ホームセンターの駐車場でテールゲートを開け、長い箱と重い袋を前にして、どちらから積むか手が止まる。N-WGNの荷室は、床を低く抑えたうえで、備え付けのボードによって上下2段に仕切れる構造になっています。現行のJH3/JH4では、ホンダ自身がこの荷室を2段ラックモード・ローフロアモード・ビッグラゲッジモードという3つの形として示しており、どれを選ぶかで積める物が変わります。加えて後席は、荷室側からストラップで前へスライドさせられ、背もたれは左右別々に前倒しできます。3つのモード、後席の2つの動かし方、純正の収納スペース、世代ごとの構造差という順にたどります。
荷室は3つのモードで形が変わる
N-WGNの荷室を使いこなす鍵は、寸法を測ることよりも、床に置かれた1枚のボードをどう扱うかにあります。ホンダは現行N-WGNの荷室を「床を低く、そのぶん広く。2段でも積める、使い勝手のいい荷室」と説明し、シーンに合わせて3つのモードへアレンジできる設計だとしています。ボードを水平に置くか、外すか、後席ごと倒すか。この3択が、そのまま積載プランになります。
| モード | ボードの扱い | 後席 | 得意な荷物 |
|---|---|---|---|
| 2段ラックモード | 水平にセットして上下2段に仕切る | 立てたまま | 買い物袋・その日の荷物と、重い物や趣味の道具の同時積み |
| ローフロアモード | ボードを使わない | 立てたまま | 背の高い物・大きな物・重い物 |
| ビッグラゲッジモード | ボードを残したまま下段も併用 | 背もたれを前に倒す | 長い物・荷室に収まりきらない大きな物 |
2段ラックモード——ボードで上下に積み分ける
備え付けのボードを水平にセットすると、荷室が上下2段になります。ホンダの想定は、上段にその日の荷物や買い物を、下段に重い物や週末の趣味の道具を置くという分け方です。ここで効いてくるのが、ボードの高さがショッピングカートの高さとほぼ同じに設定されているという設計上の狙いで、カートを荷室の高さに横付けすれば、袋を持ち上げずに水平移動させるだけで積み込みが終わります。買い物のたびに腰を落として床まで袋を下ろす動作が消えるため、日常の使用頻度がいちばん高いのはこのモードになります。上段に載せた袋が走行中に動くと下段の物にぶつかるので、上段には軽くて崩れやすい物、下段には重心を下げたい重量物という配分を守ると、荷崩れも起きにくくなります。
ローフロアモード——ボードを外して高さを使う
ボードを使わないときは、大きな物や背の高い物が収まる広い空間になります。N-WGNは荷室床面をできるだけ低くしており、重い荷物も少し持ち上げるだけで積み込める高さに収まっています。観葉植物の鉢、ホームセンターで買った収納ケース、キャリーバッグを立てて積むといった、上下方向に余裕が要る場面はこのモードです。2段ラックモードとの切り替えはボードの抜き差しだけなので、積む物が決まった時点で判断すれば済みます。荷室の高さが足りないと感じたときに真っ先に試すのがボードの取り外しで、上段を諦めるかわりに天井までの高さを丸ごと使えるようになります。
ビッグラゲッジモード——後席を倒して奥行を伸ばす
後席の背もたれを前に倒すと、ほぼ段差のない広い空間が現れます。荷室だけでは積みきれない大きな荷物に対応する形で、ホンダはこのモードでも下段スペースを同時に使えると説明しています。つまり背もたれを倒しても、ボードによる上段と下段の積み分けはそのまま生きるという設計です。スキー板や物干し竿のような長尺物を上段に寝かせ、下段には工具箱や土嚢のような重い物を残す、といった二階建ての使い方が成立します。後席を倒した面と荷室床面のあいだに大きな段差が残らないため、長い物を斜めに逃がさずまっすぐ寝かせられる点も、この車の荷室の性格を決めています。
後席は「スライド」と「左右別々の前倒し」で動く
N-WGNの荷室が数字以上に使えるのは、後席が2通りの動き方をするからです。前後に滑らせる動きと、背もたれを前へ倒す動きは目的が違い、混同すると荷物を積み直すことになります。どちらも荷室側から操作できる点が、買い物帰りの実際の動作に効いてきます。
荷室側のストラップで後席を前へずらす
後席背面にはストラップが備わっており、これを使うと荷室側から後席をスライドさせられます。テールゲートを開けたまま、車内へ回り込まずに後席を前へずらして、荷物を置くスペースを広げられるという仕組みです。後席に人が乗っていない日は、まず後席を前へずらしてから積み始めるのが、荷室の奥行をいちばん素直に稼ぐ手順になります。逆に後席へ人を乗せる日は、足元の余裕と荷室の奥行のどちらを優先するかを、乗る人に断ってから決めます。スライドは無段階に効くので、後席の膝前に余裕を残しつつ荷室を少しだけ広げるという中間の詰め方も選べます。
肩口のレバーで背もたれを左右別々に倒す
後席の肩口にある操作レバーを引くと、背もたれが前に倒れます。ここで押さえておきたいのは、背もたれを左右別々に倒せるという点です。左右一体でしか倒れない軽自動車では、後席を倒す=後席に人を乗せられないという二択になりますが、N-WGNは片側だけを倒して、残った側に人を乗せたまま長い物を積めます。3人乗車でスキー板やカーテンレールを運ぶ、といった使い方が成立するのはこの構造のおかげです。レバー操作は荷室側からも行えるため、荷物を抱えたまま運転席側へ回り込む必要もありません。倒した側に長尺物を通すときは、前席のヘッドレストや天井の内張りに先端が当たらないよう、毛布やタオルを一枚噛ませてから滑らせます。
世代で荷室の作りが違う(JH1/JH2とJH3/JH4)
中古車を検討している場合や、初代から現行へ乗り替えた場合は、荷室の考え方が世代で切り替わっている点を知っておくと戸惑いが減ります。初代N-WGNは2013年11月に登場したJH1(FF)/JH2(4WD)、現行は2019年8月のフルモデルチェンジで登場したJH3(FF)/JH4(4WD)です。センタータンクレイアウトによって後席の下に燃料タンクが無いという骨格は共通ですが、その空間の使わせ方が違います。
| 項目 | 初代 JH1/JH2(2013年11月〜) | 現行 JH3/JH4(2019年8月〜) |
|---|---|---|
| 荷室の主役 | 床下の荷室アンダーボックス | 備え付けのボードによる上下2段 |
| 床下収納 | 奥行39cm・深さ29cmの大型ボックス | 公式カタログでは床下ボックスの記載なし |
| 後席スライド | あり(背面ストラップで荷室側から操作) | あり(背面ストラップで荷室側から操作) |
| 背もたれの前倒し | 肩のストラップを引いて前倒し | 肩口のレバーで左右別々に前倒し |
| 積載モードの提示 | スライド量と床下収納で説明 | 2段ラック/ローフロア/ビッグラゲッジの3モード |
| リアシートアンダートレー | あり | あり(取り外して手入れ可能) |
初代の荷室アンダーボックスは奥行39cm・深さ29cm
初代N-WGNの荷室で目を引くのは、床板をはね上げると現れる床下収納です。ホンダはこれを荷室アンダーボックスと呼び、奥行39cm・深さ29cmという寸法を公式サイトで示していました。車体後方に燃料タンクが無いために掘り込めた深さで、後席を一番後ろに下げたままでもA型ベビーカーを縦に、しかも後方の見通しを妨げずに積めるという使い方が紹介されています。公式の図では、高さ82cmのベビーカー、高さ81cmのスーツケース、高さ66cmの折りたたみ自転車が縦置きの例として挙げられていました。後席を一番前までスライドさせたときの奥行については、2017年10月時点で全高1,700mm以下の軽ハイトワゴンクラスにおいてクラストップレベル(ホンダ調べ)という位置づけでした。背もたれを倒した状態の積載例としては、幅80cm・高さ77cm・奥行70cmのソファが示されています。
現行は床下のボックスではなくボードが主役
現行JH3/JH4の公式カタログで荷室の中心に据えられているのは、床下の深いボックスではなく、床の低さと備え付けボードの組み合わせです。掘り込んだ穴に隠すのではなく、低い床の上をボードで2階建てにして使い切るという方向へ、設計の重心が移っています。どちらが優れているかは運ぶ物によって入れ替わり、普段使わない道具を視界から消したいなら初代の床下ボックスが効き、買い物と重量物の積み分けを毎日繰り返すなら現行のボードが効きます。中古で初代を選ぶときは、床板を持ち上げて床下の形を実車で確かめておくと、手持ちの収納ケースが収まるかどうかを買う前に判断できます。
純正の収納スペースを使い切る
荷室を広く使う最短の道は、荷室に置いている小物を荷室以外へ逃がすことです。N-WGNは車体側に小物置き場が細かく用意されており、常時携行品の定位置を先に決めておくと、荷室の床面を丸ごと荷物のために空けられます。
リアシートアンダートレー——濡れた傘と置き靴の定位置
後席の座面下には、大型のリアシートアンダートレーがあります。センタータンクレイアウトで燃料タンクが後席下から退いているからこそ生まれた空間で、ホンダは濡れた傘や置き靴の置き場として想定しています。このトレーは取り外して手入れできるため、泥や水が付く物をためらわずに放り込めるのが実際の強みです。荷室に転がりがちな折りたたみ傘、洗車用のブラシ、子どもの長靴といった「濡れる・汚れる・かさばらない」物をここへ集約すると、荷室の床が一段すっきりします。汚れたら外して洗える前提で使うほうが、トレーの容量を出し切れます。
前席まわりの小物スペース
前席まわりには、グローブボックス、センターロアーボックス、ドライバーズロアーポケット、ドアアッパーポケット(左右)、ボトルホルダー付のフロントドアロアーポケット、運転席のドリンクホルダー、助手席側の収納式ドリンクホルダー、助手席/後席のドアアームレストボトルホルダー、助手席シートバックポケット、運転席側サンバイザーのチケットホルダーが備わります。車検証や整備手帳はグローブボックス、駐車券はサンバイザーのチケットホルダー、充電ケーブルとサングラスはドライバーズロアーポケット、というように役割を割り振っておくと、荷室に小物が散らばらなくなります。荷室に小物が転がっている状態は、面積を削るだけでなく、大きな荷物を積むたびに脇へ避ける手間を生みます。
コンビニフックとインパネトレー
助手席側のインパネトレーは、フタのない開いた形状で、走行中に物が落ちにくい形を走行テストで詰めたスペースです。Type-C(3A)の充電用USBジャックが運転席からも助手席からも届く位置にあり、スマートフォンの充電をしながらの置き場所になります。コンビニフックは運転席側の後席背面にあり、レジ袋を掛ける場所として使えます。ただしフックに掛けた袋は走行中に振れるため、飲料をまとめ買いした重い袋は荷室の床へ置き、汁物や潰れやすい物だけをフックへ逃がすという分け方にすると、車内を汚しにくくなります。
場面別の積み方
同じ荷室でも、運ぶ物によって最適なモードは入れ替わります。頻度の高い3つの場面で、どのモードを選ぶかを決めておきます。
日常の買い物
2段ラックモードのままにしておくのが基本形です。ボードの高さがカートとほぼ同じなので、レジを終えたらカートを荷室に横付けし、袋を持ち上げずに水平に滑り込ませます。卵や豆腐のような潰れやすい物は上段の奥へ寄せて動きを止め、米や飲料のケースは下段へ落として重心を下げます。上段と下段で温度帯を分ける使い方もでき、保冷バッグを上段の手前に置いておけば、帰宅後に冷凍品だけを先に持ち出せます。買い物の量が読めない日は、ボードを付けたまま出発して、荷物が大きければその場でボードを抜けば済みます。
背の高い荷物・重い荷物
観葉植物、収納ケース、キャリーバッグを立てて積む日は、ボードを外してローフロアモードにします。床が低いぶん、重い物を持ち上げる高さが減り、腰への負担が軽くなります。米袋やケース飲料のような重量物は、荷室の奥(後席寄り)へ寄せて置くと、加減速で前後に動く距離が短くなり、テールゲートを開けた瞬間に滑り出てくる事故も防げます。背の高い物を積むときは、後方視界を塞がない高さに収まっているかをルームミラーで確認してから走り出します。
長尺物を積みながら後席にも人を乗せる
物干し竿、カーテンレール、スキー板、組み立て式の棚板といった長い物は、背もたれを片側だけ前に倒して通します。左右別々に倒せる構造なので、倒していない側には人を乗せたままにできます。長尺物の先端が前席のヘッドレストや天井に当たる位置まで来る場合は、間に毛布を挟んで内張りを守ります。荷室から前席側へ突き抜ける長さの荷物は、走行中に前後へ動くと後頭部の近くまで滑ってくるため、荷室のフックへベルトを掛けて動きを止めてから走り出します。
荷崩れと置き忘れを構造で防ぐ
N-WGNの荷室は床が低く、後席を倒したときの段差も小さい形になっています。積みやすさの裏返しとして、荷物が滑って動きやすいという性格もあり、そこだけは手当てが要ります。
低くて平らな床は滑る
段差が少なくフラットな床面は、箱物やキャスター付きの荷物にとっては滑走路になります。荷室の床に滑り止めマットを敷くか、縁の立ち上がった防水タイプのラゲッジマットを入れておくと、荷物の移動と汚れの両方を止められます。ボードの上に載せた荷物も同様で、上段は下段より揺れが伝わりやすいため、軽い袋であってもカーゴネットやベルトで押さえておくと、カーブで倒れて中身がこぼれる事態を避けられます。走り出す前に一度荷室を軽く揺すってみて、動く物が残っていないか確かめる習慣にしておくと取りこぼしがありません。
リアシートリマインダーはセンサーではない
現行N-WGNには、後席への置き忘れをメーター表示と音で知らせるリアシートリマインダーが備わります。ここで誤解しやすいのが検知の仕組みで、後席の同乗者や荷物をセンサーで直接検出しているのではなく、後席ドアの開閉履歴から「後席に何か置いた可能性がある」と推定して知らせる装置です。後席ドアを開閉してから10分以内にエンジンを始動しなかった場合には作動しません。荷室に積んだ荷物やテールゲートからの積み込みは対象外なので、この機能を頼りにするのではなく、降りる前に後席と荷室を目視するという手順を残しておくのが安全な使い方になります。
よくある質問
N-WGNの荷室容量は何リットルですか
ホンダの公式カタログページには、N-WGNの荷室容量をリットルで示す数値や、荷室の寸法表が掲載されていません。カタログで示されているのは、床を低くしたこと、備え付けのボードで上下2段に積み分けられること、3つのモードにアレンジできることという構造の説明です。容量値で他車と比べるより、ボードを使うかどうか、後席をスライドさせるか倒すかという組み合わせで積載を組み立てるほうが、この車では実際に合っています。
後席は片側だけ倒せますか
倒せます。現行JH3/JH4は後席の肩口にある操作レバーを引くことで、背もたれを左右別々に前へ倒せる構造です。片側を倒して長い荷物を積みながら、倒していない側には人を乗せたままにできます。レバーは荷室側からも操作でき、テールゲートを開けたまま背もたれを倒す動作が完結します。
荷室のボードは外せますか
外せます。ボードを使わない状態がローフロアモードで、大きな物や背の高い物を積むときに選ぶ形です。ボードを水平にセットすれば2段ラックモード、後席の背もたれを倒せばビッグラゲッジモードとなり、ビッグラゲッジモードではボードによる下段スペースも同時に使えます。積む物が決まった時点で、ボードを差すか抜くかを決めれば済みます。
初代N-WGNと現行、荷室が使いやすいのはどちらですか
運ぶ物によって入れ替わります。初代JH1/JH2は床板をはね上げると奥行39cm・深さ29cmの荷室アンダーボックスが現れ、普段使わない道具を床下へ隠せる点が強みでした。現行JH3/JH4は床下の深い穴ではなく、低い床と備え付けボードによる上下2段で積み分ける方向へ変わり、背もたれも左右別々に倒せるようになっています。普段使わない道具を視界から消したいなら初代、買い物と重量物の積み分けを毎日繰り返すなら現行が扱いやすくなります。
N-WGNの荷室で車中泊はできますか
後席の背もたれを前に倒せば、ほぼ段差のない広い空間になるため、荷室と後席を使った就寝スペースは作れます。ただし背もたれを倒した面は完全な水平面ではなく、軽自動車の全長という制約もあるため、身長によっては脚を伸ばしきれません。マットやクッションで面を均し、前席側へ体を逃がすレイアウトを前提に考えると現実的な形に収まります。
まとめ
N-WGNの荷室は、寸法表ではなく3つのモードで捉える車です。備え付けのボードを水平にセットすれば2段ラックモードとなり、ボードの高さがショッピングカートとほぼ同じなので、買い物袋を持ち上げずに水平移動で積み込めます。ボードを抜けばローフロアモードとなり、低い床と天井までの高さを使って背の高い物や重い物を積めます。後席の背もたれを倒せばビッグラゲッジモードとなり、下段の積み分けを残したまま長い物を積めます。後席は荷室側のストラップで前へスライドし、肩口のレバーで背もたれを左右別々に倒せるため、片側に人を乗せたまま長尺物を積むという使い方も成立します。純正側では、取り外して洗えるリアシートアンダートレーへ濡れた傘や置き靴を集約し、前席まわりの各ポケットへ常時携行品を割り振ると、荷室の床を丸ごと荷物のために空けられます。世代差では、初代JH1/JH2が奥行39cm・深さ29cmの荷室アンダーボックスで床下に隠す設計だったのに対し、現行JH3/JH4は低い床とボードで2階建てにする設計へ移りました。床が低くフラットなぶん荷物は滑りやすいので、滑り止めマットとネットで動きを止め、降車前には後席と荷室を目視する——リアシートリマインダーは後席ドアの開閉履歴からの推定にすぎず、荷室は対象外だからです。
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