を通常位置に置いたとき」の一断面にすぎず、後席を前に寄せる、片側だけ倒す、両側とも倒すという3つの操作で、荷室の形そのものが変わります。カタログ値を1つだけ覚えるより、後席をどう動かすかを覚えるほうが積載力に直結します。
日産が乗車人数別にゴルフバッグの搭載数を公表しているのは、この可変性を前提にしているからです。2名乗車なら9インチのゴルフバッグが2個、3名乗車なら1個。同じ車体で搭載数が変わるという事実そのものが、「荷室の広さ=後席の使い方」であることを示しています。荷物が入らないと感じたときに最初に疑うべきは荷室の容量ではなく、後席が奥まで下がったままになっていないか、という点です。
ラゲッジアンダーボックス(床下収納)を使い切る
サクラの荷室で最初に手を付けるべき場所は、床板の下です。ラゲッジアンダーボックスは全グレードに備わり、荷室の床面を上げ下げすることなく、見せたくないものや汚れるものを隔離できます。日産のよくあるご質問では、ラゲッジボード(ラゲッジアンダーボックスの蓋)の耐荷重は約50kgと案内されています。
耐荷重50kgと「荷重を分散させる」条件
同じ案内には、荷重が1点に集中しないよう荷物を分散して載せるという条件が添えられています。約50kgという数字は、面で受けたときの目安と読むのが正確です。細い脚のついた工具箱や、角が尖った金属製のケースを1点で押し付ける置き方は、総重量が軽くてもボードに無理をかけます。重量物を載せるときは、板状のトレーやコンテナで接地面を広げてから置くと、公表条件に沿った使い方になります。
床下に入れるもの・入れないもの
床下は取り出し頻度が低く、動いてほしくないものの定位置に向きます。三角表示板、けん引ロープ、洗車用のタオル、レジャーシートといった「常備するが毎日は触らない」ものが該当します。逆に、走行中に温度が上がりやすい車内で長期保管したくないもの(スプレー缶、電池類、飲料)や、すぐ取り出したいもの(買い物袋、傘)は床下に向きません。床板を持ち上げる一手間が、日常の使い勝手を落とします。
判断に迷ったら、「取り出す頻度が月1回より少ないか」を基準にします。月1回以上触るものは荷室の床上か前席まわりへ、それ以下のものは床下へ。この線引きなら、床板を開ける回数が自然に減り、上に積んだ荷物を毎回どかす手間も生じません。床下を「開かずの層」に近づけるほど、荷室の床面は広く使えます。
充電ケーブルの定位置として使う
サクラで床下収納がもっとも活きるのは、充電ケーブルの収納場所としてです。コントロールボックス付きの充電ケーブルは太く、かさばり、床に転がすと荷室を占有します。ケーブルバッグにまとめて床下へ収めれば、荷室の床面がフラットなまま使え、外出先での充電にも持ち出せます。自宅の充電設備とあわせて考えると、車内に積む長さと自宅側に固定する長さの切り分けもしやすくなります。
後席アレンジで荷室を広げる3パターン
日産のよくあるご質問には、9インチのゴルフバッグの搭載数が乗車人数別に示されています。この数字は、後席の使い方と荷室の広さの関係をそのまま表しています。
4名乗車のまま積む:後席を前へスライド
乗員4名を乗せたまま荷物を増やしたいときは、後席を前方向へスライドさせます。後席の足元は狭くなりますが、荷室の奥行きはその分だけ伸びます。サクラの室内長は2,115mmあり、後席に大人が座っても膝前に余裕が残るため、買い物や短距離の送迎なら前寄りの位置で問題になりにくい設計です。乗車人数を減らさずに荷室を増やせる唯一の操作が、このスライドです。
3名乗車+片側前倒し:ゴルフバッグ1個
後席の片側だけを前へ倒すと、後席にもう1名を乗せたまま長尺物を積めます。日産の案内では、この状態で9インチのゴルフバッグが1個積めるとされています。ゴルフバッグに限らず、スキー板、脚立、組み立て式のラック、細長い段ボールなど、幅より長さが問題になる荷物はこの形が解になります。倒した側の背もたれが荷室の延長になるため、荷物は前方向へ滑り込ませるように積みます。
2名乗車+両側前倒し:ゴルフバッグ2個
後席を左右とも前へ倒すと、9インチのゴルフバッグが2個入る空間になります。2名乗車が前提になりますが、キャンプ道具、引っ越しの小口荷物、大型の犬用クレートといった、容量そのものが必要な場面はこの形で対応します。倒したシートの背面と荷室床には段差が残るため、荷物を平らに積みたいときはクッション性のあるマットやコンテナで高さをそろえると安定します。
車内の小物収納を役割で振り分ける
荷室が散らかる原因の多くは、荷室に置くべきでないものが荷室にあることです。サクラは前席まわりの小物収納が充実しているので、行き先を決めてしまえば荷室の床が空きます。
前席まわり:インストスライドボックスとセンターロアトレイ
助手席前にはインストスライドボックス、その下にグローブボックス、センター下部にはインストセンターロアトレイとロアボックスが配置されます。ステアリング右横にはカップホルダーがあり、運転席・助手席のドアポケットには車検証を収める専用スペースが設けられています。書類、サングラス、マスク、小銭といった「運転中に触るもの」は、この範囲で完結させます。
後席まわり:シートバックポケットとドアポケット
前席の背面にはシートバックポケット、後席側面にはドアポケットがあります。子どもの飲み物、絵本、ウェットティッシュのような「後席の乗員が自分で取るもの」をここへ移すと、走行中に荷室へ手を伸ばす場面が減ります。荷室に置いた紙袋が加速のたびに倒れる、という日常のストレスの多くはこの振り分けで消えます。
オプション収納:シートアンダーボックスとアームレストコンソール
助手席のシートアンダーボックス、アームレストコンソール、引き出し型のシートアンダードロー、ワイヤレス充電器はオプション設定です。乗車人数が固定されている使い方(通勤で1〜2名、後席は荷物置き場)なら、後席そのものを収納に変えるより、前席側の収納を足したほうが荷室を素の状態で残せます。
荷室収納グッズをサイズで選ぶ
サクラ専用をうたう収納用品は多くありません。汎用品から選ぶことになるため、寸法の見方を決めておくと外しません。
高さから決める
荷室ボックスは幅や奥行きより先に高さを見ます。サクラの荷室は床から上の余裕が大きいわけではないため、背の高いコンテナを入れるとバックドアを閉めたときに天井側と干渉します。荷室に置いたまま蓋を開け閉めしたいなら、上開きではなく前開き、あるいは蓋なしのオープンボックスのほうが扱いやすくなります。選ぶ順番は「高さ→開き方→幅」と決めておくと、店頭で迷いません。
滑り止めと固定を優先する
軽量な樹脂コンテナは、荷室が空いているほどよく動きます。底面に滑り止めが付いたもの、面ファスナーで床に留められるもの、あるいはラゲッジネットで押さえられる形状を選びます。サクラは静粛性が高く、走行中の物音が耳につきやすい車です。荷物が転がる音は、内燃機関の軽自動車より目立ちます。固定は積載量の問題ではなく、静かさを守るための条件になります。
ラゲッジマットで汚れ物と生活用品を分ける
荷室に汚れ物(園芸用品、濡れた傘、スポーツ用具)と生活用品を混ぜると、片方の都合で毎回すべてを降ろすことになります。防水のラゲッジマットを敷いて汚れ物ゾーンを固定し、清潔に保ちたいものは床下か前席側へ逃がす。この線引きだけで、荷室を空にする頻度が下がります。
常備品の総重量を把握しておく
サクラの荷室まわりには、重量の上限が2つ存在します。ラゲッジボードの約50kgという耐荷重と、電気自動車として無視できない積載重量そのものです。収納ボックスやマットを足していくと、中身より容器のほうが重くなることも起こります。荷室に常備すると決めたものは、一度まとめて体重計に載せてみると実像がつかめます。10kgを超えているなら、そのうち何を降ろせるかを検討する余地があります。
EVならではの積載の注意点
サクラは駆動用バッテリーを床下に搭載する電気自動車です。荷物の積み方が、走行可能距離と電源の使い方に直接効いてきます。
積載重量と電費
一充電走行距離は180km(WLTCモード)ですが、これは規定の条件で測った値です。重い荷物を積んだままにすれば、加速のたびに余分な電力を使い、実走行での航続距離は短くなります。車両重量が1,070〜1,080kgの軽自動車にとって、常時積みっぱなしの20kg・30kgは無視できる重さではありません。使わない荷物を降ろすことが、もっとも安上がりな電費対策です。
荷室で電源を使うには
サクラの車内には、家電を直接つなぐAC100Vコンセントは備わっていません。車両から電力を取り出すには、V2H機器や外部給電器といった別売の機器が必要になります。荷室にポータブル電源を積んで使う人が多いのはこのためです。車中泊やアウトドアで電源を前提にするなら、給電機器を用意するか、独立したポータブル電源を荷室の固定位置に置くかを先に決めておきます。
床下バッテリーと荷室の関係
駆動用バッテリーは荷室の床下ではなく、車室の床下に搭載されています。ラゲッジアンダーボックスの容量がバッテリーで削られているわけではありません。なお日産は駆動用バッテリーの容量を8年16万kmで保証しており、荷室の使い方がこの保証に影響することもありません。普通充電は2.9kWで約8時間、急速充電は30kW以上の充電器で80%まで約40分が目安です。
よくある質問
サクラの荷室にベビーカーは積めますか
A型の大型ベビーカーは、後席を立てたままの107Lの空間に横向きで収めるのが難しい場合があります。後席を前へスライドさせて奥行きを稼ぐか、片側を前へ倒して斜めに入れる形が現実的です。B型やコンパクトに折りたためるモデルなら、後席を立てたままでも収まります。購入前に、折りたたみ時の最長辺を実測して持ち込むと確実な判断ができます。後席に子どもを乗せたままベビーカーを積む場面が多いなら、片側前倒しで3名乗車を保つ形が日常の解になります。
ラゲッジボードの上に重い荷物を置いても問題ありませんか
日産のよくあるご質問では、ラゲッジボード(ラゲッジアンダーボックスの蓋)の耐荷重は約50kgと案内されており、荷重が1点に集中しないよう分散して載せるよう添えられています。総重量が50kg以内でも、細い脚や鋭い角で1点に押し付ける置き方は避けます。板やトレーを噛ませて接地面を広げると、公表された条件に沿います。
後席を倒すと荷室は完全にフラットになりますか
倒したシートの背面と荷室の床には段差が残ります。長尺物を積むには十分な形ですが、平らな面が必要な用途(車中泊のマットを敷く、平積みで箱を並べる)では、クッションやコンテナで高さをそろえる工夫が要ります。段差を埋める汎用のフラットボードやマットを併用するのが一般的な対処です。
荷室で100Vの家電を使えますか
サクラの車内にAC100Vコンセントは装備されていません。車両から給電するにはV2H機器や外部給電器が別途必要です。荷室で家電を使いたいだけであれば、ポータブル電源を積むほうが手軽です。
後席を倒したまま走っても問題ありませんか
後席を前へ倒したまま走ること自体は問題ありません。ただし乗車定員は4名で、倒した席には人を座らせられません。荷物が運転中に動かないよう、ラゲッジネットや固定具で押さえた状態にしてから走り出します。
まとめ:床下とシート位置で荷室は変わる
サクラの荷室は、107L(VDA方式)という数字だけを見ると小さく感じます。ただ、実際の積載力を決めているのは容量ではなく、ラゲッジアンダーボックスという床下の1層と、前後スライド・左右分割可倒に対応する後席の位置です。ラゲッジボードの耐荷重は約50kgで、荷重を分散して載せるという条件が付きます。乗員4名のままならスライド、3名なら片側前倒しで9インチのゴルフバッグが1個、2名なら両側前倒しで2個。この3段階を覚えておけば、荷物を前にして積めるかどうかを迷わず判断できます。あとは、荷室に置くべきでないものを前席まわりの収納へ振り分け、汚れ物をマットで区切るだけです。電気自動車である以上、積みっぱなしの重量はそのまま航続距離を削ります。荷室を空に保つ習慣が、そのまま電費に返ってきます。

コメント