90系ノアの MZRA90W でタイヤを自分で替えられるかどうかは、その車が応急用タイヤとジャッキを積んだ車か、パンク修理キットを積んだ車かで分かれる。もう1つの分かれ目は生産年月で、どの版の取扱説明書を見るべきかが変わる。この2点を自分の車で確かめてから、ジャッキのかけ方と締め付けの手順へ進むのが近道だ。
作業の前に押さえる4つのこと
先に要点だけ並べておく。詳しい手順は後の節で説明する。
- ホイールナットの締め付けトルクは 103N・m(1050kgf・cm)。
- 車載ジャッキは、取扱説明書の図に描かれたジャッキセット位置に、ジャッキ頭部の凹み部を中央あたりに合わせてかける。
- トヨタのノアの取扱説明書では、車両うしろ側のジャッキアップポイント付近にある金具にジャッキをかけないよう注意している。かけると車体が損傷するおそれがある。
- 同じ取扱説明書には『タイヤパンク応急修理キット装着車には、応急用タイヤ、ジャッキ、ジャッキハンドル、ホイールナットレンチが搭載されていません。』とある。修理キット装着車は、積んである工具だけではタイヤを付け替えられない。
対象はMZRA90W(2.0Lガソリン・FF)
取扱説明書(2022年1月〜2022年5月生産の版と、2025年9月〜2026年3月生産の版)の車両仕様では、MZRA90W は M20A-FKS(2.0L ガソリン)を積む前輪駆動(FF)車だ。同じエンジンの四輪駆動(4WD)車は MZRA95W という別の型式になる。
トヨタはノアの取扱説明書を生産年月ごとの版で公開している。2022年1月以降に生産されたガソリン車は、次の6つの版に分かれ、ハイブリッド車は別の版になる。
- 2022年1月〜2022年5月
- 2022年6月〜2023年11月
- 2023年12月〜2024年3月
- 2024年4月〜2025年8月
- 2025年9月〜2026年3月
- 2026年4月以降
2026年4月以降の生産分の取扱説明書では、車両仕様の型式が MZRA92W(FF)と MZRA97W(4WD)になっていて、MZRA90W は載っていない。この記事の数値と手順は、MZRA90W が載っている版(2022年1月〜2022年5月生産の版と、2025年9月〜2026年3月生産の版)で確かめたものだ。自分の車の型式と生産年月を車検証などで確かめ、それに合う版の取扱説明書を手元に用意してほしい。
ジャッキと工具が積まれているかを先に確かめる
出先でパンクしてから荷室を開けて慌てないよう、ふだんのうちにデッキボードの下を開け、応急用タイヤとジャッキが積まれているか、修理キットだけかを確かめておく。
応急用タイヤ装着車の工具と置き場所
応急用タイヤ装着車に積まれているのは、けん引フック・応急用タイヤ・ジャッキ・ツールバッグ・ホイールナットレンチ・ジャッキハンドルだ。
- ジャッキとツールバッグ: 荷室のデッキボードを持ち上げてカバーを外し、固定バンドのフックを外して取り出す。ジャッキは緩めてから外す。
- 応急用タイヤ: これもデッキボードの下にあり、タイヤカバーと留め具を外して取り出す。
収納するときは、ボディとの間に指を挟まないよう注意する。荷室の使い方は
でまとめている。
修理キット装着車にはジャッキが無い
修理キット装着車でも、どんなパンクでも直せるわけではない。次のような場合は、修理キットで応急修理できない。
- 4mm以上の切り傷や刺し傷がある
- 側面など、接地面以外に穴や損傷がある
- タイヤがホイールから明らかに外れている、またはホイールが破損している
- 2本以上のタイヤがパンクしている、または1本に2か所以上の切り傷や刺し傷がある
- 空気圧が足りないまま走って、タイヤが損傷している
こうしたときは、ジャッキが無い以上その場でタイヤを替える手段も無い。後で触れるとおり、ロードサービスなどを頼るのが現実的だ。
タイヤサイズ・空気圧・締め付けトルクの早見表
MZRA90W の取扱説明書の仕様一覧(2022年1月〜2022年5月生産の版と、2025年9月〜2026年3月生産の版)から、タイヤ交換で使う数値をまとめた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準タイヤ(16インチ) | 205/60R16 92H(ホイール 16×6J) |
| 標準タイヤ(17インチ) | 205/55R17 91V(ホイール 17×6J) |
| 標準タイヤの指定空気圧(冷えているとき) | 前輪・後輪とも 240kPa(2.4kgf/cm²) |
| 応急用タイヤ(16インチ) | T135/80D16 101M(ホイール 16×4T) |
| 応急用タイヤ(17インチ) | T125/70D17 98M(ホイール 17×4T) |
| 応急用タイヤの指定空気圧 | 420kPa(4.2kgf/cm²) |
| ホイールナットの締め付けトルク | 103N・m(1050kgf・cm) |
締め付けトルクは、仕様一覧と応急用タイヤへの交換手順の両方に同じ値が載っている。一方、どちらのタイヤサイズがどのグレードに付くかは表に書かれていない。いま付いているサイズはタイヤの側面の表示で確かめ、指定空気圧は運転席側のタイヤ空気圧ラベルでも確かめられる。空気圧の点検はタイヤが冷えているときに行う。
サイズの詳しい見方は
、ホイールの寸法は
を見てほしい。
ジャッキアップポイントは取扱説明書の図で確かめる
ジャッキセット位置と、ガレージジャッキのジャッキポイントの場所は、取扱説明書では図で示されていて、文章での説明は無い。だからこの記事でも位置を文章で言い切らない。作業の前に、自分の車の生産年月に合う版の取扱説明書を開き、図で位置を確かめてほしい。見る項目は使うジャッキで違う。
車載ジャッキのセット位置の合わせ方
車載ジャッキのセット位置は、「パンクしたときは(応急用タイヤ装着車)」の項の図に描かれている。ジャッキをその位置の下に置いたら、ジャッキの回転部を手で回し、頭部の凹み部がジャッキセット位置の中央あたりに軽く当たるまで上げる。凹み部が中央からずれたまま車体を持ち上げないことが肝心だ。
うしろ側でかけてはいけない金具
同じ項の図には、車両うしろ側のジャッキアップポイント付近にある金具の位置も示されている。ここにジャッキをかけると車体が損傷するおそれがある。後輪を上げるときは、図で金具の位置を見ておき、セット位置と取り違えない。
ガレージジャッキを使うときの位置
取扱説明書の「ガレージジャッキ」の項では、フロント側とリヤ側のジャッキポイントが図で示され、リヤ側は FF 車と 4WD 車で図が分かれている。MZRA90W は FF 車なので、リヤ側は FF 車の図を見る。ガレージジャッキ(フロアジャッキ)は、付属の取扱説明書に従って正しい位置にセットする。正しい位置でないと、車両の損傷やけがのおそれがある。
車載ジャッキはタイヤ交換とタイヤチェーンの脱着のためのこの車専用品で、ガレージジャッキとは見る図が違う。どちらを使う場合も、車の下にもぐる作業ではジャッキスタンドを使う。
作業前の準備と輪止め
パンクに気づいたら、走り続けない。パンクしたまま走ると、短い距離でもタイヤやホイールが修理できないほど損傷するおそれがある。
停める場所と車の状態
- 地面が硬く平らで、安全な場所へ移動する
- パーキングブレーキをかける
- シフトレバーをPにして、エンジンを止める
- 非常点滅灯を点滅させる
- パワードアオフスイッチをONにする
パワースライドドアやパワーバックドアが付いた車は、作業中はパワードアオフスイッチをONにしておく。OFFのままだと、誤操作でドアが動き、指や手を挟むおそれがある。
輪止めの位置
輪止めは、交換するタイヤと対角の位置にかける。輪止めはトヨタ販売店で購入できる。
| 外すタイヤ | 輪止めをかける位置 |
|---|---|
| 左前輪 | 右後輪のうしろ |
| 右前輪 | 左後輪のうしろ |
| 左後輪 | 右前輪の前 |
| 右後輪 | 左前輪の前 |
ジャッキを使うときの禁止事項
取扱説明書は、ジャッキの取り扱いを誤ると車が落下し、重大な傷害や死亡につながるおそれがあると警告している。守ることは次のとおりだ。
- 備え付けのジャッキは、タイヤ交換とタイヤチェーンの取り付け・取りはずし以外に使わない
- 備え付けのジャッキを他の車に使わない。他の車のジャッキもこの車に使わない
- ジャッキで支えている車の下に体を入れない。車の下にもぐる作業はジャッキスタンドを使う
- ジャッキで支えたまま、エンジンをかけたり走らせたりしない
- 人を乗せたまま持ち上げない。ジャッキの上や下に物を置かない
- タイヤ交換に必要な高さ以上に上げない
- 下げるときは周りに人がいないか確かめ、いれば声をかけてから下げる
タイヤの外し方
走った直後はホイールやブレーキまわりが熱く、触るとやけどのおそれがある。少し時間を置いてから始める。
- 輪止めをかける
- スチールホイールのときだけ、ホイールキャップを外す。ホイールナットレンチの先に布などを巻くと傷を防げる
- 車体を上げる前に、ナットを約1回転ゆるめる
- ジャッキをセット位置に当て、頭部の凹み部を合わせる。ホイールナットレンチをジャッキハンドルに組み付けて回し、タイヤが地面から少し離れるまで車体を上げる
- ナットをすべて外し、タイヤを外す
外したタイヤを地面にじかに置くときは、ホイールの表面を上にして傷を防ぐ。
取り付けと締め付け(103N・m)
取り付けの手順
- ホイールの接触面の汚れをふき取る。汚れているとナットがゆるみ、タイヤが外れるおそれがある
- タイヤを付け、ナットのテーパー部がホイールのシート部に軽く当たるまで、がたつかない程度に手で仮締めする
- ジャッキを下げて車体を下ろす
- ホイールナットレンチで、取扱説明書の図の番号順に、2、3度くり返してナットを締める(締め付けトルク 103N・m)
- 工具・ジャッキ・外したタイヤをすべて収納する
締める順番は、取扱説明書の図の番号をそのまま追えばよい。
ナットとねじ部の注意
- ナットのねじ部にオイルやグリースを塗らない。付いていたらふき取る。締めすぎによるボルトの破損やホイールの損傷のおそれがある
- 使っているホイール専用のナットを使い、テーパー部を内側にして付ける。外側にするとホイールが外れるおそれがある
- ボルトやナットのねじ部、ホイールのボルト穴につぶれや亀裂があれば、トヨタ販売店で点検を受ける
交換後の確認と片付け
タイヤ交換の後は、速やかに締め付けトルクを確かめる。103N・m で締まっているかを自分で確かめたいなら、締め付けトルクを設定して締められるトルクレンチを使う方法がある。自分で確かめられないときは、トヨタ販売店で点検を受ければよい。
ジャッキや工具は、走り出す前に正しい位置に格納されているか確かめる。格納が不十分だと、事故や急ブレーキのときに重傷につながるおそれがある。スチールホイールのホイールキャップは、バルブの切り欠きを合わせて確実に付ける。
応急用タイヤ・修理キットで走るときの注意
応急用タイヤを付けている間の決まり
応急用タイヤは、側面に TEMPORARY USE ONLY の表記がある応急用のタイヤだ。付けている間は次を守る。
- 80km/h 以上で走らない
- 2本以上を同時に使わない。できるだけ早く通常のタイヤに戻す
- 急加速・急ハンドル・急ブレーキを避ける
- 摩耗限度を超えて使わない。タイヤチェーンを付けない
- 標準タイヤより車高が低くなることがあるので、段差に注意する
装着中は車速を正確に検出できず、ABS・VSC・TRC・PCS・LTA・レーダークルーズコントロール・クリアランスソナーなどが正常に作動しないおそれがある。装備はグレードやオプションで異なる。
雪道で前輪がパンクしたとき
応急用タイヤにはチェーンを付けられない。そこで取扱説明書の手順では、雪道や凍結路で前輪がパンクしたときは、後輪を応急用タイヤに替え、パンクした前輪の位置には外した後輪を付け、タイヤチェーンは前輪に付ける。チェーン選びは
を参考にしてほしい。
修理キットを使った後
修理キットで直した後は、約5kmを80km/h以下で走って補修液を広げ、空気圧を確かめる。そのうえで、走行距離約100km以内・80km/h以下でトヨタ販売店へ向かう。
交換用のタイヤを選ぶときの決まりとローテーション
取扱説明書の「タイヤについて」の項では、タイヤとホイールについて次のように警告している。
- すべてのタイヤは、同一メーカー・同一銘柄・同一トレッドパターンで、摩耗差のないものを使う
- メーカー指定サイズ以外のタイヤやホイールを使わない(MZRA90W の標準タイヤは早見表の2サイズ)
- ラジアルタイヤ・バイアスベルテッドタイヤ・バイアスプライタイヤを混ぜない
- サマータイヤ・オールシーズンタイヤ・冬用タイヤを混ぜない
- 以前の使い方が分からないタイヤや、他の車で使われていたタイヤは使わない
- 亀裂や変形のあるホイールは使わない
同じ項は、タイヤローテーション(タイヤ位置交換)を5000kmごとに行うよう案内している。タイヤ・ディスクホイール・ホイール取り付けナットの交換は、トヨタ販売店に相談するよう案内している。
スタッドレスタイヤや新しいホイールを選ぶときは、
と
も合わせて見てほしい。
よくある質問
ホイールナットは何N・mで締める?
103N・m(1050kgf・cm)だ。取扱説明書の仕様一覧と、応急用タイヤへの交換手順の両方に載っている値で、締める順番は図の番号順になる。
荷室にジャッキが見当たらないのはなぜ?
修理キット装着車の可能性が高い。修理キット装着車には、ジャッキだけでなくジャッキハンドルとホイールナットレンチ、応急用タイヤも積まれていない。
応急用タイヤで何km/hまで走れる?
80km/h 以上では走らない。修理キットで直した後も、販売店までは80km/h以下で走る。
ジャッキアップポイントはどこで確かめる?
車載ジャッキは「パンクしたときは(応急用タイヤ装着車)」の項の図、ガレージジャッキは「ガレージジャッキ」の項の図で確かめる。取扱説明書は生産年月で版が分かれているので、自分の車に合う版を開く。
ローテーションの目安は?
取扱説明書は5000kmごとと案内している。季節ごとの履き替えのときに走行距離を控えておくと、次の時期を判断しやすい。
まとめ
最初にやることは、荷室のデッキボードの下を開けて、応急用タイヤとジャッキが積まれているかを現物で確かめることだ。あわせて、いま付いているタイヤの側面でサイズを見ておく。次に車検証で型式と生産年月を確かめ、合う版の取扱説明書を用意する。
- 締め付けトルクは 103N・m で、図の番号順に2、3度くり返して締める
- 車載ジャッキは、図のセット位置に頭部の凹み部を合わせてかける
- うしろ側のジャッキアップポイント付近の金具にはかけない
工具が無い、ジャッキの位置に自信が無い、路肩などで安全に作業できないときは、無理に作業しなくてよい。ロードサービスやトヨタ販売店、タイヤ店に頼む選択肢がある。

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